第56回 丸亀マラソン大会

〜 ベストコンディションで好タイム続出 〜


2月1日(金)の夕方、社内放送がいきなり始まった。社内放送なんて、たいていは社員の家族の不幸とか、台風や停電や電車のストライキのお知らせであり、割と暗い話が多い。しかし今回は、ちょっと声の調子が明るい。何かと思って聴くと、
「ピンポ〜ン。2002年2月3日(日)第56回丸亀マラソン大会が開催されますよ〜」
なんと、我がペンギンズの活躍の場が社内放送で案内されるまでになったのだ。部活動費の補助を頑なに拒んできた労務部だが、ついにペンギンズの存在を無視することができなくなったのだ。
(F川)「ちゃいますよ。陸上競技部が出るんですよ。それで応援してください、って放送してるんですよ」
なるほど。放送を聴いていると「当社陸上競技部の選手が出場します。みなさん沿道で応援してください。テレビ中継もあります」
(幹事長)「ふっ。また奴らか。性懲りもなく。今年も蹴散らしてくれようぞ」
しかし、このままでは陸上競技部しか出ないと思われてしまう。少なくとも職場周知をしなくてはいけない。
(幹事長)「あー、諸君。今の放送は中途半端に終わってしまったが、このレースには我がペンギンズも出るからな。
       テレビ見てくれよ」
(部下H)「えっ、すごいですね。最初だけでも全力でトップを走ってテレビに出てくださいよ」
(幹事長)「そのアイデアは毎年出ているが、そななことをしたら後がバテバテになって試合放棄になるんよ。
       最初だけでもテレビに出る事だけを重点目標にするというのは1つの戦略ではあるけど、
       たったそれだけのために残りのレースを捨ててしまうのは参加費がもったいないしなあ」
(部下O)「動物で出たら目立ちますよ」
(幹事長)「そのアイデアも毎年出ている。でも、丸亀マラソンってシリアスな大会だから、
       そなな格好して参加すると、怒られて出入り禁止になるかもしれんのよ」

我々としても、この丸亀マラソンはおふざけでは走らない。2週間前の国営讃岐まんのう公園リレーマラソン大会は恒例のスター新春レクリエーション大会と位置づけ、毎年、この
丸亀マラソン大会こそが一年の動向を占う第一レースなのだ。ま、制限時間が厳しくて、少しでも遅れると容赦なく回収されてしまうから、いやが上にも真面目に走らざるを得ない。


ところで、今年の大会は本当は第6回なのだ。第1回から参加している私が言うのだから本当だ。
しかし、主催者は第56回と言い張っている。これに関しては去年も書いたけど、再度説明する。

主催者が第1回と位置づける大会は昭和22年に開催された。その頃はフルマラソンで、それが第14回まで続いた。
その後、なぜか第24回までは35kmレースになった。なんて中途半端な距離なんだろう。意味が分からない。
さらに、その後、第50回までは20kmレースに落ちぶれた。なんでかなあ。よっぽど参加者が少なかったからか。
しかし、しょせん、ここまでは香川ロードレースという専門の陸上競技関係者しか出ない地味な大会だったため、距離を変えたところで、参加者は異常なほど少なかった。一般市民が出るような大会ではなかったのだ。
ところが、平成9年の第51回大会が丸亀城築城400年記念大会としてハーフマラソンになり、それまで数十人しか出ていなかったのが一気に千人程度の大会になったのだ。これがハーフマラソンとしては第1回だった。
第3回大会からは、会場が古汚いボロ競技場から21世紀の新首都を目指す聖地丸亀平野にパルテノン神殿のごとく燦然とそびえ立つMARUGAMEインターナショナル田園オリンピックスタジアムに移った。しかし、コースは毎年、意味不明なまでに変わっており、まだまだ田舎の市民レースだった。
そして第4回からは日本陸連公認のマラソンコースが採用され、レースの基盤が固まり格付けも上がり、招待選手も一気に増え、一般参加者も増えた。
さらに、去年の第5回は高橋尚子がシドニーオリンピック後の初レースということで全国的な注目を集めた。
そして、いつの間にか、大会の回数が昔の香川ロードレースの時代からの通算になり、ドサクサに紛れて今年は第6回ではなく、第56回となったのであった。
完全な詐欺である。数が多い方が伝統がある由緒正しいレースのように聞こえるからだ。浅はかな陰謀だ。
こんな大嘘を許していいのか!いいのだ。許すのだ。なんと言っても丸亀だ。私のふるさとだ。お城だって400年も経っている由緒ある歴史の町だ。世界文化遺産に指定してもいいくらいだ。
マラソン大会の50回水増しくらい、なんだ。いっそのこと400回くらい水増しして、今年は406回大会にしたっていいくらいだぞ。
ま、とにかく、紛らわしくなるので、私も今年から50をプラスして数える事といたします。


