隊商宿の休憩室でファリドがいつも通り商売しながらお話集めをしていると…
「ねえ、…ファリドさん、何かゲームを売って…くれませんか?」
「おや? 君は確か…」
「ラピスです。この前ゲームを安く売ってくれるって言って…ましたよね?」
ラピスがやって来た、だがどこか様子がおかしい…
「ああ、そう言えばそんな約束をしていたね。でも…君だったかな?」
「…! な、なにいってるの? この前約束してくれたでしょ?」
「…そうだったね、じゃあここにゲームがいくつかある、この中から好きな物を一つ選ぶといい、
 君が選んだゲームを安くしてあげよう」
ファリドは何かに気付いたようだが、気にする様子もなく商品をラピスの前に並べた。
「えーとね…じゃあこれを…」
ラピスがゲームを手に取ろうとすると、背後から誰かが来た…
「あら、ラズリちゃん買い物中かしら?」
来たのはラリマーだった…だがラピスのことをラズリと呼んでいる…
「な、何言ってるの? わ…ぼくはラピスだよ」
「ラズリちゃんこそ何言ってるのかしら? よく見るとラピスちゃんの服を着てるけど…」
「な、何言ってるのかよく分かんないなー、取りあえず向こうで話そうよ」
ラピスはかなり焦った様子でラリマーを押してどこかに行ってしまった…



数十分後ラピスが息を切らせながら戻って来た。
「ごめんなさい、ちょっと用事があって…それで、さっき買おうとした…」
「ああ、あれならついさっき入れ違いに来た他のお客さんが買って行ったよ」
ラピスが並んでいる商品を見ると、確かに買おうとしていたゲームが無くなっていた…
「え!? 同じのは無いの?」
「残念ながらもう品切れだ、すまないね」
「そう…じゃあ、今日はもういいや…」
ラピスはがっかりして帰っていった…ファリドはそれをどこかにこやかな様子で見送っていた…



ラピスが自分の部屋に戻るとそこにはどういう訳かラピスがもう一人いた…?
「…ラズリ、ぼくの服を着てどこに行ってたの?」
「…え? えっとそれはその…色々あって…」
そう、さっきまでファリドからゲームを買おうとしていたラピスは実はラズリだった…
ラズリはどうしてもゲームが欲しくて、ラピスの服を着てラピスのふりをしていたらしい。
「…ふーん、色々ね…まさかぼくのふりをしてファリドさんのとこに行ってないよね?」
「な、何言ってるの? 何でわたしがそんな事しなきゃいけないの?」
ラズリは何とかごまかそうとしているが目をラピスからそらしているので、嘘をついているのはバレバレだった…
「どうなの? 本当の事言わないと怒るよ」
「えーと…その…ごめんなさい!」
ラズリはラピスに迫られてすべて正直に話した…
「やっぱり…どうせそんな事だと思ってたけど…」
「うう…」
呆れかえるラピスにラズリは何も言い返せない…
「…もうこんなことしちゃじゃだめだからね」
ラピスはそう言って黙ってしまった。
「………え? もう終わり? 怒らないの?」
「…正直に言ったら怒らないって言ったでしょ? それともまだ何か隠してるの?」
「もう何も隠してないよ!」
ラズリは必死に首を横に振った。
「それならいいんだけど… ところで、さっきゲームを買ったんだけど一緒にやらない?」
ラピスがそう言って取り出したのは、さっきラズリが買い損ねたゲームだった…




あとがき
ファリドさん(あさなぎあやさん)お借りしました。
ラズリは気付いていませんが、ファリドさんには全てばれていると思います。


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