第9回 塩江温泉アドベンチャーマラソン大会

〜 苦痛が快感に 〜

2003年11月2日(日)第9回塩江温泉アドベンチャーマラソン大会が開催されました。
僕にとっては、実に久しぶりのレースです。春のオリーブマラソンをサボっているので、2月の丸亀マラソン以来、なんと9ヶ月ぶりのレースです。

数日前の天気予報では、ずうっと晴天って事だったのに、直前の前夜になって、いきなり「明日は雨でしょう」なんて天気予報になる。むかっ。でも、朝起きて外を見ると、少し降っていた雨は、取りあえず止んでいる。なんちゅうても今年の春のオリーブマラソンは、朝方の土砂降り雨のためにレースをサボったら、レース開始時には雨が上がり、非常に悔しい思いをしたので、多少の雨なら今回はサボらないつもり。バイクにまたがって現地へ向かうと、現地は山間部なので、思った通り、まだ雨は降っているが、たぶん、そのうち止むだろう。

ところで、今回は、ペンギンズの参加者が非常に少ない。遠方に転勤になっているタイガーやT葉選手がまだ戻ってきていないうえに、今年はピッグ増田選手や笹谷選手までもが東京支部へ異動となったため、最近は基本的にレース参加者が少ないのだ。春のオリーブマラソンも、若きエース石材店の故障や、当日の悪天候が重なり、参加選手は、なんと中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)とT葉選手の僅か2人だった!(って、僕もサボったんだけど)
で、今回エントリーしていたのは僕と
中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)T葉選手のほか、怪我から復帰した石材店、一番真面目な福家先生高知支部長、ペンギンズのアイドルF川選手の計7人だ。
これでも少ないと言えば少ないが、しかも、だ。レースの直前になって
高知支部長から「用事が出来たのでサボるとの連絡が入る。一体、どなな重要な用事が出来たっちゅうんじゃいっ!まさか、一昨年のように、またまた若い女性職員との出張じゃないじゃろうなあっ!?或いは、去年、最下位争いを演じた挙げ句、救護車に回収されてしまった屈辱の再現を恐れた余りのサボりか。
しかもしかも、この高知支部長のサボりについてF川に密告すると、なんと
F川までもが「言い忘れてましたが、実は、私も用事があって出られなくなりました」なんてほざく。レースの直前に、しかも、こっちから問い合わせて初めて白状する卑怯さ!これがペンギンズ一番のアイドルのする事かっ!おまけに、久々に女性メンバーが出場予定の来年1月の満濃動物リレーには「何があっても出場する」との事だ。
(中山)「自分だって春のオリーブマラソンを安易にサボったくせに強気ですね」
(幹事長)「おう、誰かと思えば、1.5年に1レースしか参加していない中山選手じゃないかっ!
       今年は既に2レース目やぞ。家庭に何かあったんか?」
(中山)「僕は家庭に居場所が無い時だけレースに出るんですかっ!」


これだけ参加メンバーが少ないのに、現地に着くと、いきなり中山選手に会う。すごい偶然だ。さらに、続けざまに若きエース石材店にも会う。ここまでくると奇跡に近い。ススキノのフーゾクへ行ったら同僚にばったり出会った、ってくらい偶然。
(中山)「それって、かなり、ありそうですね」
なぜ少ないメンバーに奇跡的に会えるかと言えば、そもそも、このレース自体、参加者が非常に少ない、と言うか、年々減っているのだ。なぜかと言えば、この塩江マラソンは、四国のカラコルムと呼ばれる塩江の山岳地帯を一気に駆け登り駆け下りるという無茶苦茶なコースなので、健康への悪影響を気にするランナーからはとても不評で、毎年どんどん参加者が減り続けているのだ。あまりのコースの厳しさに、安易な気持ちで参加する人が駆逐されてしまい、こういう苦痛の伴うコースに喜びを感じるマニアックで変態的なランナーしか残っていないのだ。だから、参加者が少ないマイナーなレースだが、かなりレベルは高い。
中山選手なんて走る前から
(中山)「僕、やっぱりこのレースはやめといたら良かったなあ」
(幹事長)「なんでや?」
(中山)「ものすごくしんどいコースやし、足を痛めそうやし」
(幹事長)「何を言よんや。僕なんて、最近、このレースが一番楽しみになってきたぞ。
       極限まで自分の肉体を追いつめる、この苦痛がたまらなく快感になってきたぞ」

そこへ、最後の参加メンバー福家先生も登場する。福家さんは、絶対にサボらないなあ。
(幹事長)「あとは誰がおるんやったっけ?」
(中山)「
T葉さんが申し込んでますけど、たぶん絶対にサボりでしょうねっ!」
ほかに、例年だと鈴木先生にも絶対に会うんだけど、今日は会わなかった。近年、故障気味で、参加レースが減っているとの事だったので、こういう体に悪いレースには参加しないことにしたのかも知れない。

