隊商が解散した後ラピスはラリマーが巫女を務めている神殿で暮らすことになった。

来たばかりの頃は隊商生活とは違う生活に戸惑っていた頃の話。

ある日ラピスが神殿の掃除をしていると、神官が慌てた様子で駆け寄ってきた。

「ラピス様!? 何してるんですか!」

「掃除だけど…」

「そういうことは私がしますから」

「でも…」

「巫女様のご子息であるラピス様にこんなことをさせていたら私たちが叱られます」

神官はそう言ってラピスから掃除道具を取り上げた。

「…分かりました」

ラピスは諦めてその場を去った…

(あんなに気にしなくてもいいのに…気分転換にお菓子でも作ろうかな…)

ラピスが厨房に入ると中では料理人たちが雑談していた。

「それでその時…って、ラピス様こんなところに何か御用ですか?」

「えっと…お菓子を作…」

「分かりました、腕によりをかけて作りますので、こちらで待っていてください」

料理人たちはラピスの言葉を最後まで聞かずにお菓子を作り始めてしまい、

ラピスは何も言えずに眺めることしかできなかった…



数十分後、お菓子でおなかを膨らませたラピスは外に出かけようとしていた。

「ラピス様お出かけですか?」

「うん、ちょっと外で歌って来ようと…」

「何言ってるんですか!?」

「え?」

「なんでラピス様がそんな旅の詩人みたいなことをするんですか!?」

「いや…ぼくもちょっと前までそうだったんだけど…いえ、もういいです。

 ちょっと散歩に行ってきます」

「待ってください、お供します」

「結構です!」

ラピスはついて来ようとする神官を振り切って走り去っていった…





次の日、自分の部屋でぐったりしているラピスを扉の陰からこっそり見ているモリオンとラリマーの姿があった。

「ということがあったらしいのだが…」

「困ったわね、ラピスちゃんにも神殿生活に馴染んでもらいたいのだけど…」

「隊商での生活との違いに戸惑っているのかもしれない」

「そうだ、神殿の皆にもっとラピスちゃんを甘やかしてあげるように言うのはどうかしら?」

「…おそらく拒絶するだろうからやめた方がいいだろう」

モリオンとラリマーが意味のない話し合いをしていると

離れたところからアクアとマリンの泣き声が聞こえてきた。

「あら大変、もう起きちゃ…」

その時扉が勢いよく開きラピスが勢いよく飛び出していった。

この時扉が両親にぶつかったことは気づきもしなかったらしい…



モリオンとラリマーが後を追うと…

「はいはい、今ミルクを用意するからちょっと待ってね…」

「あ、アクア飛んじゃダメ!」

「マリン、動けないからしがみつかないで…」

懸命にアクアとマリンのお世話をするラピスがいた。

「まったく、あいつは…」

「でも、ラピスちゃん楽しそうね」

確かにラリマーの言う通りラピスはさっきまでと違い生き生きとしているように見えた。

「だが、これでは私たちの立場がないのではないのか?」

「それは、そうだけど…」

モリオンの指摘に流石のラリマーも言葉を濁した。


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