第28回 瀬戸内海タートルマラソン大会

〜 好天気で好記録続出 〜


2007年11月25日(日)、小豆島において第28回瀬戸内海タートルマラソン全国大会が開催された。
僕はこのレースには10年以上前から毎年出ているが、フルマラソンよりハーフマラソンの部に出る事が多かった。しかし去年は、東京マラソンの抽選にはずれた腹いせに久しぶりにフルマラソンに出た。今年も全く同じ展開で、昨年の競争率3倍から、さらに競争率5倍にまでアップした東京マラソンの抽選に見事はずれた僕としては、代わりにここでフルマラソンに出ておこうか、という気持になっていた。
ところーが、
石材店が厳しい競争率を勝ち抜いて、東京マラソンに当選してしまったため、状況が変わってしまった。石材店は、今シーズンの第一目標を2月の東京マラソンに定め、その前にヘタに無理するのを回避したいと考え始めた。この微妙な時期に坂の多い小豆島タートルマラソンでフルマラソンを走って故障すると、東京マラソンに悪影響が出てしまうので、今回は無理をせず、ハーフマラソンにしようと言い出したのだ。こうなると、心の底では「フルマラソンはしんどいよなあ」と常に思っている僕も心を動かされ、なんとなく石材店に付き合ってハーフマラソンにしようかなあ、なんて考え始めた。
しかし、ここに
佐伯先輩が登場し、
(佐伯)「何を言うとんじゃ!フルマラソンに決まっとるじゃろが!」
と強い叱責を受け、あっさり
フルマラソンに出場する事に決めた。当然、佐伯先輩と同じ土木系の山野UEくんやKO野君、OK田君もフルマラソンに出る。
去年、一緒に走ったメンバーでは、
テニス君もフルマラソンに連続出場だ。さらに、今年2月の丸亀マラソンでのデビュー以来、小豆島オリーブマラソン、庵治マラソンと、出るレース出るレースどんどん記録を上げている驚異の新エース矢野選手もフルマラソンにに申し込んだ。こうなると石材店もフルマラソンを回避する訳にはいかなくなり、結局、みんなでフルマラソンに申し込んだ。

それ以外も、今年は新メンバーが盛りだくさんだ。まずは、ホノルルマラソンなど海外マラソンを荒らしまくる驚異の女性ランナー
トラベル恵子だ。
(幹事長)「当然フルマラソンよね?」
(トラベル)「いえいえ、今回はハーフマラソンにしときますぅ」

トラベル恵子は国内レースはいまいち気合いが入らない
ようだ。
さらにテニス君の尽力により、彼の職場から4人も初参加だ。
E間さんとH本君と小松原選手と、そして新人女子部員のまゆみちゃんだ。
(幹事長)「おおう、新人女子部員まゆみちゃんの勧誘に成功したか!よくやったぞテニス君!」
(テニス)「E間さんとH本さんと小松原選手の存在を無視してますが」

一応、紹介しておくと、E間さんとH本君はハーフマラソンに、まゆみちゃんと小松原選手は10kmレースに出る。

一方、去年は申し込んでおきながら風邪でダウンして欠場した亀ちゃんは、今年は12月初旬の
那覇マラソンに出るからとて、小豆島タートルマラソンは回避したそうだ。
(幹事長)「どう思う?」
(石材店)「那覇マラソンかあ。ええですねえ。一度は出てみたいですねえ」
(幹事長)「ここんとこ毎年のようにニューヨークマラソンだとか四万十ウルトラマラソンだとか出てるよなあ。
       金が腐るほどあって、かつ、発狂しそうなくらいヒマな亀ちゃんならではやなあ」


それから毎年、お父上と一緒に参加していた
福家先生は、今年は単独で10kmレースに参加だ。
(幹事長)「あれ?重鎮の父上は出ないんですか?」
(福家)「今年は来週の広島の宮島クロスカントリー大会に出るから、これは出ないんだよ」
(幹事長)「それって、福家先生が去年出たレース?」
(福家)「そうだよ。僕は今年も出るけどね」

