ある日ラピスとラズリはディルに手伝ってもらって図書館で借りた大量の本を返しに向かっていた。

「ったく…なんでオレがこんな事を…」

ディルは不満があるのかさっきからずっと文句ばかり言っている…

「別にいいでしょ!」

「すみません…ぼくたちだけじゃ持ち切れなかったので…」

「だいたい音楽の本ばっかりこんなに借りてどうするんだ?」

「そんなの音楽の勉強をして更に上手に歌えるようになるために決まってるでしょ?」

「ふーん…でも、そんな事しても無駄になりそうだけどな、特にお前の方」

ディルはラピスを見ながらそう言った。

「何でそんな事言うの!? お兄ちゃんは私より歌が上手いんだよ!」

「どうせそんなの今のうちだけだって、そのうち誰にも相手にされなくなるに決まってる」

「相手にされなくなる…」

ラピスは真っ青になって震えている…

「何言ってるのそんな事になる訳ないでしょ!」

「いいや、なるね。大人になって声が変わったら…」

「ラピスちゃんラズリちゃん! 大変です!!」

ディルが何か言おうとするとどこからかグレナディナが慌てた様子でやってきた。

「グレナディナさん、どうしたんですか?」

「それが…ラリマーさんが突然苦しみ出して…それですぐにあなたたちを連れてきなさいって…」

ラピスとラズリはグレナディナが慌てている上に泣いているのでよく分からないが着いていくことにした。

「という訳で、悪いけどこの本ディルに任せるね」

ラピスとラズリは本をディルに押し付けてグレナディナと一緒に行ってしまった。

「ちょっと待てよ! オレ一人で運べるかよ! 待てってば!」

後に残されたディルの叫び声が響き渡った…



ラピスたちがラリマーのいる部屋の前まで来ると部屋の前でモリオンとポストーチが真剣な様子で話しているのが見えた。

「ポチ先生、お母さんに何かあったの?」

「あ、ラズリちゃんとラピスくん、実は…もうすぐ赤ちゃんが産まれそうなの。

それで急いであなたたちをここに連れてきてもらったの」

ポストーチは少し考える仕草をしてからそう答えた。

「そうなの! いつ産まれるの?」

「えーとね、そこまでは分からないんだけど、きっともうすぐだからここでお父さんと待っててね」

「はーい」

ラズリが元気よく返事をするとポストーチはラズリの頭を撫でた。

そこへ、パラストゥーとアイリアスが走ってきた。

「産湯用のお湯と布を持ってきました」

「すぐに中に運んでください、グレナディナ先生も来てください」

「はい」

ポストーチたちは部屋に入って行った…

「ねえ、父さん…本当に大丈夫なの?」

ラピスが不安そうに聞くとモリオンは静かに答えた…

「…大丈夫だ、お前たちの心配するようなことは何もない」

「そうならいいんだけど…」

ラピスはそう言ったがどこか不安そうだった…



それからどれだけの時間が流れたか分からなくなってきた頃、

突然部屋の中から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた…

「お父さん、この鳴き声って…」

「ああ…きっとそうだ」

モリオンは安心したのか溜息をついた。

しかし、すぐに部屋の中が騒がしくなった。

「予備の布を早く持ってきて!」

「ラリマーさんもう少し頑張って!」

何が起きたのか気になったモリオンが部屋に入ろうとすると、中からパラストゥーが出てきた。

「どうした子供に何かあったのか!? それとも妻に…」

モリオンはすぐにパラストゥーに詰め寄った。

「それが…赤ちゃんは無事産まれたのだけど、実はもう一人いて…」

「もう一人?」

「ええ、赤ちゃんは双子だったの」

その発言にモリオンは固まってしまった…

「そ、それでもう一人の子供は…」

「それは…」

パラストゥーが何か言いかけた時、部屋の中から先ほどとは別の泣き声が聞こえてきた…

「パラストゥーさん早く戻ってきてください!」

それと同時にパラストゥーは慌てて部屋に戻って行った。



そして数分後静かになった部屋から泣き腫らした様子のグレナディナが出てきた。

「皆さん…もう入ってきていいです…」

グレナディナが続いてモリオンたちが部屋に入ると中には汗だくで寝かされているラリマーと

眠っている二人の赤ん坊と疲れきっている医者たちの姿があった…

「…頑張ったな」

モリオンはラリマーの頭にポンと手を置いた。

「ねえねえ、この子たち男の子? 女の子? 名前決まってるの?」

「ラズリ、まだ触っちゃだめだよ」

「右の子は男の子で左の子は女の子だよ、男の子と女の子の双子なんて珍しいんだよ」

「産まれたばかりの赤ちゃんの前で騒がないで下さい」

ラピスとラズリは赤ん坊たちに興味津々でポストーチに色々聞いたりしてアイリアスに叱られていた。

「ねえ、あなた…私に上手く育てられるかしら…?」

「…お前なら大丈夫だ、今度こそ一緒に育てよう」

「ええ、そうね…」

モリオンとラリマーは子供たちを見つめて微笑んだ。





あとがき

という訳で無事産まれました。男女の双子で母親に似た水のジンです。

ディルさんとグレナディナさん(荻白さん)、ポストーチさん(ムツホシラさん)、

パラストゥーさん(時雨さん)、アイリアスさん(雨水さん)お借りしました。


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