第31回 小豆島オリーブマラソン大会
2008年5月25日(日)、第31回小豆島オリーブマラソン全国大会が開催された。
このレースは11年前の第20回から参加し続けているペンギンズの主要レースの1つであり、かつては主力メンバーの参加は必須だったのだが、近年、参加者は毎年、激しく変動している。一昨年は、子供の運動会と重なってしまったとか、子供が病気になったとか、ウンコに血が混じったとか、苦しい言い訳のオンパレードで、なんとたった3人しか参加者がいなかったが、昨年は一転、女子部員が5人も出走し、それに釣られて男子メンバーも参加が多く、久しぶりの大盛況となった。
その勢いを持続して、今年も大部隊で攻めようと思っていたのだが、早々に戦略は崩れる。まずは女子部員だ。去年、初参加したブタ2号、トラ2号、ライオンの3匹には早々に振られる。
(幹事長)「う〜ん、彼女たちは、もう戻ってこないのかなあ、しくしくしく・・・」
(石材店)「若い女性がマラソンなんかしてる場合じゃないって事に気づいたんじゃないですか?」
海外経験の豊富なトラベル恵子とPR真理子の2人も、すっかり観光マラソンと化した瀬戸大橋開通20周年記念マラソンには出たけど、坂のきついオリーブマラソンへの出場には態度が煮え切らない。
(トラベル)「ちょっと顎の具合が悪くて」
(幹事長)「マラソンと関係ないでしょ?」
(トラベル)「歯を食いしばって走れないのよ」
(幹事長)「歯は食いしばらずに気楽に走ってよ」
男子部員の方も、石材店は昨年同様、子供の小学校の運動会とダブってしまい、参加できない。高松の小学校は、大半が前日の土曜日に運動会があるのに、丸亀はいつまでたっても日曜日に開催する姿勢を変えようとしない。
(幹事長)「市の教育委員会に抗議せんといかんなあ」
(石材店)「丸亀では、まだまだ土曜日に仕事してる人が多いんですよ」
また、昨年は女子部員に釣られて久しぶりに復活した中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)は今年の異動で東京に行ってしまったし、笹谷選手は仕事が忙しいと言うし。おまけに、最近、ほとんど全てのレースに私と一緒に出ているテニス君も、極秘理由で不参加だ。
一方、最近、売り出し中の矢野選手はやる気まんまんで参加だ。さらに、我が永遠のライバル支部長が、1月の満濃動物リレーに続き、ミス坂出の勧誘に成功した。
(支部長)「て言うか、彼女は過去2年もオリーブマラソンに出てるんですよ」
(幹事長)「いやいや、一緒に行くことに意義があるのじゃよ」
おまけに、ミス坂出は友人も連れてくるという。
(幹事長)「そ、それって、もう1人のミス坂出?」
(支部長)「そこんとこは不明です。あんまり詮索すると、下心みえみえですから」
なんとか6〜7人は確保できそうだ。これくらい集まると、奴隷船を回避できる。ここが重要なポイントだ。
このレースは人気の高いレースだが、最大の難点は交通手段だ。島で開催されるため船で行かざるを得ないのだが、大会会場である小豆島坂手地区には港はあるけど船の定期航路が無いのだ。このため、主催者が高松発の臨時船を出しており、従来は、この臨時船を利用してきた。そして、この臨時船と言うのが、古いフェリーボートを借り切ったものであるため、座席が少くて、早く行かないと通路の片隅に体を丸めてしゃがみ込むか、広い車両甲板に寝転がるしかない。車両甲板は固い鉄板で、おまけに朝は冷え込み、逆に帰りは太陽熱で焼けて熱くなり、とても人間扱いされているとは思えない状況だ。そのため、我々は、この臨時船を奴隷船と呼び、恐れおののいてきたが、唯一の交通機関であるから、文句を言いながらも素直に利用してきた。
