ある日、モリオンが一人で見回りをしていた。
本当は二人でしなければならないのだが、一緒に見回りをするはずのもう一人が現れないので仕方なかった…
「…全くあの男は、どこで何をしているのか…」
モリオンがいない相手に文句を言いながらため息をついていると、後ろから聴きなれた声が聞こえて来た…
「あなたー、今日も大変そうね」
モリオンが振り返るとそこにいたのは、彼の妻のラリマーだった。
「なんだ、ラリマーか… 仕事中にやたらと話しかけるなといつも…」
「そんなことより、今日は差し入れを持ってきたわ」
そう言ってラリマーが取り出したのはリンゴだった。
色もきれいな赤色でとてもおいしそうだ。
「助かる、ちょうどのどが渇いてきた所だった」
「そう? 喜んでくれると嬉しいわ、じゃ今から皮をむいて食べやすい大きさに切るからちょっと待っててね」
ラリマーはそう言ってナイフを取り出しリンゴの皮をむき始めた。
「それにしても、ここでおまえに再会できるとはな…」
「ええ、私もあなたに会えて嬉しかったわ」
「子供達には悪い事をしてしまったな…」
「ええ…あの子達は言わないけど、きっとつらい思いをしていたと思うわ…」
「ああ、だが過ぎた事はどうにもならない、これからどうやって償って行くかだ」
「…今更私達にできる事なんてあるのかしら?」
「さあな、だが何もしないよりは何かをした方がいいだろう」
「そうね…リンゴきれたわよ」
「では頂こう」
モリオンがリンゴに手を伸ばそうとすると、ラリマーは何を思ったかそれを引っ込めて自分の手に取った。
「何を…」
「はい、あーん」
「なっ…!?」
ラリマーはモリオンの口元にリンゴを持ってきている。
「どうしたの? あーんって口をあけてくれなきゃ食べさせてあげられないじゃない」
「…………あーん」
モリオンがラリマーにリンゴを食べさせてもらった。
「どう? 甘くておいしいでしょ?」
「ああ、そうだな…」
そう答えるモリオンの顔はリンゴのように真っ赤になっていた…
あとがき
11月22日がいい夫婦の日という事で書いてみました
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