(幹事長)「今回は高知支部長もおらんしF川もおらんし、好敵手がおらんなあ。張り合いが無いなあ」
(中山)「僕も春のオリーブマラソン以来、ぜんぜん走ってないんですよ」
(幹事長)「なんと、ほんまかっ!よしっ!しかし、なぜ?」
(中山)「これ見てください。足を怪我したんですよ」

と見せる足のスネには小さな
カサブタが。
(幹事長)「お前、そこまで言い訳に困っとるんか。そなな小さなカサブタでは子供の言い訳にもならんぞ」
(中山)「そうですかねえ。この怪我をした時は、やった!これでレースをサボれる!とまで思ったんですがねえ」
(幹事長)「そもそも考え方が根本的に間違っておる。我々の本来の目的は、健康維持のために走るのであって、
       ただ、それだけじゃつまんないから、お遊びで時々レースにも出ているのだ。
       それなのに、全然トレーニングせずに、レースだけ出るってのは、いかがなものぞ!」
(中山)「そう言う幹事長だって、レースがあるから仕方なく嫌々ながらトレーニングしてるだけでしょ」
(幹事長)「嫌々とは言え、毎週末に100kmは走っとるぞ」
(中山)「そこまで言うと安心して嘘だと分かりますわ」

中山選手が全然トレーニングできてないってのはいわゆる1つの大きな好材料だ。
だが、しかし!奴は1年半ぶりのレースであった今年の春のオリーブマラソンで1時間44分の好記録を出しているのだ。
(幹事長)「あの記録はすごいなあ。僕なんて絶好調の時でも、坂の多いオリーブマラソンでそななすごい記録は出んなあ」
(中山)「幹事長はオリーブマラソンには異常に弱いですからねえ」
(幹事長)「そういうお前も、この塩江マラソンには、かなり弱いやろ。5年前のこのレースではビリから5番目やったやろ」
(中山)「そう言う幹事長も、あの時はビリから十数番目でしたよ」

このコースには弱いとは言え、意外な底力を秘めた中山選手なので、トレーニングゼロと言っても、勝てるかどうか、全く分からない。
(幹事長)「しかし、僕は最近、人間が出来てきた、と言うか、大人になった、と言うか、悟りを開いてきた、と言うか、超越してきた、と言うか、・・・」
(中山)「もうええですから」
(幹事長)「とにかく、僕は他人との争いや、順位なんかは気にしなくなった。敢えて気にするのはタイムだけや。自分との闘いやな」
(中山)「負けた時の言い訳は早すぎますよ」

ハーフマラソンのスタート地点は、会場から離れているので、バスでの移動となる。移動したのはいいが、その頃から雨が激しくなってくる。スタートまで1時間もあるので、それまでには止むだろうと思っているが、1時間もの間、何もやることが無い。崩れかけてた家屋の軒下から空を見上げながら世間話をする。
(幹事長)「このコース、なんとかならんのかなあ」
(石材店)「ほんまですねえ。コースが無茶苦茶なだけでなく、会場から離れたスタート地点で1時間も待たされる理由が分かりませんよねえ」
(幹事長)「雨ではウォーミングアップもでけんしなあ」
(中山)「あれ?幹事長、ウォーミングアップなんかした事ありましたっけ?」
(幹事長)「いつも考えるんやけど、僕らってものすごくペースが遅いから、レースの序盤をウォーミングアップに位置付けているんやけど、
       やっぱりスタート前にウォーミングアップってするべきなんかなあ」
(石材店)「やっぱり最低限のアップはする方がいいですよ。体はまだ寝てますからねえ」
(中山)「早い人はそれがええんやろけど、僕らなんかはウォーミングアップで体力を消耗するのが怖いからねえ」
(幹事長)「そうそう、ヘタにウォーミングアップなんかすると、レースの終盤で疲れて走れなくなってしまうからなあ」

なんて話しているうちに雨が上がる事を期待しているんだけど、雨足はむしろ強くなる。周りの人たちは大きなビニールのゴミ袋に穴を開けて簡易カッパを作ってかぶっている。確かに雨をモロに受けるとかなり寒い。
(幹事長)「今日は割と暖かいと思ってたけど、雨は冷たいなあ」
(石材店)「あのビニール袋は効果的ですよ」
(幹事長)「しかし今までレース前に雨が降っていて、そのまま降り続けた事は非常に少ない。
       たいていは、スタートする頃には止むぞ。今日も絶対に止むぞ」
と固い信念を持っているんだけど、雨はしぶとく降っている。

