1962年2月23日常任執行委員会決定
最低賃金制度の闘いについて


 われわれは、最賃制の闘いについて「労働賃金の問題であり、日本の労働者階級の独占資本に対する経済的要求にもとづいた統一賃金闘争」として取りくまなければならないということを主張してきた。
 しかし、従来までの賃金問題についてのさまざまな混乱と理解の不足により、最賃制の闘いに全労働者を統一できなかったことが、この最賃制の運動を発展させる経過の中で証明されているところである。
 常任執行委員会は、再びこの最賃制の闘いにおける従来までの運動の欠陥を明らかにするとともに最低賃金制闘争の持つ基本的内容について討議し次のように一致を見た。

一.
 まず、今までの闘いの中で欠陥として明らかにされた点は最低賃金闘争の持つ次のような重要な闘いの内容が運動を進めていく上で不十分であったということ。すなわち独占資本に対して労働者階級としての独自の賃金水準(その国の生活消費基準)を設定し企業の経済的存立条件及び労働者の生活条件を全面的に向上させるために独占資本、政府の政策を変えさせてゆくための労働者階級の統一闘争であるというこの闘いの本質的な意義が雇主に対し、労働条件、賃金の改定を要求する闘いと混同され、理解されてきたということである。
 この根本的な誤った理解が、最賃闘争のとらえ方を単に最低賃金労働者の賃金を引上げてやるものであり、又それらの労働者が活動の主体であるかのように受け取られたり、最賃制を法制化することによって、これらの低賃金労働者を救済するものであるかのような社会保障的意義においてとらえられたり、逆に法制化ということが法律化闘争、政治闘争としてのみとらえられ、街頭行動などの政治的な大衆カンパニアと議会における行動に重点がおかれるような運動となってあらわれていた。このような運動上の混乱は労働者階級の最賃制についての考え方を不統一にし、さまざまな考え方を生み出して来た。
 我々は、このことを明らかにすることによって運動上の混乱と不統一を克服するために、当面最賃制闘争についての考え方を一致させて運動に取り組む姿勢を作り上げることがさしせまった問題である。

二.

 我々は毎年、毎年賃上げ闘争をやっているが、我々の生活条件は一向に向上してないし、ますます多く働き、労働強化させられてきている。我々が賃上げにおいていつもぶつかるのは、所謂企業の支払能力というやつである。事実、個々の企業において我々が賃金引上げの闘争をしても、最終的には現在の低賃金から脱却できるだけの賃金を支払うことが出来ないような独占による全政策がその経営を貫かれているということは常に主張してきたことである。
 すなわち、我々の賃金闘争が、個々の経営の雇主をのみ対象としてきたということもあるが、国家の経営政策がそのような経営の状態を生み出しているという所に基本的な原因がある。ということを運動の中で明らかにしなければならない。
 独占資本は国家の経済政策を通して全労働者の大部分を構成する所謂中小企業の労働者に低賃金をおしつけ、労働者の内部に差別を持ち込むことによって搾取と収奪をしている。その上、組合運動に弾圧と干渉を加えている。同時に、職場においては、系統的に労働者の権利が奪われ、差別と分裂をたえず持ち込もうとしている。
 このような状況のもとにおける労働者の闘争と、組合運動は職場においては労働者の民主的権利を擁護し、自由な労働組合活動を確立していくことによって最終的には労働者階級の巨大な「統一」をつくるあげることが、労働組合活動の中心的な任務であるということを第七回大会で明らかにした所である。と同時に日本の労働者階級の低賃金状態が、国家の経済政策によって形成され、維持されている以上、労働者の全面的な生活水準の向上を目指す闘いは、独占に対してそのような政策を変えさせる労働者階級の統一した闘争という二つの側面における労働者の闘争のために組合運動の姿勢以外にはないのである。

三.
 労働者階級が、その国家の政策を変えさせ、全面的な生活水準を獲得してゆくための具体的な闘争、労働者階級がそのための武器としてつかう闘争は、社会保障の充実もさることながら、最もさしせまって当面している課題は最低賃金制度の闘いであることが明らかになってくる。
 国家のすみずみに到るあらゆる側面の経済的生活は、独占の政策によって決まっている今日の日本の資本主義の段階において、労働者の生活水準を規制するものは一国の生産、再生産の構造のなかで労働者の消費部分が占めるべき割合とその基準であることはいうまでもないことであり、最低賃金制闘争はそのような一国の生産における労働者の消費基準を規制するものであり、労働者の側からすれば労働者の生活の最低基準であり、それが労働条件、賃金の最低基準である。
 このように労働条件、賃金の最低基準は一国の生産における消費基準と結びついているから、的確な最低賃金制を実現するためにはあらゆる経済的分野でそれが可能となるように国家の経済政策を、それに応じたものにかえさせなければならないわけで、最賃制闘争は、独自な労働運動であることを、いやおうなしに理解させるし、当然この闘いは労働者の巨大な統一闘争になしには不可能である。

四.
 したがって、その全国一律最賃制の闘いは、いわゆる賃金闘争とは質を全く異にする闘争であると同時に、密接不可分の関係にあるのである。
 最近、各地方において雇主との間における地域的最賃協定の運動がとりあげられ、各単産でも産業別最賃協定が論議の対象となってきているが、それらは、全国一律最賃制を獲得してゆくための戦略行動の一環としては大きな意味を持つ。したがって、これら地域的最賃協定、産業別最賃協定は、前に示した最低賃金制闘争のもつ基本的な観点から指導され、点検されなければならない。わらわらが日常の賃金問題の処理「明確な労働条件の設定」のための活動を賃金における差別をとりのぞき、労働者を統一させるための活動として提起しているのも、そのためである。
 われわれのあらゆる日常の諸活動は、「労働者の巨大な統一」をつくりあげる観点で指導され、点検されなければならない。

五.
 最低賃金制の闘いは、全労働者階級の闘いであり、この全国一般の考え方は、直ちに全体の最低賃金制度の闘争の考え方となるものでではないが、我々はこのような考え方で一致して全体の戦線に参加し、わらわれの考え方を各部署でひろめてゆくという前提の上に立って常任執行委員会は意思統一した。
 我々は、以上のような常任執行委員会の一致した結論を持って、ただちにブロックごとの集合の中で討論を開始した。この中で、明らかになった重要なことは、実際に組織労働者の大多数のものの現在の賃金は8,000円よりも高いので、工場労働者や都市では、ほとんどこの要求に関心をもっていませんでした。
 このことは、地域最低賃金を10,000円へのとりくみをみると、全国一律最賃制へのとりくみよりも一段と活発に活動がなされたことからもうかがえることである。この最賃制の要求に労働者と労働組合に関心を持たせるためには、もっと現実的なものにしなければならないということである。又多数の労働者が総評に参加していないのであるから、この要求がほんとうに労働者の要求に固く結びついていつということを明らかにしないと、統一と連帯を形成することはいっそう困難であるし、労働組合の訓練のための訴えにもならない。
 この問題に関する活動の総括をするに当たって、我々としては、以上のいろんな諸問題点のいくつかの本質的な側面をどのように埋めてゆけばよいのかということに正しく取り組む用意を実際に準備しなければならない。
 我々は、最賃制の討議が進むにしたがって、われわれの一般労組と賃金問題の方針が正しいことを益々確信できたと思う。我々が提示している行動の方針とは、職場の団結から地域の結合へ、そして労働者階級の統一をもって、独占と、その政府に対決させるための重要な闘いの武器であることを知り、それに向かって行動を組織する準備をしなければならない。


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