ところが、昨年、申込期限ギリギリに申し込んだら、なんと定員オーバーで乗れなくなってしまったのだ。それまで田舎のレースで定員オーバーなんて考えてもみなかったもんだから、これにはびっくり。急遽、対策を検討した結果、少し遠いけど、他の港に着く定期船を利用して行く事となった。この場合、港からレース会場まで臨時バスが出ているのだが、バスに乗るのに混雑が不安なことや、帰りの船はどの港から乗るか未定な事もあって何かと不自由なため、自家用車を利用することとなった。結果的に、僕のミニバンでみんなでワイワイ楽しく行ったため、なんだかピクニック気分で楽しかった。おまけに、ミニバンなので定員をはるかにオーバーするメンバーを詰め込む事が可能で、一人当たりの輸送コストは奴隷船を利用するのと同じくらいですんだ。奴隷船は、座席もロクに無いくせに、結構、高いのだ。
最初は奴隷船にあぶれてパニックになったけど、結果的に奴隷船を回避する策の目処が立ったため、今後は基本的に奴隷船は申し込まず自家用車で行く方針とした。ただし、その前提となるのがコストだ。2〜3人しかいなければ、一人当たりのコストはかなり高くつく。しかし5〜6人確保できれば、そんなに高くはつかないので、船の快適さを考えれば迷うことなく自家用車を選ぶ。
てな訳で、今年もなんとか最低限の人数は確保できそうな目処が立ったため、奴隷船は申し込まず、自家用車で行くこととする。
レース直前に出張があり、前々日の金曜日の夕方に会社に帰ってくると、支部長から重大な情報が飛び込んでくる。
(支部長)「て、て、て、てぇへんだ、てぇへんだっ!」
(幹事長)「おや、誰かと思えば、はっつぁんじゃねぇか。えらい剣幕で、いってぇ何の騒ぎだい?」
(支部長)「それが、こ隠居、えらい事ですぜっ!例のミス坂出の友人ってのが、なんと男らしいんですよ!」
(幹事長)「にゃにおうっ!もう一人のミス坂出じゃねぇのかいっ?」
もしかして強力なライバルの出現かもしれない。楽しいピクニック気分じゃなくなるかも。う〜ん、ま、しかし、参加は確実だから、良しとするか。
相変わらず顎の具合が悪くて悩んでいるトラベル恵子選手を叱咤激励していると、矢野選手が不気味な事を言う。
(矢野)「レース前日の土曜日の天気予報が雨らしく、小学校の運動会が翌日のレース当日に順延になりそうなんですよ」
(幹事長)「なんとかーっ!それって、もしかして、うちの子供も同じ状況?」
僕は雨天順延なんて事を考慮してなかったので、まるでノーマークだったけど、今年、中学生となった下の子供の運動会も、レース前日の土曜日だ。
(幹事長)「ま、しかし、うちは中学生だし、親が行かなくても平気だわな」
しかし、僕はいいとして、矢野選手が抜けると貴重な頭数が減ってしまう。う〜ん、コスト的に厳しい。
と悩んでいると、突然、石材店から電話。
(石材店)「明後日のレースですが、まだ空席はありますか?」
(幹事長)「女子部員大歓迎だよん」
(石材店)「男は?」
(幹事長)「か弱い奴ならOKよん」
(石材店)「丸亀マラソンで去年も今年も1時間50分台らしいですよ」
(幹事長)「おっ、ちょうどいい感じ。僕のライバルとしてストライクゾーンど真ん中やな。そういう奴は歓迎やな」
(石材店)「じゃ、挨拶に行かせますから」
ちょっと軟弱気味の奴を勝手に想像しながら待っていると、しかーし、とんでもないっ、チョー恐そうな奴がやってきた。なんと、空手一直線の空手バカ一代だっ!
