ここは遺跡の町『幻都の骨』の市場

多くの観光客が呼び込みの声に誘われて買い物をしている中

一人の子供が小さな荷物を両手に持ってとぼとぼと歩いていた…

この子供の名前はラピス、一見女の子のようだがこれでも男の子だ。

彼には両親がいなく妹のラズリと二人で生活している

(どうしよう…これだけじゃ足りない…)

どうやら食べ物を買いに来たようだが思ったより少量しか買えなかったようだ…

ラピスはため息をつきつつ歩いていると一組の親子とすれ違った。

子供は今のラピスと同じぐらいだろうか、母親と手をつないで楽しそうに笑っている…

(どうして…)

ラピスはその親子を少しの間見つめていたが、すぐに家に向かって歩き出した。

(どうしてこんなにかなしいのかな…

 ぼくにはお父さんもお母さんもいないからかな…

 じゃあどうしてぼくにはおとうさんもおかあさんもいないのかな…

 …ぼくはいらない子だから? いらないからすてられたのかな…)

ラピスは家に帰るまでの間このようなことばかりが頭に浮かび

表情もどんどん暗くなっていきいつの間にか目から涙がこぼれていた…



ラピスがしばらく歩いていると家についた、

そしてラピスは戸の前に立って涙を拭いて息を整えてから開けると…

家の中が散らかっていて、まるで泥棒に入られたみたいになっていた…

「な、なにこれ…ラズリ! いるの!?」

家にいるはずの妹のラズリを呼ぶと、ほこりまみれになったラズリが出てきた。

「あ、お兄ちゃん…おかえりなさい」

「ただいま…ってそうじゃないでしょ! なんなのこれ何があったの!?」

「えっとね…」

ラズリの話によるとこれはラズリが家の掃除をしようとしたが、

逆に散らかってしまったらしい…

ラピスはラズリの話を聞いてため息をついた…

「…お兄ちゃん?」

「さっさとかたづけしよう」

「え? おこらないの?」

「うん、だってラズリはそうじしようとしてくれてたんでしょ、

 しっぱいしただけなのになんでおこらなきゃいけないの?

 まったくラズリはぼくがいなきゃだめなんだから」

そう言って片づけをするラピスにはさっきまでの暗い表情は完全に消えていた。


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