ラズリの面倒を見るよう頼まれたミトだが肝心のラズリはラティファのおもちゃに夢中だった…
「あのーラズリちゃん? 湯屋に行かなくていいんですかー?」
「…あ! そうだった、じゃあこれも持っていかなきゃ」
ラズリはたくさんのおもちゃを持っていこうとした。
「ちょっと待ってください、一度にそんなに持っていく気ですか?
っていうかラズリちゃんより小さい子用のおもちゃがあるような気がするんですが」
「ラティがもうすぐ産まれる弟か妹用にってくれたんだけど…だめ?」
「だめという訳じゃありませんが…今から湯屋に行くんだから余分な荷物は控えた方がいいと思うんです」
「ラズリ、ミトちゃんをあまり困らせちゃいけないよ。
ラズリが出てくるまでオレが預かっているから持っていくのは一つだけしなさい」
「うん…分かった。じゃあ、このみずでっぽうを持っていくね」
ラティファの説得もあってラズリはおもちゃをラティファに預け、湯屋に入った。
「わー、思ってたよりも広いね!」
脱衣所で着替え浴室に入るとラズリは興奮したのか走り出した。
「ラズリちゃん待ってください、走ったら危な…きゃ?!」
ミトはラズリを止めようと追いかけたが自分が転んでしまった。
「ミトさん大丈夫です…きゃあ?!」
そして、偶然湯屋に来ていて様子を見ていたシーリーンが心配して駆け寄ってきたが…
やっぱり転んでミトを潰すような形で倒れた。
「え…だ…大丈夫?」
「は…はい、鼻が痛くて少し重いですが…」
「ごめんなさい…」
『ラズリ!? 何があったの!? ラズリ!?』
男湯の方まで騒ぎが聞こえていたらしく壁の向こうからラピスの声が聞こえてきた。
「ミトもリーンも平気だって言ってるから大丈夫だよ」
『シーリーンさんまで巻き込んだの!?』
ラズリはラピスを安心させるつもりで言ったようだが逆効果だった。
「坊主も大変だな」
そこへシーリーンと一緒に来ていたのかクライズクラウがやってきた。
「こっちは本当に大丈夫だから、坊主はゆっくり温泉につかってな」
『はぁ…それならいいんですが…』
クライズクラウが説明したおかげかラピスは大人しく引き下がったようだ。
「リーンも転びやすいんだからあまり走るな」
「はい…」
クライズクラウはシーリーンとミトを起し、ラズリに向きあった。
「いいか、こういう事になるから走り回らないようにな」
「はい…」
それからラズリたち四人は改めて温泉につかった。
「ミトさん、さっきは本当にごめんなさい」
「もういいですってばー」
「リーンもその位にしときな、あんまりしつこいと周りから変な目で見られるぞ」
「え? ええそうですね…」
「どっちかって言うとクラウの方が変な目で見られるんじゃないの?」
「俺がかい? 何でそう思うんだ」
「だってクラウって男みたいだから」
ラズリがなんの悪気もなく答えるとクライズクラウは一瞬呆気にとられたようだがすぐに笑い出した。
「ちょっとラズリちゃんそんな事言ったら失礼ですよ!」
「まあまあ…いいじゃねえか、本当の事なんだから。そんなに俺が男に見えるかい?」
「うん、話し方は男っぽいし、顔はかっこいいし、体は…」
「ラズリちゃん…そういう人の体の事はあまり言わない方がいいですよー」
ミトは自分の手を胸に当てながら何故か泣いていた…
「そういう事は他の奴にはあまり言うなよ。そこの嬢ちゃんみたいに傷つく奴やラズリの兄貴みたいに怒る奴がいるからな」
ラズリたちがお喋りやラティファに貰ったおもちゃで盛り上がってると、妙な声が聞こえてきた…
「その子たちに…手を出したら…消す…」
妙な名声を出していたのはヤシュムだった…良く分からないがどす黒いオーラをまとっているように見える…
「叔母さん! いつからいたの!? それと何やってるの!?」
「あの人相変わらずですね…」
「あの人ラズリちゃんの知り合いなんですか!?」
「…ずっと…この壁の…向こうで…ラピスが…危険な男に…絡まれてたから…忠告を…」
「お兄ちゃんが!?」
「…もう…追い払った…」
「よく分かんねえけど凄い叔母さんだな…」
「でも、怖いですー」
「…大丈夫だよ! 本当は優しいから…多分」
「多分ですか…」
「大丈夫…姉様に…人を…襲っちゃったら…言われてる…から…」
ヤシュムが何か怖い事を言っていると、男湯の方から声が聞こえてきた。
『ラピスさん顔が近いです目が怖いです!』
『ラピス落ち着け!』
(壁の向こうで何が起きてるんだろう…)
「ねえ、姉さん、そろそろ上がりません」
「そ、そうだな」
「わたしもー」
ラズリたちがミトを残して温泉から上がって行った。
「ラズリちゃんもですか? ちょっとはやくないですか?」
「私は…まだ…平気…だから…」
「もう出ましょう」
ミトも慌てて温泉から上がった。
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