(空手)「うっす!よろしく!」
(幹事長)「よ、よ、よ、よろしくね・・・」
大学時代から空手道に邁進し、見るからにごつくて恐そうな体つき。
(幹事長)「空手って、試合するん?それとも型を競うん?」
(空手)「両方ありますけど、私は型なんかだるくて嫌いで、乱取りが好きですね」
(幹事長)「それって、一応、寸止めはするん?」
(空手)「寸止めする事にはなってますけど、どうしても止めきれずに当たったりしますね」
(幹事長)「あちこち怪我とかしない?」
(空手)「2〜3ヶ月で前歯が全部折れた奴もいましたね」
(幹事長)「鼻とか折れたりしない」
(空手)「鼻はすぐ折れますね」
なーんて言いながら、この空手バカ一代は歯も1本も欠けていないし、鼻筋も通ったままだ。長年、空手をやりながら、こいつは顔面が無傷なのだ。これは何を意味しているのか?よっぽど、めっちゃめちゃ強いのか?ううむ。あんまりマラソンって雰囲気ではないよなあ。
(幹事長)「会社には空手部なんて無いよなあ?」
(空手)「その代わりラグビー部に入ってます」
ななな、なんと、空手の代わりにラグビーとな?
(空手)「つい先日、久しぶりに復帰した先輩のあばら骨を2本折っちゃって、
またまた長期離脱させちゃいましたよ、わっはっは」
(注:ほとんど脚色無し)
こここ、こいつ、かなりとんでもない奴では?
(幹事長)「なんでマラソンなんか始めたん?」
(空手)「空手の先輩に誘われて、去年の丸亀マラソンに出たんですよ。
ところが初めてだったもんでペース配分を間違えて不本意な結果になり、それが悔しくて今年の丸亀マラソンにも出て、
ついでに今回のオリーブマラソンにも申し込んだんですよ」
さすがは空手道一直線の空手バカ一代だ。自分の結果に納得できず、とことん追及しようというのかもしれない。で、あまり深く考えずにオリーブマラソンに申し込んだものの、交通の便が非常に悪いということに直前になって気付き、慌てて合流を申し出てきたのだ。
(空手)「一緒に行ってよろしいですか?」
(幹事長)「あー、そうだな。特別に許可しよう。ただし条件がある」
(空手)「何ですか?」
(幹事長)「殴ったりタックルしたり、しないでね」
レース前日の土曜日は、恐れていた通り、朝から雨模様だった。ただ、うちの娘が通う中学校は、多少の雨は気にせず、強引に運動会を強行した。あっぱれ!
ところが、矢野選手の子供が通う小学校は、あっさりとレース当日の日曜日に順延となってしまった。軟弱な学校だ。こうなると、翌日も雨なら、再度、順延になるかもしれないので、雨が続くことを願うが、しかし、それって雨の中のレースになるから、あんまり嬉しくないわな。
で、結局、レース当日の日曜日は、朝はまだ小雨が残っていたのだが、だんだん上がってくる。ただし、前日からの雨で、学校の運動場はドロドロだ。運動会を開催できるような状況ではない。これで矢野選手も参加できるか、と思ったら、ところーが、どうしても運動会を済ませたい学校側の陰謀で、なんと体育館で運動会することになり、矢野選手は欠場に追い込まれた。体育館でするんなら、土曜日にやっとけ!
