「「アハト兄ちゃん(さん)! 脱退するって本当(ですか)!?」」
ラピスとラズリはアハトが脱退するとマリーヘから聞き、本人を問い詰めていた…
「そうか…もう知られてしまったか…」
だがアハトはいつものように穏やかに微笑んでいた。
「じゃあ本当に…」
「ああ…だからラピスとラズリちゃんとはここでお別れだな」
「嫌だよ…行かないでよ!! もっと歌の事教えてよ!! アハト兄ちゃんがいなきゃ…どうやって一流になるの!!」
ラズリはアハトにしがみついて泣きだした。
「いや…歌の事で二人に教えられる事はもうなにもない…これから一流になれるかどうかはこれからの頑張り次第…」
「そんなことないよ! まだまだ教えてほしいこといっぱいあるのに… 
お兄ちゃんも黙ってないで何か言ってよ! アハト兄ちゃんがこのまま行っちゃってもいいの!?」
「……行っていい訳ないでしょ! 僕だってアハト兄さんにずっといてほしいよ。
でも、アハト兄さんにはアハト兄さんの都合があるから、ぼくやラズリがわがまま言って困らせちゃだめなの! だから…だから…」
ラピスはそう言いながら涙をこらえきれずに流してしまった…
アハトはラピスに近寄り、左腕でしがみついていたラズリと一緒にそっと抱きしめた。
「…アハト…兄さん?」
「我慢しなくてもいいんだぜ、俺は二人の兄貴だから困らせられることぐらい平気だ…」
「アハト兄さん…ううっ…うわーーーん」
ラピスもラズリのようにアハトにしがみついて泣きだした…

数分後
「よしよし、少しは落ち着いたか?」
「うん…」
「俺はもう一緒にいられないけど、二人なら何とかやっていけると思う、
 ラズリちゃんは頑張りやさんだし、将来はきっと一流になれると思う、だけど遊んだりして練習を怠けてたら一流どころか三流にもなれないかもな。
 ラピスはしっかりした良い兄ちゃんだ、でも困った時は誰かに頼った方がいい
 ラピスには父ちゃんや母ちゃんもいるしラズリちゃんだっている、
まあ、最近入ってきたあの叔母さんっていうのはあまり信用できないが…
とにかく、一人で頑張りすぎても疲れるだけだから、困ったら助けを求めるんだぞ」
ラピスとラズリは涙ぐみながらもアハトの話を頷きながら聞いていた…
するとそこに場違いな人物が現れた。
「あれ〜ラピスとラズリだ、泣いてるの? 兄貴に締め付けられて泣かされたの?」
「違うよ、アハト兄ちゃんとお別れするのが悲しくて泣いてたの」
「そうだったの…それじゃあ〜次は僕の胸に飛び込んでおいで〜」
オセはそう言って腕を広げたが…
「「なんで?」」
「!?」
「えっと…そんな事無いですよ、寂しいよ」
「そうだ、オセに渡さなきゃいけない物があるんだった、はい」
ラズリはオセに四角い包みを渡した…
「これはなんだい?」
「この前借りた絵本、今のうちに返さなきゃ、返せなくなっちゃうでしょ」
「…わ〜ん、二人は僕の事なんかどうでもいいんだね」
オセは泣きながら走り去って行った…
「まってください、誤解です」
ラピスとラズリは慌ててオセを追って行き、アハトも少し呆れながらも後に続いた。


少し離れた場所では、ラリマーとアテムツゥトが様子を見ていた…
「あらあら、相変わらず皆可愛いわね…」
「そうじゃの〜めんこいの〜」
「…でも、もう少ししたらお別れね…あなたとも…」
「…そうじゃな、じゃがまたどこかで会えるかもしれんの」
「そうかしら? 再会なんてそう簡単にはできないわよ?」
「そうかの? そちは何度も経験しているように思えるが…」
「…ええそうね、…ところであなたとも昔どこかで会ったような気がするのだけど…」
「さあ、どうかの〜、翁にもよく分からんえ〜」
ラリマーはそっとアテムツゥトに擦り寄ったが…アテムツゥトははぐらかした…
「そんな事言わないで教えてよ」
「そうじゃな〜じゃあ、次に会った時に教えてあげるえ〜」
「ええ〜」
「答えはその時のお楽しみぞよ〜」
「あ、待って〜」
アテムツゥトはそう言い残して去って行った…ラリマーは追いかけていった。




あとがき
脱退していくアハトさん、オセさん、アテムツゥトさん(真白さん)とお別れする話です。
今までうちの子の面倒を見てくれてありがとうございました。


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