香川の山
香川を代表する山の地形として円錐形状の飯野山,テーブル状の屋島がある。地形用語では,円錐形状の地形をビュート,テーブル台地状の地形をメサと呼ぶ。飯野山も屋島も上部は古銅輝石安山岩(凝灰岩や角礫岩も含め讃岐層群と呼ぶ),下部は花崗岩から成る。山頂部に安山岩があると言っても火山地形ではなく,大量の溶岩が流れた後,浸食作用を受けて,溶岩の分厚い箇所が浸食されずに山頂部として残り,現在のような山の形になった浸食地形である。
香川の平野には,このようなビュート地形やメサ地形の山が多く,他県にはない独特な景観を成している。
香川県では,富士山のように,特にきれいなビュート状地形を成す山を讃岐七富士と呼んでいる。
讃岐七富士(ビュート地形)
飯野山(いいのやま)(讃岐富士)421.7m
丸亀市
飯野側登山口付近から讃岐岩質安山岩(古銅輝石安山岩)の角礫が転がっている。サヌカイト(讃岐岩)ではありません。登山道沿い標高240m付近には讃岐岩質安山岩の露頭が見られる。
春には,ナガバノタチツボスミレが可憐な花を見せる。
丸亀市川西町龍王より東北東方向に撮影
堤山(つつまやま)(羽床富士)201.5m
丸亀市・綾川町
綾川町堤地区に登山口がある。
山頂まで直登のルートで30分もあれば到着する。登山道沿いに讃岐岩質安山岩の角礫を確認できた。古代には,山麓部には,堤,渡池,池尻などの地名が残り,古代には大きい池が築かれていたらしい。また,綾川は堤山の付近から流れを北に変えるが,かつては西流し,大束川に流れていたらしい。(河川争奪地形)
綾川町脇,宮武橋付近より西南西方向に撮影
高鉢山 (たかはちやま)(綾上富士) 512.0m
綾川町
讃岐七富士の中では,最も標高が高く512mある。高鉢山は平野の孤立峰ではなく,花崗岩山地のいくつかある山頂の中で,容姿が円錐形状のきれいな形になったものである。中腹には風穴が有り夏でも涼風がでている。写真の建物の背後の台地は高位段丘堆積物である。左奥の山は大川山(だいせんさん)1042.3m。
綾川町山田下,城山大神宮付近より撮影
六目山 (むつめやま)(御厩富士,檀紙富士)
317.0m 高松市御厩町,檀紙町
右から御厩富士(六目山)317m,伽藍山216m,狭箱山(ばさこやま)185m。いずれも山頂部は讃岐岩質安山岩,下位は花崗岩及び閃緑岩から成る。六目山は中位に凝灰岩類を一部挟む。高速道路が六目山と伽藍山の間を通っているので,高速道路を通ると道路北方の伽藍山の姿が見えてくる。
高松市国分寺町国分,神崎池付近より撮影
白山 (しらやま)(三木富士,東讃富士) 202.7m
三木町
下部は花崗岩,上部は黒雲母安山岩から成る。南部の白山神社から遊歩道が整備されており,山頂部には展望台があり360°の視野が開ける。山頂部には柱状節理状の岩盤が露出している。
白山はミドリシジミ類やヒョウモンチョウ類等蝶相の豊かな場所として有名である。
三木町氷上付近より撮影
爺神山 (とかみやま)(高瀬富士) 214m
三豊市高瀬町
爺神山の東部分は,山体のおおよそ半分が採石の為削り取られている。この写真は南西側から撮影したため削り取られた部分は殆ど見えない。
国土地理院発行の1942年の航空写真には削られていないきれいな山体が見える。1968年の地形図では標高125〜175m付近が採石されていること,1997年の写真ではほぼ現状と同じになっていることが分かる。 三豊市高瀬町比地付近より撮影
江甫草山 (つくもやま)(有明富士)153.00m
観音寺市
有明浜から見ると,採石後の岩盤が露出している。山体の殆どが讃岐岩質安山岩から成り(一部凝灰岩及び凝灰角礫岩)下部に花崗岩類が見られないから裾野はあまり見られない。登山口は北側にある。
観音寺市八幡町付近より撮影
その他,讃岐平野の山
我拝師山 (がはいしやま)481.0m 善通寺市
左後方に見えるのが中山(439m)火上山 (408.9m)。我拝師山と中山の鞍部には七十三番出釈迦寺の奥の院がある。
善通寺市大麻山中腹より撮影
五剣山(ごけんさん)366.1m 高松市庵治町
左側は女体山,右側が五剣山。山肌が切り取られているのは採石場。きめの細かい黒雲母花崗岩は日本でも最高クラスの高品質を誇り,庵治石として有名である。
飯野山から見た丸亀平野
左側より大麻山(おおさやま)616.3m,我拝師山山系,雨霧山(あまぎりやま)382m,香川県唯一の一級河川土器川が左から右方向へ北流している。また,平野部は条里制の影響を受けた長方形の水田が目に付く。金丸池など溜め池も多くある。香川の溜め池は,その形状から山麓池,台地池,平地池(皿池)など分類されるが,平野部には底の浅い皿池が多く見られる。