ここは女神の花輪、この町には花がたくさん咲いているのどかなところだ。

その町はずれで人を集めやたらと張り切っているラズリの姿があった…

そんな中集められた人たちの中から声が聞こえて来た。

「ねえ、ラズリちゃんこんなに人を集めて何をするつもりなの?」

声の主はシャーリーだった。隣には弟のナサニエルもいる

「わたしたちで幻の花を探すんだよ」

「ええ、そうだったの?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「聞いてないよ!」

どうやらシャーリーは理由をよく聞かずにナサニエルについてきたらしい…

「見つかるかな、幻の花…きっと…綺麗なんだろうな…」

「そうね、きっとすごく大きくて輝いているわね」

エメルとシャハラザードはまだ見ぬ幻の花に思いを寄せている…

すると別の場所から元気な声が聞こえてきた。

「オイラ知ってる! マリーヘが言ってたやつだろ!」

「おれも聞いたけど、色も形も分からないのにどうやって探すんだ?」

ラーシルとアイスだ二人とも張り切っているようだ。

「あいつがそんなこと考えてる訳ないだろ、いつも思いつきだけで行動してるからな」

「アスランってば…そんな言い方しなくてもいいでしょ」

「ほんと、アスランっていつもそうなんだから」

そこにアスランが突っかかりアーレフとコウカブにとめられている…

そんなアスランたちを無視してマキがラズリに話しかけた。

「ところでなんでおれは呼ばれたんだ?」

「え? お母さんに手伝ってくれそうな人知らないって聞いたらマキを連れて行ってあげたらって言ってたから」

「…あんたのお母さんって確か…あいつか! 勝手な事言って…」

「仲良くしてあげなさいとも言われたよ」

「大きなお世話だ!」

「えー別にいいでしょー」

ラズリがマキをなだめているとラピスがやってきたがどこか様子がおかしい…

「ラズリ…また人を連れて来たよ…」

「あ、お兄ちゃん…顔が赤いよ?」

「…そんなことないよ…」

「私は別にあんたの手伝いなんてしたくなかったけど幻の花に興味があったから手伝ってあげるわ」

「ボクはなんか面白そうだったから着いて来たんだよ」

ラピスが連れて来たのはナワールとコランサイファだった。

「ナワールならきっと花の事も詳しいだろうからきっと力になってくれると思って…そしたらコランもいて…」

ラピスはしどろもどろになりながら説明しているが…

「へーナワールって花屋さんなんだ、じゃあきっと花の事もいろいろ知ってるんだよね」

「と、当然よ。わたしに任せておきなさい!」

ナワールは胸を張って答えた

「さすがですね!」

「幻の花もすぐ見つけられるね!」

シーリーンとラズリが尊敬のまなざしでナワールを見つめているが、

ナワールは心の中で頭を抱えていたことなど知るよしもなかった…

「ねー早く探しに行こうよ」

「それもそうだね。 みんなーそろそろ探しに行くよー」

ラズリたちはラピスを置いて幻の花を探しに向かって行ってしまった…

「…それでコランが一緒なのは…その…偶然一緒にいたからで…」

「…ラピス…ラズリさんたちもう行っちゃったよ…」

ラピスはナサニエルに言われるまでラズリたちがいなくなった事に気付かずに言い訳を続けていた…

「え? ナーザ…行っちゃったって…え?」

「…色々大変そうだね…」

ラピスは顔を真っ赤にしてそそくさとラズリたちを追いかけて行った…





その頃ラズリはラーシルとアイスと話していた…

「なあラズリ、幻の花ってどうやって見つけるんだ?」

「大丈夫だってちゃんと考えてあるから」

「でもどんな花かも分からないのにどうやって探すんだ?」

「それはね…ザビエラお願い」

「うむ、まかせろ!」

ラズリに呼ばれ、ザビエラは前に出て一本の枝を手に取り、それを地面に突き立て、手を離すと枝は倒れ…

