第5回 丸亀マラソン大会

〜 高橋尚子と走る讃岐路 〜


遂に、待ちに待った第5回丸亀マラソン大会2001年2月4日(日)開催されたぞ!

待ちに待ったのは、2週間前の国営讃岐まんのう公園リレーマラソン大会は、一応、21世紀の開幕レースではあったが、あくまでもレクリエーションとして動物チームで走ったものであり、この丸亀マラソンこそが、その名も高き四電ペンギンズの21世紀における記念すべき初レースと位置付けられるからである。
嘘である。
い、いや、嘘ではないが、待ちに待ったのは、そうだからじゃなくて、あの
シドニーオリンピックの金メダリスト高橋尚子オリンピック後の休養明け初レースとして参加したからであーる。
普通なら、なかなかあり得ない事である。だって相手はオリンピックの金メダリスト。そりゃ、当社でも新城薫選手くらいの実力があれば、オリンピック選手と同じレースで走るのも珍しくないだろうけど、僕らにとっては、こらよっぽどの事が無い限り、あり得ない話だ。

(ところで、本当は第5回なのに、プログラムでは、なんと、いつの間にか第55回香川・丸亀ハーフマラソン大会なんていう名前になっている。これは大嘘です。とんでもない大嘘です。第1回から参加している私が証明します。大嘘です。本当は、まだ、たった5回目です。主催者がなぜこなな大嘘を付くかと言えば、そら第5回というより第55回と言った方が伝統がある由緒正しいレースのように聞こえるからです。確かに陸上競技大会としては55回目です。でも、5年前まではハーフマラソン種目は無く、3kmとか5kmとか10kmとか20kmのコースがあったのです。参加者もすごく少ない、マイナーな大会だった。ほとんどが学校の陸上部の生徒が出るだけだった。はっきり言います。ハーフマラソンは無かった。それなのに、いつのまにか、さもハーフマラソンが55回も続いているような名前になっている。こなな大嘘を許していいのか!いいのだ。許すのだ。だって、参加している方も、なんだか由緒あるみたいだしぃ)

当日は朝早く高松を出て、我が故郷の丸亀へ向かう。会場はもちろん、立派すぎる丸亀陸上競技場。ここを走れるだけでも気持ちが良い。
タイガー杉原の案内によると、今年はみんなの集合場所を確保しているとのこと。それで探してみると、なるほど、すぐに見つかった。ブルーシートにデカデカと「四電ペンギンズ専用選手控え場所」なんて書いてある。すごいなあ。既に佐竹選手や光高選手が来ている。
(幹事長)「すごいなあ、このシート」
(佐竹)「実は、こななもんは敷くのを禁止されていたのだけど、無理を言って敷かせてもらったんですよ」
(幹事長)「えっ?じゃあ、周りにあるシートは?」
(佐竹)「あれは全部主催者が敷いたシートなんです」
なんと、強気なペンギンズは自分達だけの場所を確保したのであった。これもタイガー杉原と佐竹選手のご努力のたまものです。

