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伊庭八郎さんと従姉妹と、時々試衛館ズ。

ピンク色は主人公

青色は伊庭八郎

紫色はその他の人

日付クリックでSSが読めます。

 

1月1日 静

 

従兄伊庭八郎の家が剣術道場をしている影響で、幼少の頃から剣に親しんできた。

髪が天然パーマで、日本髪が結えなかったというのも原因かもしれない。

気がついたら私は、男の着物を着て剣に生きる女子になっていた。

(2008.10.29)

 

1月2日 静

 

八郎は剣術よりも勉学に興味があるようで、いつも生っ白い顔をしていたから。
二人並んでいると、よく性別を間違えられた。

私が男子で
八郎が女子に。

そんな二人が許嫁にされたのだから、私たちはお互いに複雑だった。

 

(2008.10.29)

 

1月3日 静

 

私はため息をついて、にこにこと笑う八郎を見た。
年賀の挨拶に来た八郎は、髪もさっぱり整え、紋付き袴を着ていて。
急に―
いつもより大人びて見えた。

今年もよろしくな

さっぱりと笑う八郎に、正月早々複雑になった。

 

(2008.10.29)

 

1月4日 静

 

いつも同じ道場にいたのに。
顔を合わせるのは稀で―

もしかしたらそれは。
無意識にお互いが、避け合っていたのかもしれない。

親達に勝手に許嫁にされたおかげで、どういう顔で会えばいいのか…
距離を測りかねていた。

 

(2008.10.29)

 

1月5日 静

 

私の名は静といった。
名前だけを聞けば、女子らしい名だったが。
名は体を表す、というのは嘘だな。

口数こそ多くはなかったが。
10人が10人とも私を見たら男子だと疑いもしない。
そんな私を、八郎は静丸と呼んでいた。

 

(2008.10.29)

 

1月6日 静

 

伊庭八郎。
伊庭静。
いとこ同士で名字も同じ。

将来私と八郎が祝言を挙げても―
私の名は変わらない。

私と八郎の関係が変わるなど…想像もできない。

私は頭を振ると、井戸水をくみ上げた。

薄氷が釣瓶の中で揺れていた。

 

(2008.10.29)

 

1月7日 静


早朝
誰よりも早く道場に行く。
冬の日の出は遅い。
暗い中道場の中央に座り、目を閉じる。

白い息がゆっくりと空気に溶け込んでいく。
風の流れを全身で感じる。

目を開けた時
高い所にある窓から、白々とした空が見えた。

 

(2008.10.29)

 

1月8日 伊庭八郎

 

オイラと静丸は同じ年だった。
名字だって同じ。
違うのは、寡黙な所で。

鋭い目つきと袴姿のせいで、誰も彼女を女子だとは思わない。
オイラだって、時々ポンと抜けている。
背だってオイラと同じ位だし、剣ダコもある。

 

(2008.10.29)

 

1月9日 伊庭八郎

 

慌ただしい三が日も過ぎて、オイラはボーっと自室で寝転んでいた。
読んでいた漢学の本も投げ出して、庭の鳥の囀りに耳を澄ます。

部屋にはまだ正月の名残の南天が活けられていて、新しい一年の始まりだと教えている。

 

(2008.10.29)

 

1月10日 伊庭八郎

 

玄関に活ける花を椿に変えて、しめ縄を外す。
これを神社に持って行って燃やして貰えば、正月の気配はなくなる。

オイラは、近くで庭を掃いている静丸を見つけて声をかけた。

終わったら神社に善哉を食いに行かねぇか?
 

(2008.10.29)

1月11日 静

 

昨日八郎と神社に行った。
善哉を振舞って貰うためだ。

境内には人が溢れていて、八郎は誰かを見つけたのか突然嬉しそうな顔をして駈け出した。

神社の隅の焚き火には、数人の男達がいた。

彼らが試衛館の連中だろうか。
 

(2008.10.29)

1月12日 土方歳三

 

10日は試衛館の連中と神社に行った。

供えていた鏡餅を善哉にして振舞ってくれるからだ。

 

ごった返す人の中、派手な二人連れが来るのが見えた。

 

…ありゃあ八郎、か?

女みてぇな派手な着物を着てるからわからなかった。

 

(2008.10.29)

1月13日 沖田総司

 

伊庭さん!

今日はあの人と一緒じゃないんですか?

凛とした格好いい人でしたね!

あの方も剣をなさるんですか?

今度手合わせして欲しいなぁ。

 

土方さん?

あの人なら道場にいますよ。

 

今度はあの人も連れてきて下さいね!

 

 

(2008.10.29)

1月14日 伊庭八郎

 

昨日総司に静を連れて来いと言われた。

どうやら総司のお気に召したらしい。

 

笑顔の下で、何を考えているのかわからない総司に目を付けられるなんて…

 

厄介さね

 

呟いてオイラははっと気付いた。

何でそう思ったんだろう。

 

 

(2008.10.30)

1月15日 伊庭八郎

 

昨日から静丸の事が頭から離れない。

試衛館の事はよく話していたから。

少なからず興味を持っている。

剣の好きなあいつの事だから。

誘えばついてくるだろう。

 

だけど。

 

女子だとバレるのが嫌だった。

 

静丸は女子なのに。

 

 

(2008.10.30)

1月16日 静

 

試衛館の連中は気が良くて、いい人達だと八郎から聞いていた。

確かに。癖が強そうな物の朗らかな奴ばかりだった。

 

