幕末 沖田総司 成り代わり

あの石段を飛び越えて

 

 
2歳になった。

少しずつ昔の記憶がなくなっていった――かと言えばそうじゃなく。

私は今尚、平成の記憶をしっかり持っていた。

といっても、この時代から見ての未来になるのかどうかはわからないけどね。

私はここが、一種の平行世界、パラレル世界なんじゃないかって思っている。

沖田総司が私なのが、その証拠。

どうして未来から過去に来たのかはわからないけど、いつだったか何かの本で読んだことがある。

時間の流れというものは、独立してぶちぶちと切れたものではなく、過去・未来・現在は同時に存在し、同時に流れている、とかいう理論。

ま、実際のところは考えたってわからないんだけど。

とりあえず、私がここに存在しているのは確かだ。

 

私は生前OLをしていた。

つまり女だった。

だけど、転生してみればなぜか男になっていた。

でも意識は女のままなんだ。

これってすごく問題じゃない?

……私のせいで、沖田総司がおねえ系とかになっちゃったらどうしよう!

え、考えたら何か怖くなってきた!

口調は……うん。

私、って言ってても大丈夫な気がする。

総ちゃんは基本敬語なイメージがあるし。男むさい感じじゃないし!

実際のところは、まだ鏡を見たことがないからわからないけど――。

総ちゃんは華奢な美少年のイメージがあるから……きっと多少のことは大丈夫だろう!

(希望だけどね!)

だけど、うん!

意識は極力男っぽくしなくちゃね!

私のせいで、後世に変な伝承は残したくない。

 

って、うわ、今気が付いたけど、これってかなり大変なことだじゃない?

沖田総司といえば、歴史に名前を残してて今尚人気のある人だもの。

一般人すぎる私が、沖田総司でいいんだろうか?

私は本当に、総ちゃんみたいに剣が上手くなって、新撰組一番隊長になれるんだろうか?

これってうかつに動いたら、歴史が変わっちゃったりってことに、なる、よね。

責任重大だわ!

彼の名前に恥じないよう、一生懸命生きなくちゃ!

 

 


2010.4.17