第14回 福知山マラソン大会

〜 これまた台風で中止! 〜



それは11月中旬の事であった。部下の石材店と一緒に取引先企業と大事な打ち合わせをしていた。すると、石材店に電話がかかってきた。大事な打ち合わせの最中なので、「今、会議中ですから」とか言って、すぐに切るものと思っていたら、石材店は話しながら会議室を出ていってしまう。しばらくして石材店は何食わぬ顔で会議に戻ってきたが、「会議中に電話しながら出ていくなんて、ビジネスのイロハも分かってない奴じゃ。この大事な会議を何と心得ておるっ!」と怒った僕は、きついお灸を据えてやらねば、と思い、会議が終わってから鋭く追求する。
(幹事長)「お前、さっきの電話は、一体何があったというのじゃほい?」
(石材店)「それが幹事長!大変な事態発生です!
福知山マラソンが台風のせいで中止になりましたっ!
(幹事長)「ななな、なーんとっ!」

しばらく呆然として声も出なかった。つい先月も、一年のうち一番楽しみにしていた塩江マラソンが台風で中止になったばかりだ。それに続いて、福知山マラソンまでもが台風で中止となっ!

京都府福知山市で開催される
福知山マラソンは、今年のメインイベントの位置づけだったのだ。普段は、こんな遠くまで遠征しないのだが、今年は、晴れて幹事長の直属の部下となった石材店が張り切り、「今年は絶対にフルマラソンに出ましょう!」と言い始め、熟慮に熟慮を重ねた結果、選ばれたレースがこの福知山マラソンなのだ。

僕は11月末は、例年、小豆島タートルマラソンに出るのが慣例だ。小豆島タートルマラソンはフルマラソンとハーフマラソンがあり、たいていはハーフマラソンに出るのだが、時たまフルマラソンに出ることもある。なので、最初は石材店にも小豆島タートルマラソンを勧めたのだが、小豆島タートルマラソンのコースは坂が多く、ハーフマラソンならなんとかなるが、フルマラソンはかなりきつい。そこで、かなり遠いのだが、コースがフラットで走りやすいと評判の福知山マラソンに出ることにしたのだ。

福知山って、どこにあるかも知らなかったのだけど、調べてみると、距離も遠いうえ、交通の便が非常に不便だ。開催日の平成16年11月23日は祝日で休みだが、どんなに早起きしても、朝出たのでは受付に間に合わない。だから前夜のうちに入っておく必要がある。てことは、宿泊せんといかんのだが、福知山マラソンって関西では有数の人気レースで、1万人くらい参加者があるようだ。しかも福知山って、調べてみると山の中の小さな町で、ホテルとか旅館の数は限られている。かなり早めに手配しないと泊まる所が無くなっちゃう。てことで、
石材店は大変な苦労をして何ヶ月も前から宿泊ホテルを確保した。さらに、どういう交通機関を使って行けば一番早くて楽かの検討も余念が無く、はっきり言って、ものすごい労力を費やして万全の準備をした。

もちろん、
トレーニングに関しても今年は異例だった。7〜8月の暑い時期は、例年なら完全にトレーニングは中止にするのだが、今年は休まずに走った。10月に入ると、週末には30kmくらい走っていた。石材店に至っては、会社に来る前とか、帰ってからも走りに走っていた。F川の年間走行距離の何倍もの距離を1ヶ月間に走ったりしていた。

このように万全の体勢で準備をしてきたうえ、当日の準備にも余念がなかった。レース当日に出たのでは間に合わないから、前日に出る必要があるのだが、仕事が終わってから出たのでは随分遅くなってしまうので、少なくとも午後は半休を取って出る必要がある。僕と石材店が揃って半休を取ると業務に支障が出るので、ご主人様である僕は半休を取るが、働きアリの石材店は仕事が終わってから出て深夜に到着する、というシナリオを勝手に考えていたら、石材店は朝から全休を取るという奇襲作戦に出てきたので、熾烈なバトルを繰り広げていたのだ。

レース中止の連絡が入ったのは、まさにそんな時だったのだ。
(幹事長)「なんとかーっ!その連絡は大会事務局からか?」
(石材店)「それが宿泊予定のホテルからなんですよ」
(幹事長)「なんでなの?」

どうやら、レース中止の情報をいち早く入手したホテルが、どうせキャンセルになるのなら、早めにキャンセルしてくれた方が他の宿泊客を入れられるので、連絡してくれたらしい。何と言っても、その小さな町で大きなマラソン大会が開催されるとなると、町中のホテルはレース参加者で埋まってしまい、一般の人は泊まる場所が無くなってしまう。一般の宿泊客がいれば、の話だが。

しかし、いくらホテルから連絡があったとは言え、本当かどうか確かめる必要があるので、すぐさま大会事務局に問い合わせてみる。すると、やはり情報は本当で、大会は直前になって中止になったらしい。
塩江マラソンは急峻な山岳地帯で開催されるので、台風で土砂崩れがあるのは容易に予想できる。しかし福知山って、平坦なコースと聞いていたので、土砂崩れというイメージにはほど遠い。
(幹事長)「何があったんですかい?」
(事務局)「台風で辺り一面水浸しになり、その復旧作業が間に合わなかったんですぅ」

なんと、ホームページで写真を見ると、台風直後は
レースが開催される辺り一帯が大洪水で海のようになっていたのだ。もちろん、今は水は引いているが、復旧は大変だろうと予想がつく。こら、仕方ないか。

台風で大洪水となったコース周辺地域

(幹事長)「で、参加費はどうなるんですかい?」
(事務局)「実費を差し引いてお返しします」
(幹事長)「実費って?」
(事務局)「返金を郵便為替で送りますから、その送料です」

ふむ。送料なら80円くらいか。許す。

ところーが!しばらくして送られてきた郵便為替は、実費として500円も引かれていた。なぜか。それは、郵便為替と共に、なぜか記念品である帽子(キャップ)が送られてきたから送料が高くなったのだ。
(幹事長)「なんじゃー、こりゃあっ!こななキャップいらんから500円返せっ!」
(石材店)「そうですか?僕、マラソン用の帽子持ってないから、これが500円で手に入ったなら嬉しいな」

ま、送料の500円にしても、事務局がピンハネしたわけではないので、レースが中止になったりしたら事務局は大損害だろうなあ。楽しみにしていたレースに出られなくなった僕らもお気の毒ではあるが、事務局も本当にお気の毒であるな。


〜おしまい〜




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