なんと福家先生の今シーズンのスケジュールは、
 ・11月25日 小豆島タートルマラソン
 ・12月2日 宮島クロスカントリー
 ・12月9日 安芸タートルマラソン
 ・12月15〜16日 全日本実業団女子駅伝応援
 ・12月23日 鳴門市大麻町ジングルベルマラソン
 ・年末年始 ニューイヤー駅伝応援

と、続いている。3週間連続の出走を始め、週末は全てマラソン関係で埋め尽くされている驚異の過密スケジュールだ。
(石材店)「あり得ませんねえ」
(幹事長)「ヒマと時間が腐るほどあるってのは亀ちゃんと同じだけど、こら、さらに体力と気力も必要やなあ」
(石材店)「それにしても、福家先生は色々とレースを見つけてきますねえ」
(幹事長)「ジングルベルマラソンなんて、名前からして泣かせるねえ」

てな訳で、例年以上に参加メンバーの多い今年のレースとなった。
のだが、
直前になって欠場者が続出した。まずはニューヒーロー矢野選手だ。矢野選手と言えば、1ヵ月前の庵治マラソンで部下の制止を振り切って職場を抜け出して飛び入り参加し、いきなり快記録を出し、ゴールしてそのまま何事もなかったかのごとく職場に復帰したというスーパーマンぶりを発揮したのが記憶に新しい。
(矢野)「それは言うたらいかん約束だったでしょうっ!」
矢野選手は素晴らしく速いのだけど、フルマラソンには出た事が無いので、すごく練習を頑張っていた。
(矢野)「練習で1回くらいは42kmを走っとかないと不安で不安で」
(幹事長)「本番でもない限り42kmは走れんよ」
(矢野)「練習じゃ最長でも30kmくらいしか走れないんですよ」
(幹事長)「練習で30kmも走れれば本番は気合いが入るから42kmくらい走れるって」

とアドバイスしたんだけど、本人は納得せず、直前まで厳しい練習を休まなかったため、膝を故障してしまい、直前になって涙をのんで欠場を決めた。
(幹事長)「君ほどのランナーが、まったくもったいないなあ」
(矢野)「短期間で無理をするのは良くないですねえ」

みなさんも過度のトレーニングには気を付けましょう。ま、僕には関係の無い話ですけど。

それからテニス君の職場仲間のE間さんとH本君も直前に不出場宣言をしてしまった。
(幹事長)「どしたんですか?伏せ字にしたのが気にくわないと?」
(E間)「いやいや、直前に出張でタイに行ったんやけど、42度もあって」
(幹事長)「熱が42度も出たんですかっ!?マラリアか黄熱病じゃないですか?それともエボラ出血熱?」
(E間)「いや、体温じゃなくて、現地の気温が42度もあったから、寒い日本に帰ってきて風邪引いちゃって」
(幹事長)「なーんだ、つまんない。H本君は?」
(H本)「僕も風邪引いちゃったんですよ」
(幹事長)「ほんっとっかなあ〜?」
(H本)「嘘付いてどうするんですかっ!」

てな事で、一気に3人も減ってしまったが、ま、仕方ない。
(テニス)「あんまり残念そうじゃないですねえ。まゆみちゃんが出てくれれば、それで良いと」
(幹事長)「えっ?分かった?」

レース当日は天気予報どおり、すごく良い天気。去年は冷たい雨も降って寒かったけど、今年は朝から寒くない。
小豆島へは高速船で行くのが楽ちん。一昨年まではのんびりとスタートにギリギリ間に合う船で行ってたが、去年、石材店に「到着して何の準備をする時間も無く、いきなりスタートするなんて、あまりにも安易に考えすぎです。ナメすぎてます。余裕を持ってもっと早い船で行きましょう!」と尻を叩かれ、ひとつ早い7時25分発の便で行く事になった。
(幹事長)「港にはいつ頃行ったらええかな?」
(石材店)「僕はJRで7時頃に着きますから、その頃に来て下さい」

