「お兄ちゃん、今から釣りに行くよ!」
「…なんで?」
アクアとマリンの面倒を見ていたラピスは突然ラズリにこんな事を言われて何を言っているのか理解できなかった…
「なんでって…巨人の目を釣りに行くんだよ」
「そういえばマリ姐さんがそんな事言ってたね、でもなんでぼくたちが…」
「マリ姐ちゃんを見返す為だよ」
「見返す? …なにかあったの?」
「そうなの、さっきマリ姐ちゃんに何を調達してこようか聞いたの、そしたら
『あなたみたいに小さな子にはちゃんとごはんあげるから無理に調達してこなくてもいいわよ』って言われたの!」
ラピスはラズリの話を聞いて、少し困った表情でラズリの肩にポンと手を置くマリーヘを容易に想像できた。
「あれはきっと、わたしを小さい子供だと思って馬鹿にしたんだよ」
「小さい子供だとは思ってるだろうけど馬鹿にはされてないんじゃないかな…」
「という訳で巨人の目を釣りに行くよ! もう手伝ってくれる人も用意したんだから」
ラピスはどういう訳なのか分かっていなかったがラズリを説得するのは無理だと思い大人しくついて行くことにした。
「あ、ラズリだ、コッチコッチ」
「遅かったわね、待ちくたびれる所だったわ」
「えっと…ラズリさんは色々準備をしていたから…」
「いいから、早く釣りっていうのをやろう!」
「みんな元気だねぇ」
ラズリがラピスを引き連れて海岸まで来ると既にラビーウ、ヘリヤ、リズク、ラーシル、クタイバの五人が来ていた。
「ラズリ…手伝ってくれる人ってこの五人?」
「そうだよ、小さい子供でもやればできるって証明するんだから小さい子たちを集めたの」
「なんだか、失礼な言い方ね」
「まあまあ、落ち着いて」
ラズリの言い方にヘリヤが不満そうな声をあげたが、クタイバに宥められた。
「でもクタイバさんって大人なんじゃ…」
「こんなに小さいのに大人な訳ないよ」
「いやそうじゃなくて…」
「翁は気にしてないから、坊やも気にしなくてもいいよ」
「そうそう、そんな細かい事よりも釣りだよ」
ラズリたちはいつの間にか準備を終えて釣りを始めていた。
「しょうがないんだから…」
「坊やは行かないの?」
「ぼくはアクアとマリンのお世話をしなきゃいけませんから…」
「それなら、爺も手伝ってあげるよ」
「えっと、ぼくも手伝います」
「なんで大きな魚は釣れないの!?」
「ちっちゃくても美味しいからべつにいいけどな」
「あ、釣った魚でラーシルが釣れた!」
「何やってるの!」
そして数十分後、魚は意外にもたくさん釣れていたが小魚ばかりだった…
「あっちは大変そうだねぇ」
クタイバはのんびりとマリンをあやしながらラズリたちを眺めている。
「でもあまり大きな魚は釣れてないみたいですが…うわ! 引っ張らないでください…」
リズクはおんぶしていたアクアに髪の毛を引っ張られて困っている…
「ところで、ラピス君はさっきから何してるのかな?」
クタイバがラピスの手元をみるとラピスは魚を切り刻んでいた…その手は鱗や血で汚れきっていた…
「魚の切り身を餌にして大物を狙えるようにしようとしてるんですが…魚の調理に慣れてなくて…」
「みてられないわね…ちょっと見てなさい」
ヘリヤがやってきて魚を一匹手にとり、ナイフで見事に捌いて見せた。
「凄い! 何でこんなに綺麗に捌けるの?」
「料理人を目指しているのだからこれ位出来て当たり前よ」
ヘリヤはそう言いながら次々と魚をさばいていった。
魚をさばき終わると、ラピスはラズリたちが使っているよりも大きな釣り竿を数本持ってきた。
「随分と大きいのを持ってきたのね」
「大物を釣るにはこれ位用意した方がいいと思って…じゃあ行こうか」
ラピスとヘリヤは釣り竿と魚の切り身を持ってラズリたちのもとにむかった。
「ちょっと何それ!? 何でそんなに大きいのがあるの!? いいからそれ貸して!」
ラズリはラピスから竿を分捕ると、早速その竿に切り身を付けて思いっきり振った。
それから数十分釣りを続けて先ほどよりも大きな魚は何匹か釣れたが、肝心の巨人の目はまだ釣れていない…
「わーい、また釣れた!」
「ラビーウすげーな!」
「二人ともふざけてないで…うわ!?」
「危ない!」
その時ラズリの竿が大きく弾かれた。
ラズリは竿ごと引きずり込まれそうになったがヘリヤに支えてもらってなんとか踏みとどまった…
そこにラビーウとラーシルも加わって竿を引くが重くてびくともしない…
遅れてラピスとリズクが加わるがそれでもまだ動かない
糸はピンと張っていて竿もかなりしなっていて今にも折れそうだ…
「重いわ…」
「へリヤ頑張って!」
「こうなったら、いちにのさんで一気に引っ張るよ」
「わかった!」
「いちにの…さん!」
ラズリたちが一気に全力で竿を引っ張ると『何か』が海面から飛び出してラズリたちの上を通り越して後ろに落ちた…
そしてラズリたちはバランスを崩して積み重なるように倒れた…
「魚は!」
ラズリがラーシルの羽を押しのけて『何か』を確認するとそれは赤い巨大魚『巨人の目』だった。
「やったー!」
ラズリたちは巨人の目に駆け寄ってはしゃぎだした。
その様子を微笑みながら眺めているクタイバのもとにラピスがやってきた。
「やったね」
「はい、これでラズリも満足してくれるでしょう…クタイバさんも付き合ってくれてありがとうございます」
「爺は可愛い子たちと遊べて楽しかったよ」
クタイバとラピスは巨人の目をどうやって運ぶか話し合っている八人を眺めた…
「…あの、クタイバさん」
「どうしたの?」
「一人増えてません?」
「増えてるねぇ」
ラピスは急いでラズリたちのもとにかけていった。
「…ラズリ! その子誰!?」
ラピスはいつの間にかいた赤髪の小さい女の子を指差した。
「…誰だろう?」
「ねえ、名前は? どこから来たの?」
ラピスは色々聞いてみたが女の子は一言も喋らない…
「あの…もしかして迷子でしょうか…」
「もしかしなくても迷子でしょう」
「…この辺に知り合いがいないか聞いてみるよ…リズク悪いけど付き合って」
「は、はい」
「クタイバさんはアクアとマリンをお願いします」
「うん、いいよぉ」
「後の皆は巨人の目をマリ姐さんの所に持っていって」
ラピスはそれぞれに指示を出して女の子とリズクを連れて歩いていった…
後書き
小さいジンを集めてみました。続きます。
ラビーウさん(たまださん)、ヘリヤさん(戸成さん)、リズクさん(一磋さん)、ラーシルさん(せんさん)、クタイバさん(櫟 戦花さん)お借りしました。
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