これはマリーヘの隊商が解散してから十年近くたったある日の話。
白砂の港にある神殿でラピスが真剣な様子でモリオンとラリマーと話していた…
「…もうラズリからの連絡が途絶えてもう一月もたっているんだよ。これは何かあったに違いないよ。
だから、ラズリを探しに行かせて!」
「でも、ラピスちゃんにまで何かあったら…」
「ああ、それにラズリにはヤシュムがついている筈だ。ラピスがわざわざ行かなくても…」
「それにラピスちゃんまで巻き込まれるかも知れないじゃない」
「僕だって成長したんだよ。子供扱いしないで!」
成長したと言い張るラピスだが、身長は同世代と比べれば小柄だし、
顔つきは相変わらずの女顔で髭もほとんど生えてこないし、
声質は幸か不幸か子供の頃から全く変わっていない。
「子供扱いというわけじゃないのだが…なんというか…」
はっきり言って頼りなかった。
「そんな事を言っている間に取り返しがつかない事になったらどうするの!?」
ラリマーはラピスの目をじっと見たかと思うとこう言った。
「………分かったわ、ラズリちゃんのことはラピスちゃんに任せるわね」
「おまえ!? 何を言っているのか分かっているのか!?」
「ええ、だって止めても勝手に抜け出して探しに行きそうだから」
「じゃあ、準備ができたら…」
「ただし、うちの神官を一人連れて行く事、これが守れないなら行かせるわけにはいかないわね、
無理に行こうとするならどんな手段を使ってでもとめるわよ」
「…分かった、それで誰がついてくるの?」
「連れてくるから、ちょっと待っててね」
ラリマーはそう言って部屋から出て行った。
しばらくたって、戻ってきたラリマーが連れていたのは…
「バリーゥでーす。よろしくお願いしますねー」
気さくな女性神官バリーゥだった。
「…僕が言うのもなんだけど、この人でいいの?」
「失礼ですねーこう見えてもラピス君よりは役に立つと思いますよ」
「そうそう、魔法とか使わせたら結構役に立つわよ。
それを見込んでわざわざ大神殿から引き抜いてきたんだから、ねー」
「ねー」
「「……」」
あまりに能天気な二人にラピスとモリオンは頭を抱えた…
それから数日後、ラピスの準備が整い出発しようとしていた。
「バリーゥさん、準備はできましたか?」
「はい、荷物は揃いましたし、外にはラクダも用意しています」
バリーゥは大きな荷物を背中に背負っていて、すぐにでも出発できそうだった。
「じゃあ、そろそろ…」
「待ってください!」
出発しようとしていたラピスたちを止めたのはマリンだった、そしてそばにはアクアもいた。
「わたしたちも連れて行ってください!」
「連れて行ってって…何をしに行くか知ってるの?」
「姉貴を探しに行くんだろ」
「この前、父様と母様と話しているところを聞きました」
「危ないから駄目だよ」
「でも、兄貴はおれたちと同じぐらいの年で旅していたんだろ?」
「え…それは…」
ラピスはアクアに痛いところをつかれ言葉が詰まってしまった…
「そ、それにすでに父様と母様の許可は貰っています!」
「…貰ったの?」
(普段はオドオドしているマリンまでここまで言うなんて…
あの二人の許可をどうやって貰ったかは気になるけど、これは、何言っても無駄になりそうだな…
無理に置いていっても何が何でもついてきそうだし、そばに置いておく方が安全かな…
はあ…変なところがラズリに似ちゃったかな…)
「…分かった」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、さっさと行こうぜ」
「え、でも荷物とか準備は?」
「そんなのもう終わってるし、荷物もあの中に入ってるぞ」
アクアはバリーゥが背負っている荷物を指さしながらそう言った。
「あーやっぱりそうでしたか、道理で二人分にしては多いなーと思ってたんですよ」
ラピスは弟妹の手際の良さに軽いため息をついて、神殿の出口に向かった。
「つらくなったらいつでも帰ってきていいのよ」
「何かあったら連絡するんだぞ」
「分かっています、父様も母様もお元気で」
「いつまでそんな事してるんだ、さっさと行くぞ」
似たようなやりとりを繰り返している両親と妹に嫌気がさしたのかアクアは不機嫌そうだ。
「あ、待ってよ。それでいってきます」
こうして、ラピスたちの新しい旅は始まった。
あとがき
エンドロールで書いた新しい旅立ちの話です。
お供として付いてくる事になったバリーゥですが、今回が初登場じゃありません。
前にどこかで書いています。(たぶん誰も覚えてないだろうけど)
少しずつでも書き進められたらいいなぁと思ってます。
それと、絡まれてもいいよという方を募集してます。
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