僕が例年乗っていたギリギリの船は、あまりにもギリギリなため多くの賢明なランナーが利用を避けており、すごく空いていたのだが、去年乗った7時25分発の船は、ちょうどいい時間なので、多くのランナーが利用し、かなり混んでいた。しかし、混んでいるとは言え、7時は早すぎる。たしか港の窓口が開くのが7時過ぎだったと思う。そんなに早く行っても仕方ないぞ。
なーんて余裕を持って7時過ぎに家を出て港に向かっていると、石材店から電話。
(幹事長)「どうした?JRに乗り遅れたか?それなら遅い便に変えるか?」
(石材店)「何を言ってるんですか!予定より早い電車で6時半頃に着いたのに、いつまで経っても来ないから電話してるんですよ。
       もうチケットが売り切れちゃいましたよ!」
(幹事長)「えっ?何だって?チケットが売り切れたあ?こんな時間にありえなーい」
(石材店)「こんな時間って、あなた、既にそんなに早くないですよ。あとは座席が無くてもいいっていう人だけチケットを
       売ってくれるんですよ。早く来てください!」

げげっ。なんだか今年は厳しい情勢。去年は朝から雨模様で不参加者が多かったけど、今年は良い天気で参加者が多いのだろうか。
高松港に着くとチケット売り場には長蛇の列が出来ている。座席が無くてもいい人がたくさんいるようだ。石材店が僕のチケットも買ってくれていたので助かったけど。それにしても、早くもチケットが売り切れているなんて。
(石材店)「早くも、じゃないですよ。もう十分、遅いですよっ!」
時計を見ると、出航ギリギリではある。なんとかスペースを見つけて床に座り込む。僕らより後からも、次々とランナー達が乗り込んできて、床が埋め尽くされていく。
(幹事長)「ところでテニス君やトラベル恵子たちは?」
(石材店)「高速船は揺れて酔うからとか、フェリーの方が安いからとか言ってフェリーにしました」
(幹事長)「揺れるって、この高速船は揺れないぞ。フェリーの方がよっぽど揺れるぞ。それに時間だって僅か30分だし」
(石材店)「阪神方面に行く超高速船のイメージが強いみたいでしたね」


小豆島に着き、港から会場の役場まで1.5kmほど歩く。今日みたいに暖かい日だと楽しい気分で歩ける。受付を済ませ、選手控え室になっている公民館に入って準備を始める。フェリー組のテニス君と小松原選手も少し遅れて到着する。
(幹事長)「フェリーは混んでなかった?」
(テニス)「むっちゃ混んでて、床も足の踏み場もないくらい埋め尽くされて、まるで奴隷船状態でしたね」
(幹事長)「だから高速船にすればいいのに」
(石材店)「高速船も奴隷船寸前でしたがな」

テニス君と一緒に来たトラベル恵子とまゆみちゃんは、別の建物の女子更衣室へ行った。

今日のように天気が良いと、着るものに迷ってしまう。ハーフマラソンなら迷わず半袖Tシャツってところだけど、さすがにフルマラソンになると終盤は歩くようなスローペースになり、体も結構冷えてくる。去年のように雨が降ったりしていると、逆に何も迷わずに厚着にするけど、今日は微妙だ。結局、薄手の長袖にする。石材店は、上は半袖Tシャツだが、下は去年から登場した新兵器のタイツの上に短パンをはいている。かなりの重装備だ。やはり故障がこわいらしい。さらに石材店は、足のマメ防止用のクリームを足だけでなく乳首にも塗っている。
(幹事長)「それって、乳ズレにも効果あるん?」
(石材店)「説明書に書いてましたよ」

