野宿遍路の記録

遍路を終えて

わかったこと、感じたこと

 平凡、普通であることのありがたさ
ケガ、病気なく普通に歩ける喜び。足摺岬の手前で足が痛くなり、一時はリタイヤも考えたが、幸いたいしたことはなかった。その時感じたのは、少しでも故障があると普通の生活を送ることができない。普段は感じない平凡、健康、普通のありがたさだった。

 千里の道も一歩から
 日和佐から県境を越えて室戸岬までの道は、遠く、単調な海岸線が続く。前を見ても全然進んでいるようには思わなく目的地は遠い。しかし後ろを振り返ると、知らぬ間に長い距離を歩いているのがわかる。
 「継続は力なり」、とにかくゆっくりでも足を前に出していれば必ず目的地は近づいてくる。立ち止まれっていれば絶対に目的地は近づいてこない。
足を交互に前に出してさえいれば、速い、遅いの差はあるが必ず結願出来ることがわかった。

 善意に支えられている四国遍路
 四国ではお遍路文化が存在しており、お遍路といえば、水戸黄門の印籠のようなものとなっている。それは、お遍路自身に対してではなく、同行二人の弘法大師に対してであると思われるが、みんな親切にしてくれ、便宜を図ってくれる。
 たとえば、あるバス停に泊まった時のことであるが、当然バス停には水もトイレもない。横に運送会社があり、そこを経営している家のおばあさんが、社員に対して「お遍路さんを大事にしなさい。洗面所、トイレを借りにきたら自由に使わせてあげなさい」と伝えてくれており、夜中であろうと自由に使わせてくれていた。お接待、善根宿等も同じである。
 世界遺産に登録云々の話があるが、遍路道だけでなく、お接待等を含めたお遍路文化は登録の価値があると思った。

 お接待
 話には聞いていたが、実際にお遍路してみてお接待の実態がよくわかった。ほぼ毎日何らかの形でお接待を受けた。特に歩き遍路経験者とお年寄りによくお接待をしていただいた。
 場所は田舎の遍路道が多く、国道等は通行中の自転車、車の人がお遍路を見かけて車を止めて、お接待を受けるのが多かった。
 あめ玉1個でもお接待でいただくと、あめ玉の効果以外に、気分的、精神的に元気がわいてきて、足取りも軽くなり、疲れも飛んでいった。
 食事
 遍路道沿いにある飲食店の多くが閉鎖しているのを見かけた。看板だけが残っているのを見ると何となく寂しさを覚える。また、遍路道沿いに店がない場所が多い、こんな状況なので食事とか、店での食料購入をあまり当てに出来ず、へたをすれば食事抜きになるため常に食べ物を持って歩かなければならなかった。

 自動販売機
 田舎にある自動販売機はコカコーラの自販機がほとんどだった。違う種類のお茶を飲もうと思ってもないので、よく爽健美茶と綾鷹を飲んだ。

 お遍路日数
 私は39日で廻ったが、正直言ってゆとりがなかった。ただお寺に行ってお経をあげ、納経帳に印をもらい、次のお寺に向かって歩くだけ、だった。
 何回も廻っているのならそれでも良いが、初めてお遍路するのなら45日から50日程度をかけ、途中の景気を楽しんだり、ゆっくりお寺を見学したりして、1日に歩く距離も30Km程度以内にすれば、ゆとりを持って楽に廻れるのではないかと思った。

 荷物の重さ
 私はパソコンと野宿用具を持って廻ったため、体力的に全てを背中に背負うことが出来ず、8Kgを背負い、7Kgをカートに積んで引っ張っていった。
そして山道等で、カートがどうしても引けないところだけ、全てを背負った。
 この経験から、荷物は出来るだけ軽い方がよい、カートを引くのは舗装路はよいが、遍路道は山道が多いため引けない。どうしてもカートを引くなら、山道は全ての荷物を担ぐか、山道を通らず全て車道を通る覚悟が必要と思う。
 荷物が軽ければ軽いほど、楽に遍路が出来ると思う。

 野宿について
 遍路の原点は野宿との考えからだと思うが、遍路の服装で野宿することに対して、一般的に非常に理解があるように感じた。
 野宿していて、野宿はダメだとか、あっちへ行けとか言われたことはなかった。野宿するならそこより、どこそこの方がいいですよとか、警察が定期的にパトロールしてくれていたりと、安心して野宿できた。(一部不心得者がいて、地域の人に迷惑をかけたりして野宿禁止になっている場所がある)
 私は、11月中旬に結願したが、この頃までであれば、寝袋があればテントなしでそんなに寒くはなかった。
 野宿と言っても実際は、善根宿、通夜堂、大師堂等を主体に泊まれば畳の上で、布団で寝られることが多い。
 野宿は、なんと言っても安くお遍路出来ることが魅力である。

 お金なしでお遍路も可能?
 無一文で廻ったお遍路に聞いた話では、2〜3日ミカンとか柿だけで過ごした日もあったが、88ヶ所無事廻ったとのこと。
 「お腹が減っているのですが、どこかお接待してくれるところはないですか」と納経所で聞き、事情を聞かれると、お金がないいきさつを説明する、そうするとお金をくれたり、お供え物をくれたり、食べ物をくれたり、「あすこへ行くと何か食べるものをお接待してくれますよ」と教えてくれるそうだ。納経帳はお接待で書いてもらう。また、果物があったり、人が作業をしていそうな道を選んで通り、作業をしていれば「お腹が減っているので、一ついただけませんか」と言えばお接待してくれるそうだ。
 もちろんお寺によっては相手にしてくれないお寺もあり、逆に「それは大変ですね、がんばって廻って下さい」と親身になってくれるお寺もあったとのこと。概して札所のお寺より、番外など札所外のお寺が親切だったとか。
 札所では、通夜堂があるお寺では、ほとんどのお寺が親身になってお接待してくれたそうだ。
 なお、お遍路で生計を立てる職業遍路という人たちもたくさんいるそうである。

