よく晴れた日の昼下がり、ラピスとラズリは厨房を借りてお菓子作りを始めていた。
机の上には調理器具と分量をしっかり量った材料が用意できていた。
「道具と材料は揃ったんだから、早く作ろうよ」
「分かったよ…それじゃあ始めようか。まずバターをクリームみたいになるまで練ってね」
「はーい」
(急にクッキー作りたいって言いだすなんてどうしたんだろう…
 料理に興味を持つのは悪い事じゃないけど…以前みたいに炭にならなければいいけど…)
ラピスはそんな事を考えながら、バターを相手に格闘しているラズリを眺めていた…
「出来たよ、次はどうするの?」
「砂糖を入れて、白くなるまで練って、それから卵を入れて混ぜるの」
「はーい」
ラズリは言われたとおりに作業を進めている、意外と順調に進んでいる。
「次に小麦粉を入れて混ぜる」
「はーい」
ラズリは器に小麦粉を入れた…が、勢いが強すぎて小麦粉が舞い上がり、ラズリはそれを吸い込んでしまい咳きこんだ。
「ラズリ、大丈夫?もっとゆっくり入れなきゃ」
「コホッコホッ、うん、次から気をつけるよ」
なんとか、クッキーの生地を作る事が出来た。ちょうどその時ソアラがやって来た。
「あら、ラピスくんとラズリちゃん。今日は二人でお菓子作りかしら」
「うん、クッキーを作ってるの」
「ちょっと見てもらっていいですか?」
「ええ、いいわよ」
ソアラは器に入ったクッキーの生地を覗き込んだ。
「上手に出来ているみたいね」
「本当? やったー!」
ラズリはソアラに褒められて喜んでいる。
「ところで、クッキーが出来上がったら誰かにあげるのかしら?」
「うん、まずはラスでしょ、それからリズくんに、リーンに、ザビエラに、
それからアハト兄ちゃんでしょ、アーレフとアスランにもあげようかな、勿論ソアラにもあげるね」
「ありがとう、楽しみにしてるわね、ラズリちゃんって友達が多いのね。そういえばラピスくんも誰かにあげるのかしら? 例えば奇術師の女の子とか」
「え!? な、なんで急にそ、そんな話に…」
「奇術師の女の子ってコランの事でしょ? 友達なんだからあげてもいいんじゃないの?」
「そ、そうだね、あげてもいいよね」
ラピスは焦っているのを隠そうとしているがバレバレだった…
「ふふふ。二人とも頑張って美味しい顔が真っ赤でクッキーを作ってね」
ソアラはそう言って立ち去っていった。
「うん、頑張るね。それで、お兄ちゃん次はどうするの?」
「後はちょうどいい大きさにして、焼くだけだよ」
ラズリは生地をちょうどいい大きさにして形を整えて皿に乗せて天火に入れた。
そして十数分後、天火から皿を取り出すとクッキーはきれいに焼き上がっていた。

ラピスとラズリは包んだクッキーをもってラスの天幕を訪れた。
「ラスー、お邪魔してもいい?」
「ああ、いらっしゃいラズリ…今日はお兄さんも一緒なんだね。よろしくね」
ラスは同じ顔が並んでいたので、少し戸惑ったようだ…
「ラピスといいます、こちらこそよろしくお願いします。」
ラピスはそう言ってお辞儀した。
「ねえねえ、これ見てよ。私が焼いたんだよ!」
ラズリは包みを開いてクッキーをラスに見せた。
「すごいね、綺麗に焼けているんじゃないかな」
「そうでしょ。早く食べてみてよ、多分おいしいと思うから」
多分…思う…その言葉にラスが反応したような気がした…
「材料も手順も間違えてないから問題ないと思いますよ…」
「ちょっとお兄ちゃん! 何言ってるの!?」
「だって、味見してないし…」
「まあまあ、落ち着いて…」
言い合うラピスとラズリをなだめながらラスはクッキーを手に取り、口に運んだ。
「…うん、美味しいよ」
「本当? やったー」
「でも、もう少し工夫したらもっと美味しくなりそうだね」
「工夫?」
「そう、例えば生地に何かを混ぜて焼いてみるとかね」
「…うん、また挑戦してみるよ! その時も食べてくれるよね?」
「うん、いいよ。応援するよ、こんな感じでね」
小さな水でできた人形が現れて、両手を振って応援してるような動きをした。
「わぁー、何回見ても可愛いね」
「すごい…まるで生きているみたい…」
ラピスとラズリは水人形に見惚れている…
「それじゃ、ラス、また持ってくるからね」
「では、ぼくもこれで…あの、水人形また見せてくださいね」
「うん、いいよ。またいつでもおいで」
次はどんなクッキーにしようか話し合いながら帰っていく二人を、ラスは微笑みながら見送っていた。




あとがき
天幕での会話をもとに書いてみました。
ソアラさん(papさん)、ラス(猫冶さん)お借りしました。


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