第59回 丸亀マラソン大会
2005年2月6日(日)に第59回香川丸亀ハーフマラソン大会が開催されました。
(幹事長)「先日の動物リレーは、お遊びだったから、これが今年の本格的幕開けじゃな!」
(石材店)「幕開けったって、あなた、また当分、休養するんでしょ?」
今年の大会の目玉商品は、何と言っても野口みずき選手だ。
思い起こせば4年前、シドニーオリンピックで金メダルを獲った高橋尚子選手が、オリンピック後の初レースとして丸亀マラソンに参加し、大観衆を集めて大騒ぎになった。今回は、その再現と言えよう。アテネオリンピックで金メダルを獲った野口みずき選手のオリンピック後の初レースだ。
彼女の参加は、当初から決まっていたものではない。参加申し込みが終了した後で決まったのだ。そのため、急遽、参加申し込みを再開するという異例の事態となった。やっぱり有名選手が出るとなると、参加者が激増するからだ。あんまり参加者が増えるとスタートなんかが混雑して走りにくいけど、でもやっぱり大会が盛り上がるから喜ばしい。
ただ、当初の発表では、野口選手は前日のジョギング教室に出たあと、当日は小学生の部で1kmを走るだけ、となっていた。
(石材店)「はいっ!わたくしっ、その前日のジョギング教室に行って参りましたっ!」
(幹事長)「ほう。それは感心かんしん。で、結果はどうだった?」
(石材店)「はいっ!見事、新聞の写真の最前列を飾りましたっ!」
(幹事長)「こらこら、そういう事ではなくて、ジョギング教室の内容を聞いておるのだ」
(石材店)「はいっ!始めから終わりまで、野口選手をかぶりつきで見学しました。なかなか良い子でしたっ!」
というわけで、またまたペンギンズのメンバーが新聞紙面を飾った。
(幹事長)「実働メンバー数の割には、本当に露出度の多いクラブやなあ」
(石材店)「いかにして目立つか、だけを常に考えてますからねえ」
そして、秘密情報部員である石材店から衝撃の情報が入る。
(情報部員)「長官っ!なんと野口選手は、予定を急遽変更して、今日はハーフマラソンを走るとの事です」
(CIA長官)「なんとなーっ!やったぞーっ!一緒に走れるぞーっっ!」
わざわざ丸亀まできて小学生と一緒に1km走るだけじゃ物足りなくなった野口選手は、急遽、ハーフマラソンに出ると宣言したのだ。
しかも、普通の招待選手や陸上競技連盟への登録選手は、一般選手より早いスタートになるのだが、野口選手は直前のエントリーだったので、当日申し込み扱いとなり、我々一般選手と一緒のスタートだ。
(幹事長)「なんとなく嬉しいなあ」
(石材店)「一瞬でもいいから抜いてみたいですねえ」
さて、昨年末は久しぶりにフルマラソンに出場したが、それに向けて珍しくトレーニングを十分に積んでいた。その後はサボり気味だったとはいえ、その貯金が少しは残っているため、今回は密かな自信があった。
(幹事長)「今回は久しぶりに大会自己ベストが出るかも」
(石材店)「去年も同じような事を言ってましたよ」
確かに、去年も、それまでの数ヶ月間は、塩江マラソンも小豆島タートルマラソンも満濃公園リレーマラソンも大会自己ベストを更新し続けていたので、丸亀マラソンでも絶好調を維持して好記録を狙っていた。
なんちゅうても丸亀マラソンのコースは坂が殆ど無いフラットな走りやすいコースなので、天候次第では好記録が狙えるのだ。
しかも去年は異様に暖かく、寒いより暖かい方が好きな僕としては、これ以上は望めない絶好のコンディションだったのだ。
(石材店)「その結果が惨敗でしたよねえ」
(幹事長)「前半に調子に乗って飛ばしすぎたのが敗因だったなあ」
(石材店)「それって昨年末の加古川フルマラソンの時も言ってましたねえ。