「あっちの方じゃ!」

「分かった、じゃあっちに行こう!」

枝が倒れた方向で進行方向が決まってしまった…

「枝…で分かるんだね…」

エメルはその枝占いを素直に感心していた…

「ふざけるな!!」

「アスラン急にどうしたの?」

「そんなやり方があてになる訳ないだろ!」

「なんじゃと、わしの占いが信用できんというのか!」

「どこが信用できないって言うの!」

「全部信用できねえよ!」

アスランは顔を真っ赤にしてラズリに近づこうとしたがアーレフとコウカブに止められた…

「アスラン、落ち着いて!」

「腹が立つのは分かるけど、女の子に掴み掛るのは駄目だって!」

「うるさい! 離せ!」

「アスランはほっといてさっさと行こう」

「それもそうじゃな」

色々うるさいアスランを本当にほっといて先に進んでいくと大きな花畑に出た、大小様々な花が咲いていて、ここなら幻の花があってもおかしくなさそうだ。

「わぁ…きれいね。これだけあればきっと幻の花もありそうね」

「そうだね…でも…見つけられる…かな?」

「頑張れば見つかるわよ」

シャハラザードがエメルを励ましていると

「まったく、そんな調子で幻の花なんか見つけられるのか?」

「一生懸命探せばきっと見つけられるわよ」

「ふぅん…じゃおれはあっちの方を探してくる」

「分かった、じゃあ後でここに集まろうね」

「マキも…頑張って…ね」

マキはそっぽを向いてさっさと行ってしまった…

「という訳で、ここからはみんなで手分けして探そう」

「それもそうね。ナーザ、あたしたちは向こうに行くわよ」

「あ、おねーちゃん待ってよ」

「ふたりとも、早く行くわよ! あたしたちが最初に見つけるんだから!」

「分かったからあまり騒ぐな! 行くぞ、アーレフ」

「はーい」

「ワルはボクと探そうよ」

「しかたないわね」

「ぼくも一緒に…」

「ほらお兄ちゃん早く行こう」

「え、ちょっと待って…」

ラズリたちはいったんバラバラになってそれぞれ幻の花を探し始めた。





「なかなか見つからないね…」

「当たり前だよ…どんな花なのかも分からないんだから…はぁ…」

「さっきからため息ついてばかりでどうしたの?」

「ラズリには関係ない…」

ラピスはそう言ってまたため息をついた…

「コランと探しかったな…でも…もしコランより先に幻の花を見つけてプレゼントしたら…」

「何言ってるの?」

「何でもない!」

ラピスは顔を赤くしながら花探しを始めた。





しばらくしてラピスたちが花探しに疲れて休んでいるとラーシルとアイスがやってきた。

「おーい、ラズリ見つかったかー」

「ううん、見つからないよ。ラーシルとアイスの方は?」

「全然見つかんない」

「おれもあちこち探してみたけど駄目だった…」

「やっぱり普通に探してたんじゃ見つけられないんじゃないの…」

「普通に探しても駄目か…そうだ地のジンか水のジンならもしかしたら見つけられるかも」

「おおーさすがラズリ、頭いいなー」

ラーシルは意味も分からずに感心している。

「という訳で、アイス何か分からない?」

「…なんでおれ?」

「アイスって水のジンでしょ?」

「…」

「…」

「…おれ、火のジンなんだけど…」

「…えー!? アイスなのに!? 水のジンみたいな名前なのに!? スィニみたいに氷が出せるんじゃないの!?」

「そんな事おれに言われても…」

ラズリがアイスに詰め寄っているとどこからか楽器の音色が聞こえてきた…

「この音色は…もしかして…」





ラズリたちが音色の聞こえてきた方に来てみるとそこではリズクがバラーブを弾いていた。

「あれ? ラズリさん…」

「やっぱりリズくんだったんだ、バラーブの練習中だったの?」

「は、はい、少しでもうまく弾けるようになりたいので…」

「頑張ってるね、そういえばその服…前よりも楽士っぽくなってかっこよくなったね」

