医師とその弟子(後編2)H.12.07.06
トウタが出ていってから、シュウはあらためて、私の帯に手をかけた。
めちゃくちゃになっていた帯を解き、その下の紐をゆっくりほどいていった。
そして袖を通したままの、はだけた私の体をじっとりと眺めている。
まるで、全身、視線に犯されているようだ。こういうことを、私もしたことがあるが、
されるのは、はじめてだ。

「罪深いカラダだな、ホウアン先生。なにも気づかなかったのか?」
いやらしい声だった。するならさっさと、することを……して……私を解放してほしい。

……して、ほしい?
体が、うずいている?

「手にすいつくような肌、というのは、こういうものかと思うよ。その首、その手……」
シュウの手が、私の首筋にかかる。
それは琴を弾くように、私の肌を爪弾きながら下まで降りてきた。
こんなに簡単に、鳴らされる体だったのか?
こんなヘタな愛撫に、思わず腰を浮かせて脚を開くような、たやすく煽られるような。

「トウタとおれは、同類だ。風呂でお前を見るたびに、むらむらしたものだ、気持ちはわかる。お前の腹も、胸も、肩も、尻も……きゃしゃなくせに、ふっくらしてて……着物なんかで隠してるのはもったいないが、誰にも見せたくない、お前はおれのだ……」
「……」
「根性座ってて、あの地獄みたいな戦場で顔色もかえない。かわいい顔して、なんてタフなやつだって、おれは惚れたよ、ホウアン先生。脱いだところ見て、もっと惚れた。こいつを掘りたいと思ったさ」

口走りながら、私を横向きにして、着物をめくり上げ、尻をわしづかみにした。
それから力強くもみしだき始め、ときどき歯も立てた。

「いい尻だ。幅が狭いのにたっぷり盛りあがって、柔らかくて。おれでなくても、欲情するよ」
「あっ……」

ぐいと押し広げて、やつは指を這わせてきた。
目的の場所に、焦らすように近寄ってくる、やつの指が。
もう一方の手は、脈打ちはじめた股間を握って、動き始めた。

「このかわいい尻の奥まで、おれのをぶちこんでやりたくてたまらなかった。お前のかわいいセガレを舐めて……戦争なんか放っておいて、一晩中泣かせて、めちゃくちゃにしてやりたかった!品行方正な先生、あんたがあのトランの男をくわえこんだと聞いて、気が狂いそうだったよ」
「…………」
「あれがはじめてだったんだろ、わかってる。でももうはじめてじゃない、お前はもう」

太い指が、私の中に忍びこんでくる。
「う……っ、シュウ……ちょっと待っ……」
「おれなしでは、一日もいられない!」
「……あっ……待て……ったら……」

やつの熱いモノが私の中に突き刺さってきて、そしてそれは、いつにもまして固くて、冗談みたいに太かった。そうしてそのまま突き上げ始めた。
そんなやつのモノをくわえこんでしまった私のそれは、張り裂けるほど広がって、かっと焼けつくほど、熱い。
きっと、子供を産むときもこんなふうに熱いのかもしれない。
以前、私の患者の産婦が、「熱い」と叫んだことがある……「焼ける」と。
全開大の産道から、子供の頭が出ようとした、そのときだった。
肝の座った産婦だったが、彼女の顔は、痛そうで、それでいて恍惚としていた。

(力を入れたらダメ、裂けてしまうよ。息を吐いて、吐いて……大丈夫)
常々産婦に言うことばを、自分自身に言う。
やつの動きはあまりに激しかったので、突き上げられるたびに、着衣のままの私の体は床の上を滑った。
壁が、近づいてくる。顔を打つのは、まぬけ過ぎる。

私はひじをついて受けとめようとしたが、むなしく床をかきむしるだけで、自分の体が移動していくのを、どうすることもできない。
シュウの勢いが怖くて、私は叫んだ。
「シュウ、お願いだから、もうすこし、手加減を……!」

するとなだめるように、やつの熱い毛脛が、私のすねを撫でまわしはじめた。
そのうちに、目を開けていることもできなくなって、反応するだけの存在にされていくのが、自分でもわかっている。
後ろから抱えついたシュウが、私を犯す。頭の中が、ねっとりと濁っていく。
どうしてこんなに、こいつはいいんだろう。
そのとき、シュウの手が、私の精巣をつぶす勢いで握り締めた。
殺されるかもしれない。
私は悲鳴を上げたと思う。

