ラピスとラズリは次の町への移動が近いので荷物をまとめていた…
「…もうすぐ、幻都の骨ともお別れだね…」
「そうだね、もしかしてこの町から離れるのがいやなの?」
「そ、そんな訳ないよ。それなら隊商に入るわけないでしょ。」
「それもそうだね、この荷物そっちにまとめて…」
ずっと住んでいた町を離れる事になり少ししんみりしていると、シーリーンが部屋を訪ねてきた。
「失礼します、ラズリちゃんいますか?」
「あれ? リーンどうしたの?」
「今日は親分のラズリちゃんにプレゼントがあります」
「プレゼント? 何をくれるの?」
ラズリはプレゼントと聞いて期待に目を輝かせている。
シーリーンはラズリに鳥の人形を渡した。
「…これ何?」
「王様の人形です」
「おうさま? この鳥の名前なの?」
「そうです、アズ先生が飼っている鳥なんです。モフモフしていて可愛いでしょ?」
「本当だ、モフモフして気持ちいいね。リーンありがとう!」
ラズリは王様の人形を抱き締めて喜んでいる。
「喜んでもらえてうれしいです。それから、ラピス君の分も用意しました」
「ぼくの分もあるの!?」
「はい、ラズリちゃんとお揃いですよ」
シーリーンはラピスにも王様の人形を渡した。
「でもぼくは男の子だからこういうのは…」
「二人の事を想って作ったんです」
「そ、そうなんですか…では、ありがたく頂きます」
シーリーンの笑顔の前にラピスは断る事が出来ず、王様の人形を受け取った。
「わたしの事を想ってくれるなんて…って、これリーンが作ったの?」
「はい、そうです。本当はもっと大きいのあげようと思ったんですがガドゥ君に止められました…」
「もっと大きいのがあるの!?」
「はい、ガドゥ君にあげた王様の人形は抱き枕にできる位大きいんですよ」
「見てみたいなぁ…」
「よかったら、ガドゥ君に見せてもらいに行きますか?」
「わーい、行く行く」
「ラズリ」
ラズリは、大はしゃぎでシーリーンと出かけようとしたがラピスに声をかけられた。
「何? お兄ちゃん」
「荷物はまとめておくから、ゆっくりしてきていいよ」
「…? うん分かった」
(どうしたんだろ…いつもなら『荷物ほったらかしでどこに行くの』って言いそうなのに…)
ラズリはラピスの様子が気になりながらも、シーリーンと出かけて行った。

シーリーンとラズリが立ち去った後ラピスは部屋に自分しかいない事を確認し、
こっそり嬉しそうに王様の人形を抱きしめていた…
部屋のすぐ外では、シーリーンが派手に転び、それにラズリが巻き込まれ、
ちょっとした騒ぎになっている事に気付かない位、ラピスは王様の人形に夢中だった…




あとがき
たまださんの漫画『王様と私』を見て、シーリーンさんの習性を知って書いてみました。
シーリーンさん(たまださん)お借りしました。
アジャルさん、ガドゥさん、王様(シマムラさん)呼び名だけお借りしました


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