そうこうしているうちに、続々とメンバーが集まる。いつもなら怠慢の固まりのようなペンギンズの一味も、今回は参加者が多かった。去年も
エントリーだけは12人もしていたのだが、なんと半分の6人が欠場したのだ。足の故障だった笹谷選手はやむを得ないとしても、大半は雨で寒そうだったから、なんていうふざけた理由だった。中でも竹葉選手は、なんと第1回から第4回まで連続で欠場している。それやったら最初からエントリーするな、と言いたいところだが、走る気が無いわけではないのだが、どうしても前日に酒を飲み過ぎて欠場してしまうのだ。ま、アル中だから仕方ないか。
で、今年もエントリーは13人もいる。このうち実際にどれだけ出てくるか楽しみだったが、なんと11人も出てきた。昨年に引き続いての出場は、私のほか、まずは若きエース佐竹選手、なぜ走っているのか分からない宮武選手、そして今だにペンギンズの名前で出るのを嫌がっている亀ちゃんである。
(幹事長)「佐竹くんは去年のタイムはどうやったっけ?」
(佐竹)「1時間33分でしたね」
(増田)「げげっ。あの雨の中を、そのタイムですか。もうすぐ除名ですね」
(幹事長)「確かに、今年はコンディションが良さそうだから、除名ラインの1時間30分を切るかもしれんなあ」
(笹谷)「亀山さんも出てるんですか」
(幹事長)「あいつはいつまでたっても素直にペンギンズに入らんなあ。
     今回も讃岐闘友会なんていう訳の分からん名前でエントリーしとる」
それから去年はサボったけど今年は出てきた選手が、遠く伊方から駆けつけてくれた鈴木先生、遠く橘湾から駆けつけてきた増田選手、体調万全の笹谷選手と鋭い目つきでガンを飛ばす光高選手、それから電力部の新人相原選手も初登場だ。相変わらず電力部は人材の宝庫やなあ。
(幹事長)「鈴木先生は相変わらず走りまくってますか?」
(鈴木)「いや、それが、レースに出るのは去年の春のオリーブマラソン以来なんや」
(幹事長)「ええっ!?かつては毎週のように出ていたのに」
(鈴木)「練習はたいてい毎日はやってるんやけどなあ」
(F川)「それで十分やないですか。僕らなんて月に1回くらいしか走ってないっすよ」
そしてそして、なんとあの4年連続サボりの竹葉選手が初めて登場した。
(笹谷)「昨晩は飲まなかったんですか?」
(竹葉)「いや、飲むのは止められんけど、高橋尚子と走るために無理して出てきたんや」
確かに、顔色はすぐれないようにも見える。しかし、ま、いつものことか。
そして、アメリカからの帰国第一戦である1月の満濃公園リレーマラソンで惨敗した
F川選手も来たぞー!
(増田)「やっぱり今日もど根性ガエルのTシャツですか?」
(F川)「これしか無いんやもん」
みなさんご存じの通り、F川選手は、年明け早々に帰国したばかりで、1月の満濃公園リレーマラソンでは、見るも無惨に惨敗した。よって、このレースも私の敵ではないはず。したがって、宮武選手をかわすことができれば、ペンギンズでブービーを免れる。
(幹事長)「宮武は体調はバッチリなん?」
(宮武)「バッチリですよ!体調が良すぎるんで、昨日はゴルフに行ってきましたよう」
(幹事長)「どひゃーっ!また出た。マラソン前日ゴルフかあ。なんでいつもマラソンの前はゴルフなんや」
(宮武)「もう今にも足がつりそうですね」
(幹事長)「若い頃はゴルフなんてスポーツとは思ってなかったけど、この歳になるとこたえるもんなあ。
     しかし、それにしても、わしはなんでお前がマラソンをやってるのか理解できん。
     どう見ても、走るなんていう辛く苦しいスポーツを好むような人間には見えないし、
     実際にも、マラソンそっちのけで遊んでばっかりやし」
しかし、こりゃあ、しめしめじゃ。これでF川と宮武には勝ったぞ。

一方、F川がしばらく渡米して不在の間に、ペンギンズのとりまとめキーマンとして、その地位を不動のものにしたタイガー杉原が、なんと直前になって風邪でダウンして欠場してしまった。なんと残念な。せっかく高橋尚子と走れる最初で最後のチャンスだったのにぃ。
それから、去年は老体にムチ打って雨の中を走って絶不調だった隅田大先生は、エントリーはしてましたが所用のため欠場となりました。しかし、大先生はありがたいアドバイスを送ってきてくれました。

昨年のレースは、雨と冷たさにやられ最悪のレースでした。
このときの経験から次の点に注意すること。
・シューズは底に通気穴のないものとすること。(私の場合、スタートの陸上競技場に立ったときから足底は冷たく重たくなっていた)
・ランニングシャツの上に防水の良くきいた薄目のウインドブレーカーを着ること。(長袖を着用したが、濡れてしまい重く冷たくなった)
・帽子を着用のこと。帽子には防水スプレーをかけておくこと。
・手袋も軍手のような木綿製でなく毛糸など撥水性の強いものとすること。木綿製で濡れて重たく冷たくなった。
・外気にさらす足にはたっぷりワセリンなどを塗っておくこと。
スピードのない方は特に寒さ対策に抜かりなく。

(幹事長)「なーるほど。すごいなあ。知らんかった事ばっかり。ワセリンって股ずれ防止のためかと思ってた」
(鈴木)「冬のレースは足にワセリンを塗りまくっとったら防寒になるんよ」
(幹事長)「そうだったんですかあ。ワセリンなんて使ったことないし。
     それから防水スプレーの帽子とか、シューズ、ランニングシャツ、手袋の防水対策とか、
     目から鱗が落ちるようですねえ。言われてみれば、どれももっともな事だけど、
     今まで何の疑問も抱かずに無防備だったなあ」
(増田)「マラソンも奥が深いですねえ」
徹底的に素人の集団のペンギンズであった。特にスピードの無い僕らにとっては、とっても貴重なアドバイスでした。
実は今年も雨の不安があった。前日までは天気は良かったのだが、当日の天気予報は曇り後雨。取りあえず、アドバイスに従ってウィンドブレーカー等を準備して出かける。レース前はまだ降りそうもないが、レースが終わるまで雨が降らなければいいのだが。