僕も借りて足と乳首に塗りまくる。

準備が終わって外へ出て、女性陣の準備を待つ。実は、僕はまゆみちゃんとは初対面。
(幹事長)「まゆみちゃんの職場って、テニス君の隣のグループだよね?厳しい人がいっぱい居るよねえ」
(まゆみ)「いえいえ、人間の幅というか、心の許容度が上がりましたね。いい勉強させてもらってますぅ」

顔で笑って心で泣いて、ほんとに人間ができてるなあ。

そこへ福家先生も登場し、みんなで使用前の集合写真を撮る。

いまいち緊張感の乏しい精鋭部隊
(左から石材店、福家先生、幹事長、テニス君、小松原選手)

ようやくスタート時間が近づいてきたので、会場へ向かうと、土木軍団の山野UEくんやOK田君がいる。さらに、なんと驚いた事に、さとやんもおるではないかっ!さとやんと言えば、先月の庵治マラソンで思いがけず見かけたもんだから、「ふっふっふ。素人さんはあんまり無理せんほうがええよ」なんて余裕をかましていたら、あっさり負けてしまった秘密のランナーだ。その風貌と体型からは想像できない力を秘めているから要注意なのだ。
(幹事長)「うわあ、さとやん、こななレースにも出るん?」
(さとやん)「うん。でも今日はハーフマラソンやからな」

そうか、ハーフマラソンか。直接対決を避ける事が出来て良かった。とりあえず、
(幹事長)「そやろ、そやろ。君には、まだまだフルマラソンは早いわな」
と余裕をかましたが、来年あたりはフルマラソンに出てきそうや。

ハーフマラソンなら、どうしてもタイムの事を考えたりして、スタート前はかなり緊張感がある。スタート後の混雑を回避するために、できるだけ前方に位置取りしたりもする。でもフルマラソンの場合は、とにかく完走が目標であり、タイムを考える余裕なんてないので、後ろの方でダラダラ待つ。東京マラソンを第一目標に位置づけて、今回はあくまでも練習がてらに走る石材店も、同じようなスタンスだ。
(テニス)「石材店さんの今年の目標は?」
(石材店)「今年は完走できればいいや」

ペンギンズのエース石材店とは思えない言葉だが、これには訳がある。彼は、今年、ちょっと練習不足なのだ。
(テニス)「何があったんですか?」
(石材店)「小学一年生の息子が野球部に入って、その練習の手伝いで週末が潰れてしまい、ロクに走れてないのよ」
(幹事長)「えー、こほん。誤解の無いように注釈を入れとくけど、練習不足ったって、あくまで彼の基準で言ってるだけであって、
       僕らよりははるかに多いのよ。
       彼は普通は月に3〜400kmくらい走ってるけど、それが少し減っているっていうレベルだから」

どんなに多くても月に50〜100kmくらいしか走ってない僕とは基準が違う。
(石材店)「去年は前半を飛ばしすぎて、終盤は結構、歩きましたからね。前半の貯金があったから、タイムは悪くなかったけど、
       やはり最後まで走ってゴールしたいですね」
(テニス)「そう言えば、僕も去年は終盤は歩きっぱなしでしたね。僕も今年の目標は最後まで歩かずに完走したいですね」
テニス君も、去年は、決して悪いタイムでは無かったけど、最後に歩きまくったのが心残りらしい。
(幹事長)「それにしても、君たち高速ランナーのくせに、目標が低いなあ。もっと高い目標を掲げて走って欲しいものだ」
(テニス)「そういう幹事長の目標は?」
(幹事長)「
制限時間内に帰ってくること!
(テニス)「えらい低い目標じゃないですかーっ!」
確かに、このレースの制限時間は5時間で、市民マラソンでは普通の制限時間だ。しかし、このコースは坂が多く、ほとんど坂だと言っても過言ではない。
(石材店)「ちょっと過言でしょう」
(幹事長)「ちょっと表現がオーバーになったが、少なくとも半分は坂じゃないか?」
この異常に坂の多いコースで、しかもタートルマラソンという名前の割には、5時間という制限時間は厳しい。タートルマラソンの趣旨は中高年がゆっくり走るというレースなのに。しかも、制限時間を1秒でもオーバーすると計測機器は撤去され、記録表も出してくれない。あまりにも優しくないレースだ。そのため、去年は、冷たい雨風に行く手を阻まれた私は、あと一歩のところで制限時間をオーバーしてしまい、記録証をもらうことができなかったのだ。
(幹事長)「今年はなんとしても記録証をゲットしなくてはっ!」