遂にウォーミングアップする機運も盛り上がらないままスタート時刻になったので、しぶしぶ雨の中へ出ていく。このレースは参加者が非常に少ないので、スタートの場所取りなどに悩まなくてもいい。最後尾からスタートしても、タイムロスはあんまり無い。て言うか、厳しいコースなので、1分や2分のロスなんて、誤差の範囲である。
スタート時刻が近づいてくると、なんだか雨が急に小降りになる。
(幹事長)「ほうら。思った通りやんできたぞ」
なんて話していると、なんと、いきなりスタートのピストルが鳴り、慌てて走り出す。
(石材店)「せめて1分前の予告くらい欲しいですよねえ」
ほんま。いくらマイナーなレースとは言え、心の準備は必要ぞ。
あっという間に雨がすっかり上がり、ちょうどいいくらいの気温でコンディションは悪くない。最初から好タイムは狙ってないし、淡々と楽しく走り出す。とは言え、唯一のライバル中山選手に最初から負けるのも癪なので、取りあえず少し差をキープしながら走る。

慣れたコースとは言え、坂がきついのは相変わらずで、足取りはだんだん重くなる。すると、何を思ったか、突然、練習不足のはずの中山選手が僕を追い抜いていく。
(中山)「最初は頑張らしてもらいますから」
なんて軽く言い放ちながら、あっという間に追いつけない距離に離れていく。練習してないとは言え、春の好調を維持しているのか。悔しいが、ここで無理しては後半で潰れてしまうので、
ライバルとの闘いモードから、自己との闘いモードに素早く切り替え、中山選手の存在を記憶からクリアする。

最初の給水所が現れるので、ゆっくり水を飲み、スポンジで顔の汗を拭く。どうせ厳しいコースなので多少のタイムロスは誤差の範囲だ。
さらに走ると、坂がだんだん急勾配になってくる。
数年前から、坂の多いレースでは、ためらうことなく歩いている私だが、このレースだけは、油断していたら前半はほとんど歩いてしまう事になる。そこで、近年は、このレースのために
省エネ走法を取り入れている。どういう走法かと言えば、一見、競歩のようだが、走っているような勢いで歩く競歩に対し、まるで歩いているような勢いで走るものである。この走法を編み出したおかげで、実は、このレースは3年連続で歩いていないのだ。
(中山)「どう見ても、それは歩いている、としか思えませんが?」
(幹事長)「君は、心眼、すなわち心の目で見る力を付けなくてはならないようじゃな。大事なのは気の持ちようなのじゃよ。
       心から歩いてしまうと、今度、走り出す時にヨイショがいる。
       しかし、他人からどのように見えようが、心で走り続けておれば、すぐに走り出せる訳じゃよ」

このコースは、21kmのうち、前半12kmがひたすら急勾配の上りで、後半9kmは、下りが多い。12kmも上って9kmしか降りてこんかったら、スタート地点に戻れんやんか、って事になるが、その通り、スタート地点とゴール地点は全然違う。せめて逆にしてくれたら上りが9kmで下りが12kmになって楽なのになあ。
10km辺りから、時々下り坂のポイントがあり、慣れないうちは、「やっと下りになったか」と喜んでいたら、またまた上りがあったりして、精神的に崩れてしまったりしたが、最近はコースを熟知しているので、そんな罠には引っかからない。
で、12kmポイントを過ぎ、ようやく本格的な下りに差し掛かったとき、なんと、中山選手の後ろ姿が見える。中山選手と言えば、かつて「下りの中山」と言われてほど、下りに強かった。下りになると人が変わったように転がり落ちるようにバンバン飛ばしまくり、一気に後れを挽回していたのだ。それなのに、その下りでとんでもないスローペースに陥っている。
(幹事長)「おいおい、どないしたんや?」
(中山)「もう駄目、足が動きませんわ」

なんとまあ、どうした事だろう。やはり春から一度も走ってないのは本当だったか。こんな所で苦しんでいるようだと、無事ゴールできるかどうかも不安だ。ま、しかし、取りあえず、今日の勝負はもらった。
自己との闘いモードに切り替えていたのを、再びライバルとの闘いモードへ切り替える。再逆転されないよう、下り坂をバンバン飛ばしまくる。
それにしても、たしか去年は、ピッグ増田選手に、逆に中盤で抜かれてしまった。あれはピッグがスピードアップしたと言うより、僕が自滅していった展開だった。て事は、今年は僕はペースダウンしていないってことか。確かに、急坂を上ってきた割には、足の疲れがない。快調にペースをキープできている。調子が良いのかも。

