第32回 十和田湖一周50kmウォーク

〜 意外に楽しいウォーキング 〜



2009年7月26日(日)、青森県と秋田県の県境にある十和田湖の周りをぐるりと一周する十和田湖一周ウォークなるものが開催された。

(石材店)「そななもんに出たんですか?」
(幹事長)「上司に誘われてなあ」
(石材店)「幹事長はウォーキングは嫌いだったんじゃないですか?」
(幹事長)「大嫌いなんだけど、上司に誘われたらなあ」


そう、僕は歩くのが大嫌いだ。本当に徹底的に大嫌いだ。どんな短い距離でも自転車かバイクか自動車を使う。走るのは大好きだけど、歩くのは耐えられない。山登りは好きだけど、平地を歩くのは嫌い

(幹事長)「だって、歩くなんて、全く意味が無いじゃない。エネルギーの無駄遣いだよ。ナンセンス」
(石材店)「走るのも一緒ですけど」


ま、これは好みの問題だろう。

(石材店)「何kmくらい歩くんですか?」
(幹事長)「50kmも歩くんよ」
(石材店)「どひゃーっ!」


ウォーキングが大嫌いな僕に取っては、50kmも歩くなんて、まさにどひゃーっだ。かつて、支部長が小豆島一周100km24時間連続歩行ホステリング大会なんていうキチガイじみた集団自殺的イベントに出たとき、聞いただけで発狂しそうになったものだ。

(石材店)「幹事長は最長でどれくらい歩いたことあるんですか?」
(幹事長)「前にも言ったけど、新入社員の頃、労働組合のイベントで、高松から塩江温泉まで30kmくらい歩いた事はある」
(石材店)「歩くの嫌いな割には、結構、長い距離を歩いてるじゃないですか」
(幹事長)「仲が良かった女の子から誘われてな。歩くのは苦痛だったけど、女の子とキャアキャア言いながら歩いて、
       お弁当食べて、ゴールした後は塩江温泉に入って、ビール飲んで、ほんと楽しかったなあ」


帰りのバスで僕の肩に頭を乗せて眠った彼女の髪の香りを、今でも鮮明に思い出す。

(石材店)「その子とはゴールしたんですか?」
(幹事長)「ノーコメント」
(石材店)「今回は女性陣はいないんですか?」
(幹事長)「残念ながら、いないのよ」


職場関係で総勢10数名で参加するんだけど、他のメンバーも、おっさんばっかりだ。例外は、夫婦で参加した人が一組いるだけ。

(石材店)「あんまり楽しそうじゃないですね」
(幹事長)「そやろ?でも上司の誘いやから仕方ないわなあ」
(石材店)「上司の誘いったって、幹事長は上司をないがしろにする事で有名でしたけど」
(幹事長)「わしも大人になったやろ?」


ま、しかし、ハーフマラソン21kmでも死にかける支部長ですらウォーキングなら100kmも歩けたんだ。しかも、支部長が出た100kmウォーキングと違い、今回の距離は半分の50kmだ。50kmも歩くなんて、一見、発狂ものだが、フルマラソンの42kmに比べたら、あと8kmの追加に過ぎない。しかも、歩いていいわけだ。て言うか、歩くんだ。フルマラソンを完走した後に、おまけで8km歩くと思えば、まあ、完走は可能だろう。

(幹事長)「わしはフルマラソンを完走しても、常に余力を残しておるからな」
(石材店)「単に全力を出し切ってないだけですけどね」


今回のウォーキング大会は、MTC21という八戸市のウォーキングクラブが主催している。マラソン大会は、たいてい自治体が主催するのだが、支部長が出た小豆島一周100km24時間連続歩行ホステリング大会もユースホステルの主宰だった。ウォーキング大会って、マラソン大会と違って華やかさに欠けるし、時間もかかるし、あんまり自治体は熱心ではないのだろうか。
逆に、こういうイベントを主催する団体は熱狂的な集団が多く、このMTC21も色んなイベントを企画している。体力と精神の限界に挑戦するチャレンジウォークてのがあって、5日間で300kmとか、寝ないで100kmなんていうイベントをやっているらしい。数年に一度はシルクロードウォークてのもやっていて、中国からイタリアまで何回かに分けて歩いているらしい。
そんなのに比べたら、この十和田湖一周50kmウォークは穏やかなイベントとのことで、全国各地から1000人以上の参加者が集まる

