ラピスは男湯で温泉につかっていた…
「温泉って気持ちいいな…」
ラピスがふと辺りを見回してみるとある人物を見つけた。
「リズクも来てたんだ」
「あ、ラピスさん」
ラピスはリズクの隣に移動した。
「ところでリズク…最近ラズリに無理矢理つき合わされたりしてない?」
「と、とんでもないです。それどころか色々お世話になってます…」
「ふうん…リズクがそう言うなら心配ないと思うけど…リズクが楽士になってからよく連れ回してるから気になって…今日も一緒に来てるんだけど何かやらかさないか心配で…」
ラピスが頭を抱えていると女湯の方から元気な声が聞こえてきた。
『わー、思ってたより広いね!』
『ラズリちゃん待ってください、走ったら危な…きゃっ?!』
『ミトさん大丈夫です…きゃあ?!』
悲鳴のあと何かがぶつかるような音が何回か聞こえてきた…
「ラズリ!? 何があったの!? ラズリ!?」
ラピスは壁越しにラズリを呼び続けていると返事が返ってきた。
『ミトもリーンも平気だって言ってるから大丈夫だよ』
「シーリーンさんまで巻き込んだの!?」
『こっちは本当に大丈夫だから、坊主はゆっくり温泉につかってな』
「はぁ…それならいいんですが…」
ラピスは少し引っ掛かったが様子を見に行くわけにもいかないので引き下がった。
「何でいつもああなんだろ…どこかで育て方間違えたかな」
ラピスは頭を抱えていると…
「おまえも大変そうだな」
「「ガドゥさん!」」
さっきの騒ぎでラピスたちに気付いたのか、ガドゥが会話に入ってきた。
「さっき女湯の方で騒いでたのラズリだろ? 相変わらずだな」
「そうなんです、いつもいつも色んな所で騒ぎを起こして困ってるんです」
「まだ子供だしあれ位いいじゃん、大人になっても迷惑掛けまくる奴だっているんだし…」
「あの…まさかとは思いますがそれって…うわ!」
ラピスが何か言いかけようとしたその時ラピスたちは誰かにお湯をかけられた。
ラピスたちがお湯がかかってきた方を見てみると、誰かが水飛沫を飛ばして泳いでいた。
「ちょっと、こんな所で泳がないでよ…」
ラピスはとっさに注意して、相手もそれに気付いて立ちあがった…
「何か言ったか?」
「え…」
泳いでいたのはジイドだった…
ラピスはまさか怖そうな大人が泳いでいたとは思っていなかったらしく一瞬怯んだ。
「で、俺が泳いでたから何だって言うんだ?」
「えっと…その…」
ラピスはジイドに睨みつけられて(いるように見えて)うろたえている…
すると、ガドゥが間に割って入ってきた。
「迷惑だったから注意しただけだろ」
「別に泳ぐくらいいいだろ。そっちこそ男湯に女を…」
「こいつはこんなのでも男だよ」
「…は?」
「え? こんなのってどういう…」
ジイドが呆気にとられているとどこからか妙な声が聞こえてきた
『その子たちに…手を出したら…消す…』
「その声は…あの不気味な呪術師か!」
ジイドが声の出所を探していると誰かが彼の肩を掴んだ。
「てめえ、子供相手に何やってるんだ?」
「げ…」
それはアルだった…ジイドは逃げようとしたがしっかりと掴まれていて逃げられない。
「てめえらもこんなのと関わるんじゃねえぞ」
アルはそう言ってジイドを引っ張って行ってしまった…
「…何だったんだ?」
「あの、ラピスさん、さっき聞こえてきた声ってもしかして…」
「うん、叔母さんだね」
「凄い叔母さんがいるんだな…」
「でも、ガドゥさんも凄いです。さっきもラピスさんを庇ってました」
「そうか? あれ位護衛なら当たり前だって」
「でも凄いですよ、体もぼくなんかと違ってたくましそうだし…」
「…それは、お前がやせてるからそう見えるだけなんじゃ…って言うかお前ちゃんと食べてるのか?」
「隊商に入ってからはちゃんと食べてますよ…」
「隊商に入ってからってその前は」
「…ちゃんと食べてましたよ」
ラピスは思いっきり目が泳いでいた…
「ところで…リズクは何を食べてそんなに大きくなったの?」
「え? ぼくですか?」
ラピスは何を思ったか突然リズクに話しかけた。
「だってリズクって最近急に身長が伸びたでしょ?」
ラピスはリズクの両肩を掴んで顔を近づけた。
「えっと、確かに伸びましたけどあの…ラピスさん顔が近いです目が怖いです!」
「ラピス落ち着け!」
「ぼくだって、もっと大きくなりたいのに…」
ガドゥがリズクからラピスを引き離すと今度はメソメソと泣きだした…
「ラピス…お前逆上せてるんだって、もう上がるぞ」
ラピスはこの後ガドゥとリズクによって温泉から上がらされた。
その後
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