愛妻物語。2 00/12/17

「そんな悩ましい格好で、何をしていたのかな」

 忘れてた。 
 ボタン、一番下まで外したままだった。 チクビどころか、へそまで見えちゃってる。
「こ、これはその、ちょっと……」
 まさか赤ん坊に乳を吸わせようとしていたんです、なんて言えるはずがない。 口篭もっていると、室長はおれの胸をするりと撫でた。

「川上くんは、色、白かねえ。 …………まっことそそられるばい」
「ひっ」
「かわいらしか乳首たい」
 太い指がおれの乳首をこねくりまわしはじめる。 あん、なんか不思議な気分……なんて言ってる場合じゃない! 抵抗するんだ、孝!
 おれは室長の手首をつかんで、やめさせようとした。 

「やめてください、室長……」
「よか、よか。 恥ずかしがらんでもよか。 よか気持ちにさせてやるたい、よかね?」
「よくな……いっ……おれには聡美という妻があっ……」
「ふふ、乳首、もう立っとるばい……感じやすかねえ……」

 おれ、抵抗してるんだろうか。 ちっとも手に力が入らないじゃないか。
 それどころか、簡単に畳の上に組み敷かれて、室長のたくましい腕で折れるほど抱きしめられて、それから荒い鼻息を首筋に掛けられちゃうと……弱いんだ。

 反応はあっというまだ。 ジーパンに包んだ脚の間の、哀れな海綿体がすぐにぎんぎんに膨れ上がってしまう。 たまってるんだ、やっぱり。
 だって……ずっとさせてもらってないんだもん。

 室長は迷いのない手つきで、おれの股間に手をあてがい、焦らすように優しく上下移動をはじめた。
 おれは、首を振った。

「ほんとに、やめてください……もう……」
 ため息混じりの、いやらしく息の乱れたおれの声。
「やめてよかと? こんな状態だよ……爆発寸前じゃなかね」
「やめて、やだ……こんな……おねがいです」
「遠慮せんでよか、川上……」

 止めたらいやだ、続けて欲しい。
 このじゃまなジーパン越しじゃなくて、直に触れてほしい。
 
 ごめん、聡美……今度こそ浮気なのかな……でも、「疲れたの」とかいって、ずっとやらせてくれないおまえが悪いんだよお……。
 おれは鼻を鳴らして、室長の肩をつかんで、「もっと、ちゃんと……触ってください」
といった。

 室長は我が意を得たりとばかり、おれのジッパーを引き下ろし、ビキニパンツも引き摺り下ろしてしまった。 
 そして暴走寸前のおれのクキに、太い親指と人差し指を添えて、すばやく、軽やかにしごき始めた。 時折、ぐちゃぐちゃに濡れた裏筋に、そっと指の腹をこすりつけてくる。

「あっ、あっ、あっ!!」
 おれがあえぐと、室長はますます動きを速め、顔を寄せてきて、おれの口を肉厚の唇でがばっと塞いだ。
  
 キスをされると快感は一気に増した。 もう今にもイキそうで、腰が勝手に踊り狂い、息が上がり、苦しくてたまらない。

「ん、ん、んああっ!!」
 ああああっ、ぼくちゃんもうイク! ってときだった。

 ピー、ピー、ピー……と携帯の音か、これは。
 室長はイク寸前のおれを放り出すと、尻ポケットから携帯電話を出した。

「はいはい、わかったよ。 すぐに迎えに行くからね。 外は寒いから、教室で待ってなさいね」

 携帯を切ると、室長は向き直っていった。
「せっかくいいとこなんだが、娘の部活が終わったからお迎えにいかないといかん。 暗い夜道は物騒だからな」

 呆然としているおれを残して、「愛娘のお迎えに」、室長はいそいそと出ていった。


……………………。
 何てこった。 生殺しとはこのことか。
 もう室長なんて、金輪際相手にしないぞ!!!!


 おれは惨めな気分で、イク寸前だったナニをしゃかしゃかとしごいて、「処理」した。
「はあ……」
 まだまだ「やりたいお年頃」なのに、なんて可愛そうなおれ……。




 妻は、11時ごろになってやっと戻ってきた。
 B’zのライブは楽しかったらしく、まだ頬が上気している。
 今日は黒の革のパンツスーツを着ていったんだけど、ちょっぴり太ったらしくて、太腿がむちむちっとしてて、何かいいかんじだ。
 革ジャンを脱ぐと、Tシャツの胸がはちきれんばかりになっている。
 お、これもいいじゃん。

