第62回 丸亀マラソン大会

〜 インフルエンザでダウン 〜



それは1月24日の夜だった。我々は10日前に出場した国営讃岐まんのう公園リレーマラソン大会の反省会をやっていた。実は僕は数日前からインフルエンザにかかってダウンし、当日も高熱で会社を休んでいたのだが、幹事長ともあろう者が反省会を休む訳にはいかないので、ゼイゼイ言いながら這って出てきたのである。

(石材店)「みんなに菌を撒き散らすから出てこないで下さい!」
(幹事長)「くすん、くすん、だってだって、ミス坂出に会いたいんだもーん」
(石材店)「ところで3日後の
大阪国際女子マラソンはどうですかねえ?」
(幹事長)「ズバリ言いましょう!福士加代子は30kmでダウンするでしょう!」


私の予想は、福士は調子に乗って30kmくらいまではハイペースで飛ばすけど、そこから一気にペースダウンして惨敗するだろう、というものだった。何もこれは、後から作り話をしているのではない。当日の反省会に出ていたメンバー全員が証言してくれるはずだ。そして、見事なまでに私の想像通りの結果となった

予想通り福士はスタートから独走し、一時は2位集団に600メートル以上、2分余りの大差をつけた。この作戦自体は無謀とは言えない。確かに2位集団との差は大きかったが、それは福士が無謀に速すぎたと言うより、他のランナーが遅すぎた結果である。このレースは北京オリンピックの日本代表選考会であり、昨年11月の東京国際で優勝した野口みずきの素晴らしい走りを考えると、平凡なタイムで優勝しても意味がないのだ。なので、日本代表を狙う福士としては持ち前のスピードを生かして序盤から飛ばすのは当然だ

しかし、フルマラソンは福士が考えているように甘いものではなかった。30キロ過ぎからスタミナ切れで一気に失速し、35キロ手前から次々と他の選手に抜かれていく。その後もペースはどんどん落ちていき、終盤はまるでジョギングのようなペースだ。はっきり言って僕らの方がよっぽど速い。最後は脱水症状で転倒を繰り返しながら、なんとかゴールした。もちろん、2時間40分54秒という記録は、僕らにとっては雲の上のあり得ないタイムだが、ゴール直前にも転倒するなど、あの福士とは思えない悲惨なゴールシーンだった。

競技場の観客は、この福士に対して、優勝者よりもはるかに大きな拍手で迎えた。また、この福士の惨敗に対し、生中継していたテレビも好意的だった。それは、ある意味で仕方ないことだ。他の出場メンバーを考えると、今回のレースで視聴率を稼げるのは福士だけであり、最初から最後まで福士が主役だった。その福士をボロカスに言ったりしたら、誰もテレビを見なくなっちゃうもんな。
それにしても、優勝者のインタビューが短かったのは、優勝者がイギリス人のマーラ・ヤマウチだったから仕方ないにしても、日本人一位の森本を放送席に呼んでおきながら、ほとんど無視して、福士がヨタヨタしながら走っている映像ばかりを流していたのは、ちょっとやりすぎに思えた。無理矢理感動ドラマに仕立て上げようとしていたが、単なる準備不足の結末に過ぎないのに

そうなのだ。今回の福士の惨敗は、単なる準備不足の結果なのだ。何も同情するようなものではないのだ。彼女は、あまりにも無謀だったのだ。無謀と言うのは、序盤のハイペースの事を言っているのではない。あのペースは、このレースの意味合いを考えると必然のものだ。だから、森本は固いレース展開で日本人一位になったけど、タイムが悪すぎるので、北京オリンピックは極めて難しい。福士がハイペースで飛び出したのは正解だ。無謀だったのは、準備不足のことだ。本格的なマラソン練習は約1ヵ月間だけで、直前の徳之島合宿では20km程度のスピードメニューを中心にこなし、32km走が最長で、40km走は一度も行わなかったらしい。たいてい準備不足でボロボロになる僕らでも、フルマラソンの前は、2〜3ヵ月前から練習を重ね、できるだけ長距離を走っておこうとする。

(石材店)「僕は結構、走りますけど、幹事長はそんなに走ってないのでは?」
(幹事長)「だからこそ、惨敗するのだよ」
(石材店)「じゃあ福士と一緒じゃないですか。批判できませんよ」


いや、僕らと一緒だから福士を批判するのだ。彼女のようなプロ選手が、僕らのようなチンピラ市民ランナーと一緒ではいかんだろう?小出監督も「足を見たら一目で、練習してないのは分かった。30kmしかもたないなと思った」と言っているし、有森裕子も「無謀。甘過ぎます」と批判しているし、陸連の幹部も「前半も決してハイペースではない。それでも体力が消耗したのは、絶対的な練習量が足りないから」と厳しい見方をしていた。福士の監督である永山監督自身も「マラソンはもっと綿密な計画が必要」と反省しているけど、プロが今さら何を言ってるんだろう、と思う。そんなん分かり切った事ではないのか?