前日は雨で、当日も午前中は雨模様との天気予報だった。この丸亀マラソンは、コースは平坦で走りやすいため、コンディションさえ良ければ好タイムが期待できるのだが、ただでさえ寒い時期のうえ、一昨年は雨が降って最悪の天候だったし、去年は雨は上がったものの強い風が吹くなど、かなり厳しいコンディションが多い。そうなると走ってても辛いだけだし、タイムもすごく悪くなる。今回も、もし雨が降っていたら棄権しようと思いつつ朝起きると、雨はすっかり上がり、曇りとは言え、もう雨の心配は要らないみたい。しかも風が無く、かなり走りやすそうな気配。
て事でためらわずに車を飛ばして丸亀競技場に向かう。既に多くの選手で混雑している。かなり参会者が多い。去年は高橋尚子が出場するため参加者が膨れあがった。今年はそういう目玉は無いのだが、一度メジャーになると、参加者は多いままだ。ハーフマラソンの参加者は男子が1777人、女子が221人、合計1998人となっている。
今年もQちゃんほどの目玉はないとは言え、去年、Qちゃんと一緒に来ていた小出監督がゲストで来ている。娘の小出選手(積水化学)も参加している。四国電力の女子エース真鍋裕子選手も招待選手だ。男子では去年の優勝者野口(順天堂大学)とか早田(本田技研)なんかが招待選手になっている。

さて、ペンギンズである。去年はペンギンズとして場所を確保してシートを敷いていたのだが、今年は各自バラバラなので、メンバーと遭遇するのは至難の業か。とにかく受付を済ませてゼッケンを付け着替えてから再度ウロウロしていると
佐竹選手に会う。ハーフマラソンだけで2000人も参加する中から偶然に会うってのはすごい。おまけに増田選手も一緒にいる。
(幹事長)「あれ?増田君は参加するんやったっけ?」
(増田)「申し込みだけはしてたんですよ。出るかどうか最後まで迷ってたんですけど」

そうこうしていると、高知支部長が現れる。
(幹事長)「うわお。高知支部長っ!高知での活躍は目を見張るものがあるが、今日は期待してないからねっ!」
まずは先制パンチを送っておく。
(高知支部長)「お正月の小雪が舞う中、幹事長が走っているのを見かけましたよ。今年はかなり気合いが入ってますね」
(幹事長)「ふっ。上に立つ者は人の鑑にならんといかんのよ」
(佐竹)「その割には僕が4周も走った満濃駅伝では2周しか走りませんでしたね」

それにしても、こんなに大勢いる中で、みんな集まるなんて奇蹟に近いぞ。
(幹事長)「今回は4人かなあ」
(増田)「
F川選手鈴木先生も申し込みはしています」
(幹事長)「鈴木先生はきっと来ているだろうけど、F川も申し込みしてたっけ?」
(増田)「申し込みだけはしているようですよ」
(高知支部長)「でも、先日、自分は出ないので代わりに出る人がいたら参加証を譲りますよ、っていう連絡をもらったので、
          出るつもりは無いのでは」
(幹事長)「つまり、今日のサボりは計画的犯行と
(増田)「それから
竹葉さんも来てますが、所属がペンギンズじゃなく、如水会なんていうクラブ名で出ています」
(幹事長)「なんとかーっ!あいつはペンギンズ創生期トリオの一員ではなかったのか。それなのに裏切りおったか。
       ううむ。今まで皇帝ペンギンの名を欲しいままにしていたのに、佐竹選手にその座を奪われたからか。
       群を追われたボス猿のようやなあ。哀れな末路よのう」
(増田)「単にペンギンズってのが恥ずかしいからじゃないですか?」
それから亀ちゃんも出ているようだが、相変わらず讃岐闘友会ってチーム名で出ている。このチームも怪しい。メンバーは一人しかおらんのとちゃうか。意地を張らずに戻っておいでよ、亀ちゃん。

