第22回 小豆島オリーブマラソン全国大会

〜 幹事長・中山 遂に全国デビュー 〜


全国2000万人のマラソン愛好家の皆様、お待たせしました。去る1999年5月30日(日)第22回小豆島オリーブマラソン全国大会が日本で22番目に大きい小豆島で開催されました。(21番目は宮古島、23番目は奥尻島です。どーでもええか)
今回で22回目となる恒例の大会ですが、今年は「二十四の瞳」の作者の壺井栄の生誕100年記念大会でした。(ちゅうても、完走証に壺井栄の写真が載ってるだけやけど)

例によって高松港からの臨時船は朝6時20分なんていうとんでもない時間に出航するので、早起きしてバイクを飛ばして港へ行く。眠さでぼうっとした頭で乗り込んでいると、船のデッキから1年振りのマラソンであるフラメンコ明子が声を掛けてくれる。彼女は昨年春の明石海峡大橋駅伝に猿2号として彗星のごとく現れて大活躍したのが記憶に新しい。その時は4kmしか走ってないけど、かつては高知の浦戸湾マラソンに連続出場していたベテランランナー(ごめん)なので、1年振りでも不安はない。臨時船はすごい人で混乱気味だけど、明ちゃんが見張っていてくれたおかげでペンギンズのメンバーも大半が合流することができました。
船で集合した今回の出場者は、ペンギンズ部長の名を欲しいままにする隅田大先生を始め、電力部の「電ご3兄弟」F川選手・光高選手・宮岡選手、それから中年新鋭宮武選手、笹谷選手、フラメンコ明子、中山選手(元ダイエー)、増田選手、竹葉選手と、ペンギンズ主要メンバー揃い踏みの豪華キャストとなりました。
福家さんもペンギンズの名誉顧問で76歳になられるお父上と一緒に参加されていたのですが、当日は合流できませんでした。
それから、遠い所へ行ってしまった鈴木先生も見かけなかったけど、今年は来れんかったんかなあ。鈴木さあ〜ん、お元気ですかあ〜っ?
(笹谷)「そう言えば亀山さんがおらんですねえ」
(幹事長)「あいつは秋の小豆島のタートルマラソンに賭けとるきんね」
(笹谷)「さすがは亀男ですねえ」


我々が乗り込んだのは出港直前なので、当然、座席は満席。かろうじて発見したフロアのスペースにゴロゴロ転がる。気がつくと、無理矢理部長にさせられて迷惑顔の隅田御大は当然の事ながら、F川までが居なくなっている。
(幹事長)「F川はどしたんや。あいつが居ないと面白くないやんか。
     まさかペンギンズから足洗おうっちゅんやないやろな?」
(中山)「なんやら気分が悪いと言うて一人で苦しんでますよ」
F川はマラソン前日というのに、前夜の飲み会で飲み過ぎてゲロゲロ状態だったのだ。ほんまに青い顔をして苦しんでいる。
(幹事長)「今日はもしかしてひょっとしてF川に勝てるかもしれん」
(中山)「人の不幸を喜んどるでしょ」
(幹事長)「片づけが終わるまでが運動会。家に帰るまでが遠足。と校長先生も言うとるやろが。
     前日から既にマラソン大会じゃ。プロやったら自分のコンディションには責任を持たんとのう」
(中山)「誰がプロですか」

フラメンコ明子を見ると鼻に絆創膏を貼っている。
(幹事長)「おっ、さっそく貼ってるやんか」
(明子)「えっ?何ですか?」
(幹事長)「空気の吸い込み量を増やすために鼻の穴を拡げるテープやろ?」
(明子)「えっ、違いますよう。ホクロの切除手術の跡ですよう」
(幹事長)「なんと!あのチャームポイントのホクロを取ってしまったのか!」
紛らわしいやっちゃな。