下り坂を、かつての中山選手の走りのようにバンバン転がり落ちて順位を上げる。ここが貯金のしどころだ。
長い急な下り坂が終わると、ダム湖畔の平坦なコースが3km程続く。平らなくせに、急な下り坂の後なので、上り坂のような錯覚を感じ、いつも苦しむポイントだ。ところが、今年はあんまり苦しくない。いつもなら一気にペースダウンしてしまうのだが、あんまりペースが落ちない。足が棒のようにならず、スタスタ前に出ていく。なんだか不思議な感じだ。
平らなダム湖畔が終わると、最後の下り坂となり、ここまでくればゴールも近い。全力で転がり落ちる。
さすがに最後の1kmは、かなりペースダウンしてしまったけど、かなり快調に走り終える事ができた。コースがコースなので、タイムの絶対値は大したことないが、
大会自己ベスト記録となった。なんと5年ぶりの新記録だ。まだまだ年齢にうち勝つことは出来るのね。

大会自己ベストを出し満足げな筆者

いつものようにゴール横で若きエース石材店が出迎えてくれる。いつも彼は早々にゴールしているので出迎えてくれる。心強いエースだ。
(石材店)「幹事長、随分早かったですねえ」
(幹事長)「そうなんよ。妙に調子が良くて快調に飛ばしてしまったわい」
(石材店)「中山さんはどうでした?」
(幹事長)「随分前にヨロヨロ状態だったから、当分は帰ってこれんやろなあ。て言うか、完走できるかどうかも不安」


香川県のレースでは、必ず提供されるうどんコーナーだが、この塩江マラソン大会は、ボランティアのおばちゃんの数は十分なんだけど、なぜだかうどんの量が少なく、すぐに無くなってしまう。そのため、何はともあれ、とにかくうどんをもらわなくてはならないんだけど、今日はかなり早く戻ってきたので、うどんは後回しにして預けておいた荷物を取りにいく。すると、バッグのファスナーが壊れていて、それを直したりしていると手間取ってしまい、うどんコーナーに行くと、長蛇の列ができている。うどんが足りなくなってしまい、補充されるまで待たされることになってしまった。
しかも、その列の横で、お気楽にうどんをすすっているのは、なんと、中山選手だ!
(幹事長)「あれれっ!お前、いつ戻ってきたん?まさか棄権して車に乗せてもろたんとはちゃうやろな!?」
(中山)「ちゃいますよ。滅相もない。ちゃんとゴールしましたがな」
(幹事長)「意外に早かったなあ」
(中山)「十分、完璧に遅いですっ!」

ふむ。一時は完走も危ぶまれたが、なんとか復活したようだ。それにしても、早々にうどんをすすっているのが腹立たしい。そう言えば、去年は僕を抜き去った増田選手が、油断してうどんを食べ損なった事件があった。まるで立場が逆転している。

さんざん待たされたあげく、ようやくうどんを食べ、さらにお弁当も食べ、お腹パンパンになって、温泉を目指す。
(中山)「今年はどこにしますか?」
(幹事長)「混浴露天風呂は無くなってしまったし、カブトムシ温泉には二度と行きたくないし、去年行った「道の駅」の温泉も、新しいけど小さかったし」
(石材店)「それじゃあ、このパンフレットで一番豪華そうに見える新樺川観光ホテルにしましょう!」

ということで、塩江の川沿いにそびえ立つ
新樺川観光ホテルへと繰り出した。外見は豪華そうで、マラソン大会のおまけでもらったタダ券で入れるんかいな、なんて不安になりつつ入っていくと、似たような連中がたくさん居たので安心して入る。
お風呂は、そんなに広くて豪華でもないけど、悪くはない。
(幹事長)「混浴露天風呂なき今となっては、これ以上を望んではいけないのかも」
外には露天風呂もあり、なかなか良い気持。
(幹事長)「このレースは厳しいコースやけど、走り終わった後は苦しさが快感になるよなあ。
       特に今年は、個人的には満足のいく結果だったし、すごく快感!」
(中山)「僕はやっぱり当分、走るのはやめときますわ。やっぱり1年半に1回で十分ですわ」
(幹事長)「て事は、次回は再来年の春のオリーブマラソンか?」
(石材店)「いかんですよっ!新春の満濃動物リレー駅伝に出てもらわんとっ!」
(中山)「あっ、それって、今回は女性メンバーがおるんやったっけ?」
(石材店)「なんと2人も出てくれるかもしれへんのですよっ!」
(中山)「そ、そうか。じゃあ、懇親会には行くわ」
(石材店)「走らない人は懇親会だめです」


て事で、
満濃動物駅伝は、3年ぶりに女性ランナーが2匹も登場する予定ですっ! みなさん、ご期待をっ!


〜おしまい〜




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