ええ歳して、ほんまに進歩が無いですよ」
そして今年の天候は、と言うと、これまた快晴の良い天気。去年と違って風がかなり強いが、風向きはコースの前半が向かい風で後半が追い風になる方向だ。
これが逆だと帰りが辛いが、体力のある前半が向かい風で、弱ってきた後半が追い風なら、なんとかなる。
(石材店)「軍曹っ!大変な事態ですっ!」
(幹事長)「なんだね、上等兵?」
(石材店)「今年は参加者が多すぎて、我々下級の兵隊には更衣室も控え室もありませんっ!」
なんと、我々一般参加者は、寒い外で着替えて、そのまま寒い中を待機せねばならんのだ。いくらなんでも寒すぎるので、駐車場に戻り、車の中で待機する。
スタートの時間が近づいてきたので、車から出て、軽くウォーミングアップがてら走っていくと、福家先生にばったり出会う。福家先生は5kmの部に出るので、まだ時間的に余裕がある。
それで一緒にダラダラしゃべっていると、ハーフマラソンのスタートの時間になってしまい、結局、今年もウォーミングアップはできなかった。
今年の参加者は、ハーフマラソンの部は、僕と石材店のほかは、新居浜支部長と中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)とペンギン中村くんだ。
東京から帰ってくるわけにはいかない増田選手や笹谷選手は仕方ないとしても、動物リレーには帰ってくるタイガーや、密高選手などは、近年、全く参加しない。
(石材店)「でもF川さんは出るんでしょ?」
(幹事長)「それがな、大きな声では言えんのだが、F川はな、実は、5kmの部に出るんだよ」
(石材店)「えっ?聞こえません。もっと大きな声で言ってくださいよ」
(幹事長)「いや、実は、F川は5kmの部に出るんだよ!
今年は参加者が多くて探すのが大変だったけど、なんとか他のメンバーにも会える。
(幹事長)「おおう、新居浜支部長じゃないか!元気そうで、なにより。調子はどう?」
(支部長)「相変わらず練習無しでの参加ですから、完走だけが目標ですね」
(幹事長)「中山くんは?」
(中山)「僕も、このレースは初参加ですから、完走できればいいですね」
とかなんとか言ってるが、こんなんを信用してはいけない。僕の好ライバルでありつつも、普通は決して負けたことのない支部長に唯一負けたのは、2年前のこのレースなのだ。
また、中山選手には去年のオリーブマラソンで惨敗したし。僕の目標は、「大会自己ベスト」&「新居浜支部長と中山選手に勝つこと」の2本柱である!
いよいよスタートだ。最近、前半を調子に乗って飛ばしすぎて後半に潰れてしまって後悔するレースが多いのだが、しかし、だからと言って、前半をどれくらいセーブして走ればいいのか難しい。
もちろん、前半をゆっくり走れば後半も余裕が残るが、それではタイムは良くならない。後半に潰れないギリギリの線で前半を飛ばさなければならない。でも、それって、本当に難しい。その日の体調で変わってくるし。
(支部長)「私ら失うものも無いし、そんなんゴチャゴチャ考えんと走りましょうよ」
(幹事長)「ま、そやな。周囲に流されて走っていこか」
ところで、今年は各人がシューズに付けているチップにより、ネットタイムで計測してくれることになった。
参加者が多くて混雑するので、後ろの方からスタートすると、スタートラインにたどり着くまでに大きなタイムロスがあるんだけど、ネット計測により、各人がスタートラインを越えた時点からのタイムを計測してくれるのだ。
なので、余裕を持ってスタートしたのだが、混雑していて、どこにスタートラインがあったのが分からなかった。
