その頃ラピスとリズクと女の子がファウザ隊の一員とは知らずに一緒に街の中を歩いていた…

「なかなか見つかりませんね」

「うん…ねえ、本当にどこから来たのか分からないの?」

「…」

女の子は何を聞いてもずっと黙ったままだった…

「あれ? ラピスとリズク、こんな所で何してるの?」

そこに偶然通りかかったのかナサニエルがやってきた。

「あ、ナーザ…実は…」

ラピスは簡単に事情を説明した…

「大変そうだね、ぼくも手伝うよ」

「いいの? 見習いの仕事があるんじゃないの?」

「え、まだ言ってなかったっけ、ぼく医者になったんだよ」

「…すごい、ナーザも転職したんだね、おめでとう!」

「あ、あの…おめでとうございます」

「まあ、まだ勉強しなきゃいけない事はいっぱいあるけどね」

「ところでナーザ…ぼくをみて何か変わったと思わない?」

「え? どうしたの急に…」

「ラピスさんの変わった所ですか?」

「そうだよ何か変わった所があるでしょ?」

ラピスの急な問いかけにナサニエルとリズクは顔を見合わせて困ってしまった…

「えっと…その…新しい服を…違うみたいですね」

リズクはラピスの顔を見てすぐに訂正した。

「じゃあ、靴を…」

「厚底なんて履いてないよ!」

ナサニエルは『厚底』という言葉を聞いてラピスが何を言ってほしいか分かった。

「もしかして背が伸びた?」

「やっぱり分かる? そう背が5cmも伸びてたの、140cmだよ! 凄いでしょ!
 これは全部リズクのアドバイス通りにミルクを飲み続けたおかげだよ、ありがとう!
 ああ、なんだか世界が変わったみたいだよ」