一人、色白の役者みたいな綺麗な男はいたが。

 

じっと見ていると、総司と名乗る男が握手を求めてきた。

 

(2008.10.30)

1月17日 静

 

八郎と稽古した。

熱心に剣を振っている所は見たことないのに、さすが宗家の御曹司か…

気迫が違う。

 

手合わせが終わった瞬間

張りつめていた殺気を吹き飛ばして、八郎は莞爾と笑った。

 

いつもそうしていたらいいものを。

 

(2008.10.30)

1月18日 静

 

伊庭の小天狗、麒麟児。

奴がそう呼ばれているのを聞いた時は、どうして奴が、とおかしかったが。

実際に手合わせをして、どっと汗をかいた。

 

今まで幾度となく剣を合わせてきたが。

手加減していたのだろうか?

悔しい。

 

(2008.10.30)

1月19日 静

 

女子だと馬鹿にされないよう、稽古は人一倍励んだ。

男に比べて剣が軽くなるのは仕方がないが、その分速さでは負けないつもりだった。

 

悔しいが、八郎は格が違う。

 

いつ稽古をしている?

試衛館で…しているのだろうか?

 

(2008.10.30)

1月20日 伊庭八郎

 

世間では、オイラを心形刀流の御曹司なんて呼ぶけど。

家は実力のある奴が流派を継ぐから、別にオイラじゃなくてもいいんだ。

 

だから昔は、反抗するように勉学ばかりしていたけど。

 

…いつから剣が面白くなったのかな。

 

(2008.10.30)

1月21日 伊庭八郎

 

静と初めて会ったのは、3歳の時。

七五三のお宮参りの帰りに来たから、桃色の愛くるしい着物を着てたっけ。

 

男装をするようになったのは、いつからだったかな…

もう思い出せねぇや。

 

何か切欠があったと思うんだけど。

 

(2008.10.30)

1月22日 静

 

八郎と初めて会ったのは5歳の時。

お宮参りの帰りだからと、袴を着ていた。

勇壮な羽織を着ているくせに、雛人形みたいな顔で。

どうして女子が袴を着ているんだろうと不思議だった。

 

道場の家の子だからと思っていた。

 

(2008.10.30)

1月23日 静

 

八郎と向かい合って、炬燵で蜜柑を食べる。

やっと―

普通に接することができるようになった今。

どうしてあんなに意識していたのかわからず、気恥ずかしくなる。

 

火鉢が済んだ音を立てる。

 

許嫁よりも、従妹でありたい。

 

(2008.10.30)

1月24日 伊庭八郎

 

静丸は前よりも一層剣に打ち込むようになった。

オイラに負けたのがよっぽど悔しかったらしい。

剣ダコのある手は、霜焼けや皸で血が滲んでいる。

どうしてそこまで打ち込めるんだろうね。

痛々しくて…見てらんないよ。 

 

(2008.10.30)

1月25日 静

 

夜半から雪が降り出した。

シンと静まり返った屋敷は、鼠の足音一つしない。

 

寒さに目が覚めて、私は身震いした。

外は雪が積もっているのだろう。

明かりなどないのに、ぼんやりと明るい。

 

八郎は…寝ているのだろうか?

 

(2008.10.30)

1月26日 伊庭八郎

 

目が覚めると、一面の雪景色だった。

深々と積もる雪を手ですくってみる。

 

遊女の白粉みたいに真っ白なのに。

何の匂いもしないや。

 

静、みたいだな…

ふと思った途端、掌がやけに熱くて雪がじんわりと溶けるのを感じた。

 

 

(2008.10.30)

1月27日 静

 

もしも。

そんな話は好きじゃないが。

考えずにはいられない。

 

もしも私が男子だったら。

八郎と許嫁にはならなくて済んだだろう。

 

剣も今よりもずっと上達しただろう。

どうして私は女子なのか。

 

男に生まれたかったのに。

 

(2008.10.30)

1月28日 沖田総司

 

前に会った時お願いしたのに、伊庭さんはちっとも静丸さんを連れてきてくれない。

静丸さんが嫌がってるのかな?

 

手合わせしてみたいのになぁ。

炯眼は1月の水みたいに澄んでいて、とても綺麗だった。

 

…会いたいなぁ。

 

(2008.10.30)

1月29日 土方歳三

 

心形刀流は天然理心流と違って、二刀も使うと聞く。

静丸と言ったか…

あんなに細ぇ腕で、あいつも二刀を操るのか?

 

伊庭と言い静丸と言い、どうして心形刀流はやけに整った顔の奴が多いんだ?

まぁ剣は顔じゃねぇがな…

 

(2008.10.30)

1月30日 静

 

もうすぐ一月も終わる。

早いものだな。

二月にもなれば、更に身を切るような寒さになるだろう。

凍る湯上りの髪を火鉢の前で溶かしながら、皹切れの手をこすりあわせた。  

仕切りに沸く鉄瓶の湯気に人恋しくなりながら。  

(2008.11.3)

1月31日 伊庭八郎

 

一日、一日と日が経つのが早く感じる。

それだけ年を取ったってことかもしれねぇけどさ。

去年のオイラと比べて、今年は何が変わるんだろう?

 

静丸とオイラの関係も…変わる、のかな?

 

まだ壊したくない…

 

もう少しだけ。

 

 

(2008.11.3)

 

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