なので、せっかくネットタイムで計測してくれているはずなんだけど、自分では、ゴールするまで自分のネットタイムが分からない状態になってしまった。
さて、最初の5kmのタイムは、まあまあ、ってレベル。スタート直後の混雑のタイムロスがあるが、それを割り引けば悪いペースではない。
後半に潰れる危険性はあるが、自分では抑え気味のつもりなので大丈夫だろう。そのままペースを維持して走る。
この辺りで、関心は、自分のタイムから野口みずき選手に移る。
彼女のペースなら、そろそろ折り返してすれ違うはずだ。高橋尚子選手が走った時は、沿道の観客のざわめきで分かったけど、野口みずき選手の場合は、そこまでは盛り上がっていないので、気を付けていないと見逃してしまう。
必死で目をこらして見ていると、遂に野口選手がやってきた。嬉しくなって、すれ違いざまに大声で「がんばれーっ!」って叫んだら、すごく近くからの大声だったので野口選手はびっくりして、ちょっと飛び上がったけど、とっさに手を振ってくれました。
高橋尚子選手の時も声援は送ったけど、彼女は黙々とそのまま走り去ってしまった。それに比べると、誰にでもニコニコと対応する野口選手は、本当に性格が良さそう。さすがは苦労人だけあるなあ。
て言うか、あんなに苦労しても元気に乗り越えてこられたっていうのは、性格の良さも大きな理由だろうなあ。
石材店も「野口選手は性格良いですよ」って言ってたし、なんだか、一気に、Qちゃん派から野口みずき派になっちゃいそう。
今年の第一目標である野口選手を見たあとは、自分のレースに戻る。相変わらず淡々と走り続け、次の5kmも悪くないタイムだ。この辺りまでは去年と同じだ。
ただし、去年はその後でガクンとペースが落ちた。後半が勝負なのだ。
なんて思いながら折り返し点で確認していると、まずは石材店が快調なペースで飛ばしていく。相変わらず速い。
そして、その次は、なんとペンギン中村くんだ!彼がどれくらい速いのか知らなかったけど、結構、速い。はっきり言って、僕の敵ではない。
(石材店)「日本語がおかしいですよ」
でも、まあ、ここまでは予想の範囲だ。予想を超えたのは、次に中山選手が早々と折り返して帰っていくのにすれ違ったときだ。
あまりの速さに目を疑ってしまった。絶対に逆転不可能なタイム差だ。まずい。残るよりどころは支部長しかいない。
精神的に追い込まれて走っていると、さすがに優しい支部長は僕よりだいぶ遅かった。ふむ。このタイム差なら、もう逆転されることはないだろう。
折り返して自分より遅いランナーを見ていると、今年は面白いランナーが何人かいた。
このレースは制限時間が厳しく、かつてはおふざけランナーの出る余地は無かったのだが、最近は制限タイムが緩くなり、おふざけランナーが出てきた。
今年はスーツにネクタイ姿のサラリーマンランナーや、浴衣にギターを抱えたギター侍ランナーがいた。さすがにギター侍は走りにくそうで、最後尾に近かった。たぶん、途中の関門の制限時間に引っかかって回収される運命だろうなあ。
快調に飛ばしていると、次の5kmも、少しタイムは落ちているが、それでもそんなに悪くはない。ガクンとタイムが落ちた去年に比べると、かなり速い。
よし!今年は最後までいけるかも。今から頑張れば大会自己ベストも不可能ではない。と思ってペースを上げる。
ところーが!ペースを上げたつもりなのに、なんだか周りに抜かれていく。いかん。明らかにペースが落ち始めてきた。まずい。自己ベストは厳しい状況。
それでもなんとか頑張っていると、沿道の観客がざわめいてきた。「サラリーマン頑張れっ!」って声が聞こえる。そうなのだ。あのサラリーマンランナーが追いついてきたのだ。なんとっ!