「えへへ、ありがとうございます。ところでラズリさんはなんでここに?」

「わたしは幻の花を探しに来たの。でもなかなか見つからなくて… そうだ、リズくんは

 地のジンでしょ? どこに幻の花がありそうとか何か感じない?」

「えっと、その、がんばってみます」

「うん、がんばって!」

リズクは何やら集中し始めた…

その時、どこからか大声が聞こえてきた。

「大変です!」

「リーン、どうしたの!?」

「ラズリちゃん、大変なんです! あれを見てください!」

シーリーンが指差す方を見ると、そこにはジンの女の子が飛んでいた…というより風に流されていた…

「あの子何で流されてんの!?」

「分かりません、花を探していてなんとなく空を見たらああなっていたんです」

「しょうがないな、わたしが助けてくる」

「ラズリが? ラーシルやアイスに任せた方が…」

「わたしが行くの!」

ラズリは飛んで女の子に近づいて女の子の手を掴んだ、そして…

一緒に流されていった。

「ラズリちゃーん!? …きゃあ!」

シーリーンはラズリを追いかけようとして思いっきり転んだ。

「急いで助けなきゃ…」

ラピスも飛ぼうとしたがシーリーンに止められた…

「駄目です! ラピスくんまで流されます!」

「でも…」

「おれたちが助けてくるよ。おれはラズリを助けるから、ラーシルはもう一人を頼むぞ」

「わかった」

アイスとラーシルはラズリと違って風に流される事無く、簡単にラズリたちを助けた。

「それでおまえは何で風に流されてたんだ」

「飛んでたら強い風がふいてきたの、そしたら流されたの」

「そうなのかー大変だったなー」

「うん、大変だった」

「風のジンなのに風に流されるなんて情けないね」

「…そういうラズリも流されたくせに…」

「こんな所で集まってなにやっとるん?」

女の子から話を聞いているといつの間にかザビエラがいた…

「ザビエラ! いつきたの!?」

「そうじゃな…シーリーンとラビーウを追いかけとったらいつの間にか見失ってしもうて、

今追いついてここにおる」

「ごめんなさい、うっかり置いてきちゃいました」

シーリーンはザビエラに必死に謝っている。

「そんなことより、ザビエラはこの子知ってるの?」

「うむ、じゅずつし仲間じゃ」

「同じ隊商の子だったんだ、じゃラビーウも今から一緒に幻の花探そうよ」

「いいよー」

ラビーウは元気よく手をあげて答えた。

「いいの!?」

「うん、面白そうだから」

こうしてまた一人ラズリの仲間が増えた。

「ところであの子は何やってるの?」

ラビーウが指差した方ではリズクが頭を抱えていた…

「リズク!? まだ頑張ってくれてたの、出来ないならむりしなくてもいいんだよ」

「役に立てなくてごめんなさい…」

「いいよ、もともとラズリの気まぐれな思いつきなんだから、全く気にしなくていいよ」

「ちょっとお兄ちゃんそれどういう事?」





それから結構長い間探してみたが一向に見つかる気配は無かった…

「ラズリ、そろそろ休もうよ」

「ええー、もう?」

「もうって…結構長い間探してるよ? それにもう誰かが見つけてるかもしれないし一回集まろうよ」

「うーん…それもそうだね、それじゃみんなを集めるようか」

そして皆を集めて結果を確認する事になったが…





「ナワール、どう?」

「…これも違う、そっちのも違うわね」

ラズリとナワールはアイスが持ってきた花を見てみたが幻の花らしき花は無かった…

「全部違うのか、あちこちから珍しそうな花持って来たんだけどな」

「なかったのか、残念だったな!」

「そういうラーシルは花をもってこなかったの?」

「ない」

「こいつは花を探さないで、飛び回ってたからな」

「…まさかこれだけ探しても見つからないなんて」

ラズリはがっくりと肩を落とした…

