ここは夕雲の階段
その名の通り階段みたいな建物が並ぶこの町でラズリはマリーヘがある事を言っているのを聞いた。
それは、この町の外れにある井戸の近くにおばけが出るらしいということと、そのことを隊商の皆で調べるということだった。
無論、これは隊商全体に言ったことで、だれもラズリをあてになどしていないのだが…
「という訳で、おばけ退治に行くよ!」
「何が、という訳なの? っていうか前にもこんな事無かったっけ?」
「そんな事はどうでもいいの! とにかく、町の人たちを困らせてるおばけを放っておけないでしょ?」
「……それはラズリが言い出す事じゃないと思うよ…」
「別にいいでしょ! とにかく、今日の夕方におばけ退治にいくよ、それから手伝ってくれそうな子がいたから連れて来たよ」
ラズリの訳の分からない発言に頭を抱えながらラズリが連れて来た人の方を見ると、なんとなく強そうな男の子がいた。
「手伝ってくれる子ってその強そうな子のこと?」
「この子はザキィっていって、なんか暇そうにしてたから連れて来たの! 本当はリーンとザビエラの二人も連れて行こうと思ったんだけど他に約束があるんだって」
「なんか面白そうだから手伝ってあげることにしたの!」
「……日が沈むまでには帰って来るんだよ」
「はーい」
ラズリはザキィを引き連れて出かけて行った、
(まったく…いつもいつも突拍子のないことばかり言って…まあ、おばけといっても噂だけで怪我した人がいるわけでもないから心配ないと思うけど…
 どうせ、何かの影をおばけだと勘違いして驚いて帰って来るんだろうし…止めても無駄だから放っておこう…)
とラピスが考えている事も知らずに…

そして、日が傾き始め、町が夕日で紅く染まり始める頃、ラズリとザキィは例の井戸のそばに来ていた…
「この辺りだね…」
「ねえねえ、おばけってどうやって退治するの?」
「ふっふっふ…それはね、まずここでおばけが出てくるのを待つの、そしておばけが出てくると同時にザキィが突撃しておばけを退治するの。完璧でしょ?」
「凄い! ラズリって頭いいな!」
成功するかどうか以前に作戦になってないラズリの作戦にザキィは目を輝かせている…
「でも、おばけってどんな奴なの?」
「さあ…? でも、おかしなものが飛んでたらきっとそいつがおばけだよ」
そんな事を言っていると、どこからともなく光る玉のような物が現れた…
それはぼんやりと光っていて、ふわふわと風船みたいに浮いていた…
「あいつだ! あいつがおばけだよ!」
「分かった! 後は任せて!!」
ザキィは光の玉に突っ込んで行ってジャマダハルという武器で斬りかかった!
「あれ? こいつ斬れない!?」
斬っても斬ってもすり抜けてしまって全く効いていない…
「だったら火を噴いてよ!」
「分かった!」
ザキィは息を大きく吸って火を噴いてみた!
…と思ったら小さな火が出て来たかと思ったらすぐ消えてしまった…
「何やってんの! 役立たず!」
「仕方ないでしょ! まだ調整できないんだから! だいたいラズリは何もやってないじゃないか!」
「あたしは作戦を考える役なの!」
「失敗したじゃないか!」
ラズリとザキィが喧嘩している間に光の玉はどこかに行ってしまった…
「あれ? 逃げられた?」
「探してみよう」
ラズリとザキィが光の玉を探していると、少し離れた所から近づいてくる光があった…
「いた!!」
「でもどうするの?」
「決まってるでしょ? 武器でも火でも駄目だったら、水しかないでしょ!」
「おお! さすがラズリ! 頭いいな!」
と言ってラズリとザキィは井戸の水を汲んで、その光に向かってぶちまけた!
「うわぁ!」
光は悲鳴をあげて消えてしまった…
「退治出来た!」
「やったね! ラズリ!」
「何を退治したって?」
「「え?」」
二人が光のあった場所を見ると、そこにはずぶ濡れになったラピスがいた…手には消えたランプを持っている…
「…………ラズリ…これはどういう事かな?」
「えーと…それはその…あはは…」
「ラズリ!!」
「ごめんなさーい!」
どうやらラピスはラズリが帰ってこないので心配して様子を見に来たらしい、
そうとも知らずラズリたちはラピスが持っていたランプの明かりに水をかけてしまったらしい…
そして、ラズリたちは延々とラピスに説教される破目になってしまった…
結局、あの光の玉の正体は分からないままだった…



後書き
ラズリがおばけに挑んだ話です。(失敗しましたが…)
ザキィさん(マサムネさん)お借りしました。


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