いくらなんでも、ネクタイ締めてスーツ着て鞄を持った兄ちゃんに抜かれては明日から生きていけない。必死で走ってなんとか抜かれまいと頑張ったが、遂に力尽きて抜かれてしまった。
満濃公園のリレーマラソンで、動物姿の僕たちに抜かれてガックリくる他のチームの気持ちが分かります。
サラリーマンランナーに抜かれた僕は、そこで力が抜けてしまい、みるみるうちにペースが落ちて、自己ベストどころか、去年の惨敗の二の舞になりかねない状況。何の目標も失ってしまった終盤だが、それでも、なんとか去年よりはマシで、一応、最後まで足は動いた。
(石材店)「て言うか、最後まで真面目に走ってくださいよ。いつも写真写りの事ばかり考えて手を振ったりするでしょ。
気合いが入ってませんよ!」
余裕の表情で観客に手を振る優勝者
ライバルの新居浜支部長は、前半のスローペースが良かったのか、最後までペースも落ちずに、僕に続いて淡々とゴールした。
(幹事長)「お互いに去年よりはマシやったね」
(支部長)「練習ゼロでこれなら不満はないですよ」
なんとか去年よりマシだったというだけで満足している我々に比べて、中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)は、初参加にもかかわらず好タイムを叩き出した。
(幹事長)「すごいなあ中山くんは。1年半に1回くらいしかレースに出ないのに、まだまだやるなあ」
(中山)「やっぱり自宅から空港までの往復トレーニングが効いてますね」
ところで、今回採用されたネット計測だが、色々と弊害もあったようだ。
みんなスタートのピストルが鳴った瞬間に自分のストップウォッチのスイッチを入れるが、自分のネットタイムは、その後、自分がスタートラインを越えた時から計測される。
だから、自分のストップウォッチの時間よりはネットタイムの方が短いはず。しかし、どれくらい短いのかが良く分からない。
(石材店)「僕なんて、たぶん、これで自己ベストだろうなあ、と思っていたら、あと1秒のところで届きませんでしたよ」
まあ、そうは言っても、石材店はペンギンズの中ではダントツのタイムだった。
石材店の次はペンギン中村くんで、今年は、石材店→ペンギン中村→中山選手→幹事長→支部長と、5人がほぼ等間隔に並ぶという、全くスリリングでない展開だった。
(幹事長)「大会自己ベストも駄目やったし、中山選手にも負けて、新居浜支部長に勝っただけやから、
目標からすれば1勝2敗やなあ」
ところで、今年から変わったのはタイム計測だけではない。例年、物議を醸す「うどん」コーナーであるが、なんと、遂に、今年は、無料うどんが無くなった。
(石材店)「最初は、うどんは誰でも無料だったのが、そのうちレース参加者だけに無料券が配られるようになって、
遂に今年は参加者に100円割引券が1枚配られるだけで、全部有料になりましたよ」
(幹事長)「うどんもそうめんも無料の小豆島や塩江のレースに比べたら、都市部のマラソンはケチやなあ」
そう言えば、加古川マラソンでも、うどんもぜんざいも有料のうえ、早々に売り切れていたなあ。せめて数だけは確保してほしい。その点、今年の丸亀マラソンはうどん屋の数が増えて、種類も充実していた。
(石材店)「まあ、これやったら有料になっても許してあげますか」
(幹事長)「ところーで。みんな、恐らく、存在すら忘れていると思うが、最初から最後までF川の姿が見えんが、どう思う?」
(石材店)「そんなん、サボりに決まってますがな」
(中山)「オリーブマラソンや満濃公園リレーマラソンのように一緒に車に乗せて連行して来ないと、一人で来るはずないですよ」
やはりF川の自主性に任せたのが失敗だったか。
ところが、翌日、朝っぱらから職場の僕の席にF川が勝ち誇ったような顔をしてやってきて、机の上に伝票を放り投げながら一気にまくし立てる。
(F川)「もう参りましたよう。見てくださいよう。これ」
何かと思うと、病院の伝票だ。
(幹事長)「どしたん?また子供を病気に仕立て上げたんか?」
(F皮)「違います。私です。私自身が発病したんですっ!」
(幹事長)「まさか、おたふく風邪に?」
(F川)「尿管結石ですっ!」
(幹事長)「なんやてっ!?お前が尿管結石とな?しかもマラソン大会の当日にぃ!?もうちょっとマシな嘘は無いんか?」
しかし、F川は本当だと言い張る。病院の伝票の日付もアリバイを証明している。本当に本当なのか?
(幹事長)「どう思う?」
(石材店)「嘘やったとしても、演技賞と努力賞を認めてあげましょうよ」
謎は残るのであった・・・。
〜おしまい〜
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