しかたなく、支部長だけを途中で拾って港へ着くと、顎痛を抱えたトラベル恵子選手が既に到着していた。
(幹事長)「早々に来てくれたのね。良かった良かった。顎は大丈夫?」
(トラベル)「会話には支障ないですね」
(幹事長)「物は食べられる?」
(トラベル)「あんまり口は開かないけど、今日はソーメンを食べられるから」
チケットを買うために窓口で並んでいたら、なんと、うまいことに、さとやんに会う。さとやんは、マラソン経験年数は短いけど、単身赴任で暇を持て余しているから毎日トレーニングしてて、ぐんぐん速くなっている。最近、色んなレースで出会うけど、ことごとく負けている。
(幹事長)「船を下りてから、会場までどうするん?」
(さとやん)「バスでも使おうかって思ってるんやけど」
(幹事長)「僕の車で一緒に行かへん?」
(さとやん)「ええよ」
これで割り勘要員が増えた。しかも、さとやんは知人を連れているから、2人増えた。これで全員で8人になる。
(支部長)「定員いっぱいになりましたね」
(幹事長)「去年はあと3人強引に乗せたから、まだまだいけるけどね」
チケットを買って待っていると、ミス坂出と友人の大林選手がやってきた。ところが最後の空手バカ一代がなかなか姿を見せない。2日前に一度会っただけだが、あの恐そうな風体を忘れることはない。どうしたのかなあ、と思っていると、出航ぎりぎりになって姿を現した。普通なら「遅いっ!」って叱るところだけど、恐くて叱れない。
乗るだけで体に疲労が蓄積する奴隷船と違って、定期便は広めのシートがたくさんあって、ゆったりした気分で島に向かう。客は、マラソン参加者と思われる人が多い。だんだん、みんな奴隷船より定期便の方が良いって事に気付いてきたのか。
唯一の不安だった空手バカ一代も、トラベル恵子と楽しそうに会話している。さすがはトラベル業界の強者、トラベル恵子だ。空手バカ一代を手玉に取っている。
島に着くと、車を飛ばして会場に一直線。と言いたいところだけど、狭い島の一本道なので、あちこちの港に着いた車が一斉に会場に向かっているので、渋滞気味だ。ただ、去年の経験から言えば、多少渋滞しても問題ではない。
(幹事長)「問題ではない、と思いたいところだけど、なんとなく去年より混んでない?」
(支部長)「明らかに車が多いですねえ」
かなり時間をかけて会場に着くと、やはり明らかに参加者が多い。今年は昨日から雨模様だから例年より参加者は少ないのかと思っていたのだけど、それは甘かった。どう見ても、例年より多いなあ。駐車場も既に満杯で、かなり離れた山道に続く路上に停めるはめになった。
いつものように開会式会場の隣の公園に陣取り、準備を始めていると、徳島からやってきた漆原選手が現れる。
(幹事長)「久しぶり!調子どう?」
(漆原)「膝を故障してて、ちょっと不安なんですよ」
彼は膝の故障もあって、地元の徳島マラソンには参加しなかったし、レースは久しぶりだ。膝の故障ってのは、いまいち原因が分かんない。練習しすぎなら分かるけど、僕もたまに膝の調子が悪くなったりするけど、決して練習過多ではない。むしろ練習しなさ過ぎが原因かも。ただ漆原選手の場合は、練習のしすぎかも。結構、長引いているみたい。少しでも痛みを予防するために入念にテーピングしている。
さらに、4月の瀬戸大橋マラソンに続いて小松原選手も登場した。
(幹事長)「今日は運動会じゃなかったの?」
(小松原)「うちんとこは当初予定が今日だったんだけど、大雨だった昨日の時点で、順延が決まったんで、
昨日から小豆島に来てるんですよ」
なかなか大胆な決断をする小学校だ。あっぱれ。で、小松原選手は家族で泊りがけで小豆島に遊びに来ているって訳だ。
取りあえず気合いを入れるメンバー
(幹事長、ミス坂出、支部長、漆原選手、トラベル恵子)
雨も上がり、しかも前日からの天候不順で気温は低めで、絶好のコンディションとなった。この時期、天気が良いとものすごく暑くなり、悲惨なレースになりがちなので、これは助かる。
(支部長)「これで言い訳はできなくなりましたね」
とか何とか言いながら、なんと今年、支部長はハーフマラソンじゃなく、なんとなんと10kmコースに申し込んでいるのだ!