(幹事長)「ウォーキングは嫌いだけど、景色の良い十和田湖を一周するなんて、すごく魅力的じゃない?」
(石材店)「景色を楽しむ余裕があれば、のことですけどね」



いよいよ、大会の前日となった。この大会が開催される7月26日は、四国では汗見川マラソンが開催される。炎天下で焼け死にそうになるレースだ。しかし、この北東北の、しかも山間部の十和田湖では、爽やかで気持ちの良い絶好の行楽日和を期待していた。
ところが、今年は全国的に雨が多く、東北ではいつになっても梅雨明けしない。そして、大会当日も天気予報では大雨だった。暑いどころか、寒そうな予感。て言うか、雨の中を歩くなんて、楽しくないどころか、苦行以外の何ものでもないわなあ。しかし、よほどの嵐でもない限り中止にはなりそうもないので、とりあえず現地に行くだけは行くことにする。

三沢市から十和田湖までなら、1時間半もあれば着く距離だから、マラソンなら早朝に家を出れば間に合う。しかし今回は、50kmも歩くため、まだ暗いうちにスタートするので、当日の朝に行くわけにはいかず、前日の土曜日に十和田湖畔のホテルに泊まることとなる。
雨は降っているけど、せっかくなので早めに行って奥入瀬渓流を見物する。奥入瀬渓流は十和田湖から流れ出る奥入瀬川の渓流で、流れに沿って14kmほど歩くことができる。これを歩けば気持ち良いんだろうけど、あいにくの雨だし、て言うか、明日は50kmも歩くので、前日から体力を消耗する訳にもいかないので、車から時々降りて、有名なポイントだけを見物する。しかし、やはり、こういう所は、車じゃなくて歩かなければ良さは実感できない。

(石材店)「でも幹事長は歩くのは嫌いなんでしょ?」
(幹事長)「ここは渓流沿いで、少し登りになっていて、登山とは言わないけど、ちょっとしたハイキング的なコースなんよ。
       そういうのはOKやね」
(石材店)「よう分からん基準ですねえ」



奥入瀬渓流も早々に切り上げて、十和田湖の南側の休屋という地区にある十和田湖畔のホテルに集合した。メンバーは、私と上司を含め会社の人が3人、取引先の人が6人、その他2人だった。そのうちの取引先の1人が隊長だ。メンバーの中で知ってる人は5人で、初対面が6人。年齢は40代〜60代で、僕より年長者が多い。このウォーキング大会に過去に参加した経験があるのは、隊長を含め2人だけ。宴会しながら顔を見てたんだけど、率直に言えば、ゴールするのは半分以下ってとこか。たぶん、半分以上は途中で脱落しそう。中でも、会社の1人は、当初の予定では前日の土曜日にゴルフする計画だった。「せっかく十和田湖まで行くんなら、良いゴルフ場があるんよ」という事だ。結局、雨でゴルフは中止にしたらしいが、真面目に完歩しようという気持ちがあるのなら、前日にゴルフをするなんて無謀な計画は立てないだろう。はなから完歩しようなどという気持ちは無い、と見た。
この大会は、もちろん、みんな完歩を目指してはいるんだけど、途中での脱落は可能だ。途中の3ヵ所にチェックポイントがあり、そこでチェックを受けると同時に、リタイアしたい人は、そこからバスで連れて帰ってきてくれる。マラソンと違って、そんなに恥ずかしく思う必要も無さそうだ。もちろん、それだけリタイアの誘惑が強いと言えるので、完歩を目指すのであれば強い意志が必要だ。