スタート時は招待選手らが前列に並び、ペンギンズ達は後ろの方からスタート

今年は雨が降ってないので去年よりはずっとコンディションは良いが、外で待っていると寒い。室内の控え所もあるのだが、混んでいる。
(幹事長)「寒いなあ。じっとしとったら風邪引いてしまいそう」
(鈴木)「何を着ようか迷うなあ」

迷いながらも、やはりプロの鈴木先生は軽やかなランニングシャツにランニングパンツになった。でも、メチャメチャ寒そう。笹谷選手や竹葉選手も同じような寒そうなスタイル。でも僕はTシャツの上に長袖のシャツ。光高選手は長いトレーニングパンツで走ろうとしている。
(幹事長)「早い人はええけど、僕らみたいに遅いランナーは時間が長いから、やっぱり暖かい格好せんとね」

ようやくスタートの時間が近づいてくる。例によってタイムの早い人から順番に並んでいく。しかし、このレースは制限時間が割と厳しい。去年までは2時間が制限時間だった。早い人なら何の問題もないが、我々にはかなり危ないラインだ。実際、去年は雨でコンディションが悪かったため、私も宮武選手も恥ずかしながら制限時間をオーバーしてしまったのだ。
(宮武)「でも、今年はなんでか分かりませんが、制限時間が2時間10分になってますよ」
(幹事長)「ほんまや。しかし、たった10分延長して、どんな意味があるんやろ」
(宮武)「ものすごく意味がありますよ。この10分は大きいですよ」
(幹事長)「そら、わしらにとっては大きな10分やけど、主催者側としては、どういう意味があるんやろ」
(宮武)「とにかく、これなら1km6分のペースでいけますぜ」

ふむ。なるほど。1km6分となると、だいぶ楽やな。
いやいや、しかし、そななことで油断してはいけない。このレースは坂がほとんど無いのだ。ペンギンズのメインイベントの中では、塩江マラソンは極端だとしても、オリーブマラソンにしたってかなり坂がある。坂が無い丸亀マラソンは、雨や風さえ無ければ好タイムが期待できるレースなのだ。しかも、全般的にペースが速いので緊張感もある。制限時間など気にせず、気合いを入れて自己ベストを狙わなければ。

(幹事長)「それにしても、最初だけでも全力疾走して高橋尚子に着いていこうという勇気ある者はおらんのか?」
(笹谷)「そら無理ですよ。潰れてしまいますよ」
(幹事長)「毎年あるレースなんやから、潰れても惜しくもないやろ。それより高橋尚子と走れるのはこれで最後やぞ」
(増田)「最初だけでも着いていくのは難しいのとちゃいますか?」
やっぱり、難しいかなあ。最初の1kmくらいはなんとかなると思うんやけどなあ。

緊張感を紛らわすかのように談笑するスタート前の高橋尚子と筆者

さて、競技場内のスタート地点に移動すると、意外に風がある。
(幹事長)「結構、風があるなあ」
(佐竹)「でも、例年なら北西からの北風で、帰りが向かい風になって苦労しますが、

     今年は低気圧のおかげで風向きが逆なので、前半が向かい風です」
(幹事長)「なんと鋭い指摘!そうか、それじゃあ体力のある前半は風に耐えられるし、
     疲れが出てきた後半は追い風か。これは好記録が期待できるぞ」

なんて密かにほくそ笑んでいると、前の方から騒々しくなる。高橋尚子の登場らしい。
と、突然、整列していたランナー達がぐちゃぐちゃになって、高橋尚子を一目見ようと前に駆け出すランナーが続出。光高選手が強引に誘うので、僕も仕方なく、一緒に前方へ駆け出す。
(光高)「誰ですか。ひとのせいにしよんは?」
しかし、あまりの人の多さから、全然分からなかった。ま、走っていると、折り返しで見られるか。