なんとしても記録証をゲットするためには、最後まで気力をプッツンさせてはいけない。そのために今年は秘密兵器を持参してきた。2GMのメモリーを内蔵したウォークマンだ。約1000曲入っている。時間にして65時間分くらいだ。
(石材店)「いくら幹事長が遅いと言っても、そんなにはかからないでしょう」
(テニス)「て言うか、そんなん着けて走るんですか?気合いが入らないでしょう?」
(石材店)「練習と同じ気分ですねえ。そんなんで大丈夫ですか?」
確かに、こななもん着けて走ったら気合いは入らない。でも、終盤、足が痛くなったとき、気を紛らせることができる、かもしれない。
(幹事長)「て言うか、本当の事を言うと、早い人はいいけど、僕なんか5時間くらい走るから、後半はもう退屈で退屈で」
(テニス)「退屈しのぎですか!やっぱり気合いが入ってませんよ」
(石材店)「おまけに、ポケットに入っている弁当券は何ですか?」
(幹事長)「い、いや、これは、ゴールしてから弁当券を更衣室まで取りに行くのが面倒くさいから、あらかじめ持参しておこうと思って・・・」
(石材店)「走る前からゴール後の弁当の事を考えとんですかっ!本末転倒ですよっ!」


ま、しかし、弁当券も持ったしウォークマンも持ったし、準備万端でスタートする。ウォークマンは持っているものの、最初はレースの緊張感を楽しみたいから、スイッチは切っている。実は僕も石材店とはレベルが段違いだが、今年は去年より練習不足だ。去年より天候のコンディションは良いけど、調子に乗っては危険だ。なので前半は抑え気味に走る。
最初の10kmは、こんなんでええんやろかと自分でも戸惑うくらいのスローペース。後で確認すると、惨敗した去年よりも、さらに遅かった。ところが、なんと石材店とテニス君もずっと同じペースだ。いつまで経っても僕の目の前にいる。給水所のどさくさで僕が前に出る事すらある。
(幹事長)「いくらなんでも、このペースは遅いんでないかい?」
(石材店)「これ以上スピードを上げるのが、なんとなく怖いんですよ」
とは言え、次の10kmになると、少しずつ彼らと間隔が開いてきて、そのうち見えなくなった。

いよいよ独り旅になり、ウォークマンでも聴こうかなんて考え始めた頃に、佐伯先輩に追い抜かれる。なんとなく去年より一段と調子が良さそう。僕も、最初の10kmのペース抑制が良かったのか、次の10kmになっても快調に気持ちよく走れる。

天気も良いから景色を楽しむ余裕もあり、気持ちよく走っていると、今度はなんと、住田さんが追い抜いていく。
(住田)「いよっ、元気かっ?」
(幹事長)「うわあ、誰かと思ったら、住田さんじゃありませんかっ!マラソンしてるんですかっ?」
(住田)「2〜3年前から始めてな」
2〜3年まえから始めたと言う割にはサングラスかけて、ウェアも本格的っぽいし、何より快調に飛ばしていく。すごいもんだ。

