断層
江畑断層 1996
まんのう町の土器川沿いの天川神社付近から,西方に向かって,江畑地区,五毛地区,財田川沿いの七箇久保地区,山脇地区と断層線が伸びている。この間は,断層露頭が見られ,断層に沿って断層地形もはっきり認識できる。国土地理院の25000分の1の地形図を広げれば,断層線を推定することは容易である。
まんのう町炭所の東江畑地区では,東西の断層崖と考えられる地形から砂防ダム上流部に断層面があると推定して,河床を歩いたが,断層面を見つけることはできなかった。しかし,和泉砂岩層が破砕されているような露頭はあった。
西江畑地区から東を望む断層崖 西江畑地区の断層面
中江畑から西江畑にかけては,断層崖が発達し,写真画像ではわかりにくいが,断層地形特有のケルンコル,ケルンバットがはっきり認識できる。また,右側の写真は西向きに撮ったもので,東斜面であるが,中央近くで斜面に段差ができているのがわかる。接触部の露頭は確認できなかったが,写真の左側が和泉層,右側が三豊層があるのは確認できる。
(北緯34度8分52.86秒 東経133度54分3.88秒付近)
中江畑地区では断層露頭が見られる。中江畑の林道を南に向かい,林道西側の中江畑川の河床東壁に露出している。
(北緯34度8分49.22秒 東経133度54分23.35秒付近)
北側の第四紀鮮新世三豊層の含小礫砂質シルト岩に南側の白亜紀和泉層の含礫花崗質砂岩が
N60°E,40°Sで衝き上げている。
断層面は断層粘土を有し,和泉砂岩は変質し変成岩状になっている。
林道東側法面は草に覆われ断層面を確認することはできなかったが,所々に見られる三豊層と和泉層の地層から推定することはできる。
まんのう町炭所の西江畑地区
砂防ダム上流部より東の断層崖を望む 砂防ダム上流の破砕された和泉砂岩層
まんのう町炭所の中江畑地区
西江畑地区のケルンコル,ケルンバット
上の写真の断層面の箇所を ,西江畑地区西端の南北に通る車道から撮影したもの。写真中央左の植生が無く崖が露出いている所が三豊層である,その頂部の木が生えているところがケルンバット。その右の鞍部の植生があるところがケルンコル,そこを境に右側(南部)が和泉層である。
まんのう町七箇の久保地区
西江畑地区の河岸段丘
断層崖付近から,西江畑集落を俯瞰した。崖直下は金倉川の上流部であるが,断層面は確認できなかった。高さ3〜5mほどの河岸段丘が見られる。断層運動に伴う変位地形であることが考えられる。
七箇久保地区の財田川西岸に断層露頭が見られる。
(北緯34度8分18.47秒 東経133度52分8.12秒 付近)
北側(写真に向かって右方向)の三豊層の含小礫砂質シルト岩に南側の和泉層の変成岩状の砂岩が東西の走行,40°Sで衝き上げている。断層面は断層粘土を有している。
主な参考文献 活断層研究会編(1980)日本の活断層.東京大学出版会
寒川 旭(1973)阿讃山地北麓の断層地形.東北地理.25-3
岡田篤正(1973)四国中央北縁部における中央構造線の第四紀断層運動.地理評46-5
岡田篤正(1970)吉野川流域の中央構造線の断層変位地形と断層運動速度.地理評43-1
岡田篤正(1968)阿波池田付近の中央構造線の新規団蔵運動.第四紀研究7-1
中川 典(1965)讃岐山脈西部の中央構造線.広大研報14
辷り尾谷川河床の変成岩状の砂岩 辷り尾谷川東岸の段丘礫層
本地点から400mほど下流に下った所に,南の尾ノ瀬山から流れ出している辷り尾谷川の合流点がある。ここから辷り尾谷川を少し遡ると河床に変成された和泉砂岩を見ることができる。また,河床部から東岸の崖を見上げると,高さ10m付近に巨礫をむくむ段丘礫層が露出している。
ここから西の山脇地区まで尾ノ瀬山北面は断層崖と成し,財田川沿いは一種の河岸段丘を成している。