ここで、おもむろに足の爪を切る私。
(宮武)「幹事長、何しよんですか?」
(幹事長)「見て分からんか?爪切っとんのや。猫でも分かるぞ」
(宮武)「それ切りすぎとちゃいますか?」
(幹事長)「そんなことないわ。これくらい切っとかんと内出血するぞ」
(宮武)「えっ?僕なんて、いつでも内出血してますよ」
見ると、中年新鋭宮武選手の足の爪が内出血で黒くなっている。
(幹事長)「そ、それって、一体、・・・どしたん?」
(宮武)「いつもですよ。みんなは違うんですか?」
信じられないことに、宮武選手は、足の指の爪というものは内出血してるのが日常的ノーマル状態だと思い込んでいたらしい。どういう自然環境で育ったのでしょうか。
(幹事長)「悪いことは言わんから、お前も切れや」
しかし宮武選手は、赤黒い爪をしながら、1月に丸亀マラソンの10kmでデビューして予想外の好成績をおさめ、続いて3月の本島マラソン14kmでも好調を維持している。なかなか侮れないので、様子を伺う。
(幹事長)「体調はどんなん?」
(宮武)「いや、あかんのですわ。ほんの数日前まで出場が危ぶまれて。
     普段は高血圧体質やのに、急に血圧が極端に低下して、
     身体が動かなくなって病院にかつぎ込まれたんですわ」
(幹事長)「それって怖すぎるやんか。走って大丈夫かいな」
などといたわっている風を装いながら、「こいつには勝てる」とほくそ笑む。
(明子)「でも宮武さんは昨日はゴルフに行ってたんですよ」
なんとかーっ。血圧低下の後遺症は無いのか。ちぇっ。しかしゴルフ疲れというマイナス要因はあるな。ふむふむ。

長い船旅を終えて港に着くと、受付を済ませ、テント村の空きスペースに陣取る。受付したら記念品をくれるのだけど、例年通り小豆島名産の醤油やダシのほか、今年はなんと缶ビールが入っている。こんなん初めて。走り終わると必ずビールを飲む大酒のみの竹葉選手が目を輝かせている。しかし奴が缶ビール1本で満足できるはずがない。
(幹事長)「みんな隠せよ。竹葉が狙っとるぞ」
(中山)「竹葉さんより早く帰ってこないと飲まれてしまいますね」
しかし竹葉選手は、最近は他の追随を許さない圧倒的スピードを誇っている。
(幹事長)「それは無理や。せめて1本飲み終わるまでに帰ってこよう」
(中山)「竹葉さんやったら30秒もあったら飲み干しますよ」
竹葉選手は、実は最近、胃ガン検診で引っかかり、一時は命も危ぶまれていたけど(危ぶんでいたのは本人だけ)、胃カメラを飲んだらアリの巣しか無かったらしい。
(幹事長)「せめて胃潰瘍くらいは期待しとったんやけどなあ。惜しい」
(竹葉)「ま、今年も1時間30分くらいですな」
こいつが言うと本当になるからなあ。好かんやっちゃ。

そうこうしているうちに、F川選手がようやく復活してベラベラしゃべり出す。
(幹事長)「お前、少しは元気になったようやな」
(F川)「昨晩は同期会で、えらい飲まされたんですよ」
(増田)「結婚祝いパーティーですか?F川さん、ハワイ人と結婚したって本当ですか?」
(幹事長)「なにっ?お前いつのまに結婚したんや?」
深夜に塩江街道を走って痴漢に間違われるF川ともあろう者が、いつのまに結婚したんやろ?しかもハワイ人とな?
(幹事長)「と言うことはポリネシア人か?」
(増田)「ホノルルマラソンで見つけたらしいですよ」
(F川)「ちょっとちょっと、無茶苦茶な噂を飛ばさんとって下さいよ。
     単にハワイで結婚式しただけですよ。ホノルルマラソンなんて出てないですがな」
(幹事長)「ほなポリネシアンとは違うんか」
(F川)「私のことは、どないにボロクソに書いてもええけど、家族の事はウソ書かんといて下さいよ」