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四国遍路とは

 私的な考え
 
お遍路をする目的はいろいろあり、みな違っていると思う。
願い事、祈願かけ、またそれらが成就したお礼のお参り、また、私のように、普段は何か行事がある時だけお寺頼みと信仰をしている、ある意味観光と信仰をあわせた興味本位のお参りなど。
 願い事、お礼参りなどは、目的がはっきりしているので横におき、ここでははっきりとした目的がないお遍路について述べる。

 四国遍路とは、壮大なスタンプラリーである。
  コース:自由だが一応昔からのコース、遍路道がある。
  ポイント:四国内88ヶ所のお寺、番外・奥の院など特別ポイントもある。
  スタンプ:納札を納め、納経帳に朱印をもらう。但し朱印は有料
  ラリーの方法:参加は無料で自由参加、徒歩、自転車、車、何で廻ってもよい、ポイントを廻る順番も一応番号はついているが、どこから廻っても可、一度に廻っても、何回に分けて廻っても可、ポイントの審査なし、自己審査、賞品なし、
  ボランティア:コース途中にボランティアがいて、お接待で参加者を支援、援助してくれる。
  効果:ラリー創始者弘法大師のご加護が受けられるという精神的な満足感が得られる。
      ポイントは四国内各地に散らばっているので全部廻れば、四国一周の観光が出来る。
      歩いて廻れば山あり、谷ありの道を1200Kmウォーキングすることになり健康に良いと同時に達成感を得られる。
      小旅行であり、気分転換、ストレス解消になる。
      お寺にとっては、営業活動しなくてもお客がきてくれ、ただ座って朱印を押すだけで、収入が得られる。
      スタンプの押されたスタンプ帳は、非常にありがたく、仏壇に祭られるなどして大切に保管される。
      お接待を受けた参加者は、ラリー終了後、今度は自分がお返しをしようという気になる。その結果ボランティアになるケースが多い。
  その他:徒歩でのラリー参加は、日数もかかるし、多大な費用もかかる。そのための支援策として、善根宿、通夜堂等が利用でき、野宿に対する関係住民の理解も深い。

 このような見方をすると、お遍路は非常に優れて完成されたスタンプラリーのシステムであると考えられる。
 スタンプラリーと割り切ると、四国遍路をもっと自由に、気軽に参加して楽しむことが出来る。その結果、上記の効果が得られれば一石二鳥と思う。

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宿泊先、費用等の実績
 体重等の変化
  体重 53Kg → 49Kg  4Kg減少
   (30数年間53〜55Kgで一定していた)
  杖の長さ 1300mm → 1265mm  35mm摩耗
   (木の種類、杖のつき方にもよるが私の場合は35mm摩耗)
  靴底(ビブラム底)の減少 写真の通り
   
   (底の摩耗は、1400〜1500Km程度が限度と思われる)
 宿泊先内訳
 
 旅館、民宿等   12泊          善根宿    4泊
   善根遍路宿     2泊          通夜堂    3泊
   お堂           1泊          バス停等   6泊
   JR駅          2泊          ヘンロ小屋 3泊
   東屋          3泊          道の駅    1泊
   山門           1泊          自家用車  1泊

  善根宿:個人が善意で設置している無料の宿泊所、布団があるところが多い、洗濯機、風呂、まれに食事付きの宿有り
  善根遍路宿:善根宿と同じだがわずかな金額が必要
  通夜堂:お寺が設置している無料宿泊所、本来はお寺で葬儀の時、ここでお通夜をしていた
  ヘンロ小屋:「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」が設置している休憩所で宿泊可の場所と不可の場所がある、壁はなし
  バス停:屋根付きで三方に壁があり、まれに入口に扉あり
  東屋:屋根のある休憩所で構造はヘンロ小屋と同じ、壁はなし

 費用内訳(概算)
  旅館・民宿代    83,000円
  飲食代        49,000円
  乾電池代        3,800円(GPS、ICレコーダ、懐中電灯用)
  洗濯代         2,800円(宿泊費と別の旅館が多い)
  交通費         1,700円(1番霊山寺への往復交通費)
  お接待         2,100円(お接待をした分)
  その他         5,300円
  お寺に納めた費用 45,760円(納経料300円、白衣200円、お賽銭20円)
   小計        193,460円
      高野山関係      25,840円(旅館・飲食代・交通費等)
                       820円(お寺に納めた費用)
       小計         26,660円
   合計        220,120円

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無料宿泊所、野宿場所等の情報について
 無料宿泊所、野宿等をしてお遍路をする人で、情報が欲しい人は、善根宿「不二一元アシュラム」さんが、1番〜八十八番〜高野山までの無料宿泊所情報一覧 「四国霊場八十八ヶ所巡礼(善根宿・通夜堂・野宿場所等指南云々)」を作成しているので、連絡をされると良いと思います。また、一番霊山寺の駐車場横売店(納経所)でもいただけます。
 「不二一元アシュラム」さんの連絡先
  090−5717−9096   080−1271−4300ユアサ様
 この情報は、H21.11.17現在の情報です。


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