さて、いよいよスタート。ドサクサに紛れて前方からスタートしたので、あんまり混雑することなく順調にスタートできた。その代わり、周りは早いランナーばっかりなので、どんどん抜かれていく。しかし、ここはペースを乱してはいけない。去年は雨にもかかわらず、前半、かなりのハイペースとなってしまい、後半、一気に落ち込んだから、今年はセーブしながら進む。
コースは、去年から日本陸連公認のマラソンコースになった。一昨年までは毎年のようにコースが意味不明なまでに微妙に変わる丸亀マラソンだったが、この公認コースは道路も広く、坂も少なく、本当に走りやすい。休養明けの高橋尚子には絶好の復帰レースだ。
以前は、前半はかなり無理して飛ばしていたため、最初からしんどかったが、最近はセーブするばかりなので、最初はかなり余裕を持って走っている。これがタイム悪化の根本原因だが、セーブして走ると精神的にも肉体的にも、とっても楽ちん。おまけに最近はすぐ歩くし。ま、しかし、このコースは坂も無いから歩くこともないが。
(宮武)「と言いながら、去年は二人して歩いたやないですか」

スタートするが、あまりにランナーが多くて、なかなかまともに走れない

と、突然、前方のランナーの列が崩れる。見ると一人のランナーが倒れている。どうしたんだ。接触事故か?よく見ると、なんと鈴木先生じゃないの。鈴木先生ともあろうものが、一体どうしたんだ。それにしても、僕のような遅いペースのランナーの直前を鈴木先生が走っているのも不可解。
(光高)「僕らがズルっこして前からスタートしたからですよ」
鈴木先生はなんとか立ち上がり走り始めたが、手や足を気にしている。怪我したのかなあ。大丈夫かなあ。でも、あっという間に見えなくなってしまった。

まずはウォーミングアップをかねて適当に走っていたら5km地点に。タイムを見ると、まあ、まずまず。悪くはない。ここから頑張っていけば、大会自己新記録更新も軽い。(それがどうした)
四国電力の旗を振る観客も多い。なんといっても四電ペンギンズが11人も出てるからな。て言うのはもちろん無関係で、四国電力公式陸上競技部から招待選手数名のほか、ほとんど全員が出ているようだ。
(宮武)「数でも負けてますね」
(幹事長)「歳では勝ってるけどな」

しかし、このような私にも、顔見知りの会社の人から声援が飛んだりする。嬉しいなあ。

順調に走り続けると、だんだん折り返しが近づいてくる。そろそろ先頭ランナーが帰ってくる頃だ。すると、反対側に先導車が見えてきた。まさか高橋尚子ではあるまい。高橋は高橋でも、たぶん、ハーフマラソン日本記録を持つ高橋健一だろう。見ると、やはり高橋健一と、もう一人、競り合いながら圧倒的な早さですれ違っていった。しばらく遅れて黒人ランナーも。メチャメチャ早いなあ。わしらが同じレースに走っている方が不思議。それからだいぶ遅れて集団が追っていく。しかし、女性ランナーの姿は見えない。だいぶしてから、ようやく女性のトップが見えてきた。どうやら永山育美らしい。寄り添うように、というか、風よけかペースメーカー的な男性ランナーが一緒に走っている。そなな過保護したら、いかんがな。
それにしても高橋尚子はなかなか現れない。監督は前日、1km4分程度のペース、すなわち21kmで1時間20分くらいのペースで走らせる、って言ってたので、それだとまだまだのはず。1km4分だなんて、我々からすれば考えられないペースだけど、シドニーで1km3分20秒ペースで走ったことを思うと、かなり遅い。
と思っていると、テレビ車が見えてきた。先頭集団でもないのにテレビが撮しているということは高橋尚子か?と思ったら、やはりそうだった。高橋尚子が男性ランナーを数名周りに従えて走ってくる。風よけ的な選手はいないので、不埒な観客が飛び出してくるのをガードするボディガードランナー達か。宮武情報どおり、ほとんど全員が四国電力の陸上競技部員だった。そうか。陸上部の選手も、一部の招待選手は真剣に走るが、その他はボディガード役か。僕なら、もちろん、金出してもええからボディガード役で走りたい。でも、ついていけんぜよ。
高橋尚子は、こななマイナーなレースの、しかもだいぶペースが遅いにも関わらず、顔が真剣だった。て言うか、かなり引きつっている。苦しそう。やはり4ヶ月のブランクは彼女にとっても大きいのか。
(笹谷)「だって練習を再開したのは、ほんの5日前だった言ってましたよ」
(幹事長)「せやけど、それから5日間走っとんのやろ?
     わしらなんか見てみい。今年になってから5日も走ってないやろ。
     F川にいたっては、この半年で、どうせ2回くらいしか走ってないやろ。
     それを考えたら、わしらの方がよっぽどすごいぞ」
(笹谷)「ペースが違いまんがな」
とにかく、必死の形相で走る高橋尚子に、自分が走るのも忘れて「がんばれーっ」と手を振りながら声援した私ですが、なんだか自分も元気になって、再び快調な(と自分では思う)ペースで走り出す。10km地点に来ると、さすがに少しだけタイムは落ちているが、それでもまだまだ快調なペースを維持している。ふむ。やはり自己ベストは更新できるか。

