不注意なささやき
戦い終わって日が暮れて。
「坊ちゃんはもう十分強い。あとは学問ですね」
グレミオのすすめで、坊ちゃんはグリンヒル学園都市で、聴講生として学ぶことになった。
特に魔法や紋章のことについて、深い知識を得ようというのである。
聴講生には寮に入る義務はない。彼らは宿屋に住んでいる。
付き人は、ただ待っているのも時間がもったいないので、午後の何時間か、レストランで働いている。
「坊ちゃん、レポートの進み具合はいかがですか?」
今日は学校はないが、坊ちゃんは宿題と格闘している。
台所のほうが集中できるとかで、彼はテーブルの上で勉強しているのだ。
「まだまだ」
「ちょっと、見せてください」
付き人は、横からのぞきこんだ。
「……全然、なにも書いてないですね」
「何だか、気が散って集中できないんだ」
すかさず、リアム坊ちゃんは付き人のお尻をなでる。手のはやさは父親以上だ。
「ひっ、なにをするんですか」
「いいじゃないか、さわるくらい」
「坊ちゃん」
「何だよ」
少しは厳しいことも言うべきだろうか?
「やらしいことを考えてると、勉強どころじゃないですよねえ」
「……うん」
「無理もないですよね。私があなたくらいの年には、頭の中はそのことばっかり……」
「だから、な」
坊ちゃんはうれしそうに叫んだ。
「バトルしようぜ!!」
付き人は困り果てた。
「でも、だめですよ、坊っちゃん。レポートが先。私も、午後に仕事があるんです」
「今はまだ朝じゃないか」
付き人は顔を赤らめ、ため息をついた。
「だって、坊ちゃんほんとに激しいし……あと腰が抜けて、仕事にならないですから」
「余計にむらむらしてきたぞ」
「え、そんな……坊ちゃん、あの」
坊ちゃんはもう脱ぎ始めている。そのようすを見ていたグレミオは、納得した。
「なるほど。これは一大事」
「な?」
「まさに天の高みを指していますね」
「わかるだろ?」
「見てしまった以上……私としても放ってはおけません」
付き人は、壁に掛かった木製ハンガーを、リアムの一部にぶら下げはじめた。
「ほーら、何分ぐらいがんばれるかな?」
「遊ぶなっ!」
「ただのジョークじゃないですか。そんなに怒らなくても、ね」
グレミオは苦笑しながら、邪魔な髪の毛をまとめ、すっと体をかがめた。
「ちょっと失礼」
反射的に唾液がわいてくるのを飲みこんでから、付き人は口を開けて、リアム坊ちゃんの(わがままな暴君)を慰め始めた。
「うおおおっ、気持ちよすぎる」
「……」
「そ、そんなに舌を使って、お前って奴は」
「……」
「あああああっ、たまらねえっ!!!」
「……ひふはひ(しずかに)」
「こんなこと、絶対他のやつとしないでくれ」
少しだけむっとして、付き人は顔を上げた。
「当たり前じゃないですか……噛みつかれたいんですか?」
「……」
リアムはようやくおとなしくなった。
しばらくして、付き人はささやいた。
「とってもおいしかったです」
「飲んじゃったのか?」
「ふふ……気分が落ち着いたらお勉強してくださいね」
「舌がおかしくなるぞ」
「とんでもない!私はこれが好きなんです(グルメですからね)」
「なんだか気の毒だから、お返しにおれも」
「結構ですってば」
「我慢するなって、もうこんなになってるのに」
「ほっといたら収まりますから……」
「じっとして」
リアム坊ちゃんは、手早く下男のズボンを下ろし、腰をがしっと捕らえると、付き人の(さまよえる魂)を口にくわえこんだ。
「……坊ちゃん」
「……」
「……坊ちゃんの、いじわる……」
「んむむ」
「そんなことをしたら、……だめですってば」
「んーむむむむっ」
坊ちゃんは付き人のお尻に爪を立てた。
「あっ、そんな……もう許して……」
グレミオはせつなげな声をあげて坊ちゃんの肩をつかんだ。
坊ちゃんは上目遣いでグレミオを見ながら、さらに強く吸いこんだ。
付き人はうなだれて、目をつぶった。
「あ……とっても……」
「……ん?」
「……すてき……テオ、さ、ま……」
ぴくっ、と坊ちゃんの眉が動いた。
「今、なーんて言ったのかな?」
「……え?」
「言ってはならん一言を、お前は……」
「え?え?私は何て……何か言いました?」
「許さん!!浮気者、そこへ直れ!罰として、この場で犯す!!!」
「ひえええええっ!」
(おしまい)
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