(佐竹)「ところで今日のレースは5月にベルギーで開催される世界ハーフマラソン大会の代表選考会
     兼ねてるらしいですよ」
(幹事長)「えっ?それは困る。そんなんに招待されたら長期休暇を取らんといかんようになる。
       そななことをしたら権力闘争のまっただ中にいる私としては社内的足場が崩されてしまう」
(高知支部長)「社内的権力闘争とも無縁だとは思いますが、招待される可能性もひゃくぱーせんと無いから
          安心してください」


うだうだ言っているまに集合時間が近づいてくる。スタートは10時5分なのに、20分も前に集合締め切りになっている。なんのこっちゃいな?と思っていると、今年は参加者が多いので集合も厳しくなっている。去年までは、確か自分で予想したタイム順に速い方から並ぶ方式だったので、遅くても前の方に並ぶこともできた。特に去年は高橋尚子選手が来てたので、最前列のQちゃんを一目見ようと僕もできるだけ前の方に移動した。それでも見えなかったけど。
ところが今年は、去年の成績順にゼッケン番号が割り振られており、そのゼッケン番号順に並ばされたもんだから、僕なんか、かなり後ろの方に並ばされた。去年も好成績を収めた佐竹選手なんかはかなり前の方だが、高知支部長なんかは、最後の方だ。
(高知支部長)「これって、ひどすぎませんか?」
(幹事長)「無茶苦茶やなあ。こんなに後ろの方からスタートしたら、スタートの位置が先頭よりだいぶ距離があるし、
       まともに走り始めるまで1〜2分は損するぞ」
(高知支部長)「遅い者に徹底的に冷たい。よっぽど好成績で盛り返さないとはい上がれませんね」
(幹事長)「はい上がるとしても、毎年少しずつ上がっていくだけや。大貧民みたいやなあ」

なーんて言っておりますが、所詮、最後の方でヨタヨタになる僕たちにとって、本当はスタート時の1〜2分なんて関係ないんですけどね。
(幹事長)「去年は歩いた?」
(高知支部長)「当然ですよ。私は毎回歩いてますからねっ!
自慢するなよっ!

いよいよ
スタート。10時5分にピストルの音が鳴ってからだいぶたって、やっとまともに走り始める。高知支部長も最初から好調に飛ばしている。高知支部長は前半はいつも好調。だいたい15km付近までは僕と同じようなペースで走る。ところがそこを過ぎてからガクンと足が止まってしまい、最後は歩くようにして制限時間ギリギリで生還してくる。
今年も高知支部長がピッタリ追走してくる。別に高知支部長が僕に合わせているのではないが、妙に気になる。これまで負けたことのない高知支部長に負けると、精神的ダメージは大きい。F川がいればいいのだが、今日はサボったみたいだし。ほんの少しだけペースを上げて牽制してみたりするが、高知支部長は脱落するどころか、逆に前に行ったりする。ううむ、かなりハイペース。やはり高知市新春駅伝で自信を付けた今年の高知支部長は侮れない。
ところが、3kmほど走ったところで、急に高知支部長が居なくなる。げっ、蒸発した。宇宙人にさらわれたのか?と思って振り返ると、靴ひもを直している。一体、どうしたのだろう。靴ひもが緩んだのか。ふむ、まだまだ素人よのう。今の彼の実力からして、この一瞬で差がついた30mを挽回するのに5分はかかるやろ。
(高知支部長)「お待たせ」
(幹事長)「うわっ。あっという間に追いついたやんか」
(高知支部長)「まだまだ余力はありますがな」


沿道に「打切り時刻10時35分」って看板を持った係員がいっぱい現れる。そろそろ5km地点か。まだ5分近くあるから回収はされないだろうが、嫌なプレッシャーを感じる看板だ。
5km地点で時計を見ると、快調に飛ばしていると思ったのに、割と遅い。やはりスタート時の1〜2分のロスが大きいなあ。やっぱり悔しいなあ。腹立つ。
だが、今日は適度に寒く、風も全く無く、この平坦なコースなら好記録が出るかもしれない。もっとピッチを上げて一発勝負に出るべきか。ちょっと悩む。