大接戦でトップを争う高橋尚子と筆者
(ワシントンポスト紙より)

ところでペンギンズの他のメンバーは、と言うと、今年も絶好調の大型新人佐竹選手は早々とすれ違う。さすがは石材店のせがれ。子供のころから石の下駄を履いて登校して鍛え上げられただけある。
それから当然のことながら笹谷選手も早々にすれ違う。満濃駅伝でも感心したが、ほんまに早いなあ。
ま、彼らは当然としても、なんと、あのF川選手まで僕よりはるかに早々と折り返してすれ違っていくのだ。げげーっ!一体、どしたんや!?絶対に今回は僕の敵ではないと思っていたのに。しかも、少し早いってのじゃなく、ものすごくリードされている。ほとんど挽回不可能だぞ?これは一体どうしたことか?
ボーゼンとしながら走っていると、かつてはかなり早かった増田選手がすぐ前を走っているのが分かる。おや?これまた、どうしたんだろう。体重も増え気味で、最近、タイムが落ち気味のようだ。もしかして、勝てるかも。

折り返して後半になると、案の定、風が追い風となり、すごく楽になる。少し足に疲れが出てきたが、風に押されて相変わらず快調に走っている(と自分では思う)。これは、ますます好タイムが期待できるぞ。15km地点を過ぎても、なかなかの好タイム。残り6kmを頑張れば、自己ベストじゃ。
なーんて甘い考えを抱き始めたとたん、去年と全く同じだけど、急に足が動かなくなり、一気にかなりペースダウン。いかん。やはり日頃の練習不足が出たか。そう言えば、以前は、このレースに備えて寒い中を真面目にトレーニングしていたのに、今年は1回しか練習してないもんなあ。
ただ、去年までと違って、今年は少し状況が違う。例年なら制限時間の2時間というのは、僕らにとってはかなりギリギリのペースであり、僕らより遅いランナーは少ない。ところが、今年は、まだ数kmも残っているのに、歩いているランナーがいっぱいいる。去年のような最悪のコンディションなら分かるが、今年はベストコンディションに近い。この状態で、この坂の無いコースで、まだ何kmも残して歩いているランナーって、一体なに?もしかして、シロウト?ハーフマラソンを走ったことがない奴が、高橋尚子が来るからという理由で参加しただけか?ペース配分が分からないから、周りにつられて前半はついついオーバーペースになってしまい、最後に力つきて歩いてしまっているのか。こういう連中がいっぱいいると、精神的にはとっても楽になり、優越感に浸りながら走る。だいぶペースも落ちてきたため、どうやら自己ベスト更新は絶望的。それでも2時間以内には楽にゴールできそう。

と、突然、一人のランナーが
「おっ、今回は動物と違うんかいっ?」
なんて叫びながら抜いていく。ななな、なんや、お前は?見ると、彼は盲目のランナーの伴走をしている。て言うことは、かなりの実力者。しかし、一体だれや?顔に見覚えはない。動物姿の事を知っているということは、満濃公園リレーマラソンで僕らを見た人だ。でも、今回は普通の格好をしているし、しかも仮に顔を覚えていたとしても、後ろから抜きながら分かるなんて、なぜだ?大勢のランナーの中から、一体どうやって僕を見つけたんだ?僕って、そんなに有名?いつの間にか、後ろ姿がすごく有名?それとも、いつも同じ(夏場にはパジャマにもなる)ランニングパンツをはいているから?僕の方は知らないのに、どうしてそないに親しそうに声を掛けるんだ?