個人的な経験から言えば、練習で走った距離以上は、まともには走れないってことだ。ハーフマラソンに出るときには、21km走はやっておかないとだめだし、フルマラソンの時も42kmを走っておくのが理想だ。でも、実際には練習で42km走なんて、なかなかできない。せいぜい30km走くらいだ。だから、レース本番でも30kmを過ぎると突然ペースダウンしてヨタヨタになる。だから、今回の福士のレース展開は、まるで自分のレースを見ているようだった。いくら調子が良くて30kmまでは快調にとばせても、練習してないと、そこから一気に別世界になり、足が動かなくなる。て言うか、調子に乗って30kmくらいまで飛ばし過ぎると、当然、その後はとても悲惨な状態になる。
何も知らないのか、知らないフリをしているのか、テレビのアナウンサーは「マラソンは30kmを過ぎると別世界になると言います。30kmを過ぎると本当に苦しんでしょうねえ」なんて言ってたけど、それは30kmの練習しかしてないからだ。40kmの練習をしていれば、40kmまではもつ。20kmの練習しかしてなければ、20kmを過ぎればボロボロになる。30kmを過ぎてガクンとペースダウンした福士は、単にそれだけの練習しかしてなかったということだ。僕らチンピラ市民ランナーは遊びだから自業自得で仕方ないで済むけど、プロが同じような事をしていてはいけないだろう。なので、福士に対して同情は無用だ。

(石材店)「なぜ怒ってるんですか?」
(幹事長)「福士の才能をもってすれば、ちゃんと練習すればオリンピックでの活躍も期待できたのに、惜しいじゃないか」
(石材店)「これで北京オリンピックの代表選手も分からなくなってきましたね」
(幹事長)「ふっふっふ。思うつぼよ」
(石材店)「怒ってるんですか、喜んでるんですか?」


今回の福士の惨敗により、我らがQちゃん高橋尚子の代表選出の可能性が飛躍的に高まったのだ。実に喜ばしい。高橋尚子や野口みずきのような輝かしい実績を持つ選手は、選考会なんか出なくても、無条件で選出すべきだと思うが、それにしても、Qちゃんが有利になったのは間違いない。もちろん、彼女が出る名古屋には、他にも有望選手が出るが、ま、Qちゃんの敵ではないだろう。そんな無茶苦茶なタイムを出す必要はない。そこそこのタイムで優勝すれば楽に当選するだろう。



(石材店)「丸亀マラソンと関係の無い話題が長かったですねえ」
(幹事長)「今回は自分が欠場しちゃったもんだから、他の事を書いて誤魔化しちゃいました」


反省会あたりがピークだったインフルエンザは、その後、なんとか治まったんだけど、熱は下がったものの、咳がひどく、いつまで経っても完治せず、体がだるくて力が入らない状態が続き、仕方なく丸亀マラソンへの出場を断念したのだ。このレースは坂がほとんど無い高速コースで、好記録が狙えるから一年で一番真剣に取り組んでいるレースなんだけど、体調が悪すぎるし、おまけに当日は雪がちらつく冷たい天候で、体に悪そうだったので、あっさりと諦めた。

もちろん、自分が欠場するからと言って家でコタツで丸くなっていたのでは幹事長の示しが着かない。なので、現地に行ってみんなを激励する。

(石材店)「それくらいやったら、ついでに走ったらいいのに」
(幹事長)「結果的に天候も悪くなかったし、ほんと、走ったら良かったなあ」

とにかく、2008年2月3日(日)第62回香川丸亀ハーフマラソン大会が開催されました。朝からちらついていた雪はスタート直前になってやみ、気温は低かったけど、風が無く、体感温度はそんなに寒くはなかった。マラソンのコンディションとしては、そんなに悪くなかった。
そのせいもあり、石材店は、今年も1時間27分台の好タイムで帰ってきた。彼のこの大会での自己ベストは1時間26分台だが、最近、臀部に痛みを抱えている割には、悪くないタイムだ。2週間後の東京マラソンに向かって一直線だ!