かなり真剣になり始めた頃、沿道から突然
「あっ、幹事長さあ〜ん。頑張ってえ〜」なんて可愛い声がする。誰かと思って振り返ると、なんと昔々の同僚だった。新入社員の頃、時々一緒に屋島の周りを走っていた「屋島の周りを走ろう会」のメンバーだった秘書課の可愛い女の子だ。結婚して辞めちゃって、もう20年近く会ってなかったのだけど、一瞬で顔が分かった。昔と全然、変わってない。あの頃は20歳前後だったから、えっ?それじゃ、今は40歳前後か?信じられん。全然変わってないぞ。すごい。しかし、待てよ。向こうも一瞬で走っている僕が分かったって事は、僕も20年前から変わっていないのか?ほんまかあ?なんだか嬉しくなって、力が沸いてくる。まだまだ力が出てくる。どんどん力が沸いてくる。不思議なものだ。「まだ5kmしか走ってないから当たり前か」

他にも例年声をかけてくれる知人が数人いる。一瞬だけ走り去るランナーの中から、よく顔を見つけられるもんだなあ、と感心する。ありがとうございまする。
(佐竹)「幹事長の場合は、その派手なピンクのパンツで、遠くからでもすぐ分かるんですよ」
そうか。動物でなくても分かるのか。
でも、今年は去年に比べて観客が少ない。やはり去年の高橋尚子効果は抜群だったか。去年は長いコースの最後まで全くスキも無く観客が並んでいたけど、今年はかなりスキスキだな。

10km地点が近づいてくると、早くもトップ集団が折り返してくるのにすれ違う。トップ集団の前にはテレビカメラ車がピッタリと先導する。
テレビに映るには最初で最後のチャンスだ。部下Hの提案のように、スタート時に最初だけ猛烈に飛び出して一瞬だけテレビに映るっていう戦法もあるが、今年のように後ろの方からスタートさせられると、それも無理になった。そうなると、テレビに映るのは、このチャンスしか無いのだ。それでテレビ車とすれ違いざま、後ろを振り返ってカメラに向かって大きく手を振った。もし選手をアップにしている瞬間だったら徒労に終わるが、全体を映している時だったら、確実に写っているはず。一瞬、振り返っている選手はいるが、さすがに手を振っている選手は他にはいない。あとでテレビを見よう!

10km地点のラップは最初の5kmと同じくらいだった。ううむ。ペースは上がっていない。て言うか、スタート時のロスが無いだけ、むしろ遅くなっているのか。ううむ。実感に比べて、なかなか厳しいな。って言うか、後半のバテバテが怖くて、まだまだ力をセーブし過ぎているって感じ。もうちょっと思い切って飛ばすべきかなあ。

てところで、女子の先頭が見えてきた。招待選手で出場している四国電力陸上部の
真鍋裕子選手を期待していたのだが、トップはノーリツの小崎まり選手だった。その少し後を真鍋裕子選手が追っている。歯を食いしばって一生懸命トップを追っている。必死である。彼女のような正式な陸上部の選手は、走るのが仕事みたいなもんだからレースで好成績を出さなければならない。すごいプレッシャーがあるだろうなあ。プレッシャーとかストレスとかに縁のない人生を送っている僕には分からないけど。しかし、必死の彼女の走る姿を見ていると、なんだか勇気づけられて、力が沸いてくる。まだまだ力が出てくる。どんどん力が沸いてくる。不思議なものだ。「まだ10kmしか走ってないから当たり前か」

真鍋裕子選手と激しく競り合う幹事長

折り返し地点が来たので、自分の後に何人くらいいるのか数えようとしたのだけど、なんと今年は信じられないくらいたくさんのランナーがいる。ものすごい数。体調的には比較的快調に走っているとは言え、タイムとしては決して早いペースではない。それなのに、僕の後ろにこんなにいるなんて、おかしい。大会がメジャーになって素人の参加が一気に増えたからか。こいつら危ないぞ。回収されるぞ。このレースは幹線道路を使うために交通規制が厳しく、途中でタイムオーバーになると情け容赦なく強制的に回収される。5kmごとに30分ペースで回収される。早い人には何の問題も無いが、僕らにとってはプレッシャーを感じるペースだ。
(佐竹)「去年、友人が回収車の運転手をしてたんですけど、はるばる鹿児島から来たおばちゃんが僅か4秒差で
     最初の5kmで回収されたらしいですよ。1秒でも遅れると絶対に許してくれないらしいですよ」

特に最初の5kmはスタート時のロスが1〜2分あるから、ギリギリのランナーにとってはハンディが大きいなあ。とにかく、僕の後ろにいるランナーのかなりの部分が回収されるだろうなあ、って思って走っていると、ちょうど10km地点をすれ違う時に回収時間が来て、係員が一斉に道に飛び出してランナーの回収を始めた。ひえ〜。厳しい。

