「リズく〜ん!」
ラズリはリズクを見つけるなりいきなりとびついて抱きついた。
しかし勢いが強かったらしくそのままリズクを巻き込んで倒れてしまった…
「いたた…ラズリさんどうしたんですか?」
「マリ姐ちゃんから聞いたよ、リズくんついに楽士になったんだって?」
「あ、はい、バラーブが上手く弾けるようになってきたので…」
「じゃあ、さっそく一緒に出る舞台の打ち合わせとか練習とかしようよ」
「ええ…いきなりですか?」
「当たり前だよ! ほら、早く行こう」
ラズリは戸惑うリズクの手を引いて行ってしまった…
「あらあら…良い事聞いちゃった…」
後にはラズリとリズクの様子を陰から覗いていた誰かがいた…

ラズリはリズクを隊商宿の部屋に連れてきて、荷物の中からたくさんの楽譜を引っ張りだした。
「ラズリ、何やってるの?」
「リズくんと舞台に出る打ち合わせを始めるの!」
「…まあ、頑張ってね」
ラズリとリズクの打ち合わせは始まったが…
「それでね、わたしはこの曲が良いと思うんだけど… あ、こっちもいいかも」
「えっと…その…」
リズクはラズリに楽譜を次々と見させられて困っている…
「こっちの曲の方がいいんじゃないの?」
ラピスは一枚の楽譜をリズクに渡した。
「ちょっと、お兄ちゃん! 口出しないでよ!」
「でもラズリ、ラズリの選ぶ曲は難しい曲ばかりだよ、もっと弾きやすい曲の方が…」
「リズくんはもう楽士なんだよ? これくらい弾けるよ!」
「リズクは楽士になったばかりで、今回初めて舞台にでるんでしょ? 緊張で失敗するかもしれないよ。そもそも舞台に出るにはまだ練習が必要だよ!」
「あ、あの、ラズリさんもラピスさんも落ち着いてください…」
ラピスとラズリが兄妹げんかを始めリズクが止めようとオロオロしていると誰かが部屋に入ってきた。
「ラズリちゃん話は聞いたわよ! 舞台のことは私に任せて!」
「お母さん!? 急にどうしたの?」
「ラズリさんのお母さんですか。えっと…お邪魔してます」
「あら、あなたがリズクちゃんね。話に聞いていた通り可愛いわね」
「え、わわっ! えっとあの…」
ラリマーはリズクに抱きついて頭を撫で始めた。
「それでお母さん、舞台の事は任せてってどういう事?」
「それはね、私がラズリちゃんとリズクちゃんが出る舞台の用意をしてあげるって事」
「本当? それでどんな舞台なの?」
「大神殿の聖堂よ」
「「…え?」」
ラズリとリズクは大神殿と聞いた途端固まってしまった…
「あら? 二人ともどうしたの?」
「何考えてんの!? 大神殿で歌える訳ないでしょ!」
「私の知り合いに声をかけたらどうにかなるわよ」
「そうじゃなくて…大神殿なんてラズリとリズクには荷が重すぎるって言ってるの!」
「大丈夫よ、私は何回かあそこで讃美歌や鎮魂歌を歌った事があるけど平気だったから」
「ラズリにそんな図太い神経は無いよ! もういいから出て行って!」
ラピスはそう言ってラリマーを追い出してしまった…
「…今の…忘れて…」
「…うん、わかった」
ラリマーの乱入は無かった事にされ打ち合わせは再会されたが…話は少しずつ脱線していった…
「ところで、リズくんは舞台に呼びたい人誰かいないの?」
「呼びたい人ですか? えーと…カーディルさんとイジュラールさんとマルヤムさん、それから…」
リズクは呼びたい人物の名前を次々と挙げていった
「へぇー、結構いるんだね」
「はい、皆さんにはお世話になっているので…特にカーディルさんに来てほしいですね」
「なんで?」
「そうですね…長い間お世話になりましたし、イジュラールさんとの結婚のお祝いもしたいですし、もうすぐお別れですから…」
リズクはそう言って俯いてしまった…
「…それじゃあ、わたしたちの舞台に呼んで盛大にお祝いしなきゃいけないね。
 それにお別れする前に立派になったリズくんを見せてあげなきゃ!」
「あの…ラズリさん?」
なぜか張り切るラズリにリズクは戸惑っている…
「そうと決まったら練習しようよ、お祝いにちょうどいい歌があるんだ」
ラズリはそう言って一枚の楽譜をリズクに渡した。
「えっと…これなら練習すればなんとかなりそうです」
「じゃあ早速始めよう…その前に一つ聞いていい?」
「何ですか?」
「カーディルとイジュラールって誰?」
「知らないのに張り切ってたの!?」
ラズリの今更な質問にラピスは呆れ、リズクはぽかんとしていた…




あとがき
リズクさんが転職されたお祝いに書きました。
リズクさん(一磋さん)お借りしました。


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