お父さんといっしょ
 H.12.01.13
 グリンヒルからミューズへ抜ける街道は、すでに初夏だった。
 野辺をわたる風は野バラの匂いを含み、忙しい蜜蜂が、飛びまわっていく。
 街道沿いには麦畑が、金色の波を打つ。

 そこには、元気に歩く坊っちゃんと付き人の姿があった。
 グリンヒル学園都市で学んでいた坊っちゃんは、それが一区切りついたので、旅を再開したのだった。
「もっとグリンヒルでいたかったんじゃないんですか? 坊っちゃん」
「何で?」
「だって、食べ物は美味しいし、女の子はかわいいし、ね」
「からかうなよ。みんな子供っぽくて、お話にならないさ」
「……そうですか? けっこうもててたみたいじゃないですか」
「そうかなあ?」
 坊っちゃんは照れた。

「ほら、勉強を教えてって、宿までかわいい子が何人か尋ねてきて」
 それは事実だった。図書館で知り合った女の子達がやってきて、グレミオの焼いたパンケーキと紅茶でもてなしたことがあったのだ。

 付き人が、いたずらっぽい目で坊っちゃんに笑いかけてきた。
「あの子たち、坊っちゃんに気があったんですよ。きっと」
「寮へ遊びにおいでなんて言われたけど、そんなヒマなかったなあ」
「行けばよかったのに」

 リアムは、ちょっと意地悪い気持ちになった。
「……遊びになんて、行ってもよかったのか?」
「え?」
「やきもちも、妬いてくれないのか」
「そ、そんな。お友達をつくるくらいで、妬いたりしませんって」
「お友達、ね」
 坊っちゃんは、グレミオを通せんぼしていた。
「もちろんです。坊っちゃんには、広い世界を見てほしい……いろんな人と付き合って」
「それなら、あっちこっちで女の子をつまみ食いしてもいいのかい?」
 付き人は、何か言いたそうな顔をした。
「ついでに、男の子も拾って食うかもしれないよ」
「……坊っちゃん……ひどいこと、言うんですね」

 グレミオは立ち止まった。さびしそうな青い目が、坊っちゃんを見つめかえした。
「でも……私には、あなたを縛り付けておくことなんてできません」
 その透明な目を見つめていると、リアムは何だか胸が一杯になった。
 また、やっちまった。
 こいつを、悲しませたくなんて、なかったのに。

 坊っちゃんはすばやく辺りを見まわした。街道には人影はない。
 小さな雲のかげが、ゆっくりと横切っていくばかりだ。
 それから付き人の手をつかんで、乾いた麦畑の中にひっぱりこんだ。

 穂を付けた麦を倒しながら、付き人をその上に押し倒して迫った。
「素直に、いやだって言えよ」
「……坊っちゃん」
「他の誰も見るなって、言ってくれよ。私だけを見てって、そう言え」
「坊っちゃん」
「お前だってそうだ、おれ意外の誰か他のヤツと寝たりしたら……」

 坊っちゃんは、付き人の喉元に手を当てて、低い声で言った。
「この首、ねじ切ってやるからな」
 そして首を締めながら、付き人の上におおいかぶさった。
 それから、グレミオの十字の傷跡に口を付けた。


「こんな、坊っちゃん、だめですよ、こんなところで」
 付き人は、まるで挑発するような悩ましい声で、ささやいてくる。
「誰も来ないよ」
「畑の、畑の中じゃないですか。農家の方が来たら……恥ずかしいでしょう」
「見たければ、見ればいい」
「リアム様……」

 次の瞬間、付き人の両腕はリアムの背中を強く抱きしめてきた。

 そのまま、いきなり空が回転して、気がついたらリアムはグレミオの体の下にいた。
 坊っちゃんは、目の上をなめまわされて、笑い声を上げた。
「だめですよ、変な目で他の人を見たら。このきれいな目、ふたつとも食べちゃいますからね」
 見れば、グレミオは手を伸ばして、黄色い麦の穂を、一本折り取っている。

「笑ったらだめです、坊っちゃん」
 付き人はぐいぐい体を押し付けながら、リアムの首筋を麦の穂先でくすぐり始めた。
 リアムは暴れた。
「あ、こら、あは、やめろ。やめてくれっ」
「だめっ、もう許しません。グレミオだけを見るって約束してくれなきゃあ」
「くすぐったい、あはは、やめてくれ、死ぬう」
「私だけだって、リアム様、約束してください」
「……お前だけだ、グレミオ」

 一瞬、付き人の手の動きが止まった。
 リアムはその手首をつかんで、もう一度言った。
「お前だけだ、欲しいのは。言っただろ、お前しか欲しくないんだって」
「……もういっぺん、言ってください……お願いです」
「お前がいてくれたら、もう何もいらない」
 ささやいてから、リアムはグレミオの髪の中に指を差しこみ、引き寄せた。

 その辺の麦を軒並み倒しながら、リアムは付き人のマントを脱がせた。
 グレミオの髪の色は、麦の穂のようだ。
 その髪をかきやってから、リアムは湿った柔らかい唇を食べ始めた。
 それから上着の中に手を突っ込んで、すべすべした背中に手を滑らせていった。
 肌が弱いのか、すぐに指の跡がついてしまうが、このさい遠慮なく触らせてもらう。
 そして薄い皮膚の下の、背骨の一個ずつを手で確かめる。