(幹事長)「途中、走ったりするのは、いいんですか?」
(隊長)「一応、歩くのが大前提だけど、時々走ってる人もいるよ」
(上司)「50kmも走るんか!?」
(幹事長)「そななつもりは無いですけど、50kmも歩くなんて退屈しそうなんで、気が向いたら走ろうかと思って」


そもそも、フルマラソンの42kmでもヒイヒイ言いながら、なんとかゴールしている僕が、50kmも走れる訳がない。それに、この50kmはフラットじゃなく、途中、標高1011mもある御鼻部山というピークを超えていくのだ。それって、単なるウォーキングじゃなくて、もう登山の範疇じゃないか、って思えてくる厳しいコースだ。

歩くのと走るのとで、どっちが楽か、という議論にもなったけど、これは難しい。普段走らない人は、当然ながら「歩く方が楽。というか走るのは無理」と言うけど、僕からすれば「そんな長距離を歩くのは足が痛くなってキツイ」と思う。
スタートは朝の5時で、ゴールは夕方の5時までだから、12時間で歩かないといけない。50kmを12時間だから時速4kmちょっと。かなりゆっくりしたペースだ。しかし、途中の食事や休憩の時間を考慮すれば、時速5kmでは行きたいところだ。これだとゆっくり休憩できるし、余裕もある。しかし時速5kmってのは、結構、早足だから、そのペースで最後まで歩くのはしんどいだろう。
一方、フルマラソンをゆっくり走るつもりで40kmを5時間で行ければ、残り10kmをダラダラ歩いて休憩しまくっても7〜8時間でゴールできる。

(幹事長)「やっぱりコンスタントに早足で歩くより、走って時間をかせいで休憩を入れる方が楽そうやな」
(石材店)「早くもウォーキングの趣旨からはずれてますけど」



翌朝のスタートが早いので、宴会は早々に切り上げ、隊長からは9時消灯との命令が出た。しかし、おっさんの習性で、部屋に戻ってもしばらくは飲み続けた。それに、僕の部屋は6畳間におっさんが4人枕を並べて寝るので、なんとなく落ち着かないと言うか、ええ歳して何となく気持ち悪いと言うか、あんまり熟睡しにくい雰囲気。酒の力を借りて寝るしかない。ただし、隊長から起床は3時との命令が出ている。深酒して、しかも熟睡できない状態で、そんな早起きできるかなあ、と思っていたが、みんなが持ってきてる目覚し時計が一斉に鳴り始めて、無理やり叩き起こされる。

眠い頭でぼうっとしながら着替えたが、マメが出来ないように足の指先にテーピングするのだけは忘れない。これは100kmウォークに参加した支部長からのアドバイスだ。それまでマラソンでは確実にマメを作っていた僕だけど、支部長のアドバイス通り足の裏のマメが出来そうな部分にテーピングすると、それ以来、一切マメが出来なくなった。それまで靴やソックスで悩んだり、マメ防止のムースを塗ったりしても避けられなかったマメなんだけど、安物のテープひとつで魔法のようにマメから解放された。今回参加したメンバーにも教えてあげたところ、素直にテーピングした人は、全員マメができなかった。面倒くさがってテーピングしなかった一人は、途中でマメができて「指がちぎれたように痛み出して、歩くのがつらかった」と告白していた。

4時から開会式なので、4時ちょっと前にホテルを出るが、当然、そんな早朝に朝食は無いので、ホテルから朝食用の弁当をもらう。弁当を下げて開会式の会場となる十和田湖小学校のグラウンドへ向かう。受付が終わったら、開会式だ。

