気がつくとそこに「私」はいた…
どこから来たという事もいつからいたというのもわからない、
私のすぐちかくでは水が地面からわきあがりどこかへと流れている…
ただぼんやりと空を眺めていた…
それから何日たったかも分からなくなった頃、一人の老人が私の近くを通りかかった。
その老人は私を品定めするようにじっと見ていたかと思えば私は抱えられて連れて行かれた。
連れて行かれた先は少し大きめの洞窟だった。
老人と私が中に入ると、あちこちに子供が何人かいるのが見えた。
皆何かに取りつかれたみたいにぶつぶつよく分からない事を呟いていた。
老人はそんな子供達には目もくれず、私を座らせ水が入った杯と何かの毛を渡し、よく分からない事を私に説明してきた。
私はよく分からないまま言われた通りにした、すると杯の中の水面にさっき見かけた子供たちの中にいた男の子が映った。
更に男の言う通りにすると、男の子は私の思った通りに動きだした。
老人はそれを見てニヤリと笑うと、今度は別の毛を渡してきた。
そしてこの男を消せと言った…
私はまた同じ様にした、そして水面には男が映りだされた。
そして、さっきと同じ要領で窓から飛び降りさせた…
水面が真っ赤に染まるのを確認した老人は不気味に笑いながら
これでまた金が入るとか言い拾い物をしたとかぶつぶつよく分からない事を言っていた…
その日から、私はハムサ(5)と呼ばれ命令されるままに人を消していった、人を消す度に老人は喜んだ。
そしてまたどこからか依頼を受けて私や他の子供に呪いで消すよう指示をしていた。
それから何日たったか何人消してきたか分からなくなってきた頃、
私がいつものように呪いをかけていると、隣で別の誰かに呪いをかけていた子供が突然苦しみ出した、
そしてすぐに全身から血を流して死んでしまった。
それに気付いた老人が歩いてきて、死体をゴミのようにつまみあげて捨ててくると言ってどこかに行ってしまった…
それからまた一人また一人と死んでいった。
死んだ理由は全身の骨を砕かれたことだったり、突然全身が炎に焼かれたりとバラバラだった。
そしてとうとう私とアシャラ(10)と呼ばれていた女の子以外みんな死んでしまった。
このアシャラというのは私よりだいぶ後に連れてこられた子供で、
老人が色々教えていたようだったが才能が無かったらしくずっと雑用ばかり命じられていた。
私はそんな事は気にも留めずに命じられる度に人を消し続けた。
そんなある日私たちは老人に大神殿と言う所に連れ出された。
なんでも次の標的は大物だから出来る限り近くで仕留めたいとか言ってたけど私にはどうでもよかった。
ボロボロの宿の一室でいつも通りに呪いをかけるように言われそれに従っていた。
だけどこの時はいつもと違った、突然体が動かなくなった、まるで全身が何かで縛られたかのように。
老人はその事に気付くと舌打ちしてアシャラを連れて逃げて行ってしまった。
しばらくたつと部屋にたくさんの人たちが押し掛けてきて私は動けないまま捕まってしまった。
それから何をされたかよく覚えてないけど私は牢屋に放り込まれた。
色んな人が私の所に聞いて色んな事を聞いてきたから私は全部答えた。
そんな事が何日か続いた後、私は大勢の人が集まっている所に縛られたまま引っ張り出された。
そこで何か難しい事を色々言われたけどなんとなく私を殺そうとしている事だけは分かった。
私もとうとう死ぬのかって考えてると、私の前に青い髪の女の人が立っていた…
私はこの時、その女の人がどこかで聞いたことがある女神だと思った。
(今にして思えばこれは運命の出会いだったに違いない)
そして、女の人は私に抱きつきながら周りの人たちに何か叫んでたけど、私は暖かったことしか覚えてない。
その後の事は私の知らない所で話が進んだみたいで私は地面の下にある翡翠の鏡っていう大きな湖に連れてこられた。
女の人が言うには私がこの湖の中で八十年過ごせば死ななくてもすむらしい。
そして
「あなたは名前も変えた方がいいわね、この地底湖から名前を取って『ヤシュム』(翡翠)と名乗りなさい。
そして…今日からあなたは『青海の巫女ラリマー』の妹よ、これからよろしくね」
って言われた。
どういう意味かしばらく理解できなかった。
そしてその意味を理解すると喜びで全身が震え、感動のあまり巫女様…じゃなくて姉様に抱きついた。
あとがき
過去話を書いてみたいと思って書いたのですが分かりにくい話になってしまいました。
と言う訳でいくつか補足を書いておきます。
・老人について
もともと悪名高い呪術師だったのですが呪い返しを受けて酷い目にあってから
適当に子供を連れてきて自分の代わりに呪いをかけさせています。
子供に対する情は全くなく名前も連れてきた順番に数字で呼んでいました。
・青い女の人について
ラリマーです、何でこんなに好き勝手出来るのかと言うと
偉い人の弱み(子供の頃の恥ずかしい失敗談等)を握っているからです。
ちなみに『青海の巫女』というのは当時のラリマーの良い方の呼び名です。
(この話と関係ありませんが悪い方は『駄目巫女』です。)
他にも分かりにくい所があったら連絡して下さい、補足を更に付け足します。
気が向いたら続きを書くかもしれません。
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