続いて矢野選手も1時間32分台の好タイムだ。終盤に脱水症状となった去年より大幅にタイムアップだ。彼も膝に痛みを抱えているのだが、全くそれを感じさせない走りだった。

そして笹谷選手も素晴らしい。1時間38分台の好タイムだ。満濃リレーマラソンでは、1周7分30秒というあり得ないタイムを出して、みんなを恐怖のどん底に叩き落とした笹谷選手だが、ハーフマラソンでもこのタイムは驚異だ。彼も臀部に痛みを抱えているため、前日は接骨院で鍼を打ってきたそうだが、それでもこの好タイムは、一体どうしたことだ。

(石材店)「なんか、みんな足や尻に故障を抱えてますねえ」
(笹谷)「みんな治療しながら走ってるんやなあ。そう言えば幹事長は故障を抱えてないですねえ」
(幹事長)「神から授かったこの強靱な体が私の人生を支えているのだよ」
(石材店)「単に練習が少なすぎるってことですね」


そして、最後に登場するのが支部長だ。かつて支部長と言えば、前半は調子に乗ってグイグイ飛ばし、終盤には絶対に潰れるという学習効果の無いワンパターンを繰り返していた。なので、前半、リードを許していても全然平気。絶対に終盤で追い抜けるという安心感があった。ところが最近、この丸亀マラソンでは、なぜか終盤の失速が無くなってしまい、2連敗しているのだ。
そして、今年も余裕の表情で帰ってきた。ぜーんぜんヘバってない。タイムも悪くない。たぶん、僕が風邪を引かずに出場していたとしても、3連敗だった可能性が高い。

結局、みんな好タイムで、満足のいくレースだった。結果的に天候も悪くなかったし、独り走らなかった僕としては、非常に欲求不満の残るレースだ。とっても悔しーっ!

それから、今年は参加者が異常に増えた。これは制限時間が大幅に緩和された事による。かつて丸亀マラソンと言えば、ハーフマラソンの制限時間が2時間5分で、かなりシビアなレースだった。5kmごとの関門では30分の制限時間を少しでもオーバーすると容赦なく回収されていた。それが、少しずつ緩和されていき、今年はなんと一気に3時間になった。炎天下で坂の多いオリーブマラソンなら、支部長みたいに2時間半くらいの惨敗をする人も出てくるけど、坂の無い丸亀マラソンで3時間は、ちょっと長すぎじゃないかと思えるほど。て事で、今年は気楽に参加した人が大勢いて、いつまで経ってもゴールする人が絶えなかった。

独り作り笑いの筆者(左端)と、満足げなメンバー達



続いて、当日は会えなかった福家先生のレポートです。


第62回 丸亀ハーフマラソン大会(ふろく編)
〜初ハーフ完走しました!!〜

幹事長も書いていたように、今年から手ごろな短いコースがなくなった代わりに(3kmは残っていますが・・・)、ハーフの制限時間が3時間に延長されたということで、思い切って出ることにしました。当日朝は雪が積もり、ところどころ「路面凍結」と表示が出ており、大変怖かったのですが、申し込みもしているし、思い切って会場へ行きました。大勢の人がきており、次の日の新聞では過去最高の5405名が参加。どおりで会場は混雑しておりました。というわけで、ペンギンズの皆さんとは、まったく会えませんでしたね・・・。

スタートは10時35分。招待選手や記録を狙う人はダッシュでスタート。しかし、そうでない人は、あとからゆっくりです。スタートしてからも、実にゆっくりペースで、しかも選手みんなに囲まれているので、熱気でむんむん。ぜんぜん寒くありません。
そのうち、だんだんばらばらになっていき、早い人はどんどん抜いていきますが、こちらはマイペース。

折り返しで約1時間10分くらいでした。応援してくれていた中田さんが、声をかけてくださり、写真まで撮ってくれました。あとで聞きましたが、あんまり遅いので、もうちょっとで帰ろうとしていたところだった・・・とのことでした。中田さん!大変待たせてごめんなさい。
そのあとも、マイペースで、調子よくいってましたが、15Kmを過ぎたところから、足が動かない感じに教われました。よくプロの方が「15Km過ぎから動かなくなった・・・」とか言ってますが、たぶん、それなんでしょうね。素人は素人なりに、そういうことがあるのだと実感しました。
そのあとは、超スローペースで、なんとかゴール。制限時間の3時間には間に合いました。

そういうわけで、これからハーフを走ろうという方には、丸亀ハーフは大変いいコースだと思います。
競技場もすばらしいし、なにより13万人の応援が力をくれます。また、来年も走りたいと思いました。



(幹事長)「いよいよ東京マラソンやね。この調子なら快走が期待できるんじゃない?」
(石材店)「でも、参加者が非常に多いから、まともに走れるようになるまで1時間くらいかかりそうですよ。
        ま、タイムは気にせず楽しんできます」


〜おしまい〜




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