天気予報は大雨だったが、明け方まで降っていた小雨も、なんとかあがったようだ。ただし、空を見る限り、いつまた降り出してもおかしくないような雲行きだ。
あらためて見ると、みんな格好はバラバラだ。隊長なんかは登山靴のようなものを履き、服装もハイキングスタイルだ。似たような格好の人も多い。そこまで重装備でなくても、長袖長ズボンにリュックを背負った人が多い。リュックの中は、かなり多目の食料や飲料のほか、何があっても対処できるように着替えや雨具などが詰まっている。つい先日、北海道の夏山登山で中高年者が大量に死亡した事故を考えると、備えたくなる気持ちも分かる。
一方、僕は、途中で走ることも考えて、できるだけ身軽な格好にした。服装はTシャツにランニング用の短パンだ。夜明け前なので、ちょっと肌寒いけど、歩き始めれば寒くはないだろう。靴はジョギングシューズ。バッグも、リュックはやめてウェストバッグにした。そのため荷物は極力減らし、おにぎり3個とペットボトル1本、ティッシュ、タオル、デジカメ、ウォークマンくらいだ。ホテルでもらった朝食用の弁当は荷物になるから、開会式の最中に食べた。雨は、取りあえずあがったとはいえ、いつまた降り出すか分からないので、百円ショップで買った小さなカッパを入れる。
隊長からは、「えらく軽装やなあ」と言われたが、マラソン大会に出る思いをすれば、これでも重装備だ。マラソン大会なら、普通はランニングパンツのポケットにティッシュとハンカチを入れるくらいだ。雨が降ったって、カッパ着て走るわけでもないし。

開会式が終わり、いよいよ5時にスタートとなった。1000人を超える参加者が一斉にスタートすると大混乱になるので、ゼッケン順に行儀よくスタートする。僕らは申し込みが早かったので、かなり前方でのスタートだった。ところが、慌てて弁当を食べたせいで、いきなり便意を催してしまった。マラソン大会なら、ここで焦りまくるところだが、しょせんはゆったりしたウォーキング大会なので、迷わずホテルに戻り、用を足す。
ゆっくり出てくると、なんと全員がスタートした後で、慌てて最後尾に追いつく。他のメンバーに追いつくために走ろうかとも思ったんだけど、なんと、いきなり急な登りとなった。車で来たときは新しいバイパスを通ってきたので坂が無かったんだけど、旧道は登りがあったのだ。これから50kmもあるというのに、いきなり急な坂で走って体力を消耗するわけにはいかないから、歩くのだけど、メンバーに追いつくために、かなり早足で歩く。急な登りが3kmくらい続き、ようやくピークの瞰湖台という展望台に着いたときは、ちょっと汗をかいてしまった。

瞰湖台は見晴らしが良く、とても爽やかな気分になる。ただ、まだ全体の1/10も来てないので、あんまり長く休憩する余裕はない。下り始めると、メンバーのうちの最高齢者に追いつく。この人は、数少ない過去の大会の経験者だけど、こんなにゆっくり歩いてて大丈夫かなあ、なんて思う。下りも3kmほど歩いたら、ようやく湖畔のフラットな道になる。

しばらくすると公園があり、そこには隊長や上司のほか、数人のメンバーが朝食の弁当を食べていた。そこにゴルフを計画していたメンバーもいたのだが、何やら浮かぬ顔。どうしたのかと思ったら、シューズの裏のゴムが剥がれかけているらしい。久しぶりに使ったかららしい。なんとかヒモで縛り付けているが、もうリタイア直前と見た。

公園もきれいで清々しい気分になったので、みんなが食べ終わるまで一緒に休憩した。しばらくして再スタートするが、まだまだ序の口なのに、既に結構、休憩して時間を費やしているうえ、そろそろ歩くのにも飽きてきたので、ここらで少し走ることにした。ウォークマンを着けて、最初のチェックポイントの子の口まで5kmほどを軽く走る。他に走っている人はいないけど、朝の湖畔を走るのは気持ちよかった。ゆっくり走ったからかもしれないけど、いくら走っても列は続き、先頭は全く見えない。スタートから約12kmの第1チェックポイントである子の口に着いたのが7時半ごろ。遅れてスタートしたから2時間ちょっとか。休憩した割には、まあ、悪くないペースだ。

