個人加盟を柱とする組織原則の確立


 高知般労働組は高知県在住で、労働を供することの出来る労働者ならばすべての労働者が加入できる個人加盟方式の労働組合です。

 戦後GHQの民主化政策の中で多くの企業で労働組合が結成されました。高知一般労働組合も戦後いち早く高知一般の前身である「高知県中小企業労連準備会」として活動し、1954年総評第5回大会における中小企業に働く労働者の組織化方針に基づき、1955年全国一般の全身である「全国一般合同労組連絡協議会」に参加しました。1956年1月29日正式に結成し、1958年に全国一般高知地連とし、高知県の中小企業で働く労働者を組織してきました。

 しかしながら、中小零細企業では常に倒産の危機が存在し、倒産と共に企業別組合は解散し、また、労働者の当面の要求で労働組合を結成するも、一定の要求を実現すると労働組合は自然解散してしまうなど、多くの企業内労働組合では企業との運命共同体組織に陥り、労働組合組織が企業の内部に埋没してしまう事態が生じていました。

 特に中小零細企業の労働者の労働組合組織は、常に結成と崩壊が隣り合わせに存在し、個別の企業の状況に多くが左右され、社会的、横断的に行われている「搾取」と「収奪」に対して結成と崩壊、離合集散が容易に発生する組織形態では、全ての労働者、とりわけ零細企業で働く労働者は常に無権利な状態に置かれていました。

 このような、企業別労働組合組織の致命的欠陥を克服し、企業運命共同体との決別を目指し、1963年の第9回大会で規約改正し高知一般労働組合として、統一労働組合を目指しその手段として企業、職種に左右されない企業の外に労働組合が存在する個人加盟を柱とする組織原則が確立されました。



個人加盟組織の重要性


 1998年に労働基準法が改悪され、多くの職場で変形時間労働制が導入されることにより、労働時間の不明瞭化が進み、どれが残業で、どれが通常時間かを把握するのが労働者にとって困難になりました。その中で、多くのサービス残業(未払い労働)が生まれ、過労死、過労に起因するうつ病に至り生活を維持することが出来ない労働者が生み出されています。

 また、1999年、2003年と相次ぐ派遣・請負法、職安法の改悪により、ありとあらゆる職種に雇用責任が不明瞭な上に非正規労働者という名の不安定雇用労働者の層を大量に生み出しました。これらの層は、常に雇用と解雇を繰り返し、不採用を恐れ、労働者としての基本的権利を主張できないまま、更なる悪条件にゆだねるしかない状況になっています。

 今の雇用状況は、派遣や請負に代表されるように多くが非正規雇用労働者で働いています。いまや3人に1人が非正規といわれ、若年層にいたっては2人に1人といわれています。

 このような非正規雇用労働者の雇用実態は、必要なときに必要なだけ不定期な日時で利用される看板方式労働となっています。しかも企業の社会保険負担分さえも削り社会保険にすら掛からないような時間数で労働させられ、結果、月収が最低賃金額(最低賃金時給×法定労働時間)に満たない労働者が生まれています。

 90年代に入って労働基準法の改悪、派遣・請負法の改悪により、過労死、サービス残業、フリーター、ニート、若年ホームレス、ワーキングプアや隠れたホームレスであるネット難民など20年前とは異なった形での社会問題が急激に噴出してきました。

 しかし、これらの問題は、形こそ異なっていますが根底に流れている問題点は、高知一般が設立した当時と原点は変化していません。それは「格差と貧困」この問題であり、より労働者に対する搾取が巧妙になったにすぎないのです。

 今まで述べたように、巧みに変えられてきた雇用形態の変化により、日本の社会通念上戦後一貫して続けてきた社員のみで構成する企業別労働組合方式それらの連合体である産業別労働組合方式では、これらの非正規労働者に対応できない状況が生まれ、派遣・請負や非正規雇用労働者の増大により多くの人材が置き換わることで、企業内組織労働者の権利そのものも切り下げられ、全体の労働条件そのものが底辺に流れてゆく事態が生まれてきました。このことは、歴史的に言われている、組織できてない労働者、すなわち失業者・派遣・請負・パート・アルバイト・期間雇用、などの非正規雇用労働者が労働者階級自身の足枷になっていることを如実に証明しています。

 そうした中、各県の地域労連や産業別労働組合の援助、指導のもと新たに個人加盟を主体とした労働組合が結成されだしました。青年ユニオン、地域ユニオンなどがその代表です。

 これらは、高知一般が誕生したときに掲げた、企業内組合の致命的欠陥(企業や労働者の身分の名前を冠した組合により企業または身分の下におのずと縛られてしまう)を克服し、企業との運命共同体から決別し、企業の枠を超えて労働者の統一と団結をはかる、その手法として、個人加盟(労働者が自らの意思の下に個人が自立して集う)の組織を継続して発展させてることが、今、改めて再認識されています。




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