幕末 沖田総司 成り代わり

あの石段を飛び越えて

 

 
今までの自分がどうして死んだのかわからない。

交通事故? 病気?

それとも寝ている間に、地震や竜巻なんかの天災にあった?

私は確かに平成の世でOLをしていた筈なのに。

気が付いたら、なぜか幕末に生まれ変わっていた。

それも沖田総司として――!

 


あの石段を飛び越えて



 

私は平成に生きていた頃から、新撰組の大ファンだった。

中でも土方さんが大好きで、同じく新撰組ファンの友人と休日を合わせては、日野や京都はては北海道まで旅行に行ったものだ。

だから、自分がなぜか幕末に生まれ変わったと知った時も、驚きはしたがそれほどショックを受けることはなかった。

(むしろラッキーと思ったくらいだ!)

そんな私につけられた名前は、『沖田宗次郎』。

赤ん坊ながらに意識をしっかり持っていた私は、その名を聞いてもしやと胸を膨らませたものだ。

生前の記憶は、なぜか生まれ変わった今も消えなかったからね。

みつやきんという姉がいて、そして白河藩士の父がいる。

これだけ揃えば、期待するなって方が無理でしょ?

ああ、早く大きくなりたい!

大きくなって土方さんや近藤さんに会いたい!

赤ん坊で眠ることしかできない私は、まだ会えぬ彼らのことを妄想しては日々過ごしていた。

『沖田宗次郎』。

この名前が、かの総司と同姓同名で、私は単なる一般人に過ぎないのではないか。

そりゃあ毎日無駄なことを考えるだけしかできなかったからね、そんなことも考えたよ。

でもね、そう思うより本人だって思う方が楽しいじゃない!

本物の総ちゃんがいないのはすっごく寂しいけど……。

でも、このポジションは本当に嬉しくて楽しみで、私は毎日幸せな夢を見てすくすくと育っていったんだ。

 

 

2010.4.16