ナサニエルとリズクは大げさすぎると思ったが言いだせずに苦笑いしていた…

「それはそうと、一緒にいる女の子は誰?」

「ああ、この子は…」

ラピスが女の子を紹介しようとした時、ふとラピスの周りが暗くなった…

p「あ、あの…後ろ…」

ナサニエルとリズクが後ろを指差すので、ラピスが振り返るとそこには…

見上げるほどの大男がラピスたちを見下ろしていた…

実はこの大男もファウザ隊の一員なのだがラピスたちが知る由が無かった…

「ルフィ…」

大男は何か言おうとしたがラピスたちは女の子の手を引いて走り去ってしまった…

女の子は手を振っていたようだがその事にラピスたちは気付く余裕はなかった…





ラピスたちはしばらく逃げ回った所で息を切らしていた…

「逃げ切ったかな…」

「多分…」

すると女の子がある建物を指差した。

「あの建物は…隊商宿みたいだね」

「じゃあ、この子はあそこに泊まってる隊商についてきた子じゃないのかな」

「あの…入口にえっと怪しい人が…」

リズクに言われて見てみると入口の中をコソコソと覗いている女性がいた…

「…確かに怪しいね」

「ちょっと待って、あの人は…」

ラピスはその女性に見覚えがあったのか声をかけた。

「あの…ウラフフさん?」

「うわ!! ラピスさん!?」

その女性はウラフフだった…

「こんな所で何してるんですか?」

「えええーと実は…」

ウラフフはどもりながらした説明によると、ファウザ隊のスパイスを手に入れる為に来たらしい…

「…ここにスパイスを…ってこの隊商宿にファウザ隊が泊ってるんですか?」

「ちょっとラピス…危ないんじゃ…」

「でも、この子が中に入りがってるみたいだし…」

ラピスとナサニエルは顔を青くして、リズクは間でオロオロしていた…

「ルフィーヤ、こんな所で何しとるんじゃ、イスマイルがさっきから探しとったぞ?」

そこに突然何故か大きな亀に乗ったお爺さんが声をかけてきた…

「あの、ルフィーヤというのはこの子のことですか?」

「そうじゃ、今朝から姿が見えなくなったんで皆で探しとったんじゃ」

 もしかしてお主たちがここまで連れて来てくれたのかの?」

「そうです」

「そうか、この子は喋らないからここまで連れてくるのは大変じゃったろ。

 せっかくだから、ちょっと着いてきてくれんかのぅ」

お爺さんはそう言って建物の中に入っていった、ラピスたちも戸惑いながら後に続いた。

「ちょっとラピス大丈夫なの?」

「でもついて来いって言ってるし、まだファウザ隊だって決まったわけじゃないし…」

「えっと、あのお爺さんあまり怖そうには見えません…」

「もももしかしたら、同じ隊商宿に泊ってるだけかもしれませんし…」

しばらく歩いているとお爺さんはある部屋の前で止まった、そして戸に手をかけようとすると中からどなり声が聞こえてきた…

「何で私にあのスパイスを使わせてくれないの!?」

「あれは高いの、あんたなんかに使わせられないわよ」

「あたしならあのスパイスを最高の芸術品に仕上げられるわよ!」

「そんな事言ったってどうせ最後は捨てるんでしょ? だったらどんな章句材使ったって一緒じゃない」

「捨てるのは出来そこないだけよ、でもそのスパイスがあればこのあたし

 ペピチコの名に恥じない最高の芸術作品ができそうな気がするの!}

「この前も同じような事言って高い食材を使わせてあげたけど結局捨てちゃったじゃない」

「もういいわよ!!」

そして戸が開き中から女性がかなり怒った様子で出てきてそのまま立ち去って行った…

「ファウザ、ちょっといいかの」

「あらスルアジューズ、何か用?」

「ルフィーヤが見つかったぞ、この子たちが連れてきてくれたんじゃ」

「え? ルフィーヤ? そういえば今朝そんな事言ってたわね…」

ファウザの名を聞いた途端ラピスたちの背に悪寒が走った。

「いい今ファウザって…」

「えっと…ナーザどうしよう…」

「もうここまで来たら行くしかないよ」

ラピスたちが意を決して中に入ると部屋の奥に女性が一人座っていて、

そのそばには大きな男性が立っていた…

「あんたたちが連れて来てくれたの」

「え、はい…」

「わざわざありがとうね。他に用が無いならもう帰っていいわよ」

「ちょっと…」

「何? まさか迷子一人連れてきただけでお礼が貰えるとでも思ったのかしら?

 悪いけどそれ位じゃ何も渡せないわ。ほら、分かったらさっさと帰りなさい」

ラピスたちは何の反論もできず部屋から追い出されスルアジューズに建物の外まで案内された…

「…怖かったね」

「あれじゃ、スパイスが欲しいなんて頼めないよ…」

ラピスたちが帰ろうとするとルフィーヤがラピスたちを追いかけてきた…

「どうしたの?」

「……」

ルフィーヤは小さな袋を一つラピスに押し付けるように渡すとすぐに戻っていった…

ラピスが袋を開けてみると中にはスパイスらしき粉が入っていた。

「これは…?」

「えっと…きっとあの子からのお礼ですよ」

「貰ってもいいと思うよ」

「…そうだね、じゃあこれはウラフフさんにあげます」

「え、ええええいいんですか?」

「だってこれが欲しくてここまで来たんでしょう?」

「ありがとうございます、ありがとうございます」

ウラフフはラピスの手を取って何度もお礼を言って立ち去って行った。

「じゃあ僕たちもそろそろ…」

「ラピスーー!!」

突然モリオンが現れラピスに抱きついた。

「怪我は無いか? 何かひどい事はされなかったか?」

「…く、苦しい…」

「あの…離してあげてください」

この後モリオンを落ち着かせ事情を説明するのに結構時間がかかった…





リズクさん(一磋さん)、ナサニエルさん(yuranさん)、ウラフフさん(□Kさん)、ファウザ隊の方々お借りしました。



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