(2005年)

 子供のときから魚などを捕るのが得意だったのは、申すまでもない。
 なぜなら、狩猟民族の末裔だからである。

 今から7年ぐらい前、ウエットスーツを購入した。
 もちろんもぐって魚や貝を捕るためである。
 それまでは、海水パンツとTシャツだけですもぐりをしていたが、カキなどで怪我をするし、クラゲなどの食指に痛い思いをしたからである。
 ウエットスーツを着けてすもぐりをしてから自分のすもぐりの世界が変った。
 何とて長時間海の中で泳いでおれること、体が守られているため安全であることなどである。
 身体の方が万全になったことから狩猟道具もプロ仕様と思って自分で作ることにした。
 釣具店で土佐の手打ちの銛を3,000円で買い、DIYショップでステンレスのパイプを仕入れ銛を取り付け、ゴムの力で銛が飛ぶようにした。
 何でも作るのは得意であるが、自分ながら満足できる道具が出来た。
 これで、一応の準備は整った。
 早速、近くの海にもぐりに行ったが、期待に反して収穫がない。
 まず、魚が見当たらない。場所にもよるが、ベラやフグはけっこういるのだが、銛で突けるカサゴやアイナメ、マダコなどは探し当てられない。
 特に、マダコは、周囲の色に体の色を同調させているから、全く分からない。

 でも、狩猟民族の遺伝子がちょっとした不自然に感応するのである。
 そこが、他の人種と違うところである。
 マダコは、隠れている穴の周りにアサリの殻を散らかしていることが多い。
 新しい殻が不自然に散らばっていて石の間に穴があいている所などは、まず、90%の確率でタコが潜んでいる。
 穴の、中に吸盤のついた足が見えたときには、やったーと叫びたくなる。
 マダコは、見つけたら、まず、99%の確率で捕まえることが出来る。
 動きが遅いというよりじっとしているからであるが、これまで1度だけ失敗したことがあった。
 そこは、1トンほどもある石の下に穴があり、そこにタコが潜んでいた。
 銛で突いたのは予定どおりだったが、穴の中でしっかりと吸盤を岩に引っ付けてふんばり全く出てこない。
 無理に銛を引っ張ると身が切れてすっぽ抜けてしまう。
 色々とやってみたが全く穴から出てこない。
 ついに我慢が出来ず銛を抜き、手を穴の中に突っ込んでタコをつかんだ。
 足の一本をつかんで引っ張ったら足がちぎれてしまった。
 結局、一本の足だけ残っただけだった。

 そんな経験をした数日後、また同じような場面に合った。
 今度は無理をしないで、タコに銛を刺したままにしてしばらくじっとしていた。
 時々、銛をひねって刺さっているのを確かめ、またそのままにしていた。
 しばらくすると、タコが銛を付けたまま、自ら穴から出て逃げ出してきたのである。
 穴から出たので簡単に捕らえることが出来た。
 結果としてあせらずに、我慢して待っていれば捕らえることが出来ると分かったのである。

 銛で突きやすいベスト5を発表したい。
 まず第1位であるがマダコである。
 次に第2位は、ハギとしたい。動きが鈍いので、見つけて9割は銛で突くことが出来る。
 第3位は、ノドクサリ(メゴチ)である。昔は、砂地のところにはたくさんいたのだが、最近はあまり見当たらない。
 ノドクサリは、砂の中に身を潜ませている時は比較的容易に突くことが出来る。
 でも一旦相手が気が付いて逃げ出すと、もう捕らえることが出来ない。
 そこが、ハギと違うとこである。
 第4位は、アイナメやクジメである。
 けっこうたくさんいるというよりも、一度突くのに失敗してもこの手の魚は、すぐに逃げないので、また突けるからかもしれない。
 第5位は、カサゴである。
 この魚は、突き易いと思われがちだが、決してそんなことはない。
 あまり動かないでじっと岩影に潜んでいて簡単に突けそうに見えるが、この魚ほど素人とベテランで差が出るものはない。
 まず、相手と目を合わせると、突く前に逃げられてしまう。
 相手が気が付かないようそっと射程距離に近づき、息を止めて確実に突く。
 この動作は、もはや身に備わったものがないと出来ないのである。
 5位までしか表わしていないが、この後もある。
 ベラやボラ、チヌなどもどのような順位になるか分からないが、突いたことがある。
 難易度は、5位までの比ではない格段の差がある。
 ここまでくると何度でも言うが、狩猟民族の遺伝子を受け継いでいないと出来るものでないと思う。
 銛を撃って当たる距離までまずもって近づけない。やっと近づいてもちょっとタイミングが合わないとすぐ逃げられる。どちらかというとちょっとのろまか好奇心のあるものに照準を合わせるしかないのである。

 真夏の昼間の釣りは、暑くて釣りにならない。
 夜釣りは涼しいが蚊がうるさくてこれも釣りにならない。
 その点、昼間のすもぐりは涼しくて快適である。
 2時間ぐらいのすもぐりでタコやあわび、カサゴなど晩のおかずに十分な収穫がある。
 釣りより、よっぽどか効率が良い。

 ウエットスーツを購入したときは、ダイエットをしてだいぶんスマートになっていたときであった。
 シュノーケルをつけて何時間でも泳いでいても気持ちよく泳げていた。
 ところがである、最近、体重が増加してきたと思ったら、泳ぐのが苦しくなってきた。
 ウエットスーツは、身体にぴったりっと張り付いているが、それにより保温が保たれているのである。
 でも、太ってくると水圧とウエットスーツの締め付けで呼吸をするのがしにくくなる。
 だから、最近は、あまり長時間潜らないようにしている。
 と言うより息が苦しくなって続かないのである。
 以前のような体型で思い通りにすもぐりができればと思っているが、さて、いつになることやら。
 やっとすもぐりの極意がつかめたと思ったのだが、うーん残念