(幹事長)「ところで今年の目標タイムはなんぼや?
     去年は確か1時間30分が目標やったな」
(F川)「かんにんして下さいよう。今年は制限時間の3時間以内で戻ってこれたら誉めて下さいよ」
(中山)「幹事長はどうですか?」
(幹事長)「わしは勝負に徹する」
(F川)「なんのこってすか?」
(幹事長)「2連勝中の中山に勝つことだけを優先する!」
(中山)「幹事長。甘いですね。去年の僕とは違いますよ」
まずい。中山選手(元ダイエー)は去年1年間、原因不明の体調不良に悩まされ、出るレース出るレースことごとく悲惨な記録を塗り替えていったのだけど、医者の「口から出まかせ的忠告」に従ってコーヒーを絶ってから、なんと体調が一気に回復し、今回は万全の精神状態なのだった。嘘みたい。
(幹事長)「よし。今年は目標を変えてF川に照準を合わそう」
(宮武)「私も忘れんといて下さいよ」

受付でもらったゼッケンを付けて着替えを始める。好き勝手なTシャツやら短パンを着込んだペンギンズ軍団にあって、宮岡選手が競輪選手のようなピチピチした短パンを穿いている。
(増田)「うわ、格好ええですねえ」
(宮岡)「いや、これ、格好のためやなくて股ズレ防止なんですよ」
(幹事長)「そうかあ。わしのカモシカの足は股ズレとは無縁やけど、
     そういう太めな足はスベスベのパンツを穿かんとスレるわけか」
(宮岡)「筋肉隆々と言うて欲しいですね」
(中山)「幹事長こそ、そのゴワゴワの紙みたいなTシャツはなんですか」
(幹事長)「これは特殊な繊維で、汗を吸い取らんからサラサラなのよ。
     汗かいても肌にベチョっとひっつかんから快適」
と自慢したのですが、ちょっと硬めな生地だったため、レース後、少し乳ズレ気味で痛かったです。(これは秘密よ)
(幹事長)「増田く〜ん。結婚してから太ったなあ。すごいお腹」
(増田)「ドキッ。体重が10kgくらい増えましたねえ」
一瞬ほくそ笑みかけるが、増田選手はもともと早いから、逆転は無理か。

ところで、あの野性的にうるさいはずの笹谷選手が妙に静かである。野人とはいえ、さすがに久しぶりの大会で緊張してると見える。
(幹事長)「こら!誰や、黙々と弁当食べてるやつは」
(笹谷)「・・・んぐぐ。いや、妙に腹が減って・・・」
(幹事長)「その弁当、どしたんや?」
(笹谷)「もうくれますよ」
なんと笹谷選手は、通常、走り終わってから引き替える弁当を早くも交換してきて、黙々と食べていたのでした。普通ならお腹が痛くなるところだけど、野性的な消化力でクリアしたようです。しかし、普通、走る前に弁当食べるか?
(笹谷)「タコの天ぷらもタダで配ってましたよ」
(幹事長)「なにっ!タコのてんぷらあ〜?急げっ!」
タダで配っているなんて半信半疑ながら、中山選手(元ダイエー)とダッシュしてタコの天ぷらを探しに行く。すると屋台でタコの天ぷらを売っていて、ちょっとだけ試食できるようになっているのでした。そんなことやろと思ったけど、1つ食べてみると美味しい。思わずビールが飲みたくなる美味しさでした。しかし走る前にこんな消化の悪い物を食べていたのではいけない。

ちょうどその時、開会式が始まる。主催者の挨拶なんぞ興味が無い私らですが、この大会はオリーブの女王さまがいらっしゃるのです。
(中山)「今年はどんなんでしょうね。ズルズル(ヨダレの音)」
彼は一昨年の大会で、オリーブの女王との触れ合いを求めてフラフラと近寄り、取り押さえられた前歴があります。
(幹事長)「おっ、今年はオリーブの女王が2人もいるよ」
(中山)「しかし、どっちもいまいちですねえ」
なんて言いながら吸い寄せられていく中山選手(元ダイエー)。カメラも持ってないのに、一緒に記念写真を撮ろうと群がるおっさんに混じっていくのでした。