こんなところで休憩してたら時間が足りなくなるので、子の口ではチェックを受けただけで、そのまま通り過ぎ、まだしばらくはフラットな道が続いていたので走りつづける。さらに2kmほど行ったら、ようやく上りとなる。ここからは御鼻部山まで10kmも延々と登りが続くのだ。もう走るわけにはいかない。辛抱強く我慢して歩くのみだ。ただ、フラットな道を歩くのは嫌いだけど、この登りはウォーキングというよりは、むしろ登山に近い傾斜だ。なので、肉体的には厳しくても、精神的にはそれほど苦痛ではない。歩くペースは、みんな似たようなもので、追い抜いて行く人もいれば、こっちが追い越す人もいるけど、基本的には同じようなペースでみんな歩いていく。
ウォークマンを聴きながらどんどん歩いていくと、雲行きが怪しくなってきた。目指すピークを見ると、山の上は完全に雲の中だ

標高が上がるにつれてだんだん気温が下がってくる。風も強くなってくる。すなわち、だんだん寒くなってくる。まだ雨はほとんど降ってないけど、防寒のために雨カッパを羽織る。そのうち霧が深くなり、雨も降り出した。だんだん雲の中に入っていった感じ。
かなり疲労感が出てきた頃に、ようやく24kmの第2チェックポイント御鼻部山に着く。これでやっと半分か。ただ、登りはこれで終わりで、後はただ下るのみだと思うと、精神的にだいぶ楽になる。時刻は9時半ごろで、ちょうどいいペースできている。ここらで遅い朝食と言うか、早い昼食を取ることにして、おにぎりを2つ食べる。荷物を減らすために3個目も食べたかったが、早い朝食を食べているせいか、もう欲しくなかった。雨模様で気温も低く、そんなに汗をかいてないから、飲み物の消費量も少ない。ま、足りないよりマシか。

そこからは、山上のゆるいアップダウンを繰り返しながら、少しずつ下っていき、滝の沢峠に着く。ここはチェックポイントではないんだけど、暖かい味噌汁のサービスがあった。疲れて冷えた体に、暖かい味噌汁がとても美味しい。1つだけ残していたおにぎりを食べる。こんなところで味噌汁サービスがあるんなら、最初からここで昼食にすればよかった。時刻は11時前。なんとか快調なペースだ。

雨もすっかり上がり、ここからは下りが数km続くから、楽勝だ。と思ったら、大きな間違いだった。普段、マラソン大会の時なんかは、下り坂ともなれば、ここぞとばかりに一気に駆け下りてタイムをかせぐところだが、既に30km以上も歩いたせいで、足が痛くて下り坂を走り降りる事ができない。足が痛いのだ。濡れたシューズのつま先も痛いし、足の筋肉も痛い。踏ん張りが利かないのだ。せっかくの下り坂なのに、かえって上り坂より苦痛を感じながら、泣く泣くゆっくり歩いて降りていく。
35kmほどの地点で、ようやくフラットな道になるが、ここまで来ると、もう足が限界に近くなる。フラットな道を歩いても痛いのだ。筋肉痛というか、肉と筋が固くなって動かすと痛い状態。もともとウォーキングなんて嫌いなうえ、こう足が痛くては、もう歩く気がしない。こうなったら走るしかない

「足が痛くて歩くのも困難な状態なのに、走るなんてできるのか」という疑問の声をよく聞くけど、これが、走れてしまうのだ。足が痛くて歩くのは困難でも、軽く走り出すと、とても快調に走れてしまう。歩くのと走るのでは、使う筋肉が全く異なるのだ。むしろ走った方が、歩く時に使っていた筋肉がほぐれて、かえって足の痛みがとれる。こんな終盤に来て快調に走っていると、歩いてる人が「なんて元気な人なんだ!」って感じで、驚いたように見るが、元気じゃないからこそ走っているのだ。

