「ねえ、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だって、遊びに行くだけなんだから」
ラズリはラピスを連れて雪道を歩いていた…
「場所は分かってるの?」
「大丈夫って言ってるでしょ、あ、ほら、着いたよ」
ラピスとラズリが訪れたのは孤児院だった。
「じゃ、入ろうか」
「勝手に入るのはまずいよ」
「でも、誰も見当たらないよ」
ラピスとラズリが孤児院の出入り口で言い合っていると中から青年が出て来た。
「お前ら誰だ? 新しくうちの入って来た子供…というわけでもなさそうだが…」
「当たり前でしょ! わたしたちはクラウのうちに遊びに来ただけだよ!」
「なんだ、お前らクライズクラウの知り合いか?」
「そう言うあんたこそ誰なの?」
ラズリは態度が気にくわなかったらしく青年に食い付いた。
「俺か? 俺はクライズクラウの兄貴だよ」
「…あ、思い出した。隊商宿でリーンに抱きついて怯えさせて、ハーティムに怒られた情けないお兄さんのウージだ」
「なっ…お前らあれを見てたのか?」
「うん」
ウージがかっこわるい所を小さな子供に見られていた事を知って落ちこんでいると、
孤児院の奥の方から、聞いた事のある声が聞こえて来た。
「ウージ兄さん、誰か来てるのか? …お、坊主と嬢ちゃんじゃねえか、俺に何か用があって来たのか?」
声の主はクライズクラウだった、相変わらずの女性とは思えない口調と雰囲気で目の前にいるウージよりも男らしく見えた。
「あ、クラウだ、用は無いけど遊びに来たの」
「そうかよくここまで来たな」
「だって前に天幕で合った時に、機会があったらここの子たちに会ってくれって言ってたでしょ?」
「そういや、そんな事言ったっけな、まあ取りあえず中に入れよ」
「はーい」
「おじゃまします」
クライズクラウの後について建物の中に入るとラピスとラズリと同じ位の歳の子やそれより幼い子が何人かいた。

子供たちはラピスとラズリを見るなり駆け寄って来た。
「ねえ、姉ちゃんこの子たち誰? 姉ちゃんの知り合い?」
「ああ、こいつらはラピスとラズリといって、俺と同じ隊商に入ってる詩人だ」
クライズクラウが紹介すると珍しいのか次々とラピスとラズリの周りに子供が集まっていく…
「どこから来たの?」
「幻都の骨ってところからだよ」
「ねえ、この子の耳尖ってるよ」
「ちょっと…耳引っ張らないで…」
「二人って似てるけど双子の姉妹なの?」
「違うよ、ぼくの方が二歳年上のお兄さんだよ」
「お姉さんじゃないの?」
「ぼくは男の子だよ!」
「こんなにちっちゃいのに隊商に入れるの?」
「ち、ちっちゃくなんか無いよ」
「ちっちゃいよ、だってあたしより背が低いよ」
ラピスとラズリは子供たちに囲まれて質問攻めを受けている…
「向こうで一緒に遊ぼうよ」
「うん、遊ぼう!」
「ほら、お姉さんも一緒に行こうよ」
「お兄さんだよ!」
「どっちでもいいよ、早く行こうよ」
ラピスとラズリが連れられて行くのをクライズクラウは笑いながら眺めていた。

しばらく遊んでいるうちにラピスとラズリはすっかり子供たちに馴染んでいた。
「ねえ、さっきの歌また歌ってよ」
「いいよー、でもせっかくだから皆で歌おうよ」
「おーい、坊主と嬢ちゃんそろそろ隊商宿に戻らなくていいのか?」
外を見ると既に日が暮れて暗くなっていた…
「あ、もうこんな時間だ。帰らなきゃ」
「えーもう行っちゃうの?」
「もっと遊ぼうよー」
「坊主も嬢ちゃんもすっかり人気者だな」
ラピスとラズリは隊商宿に戻ろうとしたが、子供たちに引き留められて結局その日は戻れなかった。



その頃、隊商宿では…
「子供たちがいないようだが…」
「ラピスちゃんとラズリちゃんなら今は孤児院にいるわよ」
「な、なんだと!? おまえがそんな事をするとは思わなかった!!」
ちょっとした誤解で夫婦喧嘩が発生していた。




あとがき
ラズリがクライズクラウさんの実家に遊びに行きました。
夫婦喧嘩はすぐ治まるので気にしないで下さい。
クライズクラウさん(櫟 戦歌さん)お借りしました


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