天幕でラスに勧められて作ったクッキー、思ったよりうまくできてラスにも褒められた。
クッキーはまだたくさんあるから、いろんな人に配ろうっと。
あっ、あそこにいるのはアハト兄ちゃんだ。
「ラズリちゃん、俺に何か用か?」
「あのね、クッキーを作ったから食べてみてよ」
「え? ラズリちゃんが、作ったのか? 凄いな!」
アハト兄ちゃんはクッキーを受け取って、頭を撫でてくれた。嬉しかったな。
「じゃ、またね。今度歌を教えてね」
「ああ、今度は新しい曲を教えてあげるんだぜ」
「うん、お願いね」


アハト兄ちゃんと別れて歩いていると、後ろから声をかけられた。
「こんにちは、ラズリちゃん」
「こんにちは…ってリーン!? 前会った時よりカラフルになってない?」
振り返った先にいたのは子分のリーン…だけど前に会った時よりカラフルになってるよね…
「衣装を変えてみたんですが…似合いませんか?」
「ううん、そんなことないよ、似合ってるよ。インコみたいだよ。そうだ、このクッキーわたしが作ったの、リーンにもあげるね」
「いいんですか? ありがとうございます」
リーンはクッキーを喜んで受け取ってくれた。
「それから、リーンの転倒防止大作戦第二段を思いついたの!」
「え? あれの第二弾ですか?」
「そう、今回は新たにリズ君を加えて後ろから支えてもらうの、つまり三人がかりでリーンを支えるってわけ。完璧でしょ?」
「はぁ…そうでしょうか…」
「それじゃ、また今度試そうね」
リーンは不安そうだったけど、絶対に成功させて見せるんだから。
(そして本当に試した結果、前回とほぼ同じ結果になった)


リーンに手を振って別れた後、歩いてたら、どこかで聞いた事があるような声が聞こえてきたから行ってみると…
なんか色違いのそっくりな二人組がいたの。
「アーレフとアスラン…だよね?」
「他の誰だって言うんだよ!」
「だって、服や印象が変わってるし、目の下にあった三角が無くなってるし!」
「あれは化粧だよ…」
「印象が変わったってどういう意味だよ」
やっぱり外見は変わっても性格は変わってないみたい、ちょっと安心した。
「うーんとね…前より大人っぽくなったって言うか、女っぽくなったって言うか…」
「誰が女っぽくなったって…!」
「まあまあ、アスラン落ち着いてよ」
「そうだ、わたしが作ったクッキーを二人にあげるね」
「ラズリが作ったの凄いね」
「食べられるのか?」
アーレフは受け取ってくれたけど、アスランの方は受け取るどころか文句まで言ってる…むかつくなぁ…
「食べられるに決まってるでしょ! 文句は実際に食べてから言ってよね!」
わたしはアスランにクッキーを押し付けて、走ってその場から離れた…逃げたわけじゃないんだからね。


歩きながら、残ったクッキーを数えてみると、三袋残ってた。
誰にあげようかなー…一つは自分用でしょ…もう一つは友達のリズくんにでもあげようかな…残った一つは…
そんな事を考えながら歩いていたら子分のザビエラが天幕を張って占いの仕事をしてた。
「たのもー」
「ヘイらっしぇい! おお、ラズリン今日は探検の約束は無かったはずじゃが…」
「今日は探検じゃなくて、ザビエラにこれをあげようと思って来たの」
「ん? なんじゃこれは」
「わたしが作ったクッキーだよ」
「ほう…ラズリンが作ったクッキーか…」
「うん、きっとおいしいよ。そうだ、ついでに占いもやってくれない?」
「構わんよ、何を占って欲しいんじゃ?」
「リズくんがどこにいるか占ってくれる?」
「人探しか…ならばこれじゃな」
ザビエラは木の枝を取り出して、地面に立てて、手を離した。すると枝が倒れて…
「あっちじゃ! あっちの方におる!」
「分かった!」
わたしは、枝が倒れた方に向かって走りだした。枝で人の居場所が分かるなんてザビエラはすごいなぁ…


「うわぁ!」
走っていたら女の子とぶつかっちゃった。確かこの子は同じ隊商の子だったと思うけど…無表情の変わった子だなぁ…
「いたた…大丈夫?」
「だいじょうぶ」
「そうよかった…あんた誰だっけ?」
「シャイール、15さい、おんな、ジン。あなただれ?」
「わたしはラズリ、10さい、おんな、ジン」
変わった自己紹介だったから真似してみた。
「…それ、おいしそう、ちょうだい」
「これの事?」
わたしがクッキーを見せるとシャイールは首を縦に振った。やっぱりこれの事か…
「でもこれは…」
「だめ?」
シャイールはわたしをじっと見続けてる…
「分かったよ、あげるよ…」
わたしは泣く泣く自分用のクッキーをシャイールに渡した。
「ありがとう。なにかもらったらおれいをいえってハーティムがいってた」
「ああ、そう…」
なんか、この子と話すのは疲れるな…


シャイールを振り切って、歩いているとリズくんを見つけた。
「リズくーん」
「あ、ラズリさん」
「ねえねえ、クッキーを作ってみたから、食べてみてよ!」
「いいんですか? ありがとうございます」
リズくんはクッキーを嬉しそうに受け取ってっくれた。
「早速、食べてみてよ」
「えっと、はい、いただきます…」
リズくんはクッキーの包みを開いてクッキーを持って…
「あの…ラズリさんも食べますか?」
「え? なんで?」
なんで自分が渡したクッキーを勧められなきゃいけないんだろう…
「えっと、クッキーをじっと見てるので欲しいのかと…」
「…うん、もらうね」
無意識のうちにクッキーを見続けてたみたい…リズくんはそんなわたしにクッキーを分けてくれた。
リズくんと一緒に食べたクッキーは美味しかった…




あとがき
ラズリがクッキーを配って回る話でした。
アハトさん(真白さん)、シーリーンさん(たまださん)、アスランさん、アーレフさん(Nasatoさん)
ザビエラさん(藤乃蓮花さん)、シャイールさん(千景さん)、リズクさん(一磋さん)お借りしました。


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