黒蛇の壷へ移動中の早朝、ラピスとラズリが目を覚ますと天幕に荷物が届いていた。
「届け物? 何が入ってるんだろ?」
荷物をみると『物々交換会より』と書かれていた。
「きっと、物々交換で振り分けられたのが届いたんだ」
「何が届いたのかな〜焼き菓子の詰め合わせだったら嬉しいな♪」
「…この大きさでそんなのが入るわけないでしょ」
ラズリが荷物の包みをとると中に入っていたのは刺繍入りのポーチだった。
「やったー! こんなに可愛いのが当たった!」
ラズリが大喜びでポーチを掲げているすぐ隣で、ラピスは難しい顔をしていた…
「お兄ちゃん、どうしたの? 残念な物だったの?」
「…そっちの方がまだましだったかも…」
ラピスが持っていたのはなんでもする券だった…
「こんなのを貰って、何を頼めばいいんだろう…」
「適当にこき使えばいいんじゃないの?」
「何言ってるの!? それじゃ相手に悪いでしょ!」
「でも、せっかく貰ったんだから使ってあげた方がいいんじゃないの?」
「そうだよね…でも何を頼もうかな?」
ラピスはそう言って考え込んでしまった…
ラズリは考え込んでいるラピスをほっといて、散歩に出る事にした。
ラズリは適当にブラブラ歩いているとリズクを見つけた。
「リズくーん、おはよう!」
「あ、ラズリさん、おはようございます」
「ねえねえ、これ見てよ。物々交換で貰ったんだ!」
ラズリは自慢したそうな口調でリズクにポーチを見せた。
「わぁ、きれいな刺繍ですね!」
「そうでしょ! 物々交換で貰ったんだ!」
「物々交換といえば、マルヤムさんがラピスさんの一曲リクエスト券を貰ってましたよ」
「マルヤムさんが?」
マルヤムの名を聞いてラズリは固まった。
「はい、どうかしましたか?」
「ううん、なんでもないの。ただ、こっそりランプを買いに行ったのがばれたら困るなぁって」
どうやらこっそり遺跡に行こうとした事がばれてしまわないか心配しているようだ。
「はぁ…」
「ところで、さっきから頭に乗せてるその子はなんなの?」
ラズリはリズクの頭の上に乗っている生き物を指さしながら尋ねた。
「え、この子はぼくの羽ペンについているルフのジャウハルさんですよ」
「ふーん、触ってもいい?」
「いいですよ」
ジャウハルがリズクの腕に乗ったので、ラズリはジャウハルの頭を撫でてあげた。
「わぁ〜ふわふわだね」
「そうですか、ありがとうございます」
「じゃあ、そろそろ行くね」
「そうですか、それじゃまた今度」
「うん、また今度ね」
ラズリとリズクは手を振りあって別れを告げた。
ラズリはリズクと別れてまたブラブラと歩いていると、どこからかピョロロロ〜という間抜けな音が聞こえてきた…
ラズリが音のする方に行ってみると、ザビエラが鳥の笛を吹きながら歩いていた…
「ほう、そこにおるんはラピスではないか」
「残念でしたーわたしは妹のラズリだよ」
「なんじゃ、妹の方か。それにしてもよーにとるのう」
ザビエラはラズリをじーっと見ている…
「あんたは呪術師のザビエラでしょ? お兄ちゃんから聞いたよ」
「いかにも、わしがじゅじゅちゅしのザビエラじゃ!」
「呪術師って言えてないよ。それよりさっきから何吹いてたの?」
「これか、これはのう、物々交換で手に入れた鳥の笛じゃ!」
ザビエラは鳥の笛をドーンと掲げて見せた。
「ザビエラも、物々交換会に参加してたんだ」
「…という事はおぬしも参加したんか?」
「うん、このポーチを貰ったの!」
ラズリはポーチをザビエラに見せた。
「ほう、おぬしもいいもん貰ったのう」
「でしょー。そういえばザビエラはなんでこんな所で笛を吹いてたの?」
「それがのう…散歩しとったらわしの天幕を見失ってのう」
「迷子になったんだ…」
「そうじゃ!」
なぜかザビエラは胸を張って堂々と言い切った。
「…一緒に天幕を探してあげる」
「おう、それは助かるのう」
「そして、ザビエラをわたしの子分にしてあげる!」
ラズリはビシッとザビエラを指差しドーンと言った。
「なぜじゃー!」
「だって、一緒に探してあげるってことは、わたしがザビエラの面倒をみるってことでしょ?」
「う、うむ、確かにそうじゃな」
「それは親分が子分の面倒をみるのと同じ! だからザビエラはわたしの子分なの!」
「な、なるほど!」
ラズリの滅茶苦茶な理屈にザビエラはなぜか納得してしまった…
「じゃあ、行くよ」
「うむ」
ラズリはザビエラを引き連れて歩き出した。
しばらく歩いていると、ヌールが歩いていた。
「あ! ヌール!」
「ザビエラ! …また迷子になったの?」
「うむ、だからラズリと一緒にわしの天幕を探しとるんじゃ!」
堂々と言い切るザビエラにヌールは呆れていた…
「そう…それじゃ二人ともあたしが送ってあげるわ」
「わたしは迷子じゃないよ!」
「そうじゃ! 迷子はわしだけじゃ!」
小さい二人組に迫られてヌールは少し困っていた。
「えーと、ラズリちゃんだっけ? あなたはなんでザビエラと天幕を探してたの?」
「散歩してたら、ザビエラと会って、迷子になってたから一緒に天幕を探してあげてたの」
「…分かったわ、ザビエラはあたしが送ってあげるから、あなたは一人で大丈夫ね?」
「うん、大丈夫だよ」
ヌールがザビエラを連れていって、その場にはラズリが残された…
(あのヌールって人、始めて会ったはずなのにどこかで見た様な気がするんだよね…どこだっけ…)
ラズリはどこで見たか考えながら自分の天幕に帰っていった…
その頃、ラピスは未だになんでもする券の前で悩んでいた…そしてその券には、ヌールの似顔絵が描かれていた。
あとがき
物々交換会でいいものを貰ったのでいろんな人に見せてみました。
リズクさん、マルヤムさん(呼び名だけ)(一磋さん)、ザビエラさん(藤乃蓮花さん)、ヌールさん(春乃はじめさん)お借りしました。
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