「すごく楽しかったよ。 ありがとう、孝。 疲れたでしょ」
「ん……いや。 菜普美、いい子だったから」
「おっぱいは?」
「8時ごろ、200CC一気のみして寝た」
「すごいじゃない。 哺乳ビン嫌いなのに。 孝飲ませるの上手なんだ」

 むぎゅ、と聡美はおれを抱きしめた。

 身長が175センチある妻は、学生時代ソフトボールで鍛えたため、肩も腕もたくましい。そこがよくて惚れたんだ。 その上、ミルクタンクみたいな胸を押しつけられると、泣きたくなった。 
 おれ、限界だ。 おれは聡美の背中に手を回して、きゅうっと力を込めた。
 
「孝?」
「聡美ちゃん、ねえ。 したい。 させて、お願い」
「い、いきなりどうしたの」
「えっちしたい、えっちしたい、聡美とえっちしたいよう」
「わかった、わかったから……べそかかないでよ」

 聡美は、よしよし、とおれの頭を撫でた。 
「ちょっと待ってなさいね。 いま手を洗ってくるから」
 妻は優しく言って、洗面所に消えた。


 やった〜〜! 泣き落としが効いた!
 こうはしてはいられない、お布団だ、お布団!
 せっかく奥さんがその気になった(?)んだから、気が変わらないうちにお布団を敷かなくては。
 押さえようとしても、にやけるのを押さえられない。
 産後3ヶ月、おれもよく辛抱強く待ったもんだ、うん。 でもさすがの聡美も不安なんだよな、きっと。 ひよこ倶楽部にも書いてあったぞ、産後の初えっちは痛いし不安だって。
 怖いものなしの聡美も、そうなのかもしれない。

「あ、痛い……孝、ゆっくりして……」
 なんて、新婚の時からただの一度も、お愛想でも言ってもらったことがないけど、今日はその感動のせりふが聞けるのか!?
 鼻血が出そうだぜ!

「お待たせ、孝」
 甘い声に振り向くと、黒の革のビスチエとパンティ姿の妻がそこにいた。
 か、かっこいいじゃん……。 

 しかしその手には、なんだこれは。
 キティちゃんのハンディマッサージ(マツヤデンキでもらったもの)と、オロナイン軟膏のチューブと、バンダナ? 
 考えるまもなく、妻は驚くおれを組み敷いて(体重では少し負けている)、あっというまにおれの手首をバンダナで縛り上げてしまった。

「どう、きつくない? 痛くない?」
「痛くないけど……ねえ、何これ」
「久しぶりだから、ちょっと珍しいことして盛りあがりましょう」
「え……」
「怖くないから、私に任せてね」
「え? え? えっ?」

 妻は手際よくおれのズボンを下ろし、キティちゃんのマッサージ機のスイッチを押して、やんわりとおれの前にあてがった。
 なんだ、こんなモン。
「うっ……」
「気持ちいいでしょ、孝」
「いい、いいけど…………」

 ちょっと変わったことって、これ?
 こんなんじゃなくて。 おれが欲しいのはこんなんじゃなくって。
 ぐちゃぐちゃで、がばがばで、ヒダヒダで、懐かしい、あの。 よくなるとぎゅううっとおれを締め付けて、容赦なく全部搾り取っていく、あの!
 
「ねえ、こういうんじゃなくってさあ……」
「もっと良くしてあげるからね」
 妻はオロナインを搾り出し、中指に盛り上げて、おれの脚を広げるなっておい!

「聡美ちゃん〜〜っ! 何するんだよおっ」
「気持ちいいでしょ、孝」
「やめて、奥さんっ!! あっ!」
「力入れちゃダメよん、孝くん」
「んんっ……だめだってば……」

 これは何かの悪夢に違いない。 おれの奥さんが……中指にオロナインつけて、それでおれの尻をファックしようとしてる……。

「や……やだって……だめ……さと……みっ」
「あったかい……孝の中って。 この辺、かな?」
「あっ!」

 どうしよう。 すごく気持ちがいい……。
 まだ何もしてないのに、念願の久しぶりのえっちもまだなのに。 こんなんでイカされるんだろうか、おれ。

 キティちゃんのマッサージはつかず離れず、おれの前を掠めては離れている。聡美の意地悪……。 だけど、どうして聡美はこんなに楽しそうなんだろう。
 
「ねえ、聡美ちゃん……おれ、もう……入れたいよう」
「ダメ。 ここからがメインなんだから、まだイッてはいけません」

 妻は婉然と微笑んで、ゆっくりと指を抜いた。
 そしてその手には、オロナインをたっぷりと塗りたくった、ぶっといすりこ木が、てらてらと光沢を放っていた。
 

終わり。
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