この辺りになると、沿道の住民のみなさんの差し入れが楽しみになってくる。そろそろお腹も空いてきたので、エネルギー補給のために飴なんかももらう。ところが、飴かと思ってもらったらチョコレートで、しかも暑さで溶けてベチョベチョ。手も口もチョコレートまみれで、口の中もベチョベチョ。次の給水所まで喉がカラカラで厳しかった。差し入れを貰う時は、走りながらじゃなくて、ちゃんと立ち止まって物を確認してからもらわないと失敗する。
給水所での飲み物も、ハーフマラソン折り返し点までは、ただの水やスポーツドリンクだけど、この辺りまでくるとレモン水なども出てきて、とても嬉しい。もちろん、生のレモンやミカンやバナナもある。さらに一口パンやおにぎりや焼き芋まで出てくる。でも、今年は比較的、快調なせいか、まだまだ食べたくはならない。

いよいよ21km地点の折り返しが近づいてくる。すれ違いながら確認すると、石材店やテニス君は相変わらず同じようなペースで走っていて、そんなに離れてはいない。佐伯先輩や住田さんも快調だ。僕も折り返して後半に入っても、なんとか大丈夫っぽい感じ。前半よりはペースダウンし始めたけど、去年よりは、はるかにマシだ。去年は、冷たい雨に体が冷えたせいもあって、折り返し点までたどり着くのもやっとで、後半に入ったとたんガクンとペースダウンした。それに比べれば、今年はまだまだいける感じ。
この辺で、ようやくウォークマンの登場だ。足がくたびれてくると退屈さが増してくる。好きな音楽を聴いていると、すっかり気が紛れて、なんとなく疲れを忘れて走れてしまう。シャッフルして聴いているので、思いがけず調子の良い曲なんかが出てくると、元気回復してペースが上がったりする。もちろん、その曲が終わると反動で一気にへばるのだけど。

ハーフマラソンの折り返し点に戻ってくる頃、すなわち3/4くらい走って、残り10kmくらいになってくると、さすがに足がしびれてくる。去年は、この辺りから、完全にやる気を無くし、リタイヤすべく救護車を探し回った。結局、救護車が見つからず、最後までリタイヤせずにゴールにたどり着いたけど、辛かった。今年もだんだん辛くはなってきたけど、まだリタイヤしたいとは思わない。
もちろん、最後の10kmは、上り坂では迷わず歩いた。だって歩いても走ってもペースは同じようなもの。それなら体力が消耗しない歩きの方がマシ。一度歩くと心の歯止めが無くって、微かな上り坂でも迷わず歩くようになる。でも、同じ歩くのでも、去年はトボトボ歩いたけど、今年は大股でノッシノッシ歩いたから、そんなにペースダウンしたわけでもない。しかも、去年は終盤は足がしびれて、下り坂でも思うように足が動かなかったけど、今年は下り坂は惰性で足が大きく動く。

とは言え、だんだんフラットな場所でも足の動きが悪くなる。さすがにフラットな所で歩き出すと収拾がつかなくなるので、時々立ち止まって屈伸して、なんとかまた走り出す。そうやって騙し騙し走りながらも、そんなに極端にペースは落ちていない。
ゴールまで数キロってところで、交通整理している係員が「制限時間まで、あと1時間15分だよ」って言ってる。あれ?おかしいな。僕の時計では、あと45分のはずだ。今年は制限時間が30分延長になったんだろうか?でも、そんな話は聞いてないぞ。あと1時間15分もあるんなら、逆算すると、後はゆっくり歩いても制限時間内にゴールできる。て言うか、休みながらでもゴールできる。思わず、座り込んで休もうかと思った。でも、それって本当かなあ。一瞬、気が緩みかけたけど、もし間違いなら大変なことになるので、なんとか気を取り直して走り続ける。それでも、途中で休まない限り、歩いても制限時間内にゴールできる見通しが立ってくる。こうなると、もう頑張る気はしない。
(石材店)「頑張ってくださいよっ!」
だって、少々頑張ったって、大したタイムになる訳でもないし、制限時間内で完走(完歩)できれば満足。去年はラスト1kmは必死でスパートして、その区間だけ良いタイムを出したけど、今年は、貯金たっぷりだったので、全部歩こうかと思ったくらい。さすがにフラットな所で歩くのも恥ずかしいので、軽く歩くように走ってゴールした。