 それからベルトの国境を越えて、小さなお尻の谷間に、尻尾の名残の骨を発見する。
「こんどは違うところに行ってみよう」
 リアムはさらに前のほうにも、手を冒険させる。
 グレミオがうわずった声を上げる。その声の、耳に心地よいことと言ったら!
「……こんなところに、ほら色白で元気な坊っちゃんが。坊や、どうしたんだい……」
「あ、触ったらだめです、坊っちゃん」
「触らない、触らない。でも、ちょっとだけ舐めさせておくれ」
「よけい、いけません……」
「だめ、っていうのは、OK、ってことなんだ。グレミオの場合は」

 リアムはかまわず、グレミオのベルトを抜いてズボンを下ろし、じっくり鑑賞させてもらった。
「そんなことしたら、だめですって……」
 密のように甘い声を楽しみながら、付き人の色白の息子を舌先で可愛がった。
「……あ、坊っちゃん」
 白い手を優しくもてあそびながら、リアムはこころゆくまでグレミオを味わった。
 付き人はだんだんいい気持ちになってきたのか、だめ、だめだってば、と口走る。
「じゃ、もうそろそろ入れてもいいかなあ」
「……だめ……」
 消えそうな声を無視して、リアムは付き人をうつぶせにひっくり返した。

 お空のお天道様もごらんあそばせ、真っ白な腰には、リアムの指の跡が赤く残っている。
 そういえば、体の大きさはずいぶん違うのに、ムスコの大きさはそう変わらない。
 付き人のほうが長いが、自分のほうが多少太いんじゃないか。
 測ったことはないが。
 でも全部入れたら痛がるから、半分くらいしか入れない。

 付き人は自分のマントの中に顔を突っ込んで、体を丸めている。
 リアムはその体を抱え込んで聞いた。
「痛い?」
 付き人は顔を少し上げた。
「ちょっとだけ」
 リアムは肩甲骨の上を舐めながら、ゆっくり腰を入れた。
 付き人の体の中に、大事なムスコをとらえられたまま、出られなくなりそうだ。
 ゆっくり温泉につかっているような、気持ちよさだ。
 中が狭いし、痛がるので、あまり激しくは動けないが、それでもすぐに達してしまいそうになる。

 しばらくリアムはじっとして、つながったままグレミオの坊っちゃんを愛撫した。
 今度グレミオにしてもらおうか。そう言ったら、グレミオはいやがるかな。
 おれのことだから、「いっぺんホってみてくれよ」なんて言ってしまいそうだ。
 でも、グレミオが自分の中に入ってくるのって、どんな感じだろう。
 そんなことを思いながら、また体を動かした。
 今度はちょっと激しく動いてみる。何だかずいぶん、いい感じだ。
 クセになりそうで、やめられない……

 付き人は、ときおり、気持ちがいい、というよりは痛そうな叫び声を上げる。
 でも、必死にこらえているんだろう、付き人は体を固くし、その辺の麦を両手につかんでいた。
「痛い?」
「……痛いです……でも……気持ちいい……」
「どっちなんだい?」
「両方……」
 リアムが大きく腰を回すと、グレミオはまた声を上げた。

 体をネコみたいに丸くして、坊っちゃんもっと突いて、かき混ぜて、ああもう死んでしまうなどと口走って、何だかいつになく情熱的だ。そうして、白い背中はもう真っ赤だった。
 他人の畑の中だというのに。そう、見つかったら不法侵入罪だ。
 そのうちにグレミオは顔を麦の中に埋めて、動かなくなった。
「もう……イっちまいそうだ」
 リアムがおもわずあえぐと、付き人は麦わら色の頭を上げて、訴えてきた。
「……全部……私の中に……出してください、一滴残らず全部……」

 過激な運動をしたせいだろうか。
 身じまいをしながら、二人とも腹が鳴ってしょうがない。
「もう腹がすいて、目が回りそうだ」
「私もです。ちょっと早いけどお弁当にしましょう。とりあえず、ここは離れたほうがいいでしょうね」
 グレミオは、まだ赤い顔をして辺りを見まわした。
「麦もけっこう倒してしまったし。見つかったら大変ですよ」
「うん。でも、すぐ元気におき上がるんじゃないかな。麦は元気だもんな」
 グレミオは、ちょっとエッチな顔になってくすくす笑った。
「……」
「今、何を想像したの?」
「いえ、別に」
「おれの坊っちゃんに関することかな?」
「そんなとこです、ふふふ。また元気にならないうちに、道に戻りましょう」

 二人並んで歩きながら、リアムはどうしても気になっていたことを尋ねた。
「あのな、グレミオ」
「はい?」
「おれと、親父と、どっちが……」
 さすがにリアムも聞く勇気がなかった。
「……言いかけて途中で止めるもんじゃないですよ、坊っちゃん」
 グレミオはいじわるな目になった。
「……いや、何でもない。忘れてくれ!」
「気になるなあ。ナンデスカ?」
「……どっちが……その……よかったと思う?」

 しかし付き人は待っていましたとばかりに答えた。
「お父さんと、いっしょ!」
「へ?」
「だから、お父さんといっしょです。 何から何まで、もお本当にそっくりさん!」
「えええっ!?」
「……さすがは、親子ですねえ!」
「……そうだったのか……(ちょっとショック。ほめてほしかったのに……)」

 何やらあやしげなもやもやを発散しながら、この馬鹿ップルの旅は、続く。
(とりあえず、おしまい。)

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