そうこうしつつも、特に目標も無くなって余裕をもって競技場に入ると、なんと、ちょうど高橋尚子のインタビューをやっている。しかも僕らが走っているトラックの真横だ。またまた走るのも忘れてそっちに注目してしまう。早々とゴールしてスタンドから見ていた佐竹選手が
(佐竹)「まつおかさあん。あと少しですよう」
なんて言われて慌てて最後の1周を走り終えると、結構、2時間ギリギリだった。あぶないあぶない。

激戦のあと、大観衆に向かって仲良く手を振る高橋尚子と筆者
(シチュエーション的には一番不自然な場面ですが、コラージュ技術的にはこの写真が一番自然にできてますね)

ゴールして、まずは、うどんを食べに走る。選手には、うどん券が1枚づつ配られているが、去年は雨で体が冷え切り、現金で追加してうどんを3杯も食べた。ところが今年は、高橋尚子効果で、ランナーも観客もすごい人だったので、うどんは現金では買えず、券の一人1杯に制限されてしまう。ブツブツ文句言いながら食べていたら、
(宮武)「うどんが無くなってしもたあ」
(幹事長)「な、なんやて?券があっても食べられんのか?」
(増田)「もう全然無いんですよ」
なんとかーっ!券があっても食べられないなんて、おかしいやんか。どうせ、最初のうちは、券が無くても現金で売っていたに違いない。それで残り少なくなって慌てて制限したけど遅かったという訳やな。ちょっとひどいなあ。
(幹事長)「でも、割と早かったんとちゃうか?」
(宮武)「ふっふっふ。制限時間をギリギリでクリアしましたよう」

なんと宮武選手は制限時間を僅か4秒ですり抜けて2時間9分56秒のタイムで堂々とゴールしたのだった。
(幹事長)「それって、メチャメチャすごいけど、去年のタイムとあんまり変わってないぞ」
(宮武)「へえ。去年は雨に、今年はゴルフにやられましたね」


(幹事長)「そうそう、鈴木さん、大丈夫でしたか?」
(鈴木)「見てたんか?ひどい目にあったわ」
(幹事長)「どうしたんですか?接触ですか?」
(鈴木)「混雑して分からないままに歩道に乗り上げてしまってバランスを崩したんや」
(増田)「ええっ?転倒したんですか?怪我は無かったんですか?」
(鈴木)「かなりひどい怪我やなあ。手も足も内出血して腫れているわ」
(増田)「よう走れましたねえ」
(鈴木)「自分でも感心したわ。人間、やる気になれば走れるもんやなあ」

確かに。それだけ怪我して僕よりもずっと早いんだもんなあ。
それから佐竹選手はやっぱり早かった。
(佐竹)「1時間30分ちょっとでした」
(増田)「除名ギリギリでしたね。タイム調整したな?」
(佐竹)「後ろの方からスタートしたら、ゴール前の混雑でだいぶタイムロスしましたから」

竹葉選手も相変わらず早かったけど、それでも皇帝ペンギンの座はすっかり新鋭佐竹選手に奪われてしまったなあ。
さらに笹谷選手も早かった。亀ちゃんも早かった。
(増田)「ペンギンズに1km5分以内で走る選手がこんなにいるなんて、信じられませんね」
そういう増田選手は、以前と比べるとかなり遅くなっている。
(幹事長)「かつての僕やったら勝っていたなあ」
(増田)「お互い様やないですか」
僕は、さらに光高選手にも破れ、ついでに新人の相原選手も負けたけど、ま、しょうがないか。
(F川)「誰か忘れてませんか?」
(幹事長)「おお、そうや。すっかり忘れとった。お前、めちゃめちゃ早かったなあ。どしたんや」
(F川)「それが後半バテまして、情けないタイムに」
なんと前半あんなにハイペースだったF川は、いつのまにか脱落して、10分延長した制限時間にかろうじて助けられてゴールしたのだった。やはり、まだまだ甘いのう。

総括すれば、レースの後から雨が降り出したが、レース中は近年まれにみる絶好のコンディションだったにもかかわらず、タイムがいまいちだったのは個人的には残念だった。これは練習不足のツケですな。来年は心を入れ替えて頑張ろう。
しかし、高橋尚子効果で、普段レースに出たこともないような人がたくさん参加したおかげで、去年は後ろにほとんど人がいなかったのに、今年は僕の後ろに、まだ200人くらい走っていたぞ。これは気持ちが良い。やっぱり、他人の不幸は自分のしあわせ。


ちなみに、高橋尚子は予定よりだいぶ早い1時間12分40秒だった。女子トップの永山育美よりは3分以上遅れたが、まずまずのタイムですね。
それから、ペンギンズとは無関係の関係ですが、新城薫選手は高橋尚子よりも早かった。当たり前だけど、やっぱりすごいなあ。


〜おしまい〜




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