マリーへの隊商が解散する日が迫るある日モリオンはラリマーに呼び出され小さな天幕に来ていた。

「急にこんな所に呼び出してどうしたんだ?」

「…あなたに大切なお話があるの」

「…なんだ?」

普段のラリマーからは想像できない真剣な表情にモリオンの表情もまた真剣なものになった。

「…ねえ、アーキルちゃんのこと覚えてる?」

「ああ、あの頭の固い神官の事か確かおまえを追い出したのもあいつだったそうだな…」

「ええ…それでそのアーキルちゃんが今日私に会いに来たの。 『もう一度巫女になってほしい』って」

「なんだと! あいつ…自分から追い出しておいて…」

「それで、私はその話を受けようと思うの」

「なっ…おまえはあいつに何をされたのか分かっているのか?」

「ええ…でもあの子も必死に謝ってたし、夫と子供がいることも特別に認めるって言ってたし、

子供たちの為にはその方がいいかなって…」

「確かに赤子には隊商の旅は過酷なものかもしれないが…おまえに何かあったら…」

「その時はあなたが守ってくれるんでしょ?」

そう言って寄り添ってきたラリマーにモリオンは何も言えなかった…



その後モリオンは隊商宿に戻りラピスとラズリにこの事を説明した。

「…という訳で、私たちは隊商の解散後白砂の港にある神殿に向かうことにした」

「ちょっと待ってよ、それにはわたしたちもついていかなきゃだめなの?」

「…その判断はおまえたちに任せる…解散までに自分で考えて決めなさい」

モリオンはラズリの問いにそう答えて黙ってしまった…

「わたしは絶対いや! まだまだ旅を続けたい!」

「…そうか、それならそうするといいおまえの決めたことだ」

「…ぼくは…」

ラピスはラズリのように即決できずに悩んでいるようだ…

「あまり焦らなくてもいい、まだ時間はある」

「…うん」



その頃ラリマーはヤシュムと会っていた。

「…という訳なんだけど、ラズリちゃんは絶対についてきてくれないと思うの」

「…うん…星も…そう…言ってる…」

「それで、あなたにはラズリちゃんについて行ってもらいたいの」

「…姉様と…離れるのは…いや…」

「ヤシュムちゃん…」

「…でも…姉様の…お願いで…可愛い…姪の為…なら別…」

「…ありがとう、あなたは私の可愛い妹よ」

ラリマーはヤシュムを抱きしめた。

「…姉様…その代わり…解散まで…毎晩…添い寝…してほしい…」

「ええ、もちろんいいわよ」





そしてとうとう隊商は解散してマリーへは海の向こうへ旅立って行ってしまい、

ラリマーたちは神官たちが用意したラクダに乗って白砂の港へ向かった進んでいた。

「ラピスちゃん、来てくれるのは嬉しいけど、本当によかったの? 私たちに気を使ってるなら…」

「そんなことないよ、ぼくはただアクアとマリンがぼくとラズリと同じ目に

あわされないように見張らなきゃいけないからついてきただけだし」

「返す言葉がないな…」

「それに、ラズリにはもうぼくは必要ないし」

ラピスはそう言って砂漠の向こうを見つめた…



一方ラズリはナヴィード隊に参加して砂漠を歩いて移動していた。

すると誰か知り合いを見つけたらしくその人物にかけよった。

「ヘリヤー、また一緒だね」

「あらラズリ、あなたもこの隊商に入ってたの」

「うん、やっぱり一流の詩人になるにはまだまだ色んな所を見て回らなきゃいけないと思うんだ! ヘリヤはどうして?」

「わたしは…」

ヘリヤが何か言いかけたとき、その声をかき消すような大声とともに誰かがラズリに飛びついた。

「ラズリン親分ー!」

「ザビエラ!? ザビエラもこの隊商に入ってたんだ…というより急にどうしたの?」

「また一緒に旅ができるよーになると思うとうれしくてとつい…」

ヘリヤに起こしてもらって砂を払っているとそこにまた誰か来た…

「おまえらうるさいぞ、ってラズリかよ」

「あ、ザビエラとヘリヤも一緒だ」

「あ、アスランとアーレフそれにコウカブも!」

「ラズリちゃんがここにいるってことはラピス君もこの隊商にいるの?」

「いないよ、この隊商に入ったのはわたしだけだよ」

「はて、おかしいのぅ、さっきヤシュムを見かけたと思ったんじゃが…」

「何言ってるの、叔母さんがお母さんについて行かないわけないでしょ」

「でも、結構残ってるね」

「そういえば、アイスもこの隊商で斥候してるらしいよ」

「あ、知ってる、さっきルセアから聞いたよ、カマルも一緒だって」

…どうやらラズリの新しい旅はまた賑やかなものになりそうだ。


あとがき

ヘリヤさん(戸成さん)、ザビエラさんとアイスさん(藤乃蓮花さん)

アスランさんとアーレフさん(nasatoさん)、コウカブさん(和月みおさん)

ルセアさんとカマルさん(鶫さん)お借りしました。


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