(幹事長)「嘘だと思うなら、やってみなはれ」
(石材店)「そなな事を検証するために何十kmも歩く人はおらんでしょう?」


て事で、リフレッシュしながら新たな気持ちで走っていくと、40kmの最後のチェックポイント大川岱に着く。ここが最後のトイレ休憩となる。フルマラソンなら、もうほとんどゴールだが、あとまだ10kmも残っているところが、この大会の厳しさだ。しかし、あと10km歩くのは不可能だが、走れば楽勝っぽい感じ。最初の作戦は、フルマラソンのつもりで40km走って最後の10kmを歩くというものだったが、逆に最後の10kmを完走する作戦となった。
この辺りで天気もどんどん良くなり、薄日が射し始める。日なただと暑いくらいだが、湖畔の道は木陰が多く、走ってても涼しくてちょうどいいくらい。最後の10kmも、完全なフラットではなく、ちょこまかとアップダウンがあり、登りになると歩きつつ、基本的に走っていった。途中、湖に突き出た気持ちよさそうな桟橋の上で小休止したりしながら、あとゴールまで数百mのところまで走った。

最後の最後は、ウォーキング大会の趣旨を考えて、ちょっとだけ歩いた。というのは嘘で、あと1kmを切ったところで、精神的な緩みが出て、足が動かなくなって走れなくなったのだ。しかたなくトボトボと歩く。時刻は1時過ぎだ。スタートから8時間くらい。単純平均では時速6kmくらい1kmを10分のペースだ。もし、ずっと歩きだけだったら、これは非常に速いペースだ。僕には到底、不可能なペースだ。周りを歩いている人たちは、すごく早足だし、歩きがしっかりしている。僕なんか、走ったりしてるから早々にゴールしようとしているけど、走りを止めたとたん、すごくスローペースの歩きとなるが、周りのみんなは最後までしっかりした足取りだ。

なんとか気持ちよくゴールできた


いよいよゴールしようか、という瞬間に、ゴール直前でワンちゃんに抜かれてしまった。ワンちゃんに抜かれてはいけない、と思って頑張ったが、僕の足はもう動かない。ワンちゃんは、人間と同じようにゼッケンを着け、飼い主と一緒に最後まで確かな足取りでゴールしたのだ。すごいぞワンちゃん!

ゴールした達成感で、気持ちよく芝生に座り込んだら、なんと、もう足が動かなくなってしまった。ゴールする前なら、まだ数kmくらいは歩けそうな気がしたけど、いったんゴールしてしまうと、足が硬直して動かなくなってしまった。しばらくじっとしていたが、汗で体も冷えてきたので、ホテルに戻って温泉に入ることにした。ホテルまで僅か数百mだったんだけど、この数百mが、本日一番の厳しさだった。痛みに耐えながら足を引きずり、なんとか温泉に入り、ようやく生き返った。

ゆっくり時間をかけて温泉に入り、その後、ホテルのロビーで待っていると、4時頃に、相前後してみんな戻ってきた。スタートしてから11時間前後だから、休憩時間を引くと、10時間ペースだ。50kmを10時間だから、時速5kmのペース。これでも結構、速い。
しかも驚いたことに、我々のメンバーは全員が脱落することなく制限時間内にゴールした。ゴルフを計画していたメンバーを含め、絶対に半分はリタイアすると思っていたのに、結構みんな根性あるなあ。僕は途中で走ったけど、「走らずに最後まで歩け」なんて言われたら、絶対にリタイアしたと思う。さすがは、こななイベントに参加しようと思った人たちだ。見かけによらないなあ。

何はともあれ、途中、1/3は走ったとは言え、50kmもの長距離を完歩したという達成感は大きい。ちょっと感動した。なんとなく、1つの自信がついた。

(支部長)「これでウォーキングの楽しさが分かったでしょ?」
(幹事長)「いいえ、決して。ウォーキング大会は、これで最後にしますぅ」



(石材店)「次のイベントは何ですか?」
(幹事長)「次は10月初めの弘前アップルマラソンやな」
(石材店)「それって去年ピッグが出たフルマラソンやなあ。ピッグは今年も出るん?」
(ピッグ)「いや、それが、今年はサボっちゃおうかなあって思ってるところ」


ピッグの去就は現時点では不明だが、取りあえず10月の弘前・白神アップルマラソンを目指してトレーニングを続けることにしよう!


〜おしまい〜




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