教えてクレオ H.12.01.17
おだやかな春の晩、坊っちゃんは、食後のお茶とビスケットを楽しんでいた。
「ねえ、パーン。聞いてもいい?」
幼い坊っちゃんは、つぶらなひとみを拳闘家パーンに向けた。
「何ですか」
「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」
「…………ぶはあっっ」
思いきり、茶を吹いてしまったパーンであった。
「ぶはっ、から生まれるのか?」
「げほげほげほっ」(茶が気管に入って物も言えない状態)
「よくわからないなあ」
切ったりんごの皿を片手に、グレミオがテーブルにやってきた。
「ねえ、グレミオ」
「はい、坊っちゃん」
「赤ちゃんはどこから、生まれてくるの?」
「げっ……」
「ねえ、どこからってば」
付き人がしどろもどろに説明する内容は、以下のような頼りないものだった。
「それはね、坊っちゃん。お父さんとお母さんが、神様に一生懸命お祈りするんです。どうかよい子をお授け下さいって。そうしたらある日、玉のような赤ちゃんが……」
「ふうん。で、どこから赤ちゃんが生まれるの?」
「あ、火を落としてこなくっちゃ……」
付き人はそそくさと逃げ出した。
「ふん、じゃあ、お父さんに聞くからいい」
最悪なことに、父テオはクレオや同僚と飲んで、多少酔って帰宅した。
すなわち、変態オヤジモードである。
「ね、お父さん。ぼく、聞きたいことがあるんだ」
「なんだ?」
「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」
とたんに、坊っちゃんは、ばんばんと肩をたたかれた。
「がははは、そんなことか。お前もそんなことに興味を持つ歳になったか」
「うん……?」
(坊っちゃんはこのときわずかに8歳である)
「よし、生物学的に正確な教育をしてやろう!」
「え? せーぶつがくてき?」」
「あとでおれの書斎に来い。超リアルな絵で説明してやるから」
「う、うん」
「さすがはおれの息子だ。頼もしいぞ! 女のたらし方、赤ん坊のしこみ方から孕ませないテクニック、それからムスコの鍛え方まで、全部教えてやろう!」
「ん??????」
「がはははは!」
何だかよくわからないが、坊っちゃんは尻込みしているようだ。
「テ、テオ様、お風呂がわいていますから、先にどうぞ」
見るに見かねて、グレミオがテオを引っ張っていった。
坊っちゃんは、呆然と父を見送った。よけいわからなくなったようだ。
「坊っちゃん、クレオがお教えしましょう」
クレオが坊っちゃんに話しかけてきた。
「坊っちゃんは、お腹の大きな女の人を見たことがありますね」
「うん。友達のお母さん」
「赤ちゃんが中にいるんですよ」
「すごくお腹が大きかったのに、今日遊びに行ったらぺしゃんこになってて、赤ちゃんをだっこしてたんだ」
「可愛かったですか?」
「うん! 女の子だった。でも、お腹が裂けて、でてきたのかな? 心配だな」
クレオはにっこりした。
「いいえ、裂けたりしませんよ。坊っちゃんにはおちんちんがついてるでしょ。女の人には、おちんちんはないですね」
「うん。赤ちゃんにもおちんちんなかったよ」
「そのかわり、おしっこのでるところの近くに、赤ちゃんの出口があるんです」
「ふうん」
「赤ちゃんは、ちゃんと出口を通ってでてくるから、お腹は裂けたりしないんですよ」
「安心したよ。 あ、でも赤ちゃんはどこからお母さんのお腹に入るの?」
そのときクレオ、慌てず騒がず。ごくあっさりと告げた。
「もちろん、出口からはいるんです」
「そうか!! よくわかったよ、クレオ」
疑問が解けて、坊っちゃんはすっきりした顔になった。
「……ぶわっ」
クレオに懸想しているパーンは、気の毒にも鼻血を吹いた。いったいナニを想像したのかは、不明である。
END
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