開会式も終わり、準備運動のエアロビクスが始まる。エアロビクスと言えば、一昨年の塩江マラソンで、延々と続く準備運動のエアロビクスを真面目に30分もやって体力を使い果たした鈴木先生は今頃どこに居るのかなあ。今回は穴吹フィットネスクラブの姉ちゃんがインストラクター。
(中山)「タコが胃にもたれるから少しだけやりましょうか」
と始めるが、どう考えてもマラソンとは関係が無さそうな腕の筋肉を徹底的にほぐしたりする。
(幹事長)「エアロビクスのインストラクターは臨機応変ってことを知らんのかなあ」
しかし、今回の準備運動は15分程度で終わり、あまり体力を消耗することはなかった。

スタートが近づいてくると、なぜだかみんなトイレへ行きたくなる。簡易トイレが何十もズラッと並んではいるけど、どのボックスの前も長い行列。オシッコする人ばかりだと良いのだけど、昨年は僕らが並んだ列の何人か前に許しがたいウ○コたれネェちゃんがいて、危うくスタートに遅れそうになった。安易に並ぶとリスクが大きいので、○ンコたれらしき奴が居ないことを確認して並ばねばならない。

さて、スッキリしたところで、いよいよスタート。例によってスタートの位置は、予想タイムの早い人から並ぶ。前の方は「70分以内」なんていう、僕らからは雲の上のランナーの定位置。
(幹事長)「しかーし!諸君!今年は前の方に並ばねばならん!」
なぜなら、今年はこの大会の模様をNHKが衛星放送で全国中継するのです。韓国の人や台湾の人も見てるあるよ。遂に、この大会も、ペンギンズが出場するようになったため、国際的にも注目されるようになったのです。
(幹事長)「前の方に並べば絶対にカメラに写るはずや!
     裸足マラソンなんていうふざけた大会で見事にテレビに映った
     伊方発電所の川村君を見習わなければならないのであ〜る!」
川村君のアドバイスによると、前の方の端っこの方が映りやすいそうです。さすがに一番前にいくのは遠慮しまして、中山選手(元ダイエー)や笹谷選手らと共に、ちょっと前の方の左端の辺りに強引に割り込んでいく。周りは早そうな人ばっかり。

スタートの合図と共に一斉に駆け出す。いつもは後ろの方からのスタートなので、実際に走り始めるまでに数分かかるが、前の方なのですぐに走り始める。必死でカメラを探すと、読みが当たって、みごと左前方45度にNHKがカメラを構えている。カメラの前まで必死で走っていって急ブレーキをかけてスピードを落とし、カメラの前でむちゃくちゃ手を振り叫び続ける。絶対に映ったはず。でも、これが生中継の悲しさで、自分で確認できない。ビデオをセットするのも忘れてしまった。だから映ったとは思うんだけど、ほんとのところは分かりません。誰かビデオ取ってませんかあ?

(今年も圧倒的なパワー爆発で首位を独走する筆者)

さてさて、この大会のコースは、前半は平坦な道が続く。今回は中山選手(元ダイエー)に3連勝することだけが目標なので、何も考えず、ただひたすら彼の後をピッタリ着いていく。ところが、中山選手(元ダイエー)の走りは安定していない。金髪の外人姉ちゃんが現れるとフラフラと右に吸い寄せられ、中年オーラをまき散らしながらおばちゃん選手が現れるとはじき飛ばされて左へ寄る。その度に私も右へ左へフラフラと着いていく。しかし、中山選手(元ダイエー)は予想外に快調に飛ばし、ペースが落ちない。時にスピードを上げて揺さぶりをかけてくる。なんとか着いていくが、結構、苦しい。
後半に入ると坂の連続となる。ここからが勝負所なんだけど、上りになると中山選手(元ダイエー)にジワジワと離されてしまう。もう駄目か、とあきらめかけるけど、なぜか下りになると遅くなる中山選手(元ダイエー)。取り残されるのも時間の問題か、と観念しかかった時に、突然、中山選手(元ダイエー)が振り向いて言う。
(中山)「幹事長。ゾンビみたいに着いてくるん止めて下さいよ。
     僕もう駄目ですから、先に行って下さい」