悲しい場面を見て気合いを入れ直し、どんどん走っていくのだが、次の15km地点のラップはさらに少しだけ落ちてきた。まずい。大きくは落ちてないけど、着実にペースダウンしている。しかし、例年なら15kmを過ぎてからガクンとペースが落ちるところだが、今年はそういう感じでもない。まだまだいけそうな感じ。余力が残っている。やはりここは大会新記録を狙って最後まで頑張ってみよう。ここまで来たら後の事を心配するのも意味が無い。まだラストスパートには早すぎるけど、ペースの維持に全力をあげる。例年ならこの付近では足が止まって一方的にゴボウ抜かれ状態だが、今年は抜いたり抜かれたり状態。ふむふむ。やはり調子は良いのか。
終盤ではやはり歩いているランナーもいる。毎年、歩いている高知支部長は論外としても、一昨年は僕も最後の最後で歩いてしまったが、今年は最後まで全然足が止まらない。ピッチもほとんど落ちていない。回らない頭で一生懸命計算すると、まだまだ大会新記録の可能性は残っている。もう頑張るしかない。もう後は考えなくてもいいや、って事でラストスパートして競技場に入ると、例年通り早くゴールしている佐竹選手がスタンドから声援を送ってくれる。これは嬉しい。最後の競技場1周を全力で駆けぬけると、やはり
大会自己ベストが出た。4年前の記録を25秒縮めた。久しぶりの記録更新が嬉しい。今日は最後まで力が残っていた。まだまだ走れそうな感じ。もっとハイペースでも良かったなあ。いつもなら足が動かなくなってしまうので心臓は楽なんだけど、今日は最後まで足が止まらなかったので、心臓も苦しい。こういう充実感は久しぶり。
順位は1000番ちょっとだった。参加者が2000人くらいだから、半分より少し遅いくらいか。一昨年は後ろにはほとんどいなかったし、去年だって200人くらいしかいなかった事を考えると、だいぶマシになったな。

しばらくしゃがみ込んで一人余韻に浸っていると増田選手がゴールする。
(幹事長)「ちょっと遅かったなあ」
(増田)「いやあ、こんなもんですわ」

増田選手は年々腹回りが充実しているのでハンディが大きくなってきたか。て言うか、いつもの僕のように、なんだか余力を残している気配。適当に流したのか。

るんるん気分で歩いていると、ようやく鈴木先生に出会う。鈴木先生は遠いところへ行ってしまったので、滅多に会えない。
(幹事長)「お久しぶり〜。どうでしたか?」
(鈴木)「う〜ん。今日は絶好のコンディションやから好記録を狙ってたんやけど、いまいちやったなあ。平凡なタイムや」

なんて言ってますが、当然僕よりは随分早い。

それから、さっそく、
うどんを食べに行く。寒い中走り終えてから食べるうどんは非常に美味しいのだが、去年は高橋尚子効果で競技場にも観客が押し寄せ、うどんが早々に無くなってしまい、引換券を支給されている参加者でも食べられない人が続出し、怒りが爆発して暴動が発生した。ペンギンズでも制限時間ギリギリ4秒前でゴールした高知支部長は食べられなかった。高知支部長が暴動の先頭に立って競技場に火を着けたのは言うまでもない。
なので、うどんは急がねばならない。既に長蛇の列が出来ており、かなり不安。しかし、今年は主催者も高知支部長の爆発を用心して大量のうどんを用意していたらしく、心配は不要だった。佐竹選手は2杯も食べている。高知支部長もちゃんとうどんにありつけた。
(幹事長)「どうやった?」
(高知支部長)「惜しかった。あと数十秒で2時間を切れるところやったのに」
それでも去年から制限時間が10分延びて2時間10分になったからOKである。
(幹事長)「去年に比べたら9分も早いぞ」
(高知支部長)「今年は歩きませんでしたからねっ!」
(幹事長)「おおーっ、それだけでもすごいっ!歩かなかったんは初めて違うか?」

それから佐竹選手に至っては、なんと1時間27分という驚異的なタイムを叩き出してくれた。
(幹事長)「困ったなあ。1時間30分という除名ラインをとうとう超えてしまったか」
(増田)「て言うか、お願いしないと出て行かれちゃいますよ」


