ここは門前町にあるとある小さな舞台、今日ここでラズリとリズクが舞台に出る為に舞台裏で準備していた…
するとラピスが二人を呼びに来た。
「二人とも調子はどう? お客さん意外と集まってるよ、カーディルさんたちも来てたよ」
「あのっ…さっきから手の震えが止まらなくて…」
「リズク…大丈夫?」
リズクは手どころか全身が震えていた…
「リズくん落ち着いて、リズくんなら大丈夫だよ。だって三日間一生懸命練習してきたし、昨日大神殿で祈ったし!」
ラズリはいつもと変わらず自信満々だ。
「それは…そうかもしれないですけど…」
「リズくんは心配性だね、わたしがついてるんだから大船に乗ったつもりでいればいいんだよ!
 それともこのわたしの事が信じられないって言うの?」
「そんな事…ないです…」
「じゃあ、もう安心だね! じゃあ行こう!」
ラズリはリズクの手を引いて舞台に向かって行った。
後に残ったラピスは二人の後ろ姿を心配そうに眺めていた…
(あの二人本当に大丈夫かな…この三日間練習してたけど…リズクは自信なさそうだったし…ラズリは調子に乗り過ぎだったし…
 もし失敗したらどうなるのかな…ラズリはなんとかなりそうだけど…リズクはもしかしたら落ちこんで自信をなくして再起不能になっちゃうかも…)
ラピスが異常なくらい最悪な予想をしてため息をついていると…
「ラピス、ため息なんかついてどしたん?」
「なにか…心配…な事が…あるの?」
「…ザビエラと叔母さん!? なんでこんなとこにいるの!?」
いつの間にかザビエラとヤシュムが入りこんでいた…
「ラズリン親分が舞台に出ると聞いて来たんじゃが…ここどこじゃ?」
「つまり迷子になったんだね…」
ザビエラとヤシュムは素直に頷いた。
「私は…ザビエラに…ついてきたの…星が…着いて…行ったら…近くで…歌が聴ける…って言ってたから…」
「…まあ、間違っては無いけど…もう時間もないしここで聴いていっていいよ」
「わーい、ありがとう!」
「さすが…姉様の…子供…」
「げに、ラピスは何でため息なんかついとったん?」
「多分…ラズリと…リズクが…失敗…しないか…心配してる…って星が…言ってる…」
「何でわかるの?」
ヤシュムに図星をつかれラピスは動揺している…
「ラズリン親分たちなら、しゃーなーよ」
「星も…そう言ってる…」
「何で…そんな事が言えるの?」
「それは、ラズリン親分とラズリン親分が見込んだリズクだからじゃ!」
「…ああそう…」
「静かに…もう…歌が…始まる」
そして、ラズリとリズクの舞台が始まった…
ラピスは心配そうにザビエラは楽しそうにヤシュムは良く分からない様子で聴き始めた。




しばらくして舞台が終わりラズリは舞台裏に戻ってきて休んでいた…
「お疲れ様」
「これくらいの舞台わたしにとってはなんて事無い…」
「こんなに汗かいといて何言ってんの…こんなのがお客さんに気付かれてたらみっともなかったよ」
ラピスは呆れながらラズリの顔の汗を拭いてあげた。
「まあ、気付かれずにすんだみたいだし、お客さんの反応も良かったし舞台は成功したんじゃないの?」
「そうだね…でもこんなちっさい舞台でちっとも嬉しくないよ」
そう言いながらも顔は笑っていた…
「ちっさい楽士と組んだちっさい詩人がそんな偉そうなことを言うのは百年早いよ」
「身長は関係ないでしょ! それにお兄ちゃんだってちっさいくせに!!」
「はいはい…足りないのは身長だけじゃないんだけどね…そういえばリズクは?」
ラピスはリズクが見当たらない事に気付いて辺りを見回した。
「リズくんならあそこでカーディルたちに囲まれてるよ」
ラズリが指差す方を見るとリズクがカーディルとイジュラールとマルヤムと何か話していた…
何を話しているかは聞こえないがラピスたちには楽しそうに見えた…
「ちゃんと挨拶してきた?」
「うん、それからリズくんをわたし専属の楽士にして砂漠中を歌って回るって言…あうっ!」
ラピスはラズリの頭を軽くはたいた。
「何、自分勝手な事言ってるの!?」
「え〜、べつにいいでしょ」
「いいわけないでしょ!!」
ラピスに怒鳴られラズリは急に静かになった…
「…ところで、お兄ちゃん…アハト兄ちゃんって今頃どこにいるのかな…」
「さあ…でも急にどうしたの?」
「リズくんたちを見てたらなんとなく…」
どうやらラズリはリズク達の様子を見ていて師匠のアハトを思い出したらしい…
「…アハト兄さんならきっとどこかで元気にしてるよ」
「そうかな…」
「そうだよ」
ラピスとラズリがしんみりしていると突然後ろから誰かに抱きつかれた。
「お母さん! それにお父さんも! 来てくれてたの?」
「当たり前じゃない、ラズリちゃんが出る舞台を見逃す訳ないじゃない!」
ラリマーはラピスたちを抱きしめ思いっきり頬ずりをしている…
「もういいから離してよ!」
「えーべつにいいじゃない」
「…少しは加減しろ」
「あなたまでそんな事言うの?」
しんみりした雰囲気はラリマーによってぶち壊された…


その頃、ザビエラとヤシュムは隊商宿に向かっていた…
「のー、ヤシュムわしらももう少しあそこにおりたかったんじゃが…」
「星が…邪魔しちゃ…いけないって…言ってる…から…」
「それじゃあ、仕方ないのー」
ザビエラとヤシュムはこの後迷子になったらしく、
なんとか隊商宿に着いた頃にはすでにラズリ達が先に隊商宿に帰っていた…




あとがき
凄く遅くなりましたが舞台の話です。
どんな舞台だったかは書き表せなかったので勝手に想像して下さい。
リズクさん、カーディルさん、イジュラールさん、マルヤムさん(一磋さん)
ザビエラさん(藤乃蓮花さん)お借りしました。


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