あらま。彼は快調に飛ばしていたように見えてたけど、後ろからの僕のプレッシャーに押されて無理していたのでした。僕も疲れてきたので、本当は一緒にペースダウンしたかったのだけど、ここで精神的に一気に優位に立つために、わざと平気そうに
(幹事長)「おっ、そうか。ほな、お先ぃ〜」
と言ってペースを上げる。
その後、今度は逆に、いつ中山選手(元ダイエー)に抜き返されるかという不安と闘いながら、精神的に負担の大きい展開となる。去年の塩江では何度も抜きつ抜かれつの消耗レースを繰り広げたライバルなので油断はできないのであった。

残り7kmの折り返し地点で確認すると、中山選手(元ダイエー)は、かなり遅れている。さらに、船の中では会えなかった藤塚さんが苦しそうに走ってきたのにすれ違う。次回のレースからペンギンズに加入する藤塚さんは、去年もこのレースに参加しているけど、今年はとても苦しそうでした。
しかし、それ以上に、圧倒的な遅さで末尾近くをフラフラと駆けてくるF川選手の姿が痛々しい。何やら哀れであるな。
(F川)「ほんまに思ってるんでしょうね!?」
(幹事長)「わしも大人になったからのう」

今年も、お腹にラジカセを取り付け、頭に「小豆島なんとか会」の旗をなびかせたサングラス兄ちゃんが、ピンクレディをガンガンかけながら最終ランナーの後から「ここが最終ランナー」っていう札をかけて伴走してました。あれはイジメ以外の何ものでもないぞ。F川も油断してると追いつかれるぞ。がんばれF川!

今日は比較的、快調なペース。と思ったのは勘違いだった。中山選手(元ダイエー)に勝ったので調子に乗っていたけど、意外にタイムが悪いことに気がつく。最後の方はかなり無理して飛ばしたつもりだったけど、それでもペースは落ちていき、じいちゃんばあちゃん軍団はもとより、ゴール近くになって、巨大な頭の牛男、馬男コンビも抜かれてしまう。
さらに大声で「ビールっ、ビールっ」とわめきながら走っていくビール腹のおっちゃんにまで抜かれてしまう。「早くゴールして、ビールを飲もう!」なんてわめいている。こんなおっちゃんにまで抜かれるなんて、とても情けない。ところが、しばらく行くと、さっきのビールおっちゃんが歩いている。ビールはあきらめたんかいな、って思いながら抜くと、なんと既にビールを飲んでいる。
(おじ)「我慢できんようになったから自動販売機で買うてしもた」
それくらい我慢せんかいっ!

僕も頭の中がビールになりながら、なんとかゴールすると、10kmコースで圧勝したフラメンコ明子や、久々のマラソンで力走した笹谷選手らが迎えてくれる。しかし、まずは、そうめんそうめん。小豆島のマラソンではそうめんが無いと始まらない。冷たいそうめんを空きっ腹にズズズイッと流し込む。満腹でヨタつきながらみんなの所へ戻る。
(幹事長)「中山は帰ってきた?」
(明子)「中山さんも宮武さんもF川さんも帰ってこないんですよ」
いくらなんでも遅いなあ。みんなが不安げに待っていると、2時間半頃にやっとこさ中山選手(元ダイエー)が帰ってきた。体調が最悪だった昨年よりも疲労の色が濃い。
(幹事長)「大丈夫かあ?」
(中山)「そ、そうめんは、まだありますか・・・?」

