「…という訳で、ランプを売ってほしいの」
ラズリは今隊商宿の一室でランプを取り扱っている商人と交渉をしようとしていた…
「そんなこと言っても、危ない所に行くって言ってる子に売るわけにはいかないわ」
しかし、ランプ商人のマルヤムは交渉には応じてくれないようだ。
「大体ね、一人で遺跡に行って何をするって言うのかしら?」
どうやらラズリは遺跡に行くために明かりに使うランプを買いに来たようだ。
「もちろん、宝探しに決まってるよ! 遺跡の奥にある宝を探しだしてくるんだ!」
ラズリのこの一言にマルヤムは表情が少し固まった…
「ラズリちゃんだったわね…あなた自分が何言っているのか分かっているのかしら?」
「え?」
「遺跡の奥にある物を盗んでもいいって思ってるの?」
「でも、もう誰も住んでいないんだし…」
「だからって、盗んでもいい理由にはならないわ。あなたみたいなかわいい子にはそんな事してほしくないの」
マルヤムはラズリの手をとって、笑顔のまま話を進めた。
「…うん、分かった、今回は諦めるよ」
「そう、それがいいわ」
ラズリはマルヤムの言葉に何か感じたらしく遺跡探検を諦めたようだ…
「すみません、マルヤムさんいますか?」
ドアが開き褐色の肌の男の子が入ってきた。
「あら、リズくん、いらっしゃい」
「えっと、そっちにいる子は…」
「わたし? わたしはラズリだよ。こう見えても詩人なんだよ。あんたは?」
ラズリは男の子の言葉を遮るように自己紹介し、男の子の名前を聞いた。
「え、えっと…ぼくはリズクといいます…あの…見習いをやっています」
「ふーん…ねえ、わたしもリズくんって呼んでもいい?」
「は、はい、いいですよ」
リズクの返事になぜかラズリは満足そうな笑顔になった。
「じゃあ、リズくん、わたしの子分にならない?」
ラズリのその言葉でリズクもマルヤムも固まってしまった…
「え、あの、すみません…ぼくにはもうおやびんさまがいるので…ラズリさんの子分にはなれません」
ラズリは断られるとは思っていなかったらしく、一瞬キョトンとしたかと思ったが…
「…気に入った! 子分がだめなら友達にしてあげる」
もはやラズリの思考はだれにも理解できなかった…
「それなら…いいですよ」
「やったー、リズくんって今は見習いなんだよね、ってことは、将来何かに転職するの?」
ラズリは大喜びでリズクに質問を始めた。
「えっと…楽士になりたいと思ってます」
「それじゃあ、楽器の演奏ができるの?」
「あっはい…でもまだ楽器を持っていません…いつかお金を溜めて買おうと思っているのですが…」
「…じゃあ、楽器が買えたらわたしと舞台に出ようよ。」
「え?でも…迷惑なんじゃ…」
ラズリは物怖じするリズクの肩を叩きながら、笑いながらこう言った。
「わたしの歌とリズくんの演奏があれば舞台は完璧だと思うんだ。それとも、わたしの人を見る目が間違ってるって言うの?」
なぜ、演奏を聴かないでそんな事が言えるのかはよく分からないが…
「い、いえ…そんな事は…」
「それじゃ、約束したからね」
「あっはい!」
いつの間にかリズクはラズリのペースに乗せられていた…
そんな二人をマルヤムはこっそりときめきながら眺めていた…
あとがき
話が最初と最後でずれてしまいました…遺跡の話を書くつもりだったんですが…
そしてラズリはなんか好き勝手やってしまいました…
マルヤムさんとリズク君(一磋さん)お借りしました。
リズク君はこれからラズリに振り回されるかもしれません…
『おやびんさま』のイルビーさん(かんとくさん)も呼び名だけお借りしました。
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