良いタイムではないけど、完走証をゲットできたので、本日の最大にして唯一の目標を達成した。ゴールして、しばらくすると制限時間がきてしまい、いきなり計測器の片づけが始まった。制限時間を1秒でもオーバーしたら許さないという断固とした姿勢だ。やはり制限時間は5時間のままだ。あの係員の言葉を信じていたら、えらいことになっていたところだ。

石材店とテニス君は、前半は僕と似たようなペースでちんたら走っていたけど、それが幸いして、後半も全くペースダウンせず、終盤の上り坂でも全然歩かずに、文字通り完走したらしい。その結果、テニス君は去年より大幅にタイムが向上したし、石材店も去年とほぼ同じだったらしい。

(幹事長)「僕は最後の10kmの上り坂は例外なく歩いたなあ」
(テニス)「前半を飛ばしすぎたんじゃないですか」
(幹事長)「いやいや、終盤までに貯金があったからこそ、終盤の上り坂は迷うことなく歩けたのよ」

貯金が無い状態で終盤を迎えると、歩いたら制限時間をオーバーしてしまう危機性が出てきて、上り坂でも無理して走ろうとあがいてしまい、結果的にその無理がたたって、どんどん足が動かなくなり、最後はフラットなところでも歩かざるを得なくなる。今日のように貯金があると、上り坂は遠慮せずにさっさと歩くから、逆にフラットなところでは走る続ける事が出来る。前半の貯金がこんなにありがたかったのは久しぶりだ。

ハーフマラソンに出たトラベル恵子と、10kmに出た新人まゆみちゃんも、快走したらしい。

(幹事長)「トラベル恵子は、ハーフマラソンを走ったとは思えない余裕ぶりだし、まゆみちゃんも初レースとは
       思えないくらい元気そうやなあ」
(トラベル)「いーえ、いーえ、幹事長が帰ってくるまで、もう何時間も待ちましたから〜」

そうか、既に元気回復していたのか。

(小松原)「僕の記録は聞いてくれんのですか?」
(幹事長)「おおう、君もおったか。で、どうやった?」
(小松原)「うわっはっは。圧倒的なタイムですよ!」

ほんと、びっくり、すごい好記録だ。
(幹事長)「10年以上前から出ている僕が、いつまでたっても苦しんでいると言うのに、昨日や今日、出てきたような若造に
       良いタイムを出されると、わしの人生は一体何だったんだろうって空しく思えてくるのう」
(石材店)「単なる練習不足ですよ」


しばらく休むと空腹感が出てきたので、まずはそうめんだ。暖かいそうめんが元気を回復させてくれる。はずだったのに、なんとっ!屋台に行くと、既に片づけ始めている。直前でそうめんが無くなってしまったらしい。このレースには10年以上来ているが、そうめんが無くなるなんて初めてだ。前代未聞だ。小豆島のレースは、無尽蔵にそうめんが出てくるのが売り物だったのではないか?そこらを見ると、レースに参加していない子供やら年寄りやらが、寄ってたかったそうめんを食い散らかしている。
(石材店)「今年は天気が良いから、見物客がどっと来て、タダのそうめんを喰いまくってましたねえ」
がーん。小豆島のレースでそうめんが無いなんて、うどんを食べ損なった丸亀マラソン以上にダメージが大きい。
仕方ないので、石材店と弁当を食べる。10kmに出たまゆみちゃんや小松原選手、それからハーフマラソンに出たトラベル恵子らは、もう何時間も僕らを待っていたので、待ちくたびれて「早く船に乗って帰ろうよ」とせっつくので、急いで弁当を食べようとするのだけど、レース直後には、弁当って喉を通りにくいのよねえ。
(幹事長)「あれ?テニス君は弁当は食べないの?」
(テニス)「いやあ、僕たち、そうめんを食べ過ぎまして。はっはっは」
(幹事長)「おまいらがそうめんを食べてしまったのかーっ!」


