ラピスはナサニエルと共に厨房を借りてお菓子を作っていた…
「材料はこれでよしと…」
「じゃあ、早速作り始めよう」
「まずは用意した砂糖を…」
ナサニエルは鍋に砂糖をどばーっと入れると、ラピスが突然あわて始める
「ナーザ! 何やってるの!?」
「え? 砂糖を入れてるだけだよ?」
「そうじゃなくて…何でそんなにたくさん入れてるの?」
「だっておねーちゃんはいつもこれくらい使って…」
「これは白砂の港産の砂糖だよ? 高級品なんだよ? 勿体無いよ」
どうやらラピスは砂糖が勿体無いらしい…
「でもこれくらい入れなきゃ美味しいお菓子は作れないよ」
「………うん、分かった…」
「じゃあ他の材料も入れるから混ぜながら火にかけてね」
ラピスが渋々と納得すると、お菓子作りは再開した。
「上手だね、ラピスはよく料理作るの?」
「うん、隊商に入る前は家の事は全部やってたから…ナーザは?」
「ぼくは、おねーちゃんが作ってるのを見てるうちに覚えたよ」
「え!? 見てるだけで覚えたの? 凄いよ」
「え…そうかな…」
ラピスとナサニエルは雑談しながらも手際よく作業を進めて、生地が完成しあとは揚げるだけだ。
「あとは、この生地を油の中に絞り出すんだけど…大丈夫?」
「う、うん大丈夫…多分」
ラピスは震える手で絞り器を握り、少しずつ生地を絞り出している…
「そうそう…その調子…」
ナサニエルは心配そうにラピスの手元を見つめている…するとそこに…
「何やってるの?」
「うわぁ!?」
ラピスは後ろから急に話しかけられ、絞り器を強く握ってしまい大きく絞り出た生地が油の中へ…
「わーー!!」
「ラ、ラピス…落ち着いて!」
「…どうしたの?」
「あ、アーレフ…ううん、何でもないから気にしないで…」
話しかけたのはアーレフだった…状況がよく分かってないらしく首をかしげている。
「そう? あ、お菓子作ってるんだ」
「後でアーレフも一緒に食べる?」
「え、いいの?」
ラピスとアーレフが仲良さそうに話していると、ナサニエルがラピスの肩をつついた。
「ねえ、この子ラピスの友達?」
「うん、そうだよ。この子はアーレフ、双子のお兄さんと踊り子をやってるんだよ。
ところでアーレフ、何で厨房に来てるの? アーレフも何か作るの?」
「ううん、ぼくは料理人さんに作って貰いに…」
「おーい、出来たぞ…ってなんか増えてないか?」
料理人のニウが手に皿をのせて入ってきた。
「あ、ニウさん」
「えっとぼくたちはここでお菓子を作ってただけなので…」
「ちょっと見せてみな、へー子供が作った割には上手く出来てるな…でも一つだけやたらでかくねえか?」
ニウはラピスたちが作ったチュロスを
「…分かってます」
「ねえ、ニウさんは何を作ってくれたの?」
「そうだった、ほらこれだよ」
ニウは皿に乗っている物をラピスたちに見せた、それは…サソリ料理だった。
小さなサソリがそのままの形で油で揚げられていた…
「…えっと、これって」
「………」
「サソリですね」
アーレフは見慣れないのか不思議そうな表情で、ナサニエルは苦手なのか真っ青になっている…
「ナーザ、どうしたの? 顔色が悪いよ」
「サソリは苦手だから…ラピスは平気なの?」
「うん、昔食べ物が無かった頃サソリを捕まえて食べてたよ」
「へえ、あんたサソリの味が分かるのか」
「じゃあ、食べてみようかな…うっ…ごほっごほっ…」
アーレフがサソリを食べたとたん、せき込んで苦しみ出した。
「アーレフ! どうしたの!?」
「も、もしかして…サソリの毒…?」
「そんな物食わせる訳ないだろ!」
「…か、辛すぎるよ…み、水…」
「分かった…はい」
ラピスがアーレフに水の入ったコップを渡すとアーレフはそれを一気に飲み干した。
「はぁ…はぁ…」
「さてと、お前らも食うか?」
ニウはラピスたちにサソリ料理を突き付けた。
「ぼくは結構です! サソリの尻尾がのどに引っ掛かりそうだし…」
「ぼくももういいや…いくらなんでも辛すぎるよ…」
「ぼくもいいです、えっと…辛い物は喉に悪いって言うし…ほらぼく詩人だから喉は大切にしなきゃ…」
「文句言ってねえでさっさと食え!」
そして厨房に哀れな少年たちの悲鳴が響き渡ったらしい…
あとがき
色々大変な事になってます…
ナサニエルさん(yuranさん)、アーレフさん(nasatoさん)、ニウさん(□Kさん)お借りしました。
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