「お兄ちーゃん!」

隊商が青タイルの街に辿り着いたしばらくたったある日の夜、ラピスが仕事から隊商宿に戻って来る、ラズリが突然泣きついてきた。

「…どうしたの?」

「大変なの! これ見て!」

ラピスはラズリの持っている物を見た、それは女神の花輪で見つけた幻の花だったが…

土は渇ききり花は垂れ下がり葉は茶色くなりかけていて…はっきり言ってほとんど枯れている…

「何でここにあるの!?」

「わたしが見つけたから」

「…何で萎れちゃってるの!?」

「なんでだろう…あそこに置いておい水も昨日ちゃんとあげたのに…」

ラズリが指差した所は直射日光が当たっていた場所だった

「当たり前だよ! 女神の花輪からこんな暑い所に持ってきたら枯れちゃうよ!」

「そんな事言ったって…」

ラズリはポロポロと泣きだしてしまった…

「…分かったから落ち着いて…えっととにかく水をあげよう、それから今日はもう遅いから明日詳しそうな人に見てもらおう?」

「…うん」

ラズリは涙を袖で拭きながら頷いた…

そしてその日はそのまま眠りについた。





ラズリとラピスが眠ってからしばらくたって、ラズリがふと目を覚ますと、幻の花を置いた場所を見た…

そこには倒れた植木鉢があり、そばになぜか男性が倒れていた…

「キャーーー!!」

「ど、どうしたの!! って誰!?」

ラズリの悲鳴に驚いて起き上がり状況をみて固まってしまった…

「どうした!!」

ラズリの悲鳴を聞きつけたモリオンが飛び込んできた。

「お父さん! 知らない人が部屋にいるの!」

「知らない人…君か!? 誰だ!」

モリオンが男性を揺さぶると、男性は擦れた声を出した…

「み…水…」

「「「…」」」

とりあえず、モリオン達は男性に水を飲ませ事情を聴くことにした…

「…で、何故君は、子供達の部屋で行き倒れていたんだ?」

「…行き倒レてた? ボクがデすか?」

「そうだ! 大体君はどこの誰なんだ!?」

男性は首を傾けて答えた。

「…誰デしょう?」

その一言にモリオンは頭を抱えた…

「お父さんそんな事より幻の花の事聞いてよ」

「幻の花?」

「うん、そこの植木鉢に植えてあったのが無くなってるの」

「勝手に持ち出したのか?」

「え!? えーと…あはは…」

「…幻の花は…この子…」

「叔母さん!? いつからいたの? なんでいるの?」

「さっきから…悲鳴の後…この男が…様子を見に行って…戻って…こないから…姉様に…言われて…様子を…見に来たの」

ヤシュムは突然現れて驚かれている事を気にもせず、淡々と説明した。

「それで、この人が幻の花ってどういうことなの?」

「この子は…幻の花から…自然発生…したジン…ってあの星が…言ってる…」

ヤシュムはそう言って窓の外に見える星を指差した。

「えー! そうなの? 凄い!」

「今の話信じるの!? 父さんも何か言って…」

「…」

ラズリははしゃいで、ラピスは困惑し、モリオンは状況が把握できず固まってしまっている…

「父さんしっかりして!」

「皆さん、さっきカらどうしたんデすか?」

「君のせいだよ!」

「で、この人どうするの?」

「…ぼくたちにはどうしようもないし…こうなったら…」





次の日の朝ラズリは男性をマリーヘの所に連れてきていた。

「…という訳で、この人を隊商に入れてあげて」

「…って言われてもね…」

マリーヘは突然連れてこられた男性をどうするか困っているようだ。

「ねえ、お願いだから、入れてあげて。わたしじゃ面倒見てあげれないから」

「だからって私に押し付けないでほしいわね…」

「ところで、ラズリさんこの綺麗ナ人は誰でスか?」

「この人は…」

「マリーヘよ、この隊商の世話役をしているの。であなた名前は何て言うのかしら」

「サウサンといいマす」

「『サウサン』ね、まあ悪い子じゃないみたいだし見習いとして入れてあげるわ」

「はい、よろシくお願いします」

「よかったねサウサン、じゃ、これからマリ姉ちゃんの言う事ちゃんと聞くんだよ」

「はい」

「ちょっと、なんで私が面倒みなきゃいけないみたいになってんの! 待ちなさい」

こうして、サウサンは隊商に押し付けられるような形で入る事になった。




あとがき
サウサンが参加するまでの話です。こんなキャラですがよろしくお願いします。


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