なんとか弁当を飲み込むと、次の船が出るまで僅か10分しかない。それを逃すと、さらに1時間以上待たねばならない。僕は1時間くらいは待ってもいいんだけど、既に何時間も待っているメンバーは道連れにできない。港まではダッシュすればかろうじて10分で行ける距離だ。最後の力を振り絞って港へダッシュ。どこにこんな余力が残っていたんだろうと思うくらい、体にはまだまだ余力が残っていて、平気でダッシュできる。フルマラソンを走った直後とは思えない。ところが、ふと後ろを見ると、石材店が足を引きずりながらヒイヒイ言っている。
(幹事長)「おや、どしたん?元気ないやん」
(石材店)「て言うか、なんでそんなに元気が残ってるんですかっ!
       そんなに元気を残すくらいなら、もっとレースで真剣に走って完全燃焼して下さいっ!」
かろうじてギリギリで船に間に合い、船内に入ると、暑い船内もあって、汗まみれ。
(幹事長)「今、港まで走ったペースが、今日のレースで一番早かったかも」

朝と同じく、ギリギリで乗ったので、既に座席はなく、床に座り込む。汗が噴き出してきたので、とりあえず着てる物を脱いでランパン1つになって、肩にタオルをかけてくつろぐ。
(トラベル)「お父さん、お父さん、自宅と勘違いしてますよ。完全に湯上がりスタイルですよ」
(まゆみ)「幹事長って、人にどう見られてるか、あんまり気にしないタイプなんですか?」
(幹事長)「自分の目に入らない物は気にならない性格やねえ。なるべく鏡は見ないようにしてるから」
(石材店)「明石海峡大橋マラソンの時、カッパの格好して三宮の商店街を練り歩いた人ですからねえ」

(幹事長)「ところで小松原選手は何を抱えてんの?」
(小松原)「何か知らないけど、大きな賞品をもらっちゃいまして」
小松原選手は、10km男子の部で32位になって賞品をもらったらしい。中身は郵便局提供のポスト型貯金箱だった。
(幹事長)「なんだか中途半端な順位賞やなあ。郵便局と32位って、どういう関係?」
(小松原)「文の日賞とか書いてますねえ」
(石材店)「でも文の日なら、23(ふみ)ですよ。逆ですよねえ。よう分からん」
でも、何かもらえたのは、なんとなく羨ましい。

(幹事長)「石材店は、今年もオイルマッサージをしてもらったのかな?」
(石材店)「もちろんでございます。あれで足の疲労回復が一気に図れるのでございまする」
(幹事長)「その割には、最後の港へのダッシュで弱っておったが?」
(石材店)「あんなん、むちゃやがなーっ!」
(テニス)「僕もオイルマッサージをしてもらいましたよ。早くゴールすると、良い事があるんですねえ」
(幹事長)「もう元気回復?」
(テニス)「明日は休暇ですっ!」

レースの翌々日、まずは取り急ぎ反省会をした。
(幹事長)「反省会ったって、わしは今年は反省する事は無いぞ?」
(石材店)「僕も特に無いですねえ」
(矢野)「く、くやしい。僕は反省だらけです・・・」
練習しすぎて故障欠場した矢野選手の反省の弁を聴きながら、夜は更けていくのであった。
(幹事長)「忘年会は14日だよ〜っ」

(石材店)「なんと、レースから僅か2週間。えらく掲載が早いですねえ」
(幹事長)「忘年会までには掲載せんとな」

さて、次は新年の満濃公園動物リレーなのだが、うまくいくと、今回はミス坂出さんが登場するかもしれない。支部長の腕しだいだ。
頼むぞ支部長!


〜おしまい〜




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