(幹事長)「あー、こほん。これは一体どういう事かな?」
(支部長)「ここ数年、ハーフマラソンに出て死に続けてますからねえ」
支部長がオリーブマラソンで毎年、討ち死にし続けているのは事実だ。しかし、今年10kmコースに変更したのは、それが理由というより、トラベル恵子とミス坂出が10kmコースに出るから、彼女らと一緒に走りたいだけなのは間違いない。
ハーフマラソンに出るのは私と空手バカ一代、漆原選手、小松原選手、大林選手といったところだ。彼らの実力が分からないので、なんとなく不安な状況だ。支部長さえハーフマラソンに出てくれれば、一安心なんだけどなあ。さとやんもハーフマラソンだけど、最近の傾向を考えると、間違いなく負けるだろう。
(幹事長)「ま、今年は、勝敗は抜きにして、自分との戦いに徹しよう」
(支部長)「自己ベストを狙う?」
(幹事長)「と言いたいところだけど、4月の瀬戸大橋マラソンといい徳島マラソンといい、
その後のトレーニング状況からしても、最近、絶不調なので、自己ベストは無理だろうなあ。
て言うか、完走できるか不安なのよ、マジで」
ここんとこ週末に走っていると、10km程度走っただけで足が疲労で動かなくなったりするのだ。まるで疲労が蓄積しているような感じ。でも、どう考えても、練習過多というより練習不足気味なので、疲労が蓄積するわけはないんだけどなあ。とにかく今日は、最後まで走れれば合格だ。
なーんてウダウダしていると、だんだん天気が良くなり、暑くなってきた。今日は肌寒いので厚めのシャツを着ていたのだけど、急激に暑くなってきたため、急遽、薄手のシャツに着替える。それに、本来は大嫌いな帽子も被ることにする。頭が暑さを感じるだけで、かなり体力を消耗するとのことで、徳島マラソンでも帽子を被った。特にその効果は感じられなかったけど、とりあえず今日も被っておく。さらに徳島マラソンではティッシュを持っていなかったばっかりに地獄を見たので、今日はティッシュも必携だ。もちろん、タオルも必携だ。
準備に手間取ってしまったために、今年は開会式に出られず、オリーブの女王を拝見できなかった。準備運動もできなかった。今日は暑いのでウォーミングアップは不要だろうけど、準備運動のストレッチはやっておきたかったが、ま、いいか。
このレースは自己申告で速い順に並ぶのだが、今年も一昨年、去年と3年連続で、スタート直前に最後のオシッコに行ってたら、スタート時間ギリギリになってしまい、後方に並ぶ。
(支部長)「ここまで学習能力が無いって、鳥なみですなあ」
(幹事長)「記憶力の乏しさには自信があるからな」
ま、しかし、今年は完走だけが目標なので後ろの方からのスタートで構わない。後ろの方からのスタートだと、スタートラインに達するまでにも時間がかかるし、スタートした後も狭い道なのでしばらくはノロノロと進むが、ウォーミングアップと割り切る。
このコースは、スタートしてすぐに大きな坂があり、その後8kmほどは平坦な道が続き、後半はひたすら坂の連続となる。なので、前半の平坦な道で自分の調子を把握し、ペース配分を考えるというのが常套手段だ。とりあえず、しばらくは空手バカ一代と一緒に走る。
ところが、しばらくすると、なんと空手バカ一代がスピードアップして前方へ消えていってしまう。な、なぜだ!去年や今年の丸亀マラソンのタイムは僕と同じくらいだったはずなのに、なぜそんなに急ぐのだ?このコースは後半に坂が続くのを知らないから、単に調子に乗って飛ばしているだけか。それとも、もしかして、本当は実力があるのか。もし、こんな新参者に負けたとなると、言い訳が通用しない。ちょっと危機感を抱く。しかし、ここで無理をしていては、今日の体調では完走も危ぶまれてしまうので我慢。
