白砂の港を出発したラピス達は約一月かけて万国の門に来ていた。

「ここが万国の門か…でっかいなー」

「…知らない人がいっぱいです…」

「砂漠の中心にある大きな街ですからねー」

アクアとマリンは万国の門の大きさに息をのんだ。

「…あの、この後どうするのですか」

「そうですねー、とりあえずこの街で数日かけて支度を調えて
 連絡が途切れる直前にラズリ様がいた場所に向かう事になるかと…」

「ふーん、それで姉貴が最後に連絡してきたのはどこなんだ?」

三人が物珍しげに辺りを見回している中一人静かだったラピスが地図を取り出して指さした…

「…ここ」

そこは砂漠の南西に位置する千夜の宴だった。

「…まだ半分位か気が遠くなるな…」

「これでも、かなり急いでる方なんだけど…」

「あれ? もしかシてラピスさんでスか?」

突然どこかで聞いた事があるような口調で話しかけられてラピスが振り向くと…

「サウサン?」

そこにいたのはかつて同じ隊商で旅をしていたサウサンだった。

「はい、しばラく見なイ間に大きくナりましたね」

その姿は十年前から変わってなく、話し方も相変らずだ。

「もしかしてこいつが幻の花から生まれたって言ってたサウサンってやつか?」

「想像していたのと違います…もっと神秘的な方だと…」

アクアとマリンは話に聞いて思い描いていたのと本人との違いに戸惑っていた…

「でもなんでコんな所にいるンですか? 確カ白砂の港と言う所ニいるはずだとラズリさンが…」

「ちょっと待って、今なんて言った?」

「え、ラズリサんが…」

「ラズリに会ったのいつどこで?」

とんでもない所から手がかりが出てきてラピスは興奮を隠しきれずサウサンに詰め寄った。

「えっと…少し前になんトかの爪で会いまシた」

「…多分三賢人の爪の事だね、それでそのときのラズリの様子はどうだった?」

「どうと言われテも…昔と変わラず元気ソうでした、一緒にいたヤシュムさんも変ワらず静かでシた」

「それでどこに行くとか聞いてないの」

「それは…そういエば北ニ向かう隊商を探してましタ…さっキからどうしたンですかラピスさん怖いでス」

「え…ごめん…でも参考になったありがとう」

ラピスは怖いと言われて我に返ったのか少し下がった…

「オ役に立てたナらよかったです。でもラピスさん昔とだいぶ変わりマしたね驚きました」

「そう、もしかして背が伸びた事とか?」

ラピスが何か期待を込めて聞いてみると

「違イます、ラピスさんのこと男の子だと思っていタんですけど女の子だったんデすね。
 ラズリさんにお兄チゃんと呼ばレていたからずッと勘違いしてました、ごめんなさい」

「兄貴…気持ちはなんとなく分かるけど……ドンマイ」

「兄様…お気を確かに…」

「サウサン様、ラピス様は女性に見えるかもしれませんがれっきとした男性で…」

アクアとマリンは落ち込むラピスを必死に励ましバリーゥはサウサンに説明をしてなんとか理解させていた。



数分後ようやくラピスが復活してしばらく雑談を続けた…

「久しぶりに話セて楽しかっタです、じゃあマたどこかで会いましョう」

「ちょっと待って、サウサンはこれからどうするの?」

「そウですね…しばらクこの街で過ごしテから氷の町ニ遊びに行こうト思ってます」

サウサンはそう言い残して去って行き、その姿はすぐに人混みに紛れて見えなくなった…

「で、これからどうするんだ?」

「サウサンの話だとラズリは三賢人の爪から北に向かったらしいから」

「三賢人の爪というとここから南西の方角にありますねー」

「それなら…西ですか?」

「そうだね、とりあえず西に向かってラズリの情報を探そう」

「ちょっと待ってください…ここから西で一番近くにあるのは黒ヒゲの町ですね」

バリーゥは万国の門から西南西にある町を指さした。

「さっきよりずっと近くだな」

「…」

「兄様…どうかしましたか」

「…え? …何でもないよそれより泊まる宿を探そうか」

そう言って歩き出すラピスをマリンは不安げに見つめていた…


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