それでも私の体は、歓喜していた。立ちあがった股間が、自分のものとも思えないほど大きく見えて、あきらかにそれは、涙を流して喜んでいた。
大きな声で泣き叫びたかった。

「声出せ、ホウアン。息しろ」
「……ふ……うっ」
「イキそうか?」
「……あっ……」

だらだらと私の股間から、子種が無駄に流れ出していく。
波の間を漂っているように、それとも母親の胎内に戻ったみたいに体が軽い。
そのまま、どのくらい犯されていたのか。その間、私はずっと雲の上を歩いていた。
こんなに長く続いたら、私はこの世に戻れなくなってしまう。

「う……すご……ホウアン!」
うめき声を上げて、シュウが私の上で震え、動きを止めた。

ひどく眠かった。まるで手術前の麻酔を打たれたみたいに睡眠に落ち、数分か、あるいはもっと長く、私は眠っていたらしい。
気がついたら、まだ私はやつの腕の中にいた。
四肢が重くて、どうも動けない。
不思議なことに、やつの異国風の香りが気にならなかった。鼻が慣れたのか。それほど悪い匂いではないのかもしれない。
べとべとする肌を合わせたまま、やつの指が私の髪をまさぐっていた。それはまるで情交の後、余韻を楽しみたい女にするようなしぐさだった。
不思議と、腹は立たなかった。さっさと離れろ、と以前なら思っただろうが。

「シュウ……すぐに洗ってきたほうがいいですよ」
「いや、いい」
「炎症起こしますよ、シュウ……どんなに細菌がいるか、知らないんですか?」
「もうちょっと、このままでいる」
「ダメです……あとで泣きますよ」
「腫れたら、先生に治してもらうからいい」

わがままだな。
奇妙なことに、胸に甘酸っぱい思いが広がっていく。不思議だが、もはやシュウ、それから自分に対する嫌悪感はなかった。
こういうのも、悪くないかもしれない。
私は、深い息をついた。

と思いきや。
また、性懲りもなくシュウが、私の尻に手を伸ばしている。
「シュウ……もう、今日はいいでしょ?」
「いいや、これからが本番だ」
「もう、充分堪能しました……へとへとです、もう」
「お前は黙ってよがっていなさい。これからトランへ行くんだろ、あの優男に会ってもよだれなんか出さないように、めいっぱいしておいてやるから」
しつこいんだから。でも、それだけ若いということか。
なだめるつもりで、また自分に言い聞かせるつもりで、私はこういった。
「……シュウ……だから、グレミオさんはそういうことはしないんです。それに、もう、会いにも行きません……嫌がられるだけだから……」

そういいながら、あの人が、またすこし遠くなるのを覚えた。
少しずつ忘れてしまう、それでいいのかもしれない。
不思議なことに、大嫌いだったこの男に、愛情めいたものすら感じ始めている。
内臓を分かち合うと、こんなこともあるのか。

「あの人は、私なんか……眼中にないんですから。だから……心配しないで、シュウ」
シュウは、私の呟きなど聞いていなかった。

「まだ宵の口だな。ホウアン先生、ところで、お前、フィストも始めてだろ?」
「げ……っ……」
「なにごとも、経験だよ、先生」

私はシュウの手の大きさを知っている。
あれを入れる気か!?
シュウは、にっこりして、でかい手を握ったり開いたりしている。
「ばかっ!私を殺す気かっ!!」
「大丈夫、やさし〜く、時間かけて広げてやるから。ちょっとずつな。知らないだろ、尻は女のアレより伸びるんだよ、お前なら大丈夫だから」
「い、いやだっ。シュウ、やめろ!」
「大丈夫、大丈夫。あとちゃんと手入れして、元に戻してやるから。お前のイクときの顔、落ち着いて、よく見ておきたいんだ。一回でいいから、な?絶対怖くない、痛くないから」
「いや〜〜!!やめて〜〜〜!!」

ほだされた私がばかだった!!


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