ふと横を見ると、住田さんがおるではないか。住田さんとは、昨年の小豆島タートルマラソンで初めて一緒に走り、まだ走り始めて2〜3年だというのに、あっさり負けたのが記憶に新しい。さとやんと同じく、練習を真面目にやれば速くなるという手本のような人だ。住田さんもかなり遅めのペースで走っているので、だらだら世間話しながら一緒に走る。住田さんは今年の春の異動で松山から高松に帰ってきたので、小豆島のレースへの参加も楽になったはずだ。長々を世間話をしていたが、さすがに悪いので「私の事は気にせんと、スピード上げて下さいね」と言うと、住田さんは少しずつ前方へ消えていった。
5km程で最初の折返しだ。タイムはいまいちだけど、そんなに悪くもない。後半の勝負か。天気はどんどん良くなっていき、どんどん暑くなる。当然、ペースを上げる余裕は全く無い。でも、上がらないけど、そんなに落ちていない。厳しいコンディションの割には、なんとかペースを維持できている。
しばらくすると、10kmコースの選手とすれ違い始める。10kmコースはハーフマラソンのコースの前半と同じで、スタートが少し遅いので、すれ違うのだ。注意してみていると支部長を発見。なかなか快調そうだ。やっぱり10kmコースという事で、プレッシャーも無く、最初から飛ばしているようだ。
ところーが!支部長からほんの少し遅れただけでミス坂出とトラベル恵子を発見。そんなに差がない。支部長が快調に見えたのは錯覚?それともミス坂出とトラベル恵子が速いのか?いずれにしても支部長は油断できない展開だけど、本人は全く気づいていないはず。いつものように終盤に失速すると間違いなく女子部員に負けてしまうぞ。
8km地点の手前で10kmコースから分かれて坂の多い道に入っていく。最初の大きな坂で、いきなり空手バカ一代の背中が見える。見える、と思ったら、みるみるうちに近づいてきて、あっという間に追いつく。足どりがすごく重くなっている。やはり前半のハイペースが良くなかったようだ。
(幹事長)「おうっ!最初に飛ばし過ぎたんちがうか?」
(空手)「後半に、こんな坂があるなんて思いませんでしたわ」
後半には、この程度の大きな坂が7つある。この先、大丈夫かなあ。
さすがに坂道になってくるとペースは大きく落ちていく。しかし、最近の体調の悪さからすれば、健闘していると言えるペースだ。まだまだ、まともに足が動いている。
そうこうしていると、トップ選手が速くも折り返してすれ違っていく。かなり上位で新城プロもすれ違っていく。やっぱりプロはレベルが違いすぎる。というか、もう別世界の走りだ。
もうしばらく行くと、今度は佐伯先輩が何気なく抜いていくのに気づいた。佐伯先輩には、これまで何十回というレースを一緒に走ったけど、いつも僕より後方からスタートするんだけど、途中で抜かれてしまい、全敗の完敗だ。しかし、普段ならもっと早い時点で抜かれ、あっという間に見えなくなるのに、今日は抜かれる地点が後半だし、あんまりペースも変わらない。僕の調子が、そんなに悪くないのか、それとも佐伯先輩の調子が悪いのか。
(幹事長)「調子どうですか?」
(佐伯)「悪くないよ。今年は四万十ウルトラマラソンに出ようと思ってな。一緒に出ない?」
(幹事長)「えっ!?い、いや、いくらなんでも100kmは不可能です。あり得ません!」
なんと佐伯先輩は100kmレースを目指しているのだ。もう信じられない。調子が悪いどころか、絶好調なのかも。
なんとか踏ん張りながら第二の折り返し点にたどりつき、すれ違いながら確認すると、なんと再起不能と思われた空手バカ一代が、すぐ後ろを走ってきている。後半最初の坂で面食らって一気にペースダウンしたけど、坂に慣れてきて盛り返したのだろうか。さすがは空手バカ一代だ。底力を侮ってはいけない。一気に緊張度アップで、気合いを入れて走る。
気合いは入れるけど、さすがに終盤になってくると足が動かなくなってきて、明らかにペースは落ちていく。それでも最近の練習時のペースに比べれば、はるかにマシだ。写真を撮ってくれている地点では、例年通り笑顔をポーズを作れたし。