てことで、総合的に、みんな好タイムが続出でした。コースが良いだけに、コンディションが良ければ記録が狙える大会です。せっかくの好条件の今回のレースに参加申し込みしておきながらサボった奴なんてバカだよなあ。もったいないよなあ。そんな奴はペンギンズにはおらんわなあ。なあ〜?F川くん、なあ〜?
そう、
F川である。あれだけ参加者が多くて混雑する中でも、不思議な磁力を持つペンギン達は独特の嗅覚で地軸を把握し巣に戻ることができ、メンバー全員に会うことができた。が、F川だけは行方知れず。なぜだ?嗅覚を失ってしまったのか。それとも白クマに食われたのか?
心から心配し一睡もできずに翌朝を迎えると、さっそく連絡が入る。
「前日の夕方頃から娘が急に熱を出しまして、一晩中看病したため、一睡もせずにレースの朝を迎えてしまいました。それでなくてもこのところ急激に体重が増加しており、現在、70kgを越えております。睡眠不足&体重オーバーから勘案して今回のレースに出場することは、自殺行為に近いのでないかと思いつつ、幼い娘を残して、この世を去るのはいかがなものかと、泣く泣く出場を断念しました」
こらーっ!子供を言い訳にするなんて、まるで僕が会社をサボる時の最後の手段やないかあ。
(高知支部長)「おかしいですよ。だって、随分前に、僕は出ませんから参加証を譲ります、って言ってたのに」
第1回大会からいきなり4年連続で欠場したアル中竹葉選手でさえ参加していると言うのに、いかんやっちゃなあ、ほんまにぃ。
しかし、ほんと、今回のレースは絶好のコンディションだったから、F川選手も出れば復活の手応えをつかみ自信回復につながったと思うだけに残念であった。春のオリーブマラソンには復帰してね〜。
それから、翌朝、通勤途上でばったり出会った
中山選手(元ダイエー)も、オリーブマラソンでは頑張ってねえ〜。

さて、家に帰り、待ちに待ったテレビ放映を待つ。OHKテレビで午後4時から1時間15分の番組だ。ん?1時間15分?なんでそんなに短いの?レースは2時間だから半分に短縮して放映するのか?って不思議だったのだけど、よおく考えてみれば、早い人は1時間少々でゴールしちゃうから、それで十分なんだ。テレビは僕らのような遅いランナーの事なんて無視しているし。当たり前です。とにかく、トップとすれ違った時に自分が映っているかどうかだけが問題だ。
で、後で何回でも見られるようにビデオも用意して必死で画面を凝視する。ところが、不安が出てきた。カメラ車は全体のトップだけでなく、女子のトップの前にもいるのだ。そして、その2つの画面が頻繁に切り替わるのだ。そしてそして、やはり不安は的中した。ちょうど、そろそろ僕がトップとすれ違う頃だなあ、と思った瞬間、カメラは女子トップの方に切り替わり、僕がすれ違った瞬間は映らなかった。あんなに手を振ったのにい。おまけに、もしかして後ろ姿だけでも映るかなあと思って凝視した女子トップとのすれ違いの瞬間は、逆に男子トップの映像に切り替わり、僕の目立つピンクのパンツはテレビには映らなかった。
くやしーっ!

さて、翌日、会社へ行って四国新聞をチェックする。2週間前の満濃公園リレーマラソンの時は、記事が見あたらなかったけど、さすがに今回はすごい。第1面から始まって、カラーで4ページも掲載されている。もちろん、僕らが映っている可能性は無いのだが。
しかし、ミッキーマウスの帽子を被って走っていた奴の写真は出ている。こいつはレースの終盤で足を引きずるように走っていたのを抜いたから覚えている。中途半端な格好やなあ、とバカにしておったのだが、これくらいの事で新聞に出るんかあ。これやったら、僕らの動物チームで走れば確実に載せてもらえるなあ。しかし、そななことして制限時間をクリアできんかったら情けないしなあ。
それから、毎年、丸亀マラソンや塩江マラソンでレースの終盤で追い越される盲目のランナーと伴走者も載っている。今回は追い越されずに逃げ切ったけど、この伴走者はなぜか一方的に僕の事を知っていて、追い抜くときにいつも「もっと練習して早く走らんかいっ」って声を掛けてくれる。一体、どこの誰かなあと思っていたら、新聞記事に紹介されていた。しかし、やはり全然知らない人だった。謎は残ったなあ。


〜おしまい〜




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