少し遅れて宮武選手も帰ってくる。さらに続いて藤塚さんも帰ってくる。しかし、それでも、まだF川が戻ってこない。「大丈夫かなあ。どこかで倒れてないかなあ」と、みんなが真剣に心配していると、制限時間ギリギリの2時間47分27秒という驚異的な記録で、やっとこさ帰ってきた。
(F川)「もう失うものは何も無いですよ」
(幹事長)「フルマラソン並みのタイムやなあ。好調時と1時間くらい差があるぞ」
(F川)「僕の闘魂を分かっていただけましたか」
(幹事長)「歩くのより、かろうじて早いっちゅうレベルやな」
(F川)「上り坂は全部歩きましたからね」
(中山)「僕も随分歩きましたよ」
(幹事長)「君たち、いつもしつこく指導してるけど、歩いたら完走とは言わんのぞ!」
(宮武)「えっ、幹事長は歩かんかったんですかあ?」
(幹事長)「まあ、何と言うか、あれくらいは歩いたうちには・・・」
(中山)「きっちり歩いとんやないですか!」


こいつらに象徴されるように、今年のペンギンズのタイムはいまいちでした。隅田御大も、私らよりはずっと早かったけど、例年より少し遅かった。笹谷選手、宮岡選手、光高選手はかろうじて2時間以内に帰ってきたけど、新婚太りの増田選手は大幅にタイムを落として、ついに2時間の大台に乗ってしまいました。
(幹事長)「お前、一昨年の僕の記録より悪いぞ」
(増田)「ま、妊婦が走ってるものと思って許してやってください」

その中にあって、大酒のみの竹葉選手だけは今年も圧倒的な早さを誇示して記録を更新し、皇帝ペンギンの名を欲しいままにしてました。
(竹葉)「そなな名前いらんですよ」
公言通り、1時間30分ちょっとの記録でした。あんまり早い奴は好かんなあ。ハーフを1時間30分以内で走る奴は除名するというペンギンズの規定を知らんのか。
竹葉選手の顔を見てビールの存在を思い出し、つい何も考えず飲んでしまい、あまりのまずさに喉が焼けました。カバンの中に入れていたのだけど、太陽の恵みでホットのビールになっていたのでした。

と言うことで、今年もなかなかしんどいレースでした。毎年出場していると、だんだん馴れて楽になっていくような気がしますが、みんな確実に齢を重ねていくため、毎年どんどん、しんどくなっていくペンギンズの連中でありました。




ところで、翌日、出勤した私を同僚が呼び止める。
(同僚)「幹事長、えらく日焼けしてますね」
(幹事長)「昨日オリーブマラソンに出ましたからね」
(同僚)「それって、新聞に出てましたよ」

なに?そう言えば、一昨年は読売新聞の香川版にF川が走る姿が掲載されていたが。たしか地方面の片隅の小さい白黒写真だったけど。しかし、今回、同僚が見せてくれたのは、なーんと全国紙のスポーツ報知だった。
(幹事長)「うわっ、すごい。オリーブマラソンも全国レベルになったんかいな!」
彼がそのスポーツ報知を買ったのは、珍しく巨人が快勝して嬉しかったからですが、1面は巨人の記事なのは仕方ないとして、第3面の全面にオリーブマラソンの記事が掲載されているのです。しかも巨大なカラー写真を使って。しかし、その写真には数千人のランナーが映っている。
(幹事長)「こら、自分を捜し出すのは不可能やなあ」
「ウォーリー君を探せ」より遙かに難しい。そもそも映ってるかどうかも分からないし。
ん?しかし、待て。ここに映ってるのは自分と違うか?目立つ蛍光色の黄色いTシャツを着ていたのが勝因となり、あっさりと自分を発見してしまう。隣には地味な深緑のTシャツを着た中山選手(元ダイエー)もきっちり映っている。間違いない。やったーっ。NHKは見逃したけど、スポーツ紙に載ったのは証拠に残るぞ。
と言う訳で、私と中山選手(元ダイエー)は華々しく全国紙にデビューしたのでした。
F川)「他人が見ても分からんものは自慢になりませんよ」
(幹事長)「たかが地方版の片隅の白黒に載っただけの奴が、頭が高いぞ!」

全国デビューを果たした筆者と中山選手(元ダイエー)


〜おしまい〜




戦績のメニューへ