19km地点で本コースに戻り、最後の大きな急坂にくると、さすがに歩くようなスピードになる。しかし、歩こうと思うほどは疲れていない。かつては、この坂は毎年歩いていた。ためらうことなく歩いていた。しかしここ数年、このレースでは、どんな坂でも歩いた事はない。
(幹事長)「すごいと思わない?」
(支部長)「それって、単に、余裕を残しすぎなんじゃない?」
たしかにそうかも。この坂で歩かずに行けるなんて、やっぱり余力を残しすぎかも。それでタイムも伸び悩んでいるのかも。余力が残っているため、最後のゴール手前でも一気にスパートをかけて、その辺のランナーをごぼう抜きにして気持ち良い。
(支部長)「だから、そなな所でごぼう抜きにしたって何の意味も無いから」
結局、タイムは、今年よりもっと暑かった去年の記録にすら及ばない平凡なタイムだったが、最近の練習時の不調ぶりを考えれば、最後までちゃんと走れたから、自分では納得できた。
取りあえず、冷たいソーメンをたらふく食べてから戻ると、支部長が軽やかな表情で待っていてくれる。
(幹事長)「どうやったん?」
(支部長)「10kmは楽やねえ。ペース配分なんか何も考える必要なくて、最初から飛ばして楽にゴールですわ」
と言いながら、実は、驚くべき好タイムだったミス坂出とトラベル恵子に危ういところで負けそうになった支部長であった。この2人は、ほんとにすごい。
一方、大林選手は僕より速く余裕を持ってゴールしたらしい。う〜ん、やはり侮ってはいけない存在だったか。
取りあえずは、着替えも終わった10kmコース組の3人と、いち早くゴールした大林選手と僕とで記念写真を撮り、後の人は放っておいて弁当を食べ始める。
さて、普段なら僕よりはるかに速い漆原選手が、なかなか帰ってこない。膝の故障を抱えていたのが懸念材料だったが、不安が的中し、途中から膝の痛みがひどくなり、かなり歩いたらしい。あんまり無理して大事に至っては元も子もないが、なんとかゴールした。当分は激しいレースには出られないかも。
さらに、注目の空手バカ一代はどうなったかと言うと、さすがにだいぶ遅れて帰ってきた。
(幹事長)「第二折返しの辺りまでは頑張っとったやんか」
(空手)「あそこまではなんとか走れたんですけど、あれから後は坂は歩きまくりでした」
こういう坂のあるコースは、初めてでコースを知らないと、なかなか難しい。まあしかし、持ち前の根性で最後まで完走したのは立派だ。今後が期待できる。て言うか、怖い存在になるかも。見た目だけじゃなく。
全員、無事に完走できたので、のんびり弁当を食べていたが、炎天下で暑さにたまらなくなって撤収する。相変わらず計画性の無い集団のため、今年も時間が中途半端になり、去年と同様、だいぶ離れた土庄港発のフェリーで帰ることにした。道路は選手達の車で混雑していたが、去年の経験があるので、焦ることなく余裕を持って土庄港に着く。余裕を持ちすぎて、時間を持てあましてしまったので、ソフトクリームを食べる。
帰りのフェリーも、奴隷船と違って快適なシートで昼寝してたら、楽しくおしゃべりしていたら、あっという間に高松港に着いた。やはり人数をかき集め、奴隷船を回避するのが正解だ。
(石材店)「レースから1ヵ月が経ちましたが、ようやく記事が掲載されましたね」
(幹事長)「なんとか6月中に掲載できて良かったです」
(石材店)「相変わらずオリーブマラソンは楽しそうですねえ。僕も出たいなあ」
(幹事長)「丸亀市の教育委員会に訴えて、運動会の日をズラしてもらわんといかんなあ」
さて、次回は7月末の高知県汗見川マラソンだ。山の中とはいえ、天気が良いと炎天下の過酷なレースとなる。それまでトレーニングを継続できるかどうかが勝敗の分かれ目だ。参加するよい子のメンバーは、頑張ろう!
〜おしまい〜
![]() 戦績のメニューへ |