「ごめんね…エメも、一生懸命…探したんだけど…」

「仕方ないよ、簡単には見つからないから幻の花なんだよ」

「でも、夕暮れまでまだ時間があるから、もう少し探せるわよ」

ラズリとエメルをラピスとシャハラザードが慰めているとザビエラが慌てた様子で駆け寄ってきた。

「ラズリン親分、大変じゃ。もうすぐこの辺りに大雨が降ると履物占いで出た!」

「ええ!? それじゃ急いで隊商宿に戻らなきゃ…」

「でも、まだ幻の花が…」

「そんな事言ってる場合じゃないよ、もう戻ろう?」

「やだ!!」

ラズリはそう叫んで素っ飛んでいった…

「あ、コラ! ああ、もう…ラズリはぼくが連れ戻すから皆は先に戻ってて」

「分かりました、ラピス君も気をつけてくださいね」

ラピスはシーリーンたちと別れてラズリを追いかけた。





「はぁはぁ…どこまで飛んでいったんだろ…」

ラピスはラズリを追ってきたが完全に見失ってしまった…

ここまで来る間に空は黒い雲に覆われ今にも雨が降り出しそうだ…

「…この広い花畑の中をどうやって探せば…あ、良く考えたらリビアンを使えばいいんだ」

ラピスは連絡用ルフのリビアンを呼びだし、大きく息を吸って…

「わーーーー!!!」

『わーーーー!!!』

大声で叫んだ、すると離れた場所からも叫び声が聞こえてきた…

「あっちか…」

ラピスが叫び声の聞こえてきた方に来てみると、そこには耳を押さえているラズリがと連絡用ルフのグラスがいた。

「グラスどうしたの? 急に出てきていきなり大声で叫んで…」

「叫んだのはぼくだよ」

「あ、お兄ちゃん…」

「さっさと戻るよ」

ラピスはラズリに手を差し出したが、ラズリは手を取らなかった…

「やだ…まだ見つけてない…」

「なんでそこまで幻の花にこだわるの?」

「だって、今回見逃したら次に幻の花が咲くのは百年後なんだよ!

わたしやお兄ちゃんは百年待てばいいけどリーンやザビエラは百年後にはいないんだよ!

 だから絶対に見せてあげたいの!」

「ラズリ…」

ラピスが何か言おうとしたそのとき、雨がポツリポツリと降り出した…

「もう降り出した…良いから早く戻ろう…ってまたいない!」

ラピスが辺りを見渡すとラズリは少し離れた所を飛んでいた。

「何やってんのー!」





ラピスがラズリに追いついた頃には雨は激しくなってきていた…

「ラズリ…いいかげんにしないと…」

「ねえお兄ちゃん、これって…」

ラズリの指差す先には一輪のユリの花があったが…

「…もしかしてこれが…」

「お兄ちゃんもそう思う?」

そのユリは花弁が透明でガラス細工のようだった…

「「幻の花!?」」







―次の日、ラピスとラズリは医者天幕で寝込んでいた…

「ふたりともただの風邪だよ、お薬を飲んで一日寝てたらきっと治るからね」

ポストーチはラピスとラズリの診療を終えて、薬を飲ませた。

「もう雨の中出歩いちゃだめだよ、ポチ先生との約束だよ」

「うん」

「は、はい」

寝かされているラズリの枕元にはラズリが見つけたユリの花が置かれていた…





あとがき

一つの話で何人のキャラを借りれるか挑戦したくて書いた話です。

色々やらかしたような気がしますが気にしません。
シャーリーさん、ナサニエルさん(yuranさん)、エメルさん(暮井クレさん)、
シャハラザードさん(THUNDERさん)、ラーシルさん(せんさん)、アイスさん、ザビエラさん(藤乃蓮花さん)
アスランさん、アーレフさん(nasatoさん)、コウカブさん(和月みおさん)、マキさん(イケダさん)
ナワールさん、ポストーチさん(ムツホシラさん)、コランサイファさん(秋野 綾)、シーリーンさん、ラビーウさん(たまださん)
リズクさん(一磋さん)お借りしました。やっぱり無理をしすぎました…


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